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【馬術】全日本学生馬術選手権大会直前特集

2014年11月7日(金)
法政大学城山グラウンド

法大城山グラウンド内にある厩舎で活動を行っている馬術部。今月20、21日に今年度最後の大会を迎える。その全日本学生馬術選手権大会へ出場する主将の日高萌(経3)と網重志保(経3)両選手に、普段の活動と大会への抱負などを語ってもらった。

 

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馬術部の皆さん

 「馬が自分で判断して助けてくれる」―日高  

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馬への思いを語る日高

―馬術との出会いについて聞かせてください
初めて馬に乗ったのは、小学校2年生の時でした。母に連れられ、とある乗馬クラブで騎乗したのですが、落馬負傷してしまいました。それ以来馬に乗ることがトラウマで、小学校4年生になってやっと克服でき、本格的に馬術を始めました。中学校3年生でドリーという名前の、自分の馬を買ってもらいました。翌年、全日本選手権大会に出場すると、2位という好成績を残すことができました。しかしドリーがその年の冬に死んでしまって、酷く落ち込みましたし、馬術を辞めようとさえ考えました。しかし、ドリーの頑張っていた姿を思い出し、「こんなところで辞めてはいけない」と考え直し、新しい馬・ティアーモと馬術を続けていくことにしました。法政大学馬術部は自分の馬と競技をすることができるのですが、(ティアーモは)すごく気性が荒くて私にはうまく扱えず成績も残せなかったので、今はリオネルという、馬術界でも優秀で経験豊富な13才が相棒です。

―自分の馬と一緒に大学で競技するのは珍しいのですか
そうですね。基本的に大学で管理している馬で試合に出るのが普通なので、あまり、自分の馬で競技に出ることはありません。他大学だと、自分の馬を連れてきても、大学に寄付する形になるので、法政馬術部は珍しいシステムですね。

―ここの厩舎の大学の管理馬の割合はどれくらいですか
馬主のいる3頭と、私の馬(リオネル)以外は、大学の管理馬です。

―部の活動には競技の練習と厩務があるとのことですが、それぞれの内容について教えてください
法政馬術は障害馬術と馬場馬術という2つを取り組んでいます。障害馬術は棒(バー)を飛越する練習をするのですが、馬も生き物なので毎日障害を飛ぶと疲れてしまうので、飛越練習は週に1、2回行っています。それ以外の日は軽い運動から、体をほぐす運動をしながら馬とコミュニケーションをとり、選手の指示に沿って馬が動くよう教えています。最終的に障害馬術、馬場馬術を行うための練習を普段はやっています。

―馬とのコミュニケーションの取り方とは
馬には脚を使って指示を出すのですが、鐙(足をのせる馬具)が体に当たることは馬にとってストレスなのです。それを使わないように、選手はふくらはぎで馬体を軽く叩いて、「私がこの指示を出したら、お前はこうするんだよ」というのを教え込みます。一種の上下関係ですね。

―日高選手がリオネルを呼ぶと寄ってきましたが、やはりこれは信頼関係あっての行動ですか
確かに、リオネルは普通の馬よりも人懐こい性格というのもありますが、普段から毎日お世話しているからですね。部の活動自体は午前中だけなのですが、午後も顔を出して様子を見たり、広い敷地を生かして散歩をしたり。長く一緒にいれば馬が「この人と一緒にいたら安心だ」と思って懐きますね。

―棒の高さの決まりはありますか
学生戦の一番高いもので130cm、予選会では120cmです。これを飛ぶために普段は低い棒で練習しています。

―厩務の仕事内容は
基本的に朝は7時半から厩舎の掃除をします。それから馬の飲み水をきれいに洗ったバケツに入れたり、馬ごとの年齢や運動量に合わせた配合飼料を入れた食事を与えたりします。ちなみに馬は1日4食なんですよ。名目上は選手班と厩務班に分かれているのですが、部員が少ないので選手も厩務はやりますし、逆に厩務班の部員も馬に乗ったりもします。

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馬の世話の様子

―大会前の追い込みはされますか
はい。選手それぞれ考え方は違いますし、馬のタイプにもよりますが、基本的に2週間前ぐらいから人馬ともにガッツリ練習をします。選手のモチベーションや馬の仕上がりにも影響するので。そして大会前の1週間は体をほぐしています。なんせウチの部は高齢馬が多いので、ケアはしっかり行っています。

―競技馬の適齢期はいつごろですか
13、14才がいいと言われています。兵庫へ遠征した4頭は、22才が2頭、あとは13才14才でした。高齢馬は経験量が多い分、助けられることが多いですね。馬が選手の指示に背くわけではなくて、「この人はこう指示を出しているけど、こっちのほうがいいと思う」といった具合に馬が自分で判断して助けてくれます。私もそのような経験は良くあります。例えば障碍を飛越するときは踏み切る位置を選手が判断しなければならないのですが、棒までの距離を目視でしか測れません。まして馬の勢い、歩幅や速度は微妙に変化するので人馬で飛越のタイミングが一致しないことがあるんです。そんなとき、選手が「タイミングを外した」と思っても馬がもう一歩足してくれて飛越できた、なんてことがありますね。しかし、助けきれないこともあります。棒の高さが130cmともなると、馬の力だけでの飛越はほとんどできません。人馬でタイミングが合わないと、「反抗」といって立ち止まったり、回避したりして減点になってしまいます。馬ができない部分を選手が助けてあげることが大切です。

―馬術は馬がメインですね
そうですね。競技をしているのは馬であって、選手は馬に指示を出してそれについていくだけです。

―指示を出す上で難しいところは何ですか
馬も考える生き物なので、競技場のような見慣れない場所では興奮してしまって、普段の練習通りにいかないことはあります。選手が指示を出しても耳に入らなくなることもあります。若い馬ほど興奮してパニックに陥ることが多いので、馬を競技に集中させて指示に耳を傾けさせるようにするのは大変です。

―馬術を始める平均年齢なるものはありますか
ありませんね。大学から始める人もいますし、高校、中学、私のように小学生で始める人もいます。割とお年を召してから始める方もいらっしゃいます。

―馬の性格は競技に影響しますか
結構影響しますね。障碍馬術には、棒だけでなく派手な障害物もあるんです。臆病な子や気の弱い子だと驚いて止ってしまったりします。馬は動物なので、嫌なものには近づきたくありませんし、馬は基本的に臆病な性格なので、怖いものから逃げたいという本能を、選手がいかに怖くないと諭すか、「飛べ!」と勇気を出して言えるかが大事になってきます。反対に気の強い子はそういった障害物も気にせず飛んでくれる分にはいいのですが、自が強いあまり選手の指示に従わなかったりするので大変です。

―馬術を行う上での苦労は
生き物の世話をしているので、人間も休みがありません。馬の朝食が5時半なので、年中通してハードですね。夏の練習は涼しい時間帯を選んで、早朝4時半や日が暮れてから行っています。冬は早朝では馬場が凍っていますし、馬も体が動かないので、暖かい昼頃に行っています。健康管理も大変で、馬のちょっとした異変にも気づいてあげなければいけないですし、生き物なので夜中に体調を崩す子もいるので、たとえ夜中の2時でも様子を見たりもします。馬が体調を崩せば約束を全てキャンセルして駆けつけなければならないのですし、馬中心の生活なのでそこが大変ですね。

―馬の体は繊細ですか
はい。体が冷えると腹痛を起こしたり、馬は腸が長いので糞が詰まってしまうことがあるのですが、酷くなると疝痛や腸ねん転になって、最悪死んでしまうので注意が必要ですね。ですので、極力体を冷やさないよう、肌寒くなったら馬服を着せます。真冬は羽毛布団のような馬服を着せていますよ。

―法大馬術部は奉仕活動をされているとお聞きしていますが
今年は忙しくてできませんでしたが、毎年夏休みに、小学生を対象として馬とふれあう行事を催しています。30人ほどが集まって乗馬体験をしたり、馬をブラシで手入れしたり、おやつをあげたりしています。昨年は「多摩スポーツフェスティバル」に出向いたりもしました。

―馬術部の特徴、カラーは
人数が少ない分みんな仲良く活動しています。学年で気を使うことなく意見を言ったりしています。

―障害競技をやるにあたって意識していることはありますか
目指すところは130cmの全日本学生三大大会という、この前(11月上旬)に行われた大会がメインなのでそこで成績を出すために、春から少しずつ調整をしていきます。馬の調子の良し悪しもあるため低いクラスから信頼関係を作っていかないといけなくて、馬も人間も勇気を持てるように練習しています。障害物が大きいので馬も勇気出して行かないといけないですし、人間も怖いと思うと跳べないので。

―失敗などを経験すると、馬に恐怖心などは残ってしまうのですか
障害を跳ぶのが怖いと馬が思ってしまうと、最悪の場合障害物に近づけなくなってしまい、障害イコール怖いになってしまうのでそれを直すのは大変ですね。そうなってしまったら、低いのから「怖くないよ」と言って少しずつクラスを上げていって、馬が障害を跳ぶのが楽しいと思ってくれないと人も乗れないので、馬がそう思うように人が乗っています。

―日高選手にとって、これまでの競技人生でターニングポイントになった試合などはありますか
一番私の中で印象に残っているのは、高1の時の全日本で2位になった大会です。その大会は子供と大人関係なく出るものでした。私が初めて全日本に出た時に会場もいつもと違うところでやり、お客さんも多かったです。大学生になってからは今年の夏にあった18~22歳が出場できる全日本ジュニアの馬場馬術の競技です。他の人たちは乗馬クラブに所属していてプロが調整した馬に乗ってプロの指導を受けて試合に臨むんですけど、私たちは部活なので自分たちで練習と調整をして試合に臨んでいるなかで、3位になれたことは自信にもつながりましたし、一番頑張ったなと思います。

―やはり馬場馬術においても馬の性格は表れますか
そうですね。おっとりしている馬は動じないんですけど動きにキレがなかったりします。私が全日本で乗ったジュピターという馬は普段おっとりしているんですけど、試合になると気合いが入る馬なので動きにはキレがある分ちょっとしたことでビックリします。

―競技を見る上でのポイントは
馬場馬術だと技を競うので、派手な馬はすごいので見ていて「おー」ってなりますね。(具体的な技としては)馬が横向きに進んだりとか馬がスキップしているような技があります。馬によっては横に進むのは得意だけどスキップするのは苦手とか、馬の得意不得意はけっこうありますね。

―ジュピターは得意な技などはありますか
スキップみたいなやつはすごく得意で、それは審判が見ていても高い評価を得ていますね。けど、横歩きは馬はできるんですけど人が下手くそで(笑)、苦手要素に入ってますね。

―改めて全日本学生三大大会を振り返って
本当に悔しくて悔しくて後悔ばっかりです。 今までは部員や馬が少なかったので組めなかったのですが、 障害馬術は4年ぶりぐらいに団体を組めたんですけど、みんな成績が悪くてボロボロで悔しかったですし、馬場馬術の方は私は夏に全日本で入賞していたので学生の中でも優勝候補に入っていたのに予選落ちしてしまいました。

―今年度の馬術部の成績としては
良いですね。近年まれに見る好成績です。

―最後に12月の大会に向けて意気込みをお願いします
1年生の時に初めて予選突破して出たんですけど、2回戦で負けてしまって、2年生と3年生の時は予選敗退で縁のない大会だったんですけど、最後にやっと全日本の切符を手に入れられたのでやれるところまで全力で悔いのないようにやりたいなと思います。

「決勝まで残って、全日本で優勝したい」―綱重

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主務の網重

―馬術との出会いはどういったものですか
小学校3年生の時に初めて競馬を見て、馬は乗れるものだということを知り、父に馬に乗れる施設に連れて行ってもらったのが始まりでした。ある日、両親に乗馬を続けたいかと聞かれ「うん」と答えてからずっと馬の道です。高校は馬術部のある高校を選んで入学したので、大学も…(同様に馬術部のある大学を選び、)今に至ります。

―ご両親は馬術をされているのですか
全然です。私以外の家族は誰もしていませんね。祖父の協力があって続けられているので感謝しています。

―担当馬は
この(取材時に世話をしていた)法永です。法大馬術部は預託馬がいるのですが、私は預託馬の管理もしています。法永とは大学2年生の時から一緒なのですが、腰を悪くしていて休養していました。回復してきたので来年は全部法永と大会に出たいなと思っています。

―法永はどんな性格ですか
マイペースです。自分のプライドが高くて、少し自分の気に食わないことがあるとすぐ「嫌だ」と反抗するので。本当に、ヒトみたいな奴です。

―(世話の様子を見て)法永には厳しく接されているようですが
そうしないとすぐなめられるので。法永は(なめてもいい人間かが)すぐわかるので。なめられないように頑張っているのですが、法永が大きいので大変です。

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法永の世話の様子

―馬術をする上で大変なことは
私は朝に弱いので、早起きは少しつらいです。加えて生き物と接するので、楽しくやりたいのですが、厳しくもしなければいけないところが大変ですね。あとは生死ですね。生きているものには必ず別れがある、というところが一番つらいですね。

―馬術をする上で気を付けていることはありますか
人馬ともにけがをしないようしたり、馬はデリケートなのですぐ病気になったりするので体調管理は気を付けています。法永なんかはやんちゃなのですぐけがをしたりするので、それだけ配慮が必要ですね。

―印象に残っている大会は
大学1年生の関東選手権で優勝したときですね。1年生のときに結構競技成績が上がっていたので、自分でも驚いていました。優勝した当時はあまり実感が湧かなくて、周囲から(優勝のことを)言われるようになって、「私は優勝したんだ」と思うようになった記憶がありますね。

―優勝を経験して変化はありましたか
自分の中ではあまり無いですね。一方で周囲の私に対する接し方が変わりましたね。知らない人から声をかけられたりもしました。

―今年の部の調子は
昨年引き続き人も馬も(数が)そろっていますね。来年もこの調子でいけば好成績を望めるのではないかと思っていますし、1年生も結構やる気の多い子が多く、上達も早いので、大学から始めた部員も試合でいい成績がとれるのではないかと期待しています。

―ご自身の調子はいかがですか
法永が元気になってきてくれたので、また大きな大会を目指して頑張ろうという気持ちはあります。

―法永との出会いは
法永は私が大学1年生のときの4年生の先輩の担当馬で、当時も乗せてもらうことはあったのですが、その方の引退後に正式に担当馬になりました。

―網重選手から見た日高主将というのは
姉貴肌というか、強そうな感じですが、実際は優しくて気を配ってくれる先輩なので、そういう面はとても尊敬しています。私自身、人をまとめることは苦手なので、来年はとても心配です。今は先輩からも助けてもらっていますし、仲間も助けてくれます。

―馬術の面で教わることも多いですか
はい。元々馬術がうまいですし、大学に入ってからもどんどんレベルアップしているところです。今年の夏日高さんの得意分野の障碍馬術ではなく馬場馬術で全日本3位入賞だったので、違う分野で活躍できているのはすごいと思います。

―12月の大会の目標
いつも全日本に出場はできるのですが、どうしても1、2回戦で敗退してしまうので、できれば決勝まで残って、全日本で優勝したいです。他の大学の馬と競技をするのですが、その馬がどんな性格なのかわからないので、いろいろな馬に触れて頑張りたいです。(知らない馬に乗るのは難しい?)難しいというのはもちろんですが、なにより怖いですね。全然知らない馬なので。いきなり走り出してしまう馬などもいて怖いです。一応馬の性格や特徴が書かれたものはあるのですが、人として感覚が違うので。慎重に乗りすぎていい演技ができないこともあるので、難しいところですね。でも知らない馬にどう乗れば良いかを考えることは楽しいので、私は選手権という大会は好きです。

取材:南高節、伊藤華子、熊谷優

今年度の主な成績

個人成績

第86回関東学生馬術選手権大会
網重志保 準優勝

第31回全日本ジュニア馬場馬術大会2014
日高萌 総合3位

第52回関東学生馬術女子競技大会
日高萌 優勝 

団体成績第84回関東学生馬術争覇戦 2部5位

フォトギャラリー

    • DSC01183馬術部の厩舎
    • DSC01090練習の様子
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    • DSC01174障害競技の練習に使われる道具