【サッカー】天皇杯 JFA 第99回全日本サッカー選手権 4回戦 法政大1-2ヴァンフォーレ甲府 わずかに届かなかったベスト8の切符 大学の誇りを背負った法大の天皇杯の戦いはベスト16で終焉
【サッカー】天皇杯 JFA 第99回全日本サッカー選手権 4回戦 法政大ーヴァンフォーレ甲府
2019年9月18日(水)
山梨中銀スタジアム
ベスト8を懸けた天皇杯4回戦の相手はヴァンフォーレ甲府。両者のチームカラー通り、運動量と強度の高いサッカーが繰り広げられた。その中で27分に一瞬の隙を突かれ、曽根田穣に先制ゴールを許してしまう。すると法大は39分に長谷川元希を投入、早めの交代策から活路を見出す。後半、1点を追う法大は森俊貴、佐藤大樹と次々にジョーカーを投入。迎えた78分、紺野和也のクロスをファーで森が合わせて待望の同点ゴールが生まれる。互いに一歩も譲らない死闘は90分では決着がつかず、延長戦に突入。そして93分、FKのリスタートから宮崎純真にゴールを破られ万事休す。1-2で敗北し、法大の天皇杯はベスト16で終わりを告げた。
試合結果
トータル試合結果
1 法政大 |
0 | 前半 | 1 | 2 ヴァンフォーレ甲府 |
---|---|---|---|---|
1 | 後半 | 0 | ||
0 | 延前 | 1 | ||
0 | 延後 | 0 |
試合スタッツ
時間 | 経過 | 大学 | 選手名 | 得点経過 |
---|---|---|---|---|
27分 | 得点 | ヴァンフォーレ甲府 | 曽根田穣 | 0-1 |
39分 | 交代 | 法政大学 | 平山→長谷川 | |
59分 | 交代 | 法政大学 | 竹本→森 | |
76分 | 交代 | 法政大学 | 松澤→佐藤(大) | |
78分 | 得点 | 法政大学 | 森俊貴 | 1-1 |
93分 | 得点 | ヴァンフォーレ甲府 | 宮崎純真 | 1-2 |
103分 | 交代 | 法政大学 | 長谷川→田中 |
スターティングメンバー
背番号 | ポジション | 選手名 | 学部・出身校 |
12 | GK | 中野小次郎 | 経済3・徳島ヴォルティスY |
23 | DF | 関口正大 | 現福3・新潟明訓高 |
2 | DF | 森岡陸 | 現福3・ジュビロ磐田Y |
5 | DF | 加藤威吹樹(cap) | 経済4・サンフレッチェ広島Y |
3 | DF | 高木友也 | 経済3・法政第二高 |
6 | MF | 大西遼太郎 | 社会4・ジュビロ磐田Y |
7 | MF | 末木裕也 | スポ4・ヴァンフォーレ甲府Y |
17 | MF | 竹本大輝 | 経済3・成立学園高 |
19 | MF | 平山駿 | 経済3・三菱養和SCY |
8 | MF | 紺野和也 | 現福4・武南高 |
9 | FW | 松澤彰 | 現福4・浦和レッズY |
サブメンバー | |||
---|---|---|---|
1 | GK | 山岸健太 | 経済4・前橋育英高 |
24 | DF | 宮部大己 | 経済3・法政第二高 |
10 | MF | 下澤悠太 | 社会4・柏レイソルY |
13 | MF | 長谷川元希 | 現福3・大宮アルディージY |
14 | MF | 森俊貴 | 情科4・栃木SCY |
28 | FW | 田中和樹 | 社会2・浦和学院高 |
20 | FW | 佐藤大樹 | 経済2・コンサドーレ札幌Y |
マッチレポート
雨上がりの山梨中銀スタジアムにキックオフを告げる笛が響き渡る。ハードワークを信条とする両チームの戦いに相応しく、開始早々から球際での攻防が繰り広げられた。2分には敵陣でボールを失ってから平山駿が素早いプレスバックで奪い返し、前がかりになりかけた甲府の虚をつく形でゴールに迫った。遅攻と速攻を使い分ける法大だが、この時間帯は敵陣でボールを奪いきる速攻の色が濃く出る。5分、まさにその形から紺野がクロスを上げたものの味方には合わなかった。7分には右SBの関口正大が中央に向けてくさびのパスを狙い、ビルドアップからの形もひとつ示す。最初のピンチが訪れたのは9分、小林岩魚の突破から佐藤洸一が落とし、最後は曽根田穣にシュートを浴びたがスタメン復帰を果たした主将・加藤威吹樹の素早い寄せもあって枠外へ。10分には関口のロングフィードに紺野が抜け出してチャンスを演出。オーバーラップと長短のパスを持つ関口と圧倒的な個人技でDF陣を切り裂く紺野の右サイドコンビがゲームを通して攻撃を牽引した。16分、得意のカットインからサイドを横断した紺野が高木友也へパス。こぼれ球を大西遼太郎が回収してクロスを上げたがあと一歩合わず。大西のプレーに象徴されるように法大の生命線となっているのがセカンドボールへの出足だ。しかし、甲府が前への圧力を強める流れでは遅れを取るシーンも見られ、ホームチームはこの隙を見逃さなかった。27分に山本英臣のロングフィードから佐藤(洸)が裏へ抜け出し、曽根田の放ったシュートはGK中野小次郎の股を抜いてゴールネットを揺らした。法大は大会初失点を喫し、初めて追う立場になった。37分には平山がDFの間でボールを受けてから竹本大輝にパス。こぼれ球を再び平山が受けてシュートを放つがジャストミートせず。なかなかペースを掴み直せない展開に長山一也監督が早くも動いた。39分に平山に代えて長谷川元希を投入。すると41分、高木のグラウンダークロスからエリア内に侵入した末木裕也がシュート。甲府Y出身の末木が古巣のゴールに最も迫った瞬間だったが、『恩返し弾』とはならず。前半のうちに追いつくまでは至らなかったが、長谷川の投入により1.5列目の動きとサイド攻撃が活性化。積極的な交代策から光明を見出して試合を折り返す。ハーフタイムの長山監督は「立ち上がりで先手を取る」「攻守の切り替えを速く」「最後の質」の3点を強調して選手達を送り出した。
ハーフタイムコメントの通りに事が進み、後半立ち上がりの主導権を握ったのは法大。加藤が佐藤(洸)のトラップ際に激しく食い付いてマイボールを手にするとしばらくポゼッションを続け、48分にカットインした紺野が竹本への鋭いスルーパスを試みる。僅かに合わなかったものの、ゴールに直結するプレーで相手を脅かした。だが、この状況下でも甲府は50分に鋭いカウンターからあっという間にゴール前へ侵入。プロレベルの速さと精度を見せ、一瞬たりとも気が抜けない事を再認識させられた。58分には松澤彰のポストプレーを起点に紺野が仕掛け、最後は長谷川が股抜きシュートを放ったがGKの正面。もう一段階ギアを上げるべく法大は59分に森俊貴を投入。流経大戦で右肩を負傷し、ベンチスタートとなっていた左サイドの要を送り出して勝負をかけた。直後に関口のクロスからこぼれ球を高木がダイレクトで合わせたが身体を張った甲府の守備に阻まれた。肝を冷やしたのは70分、法大DF陣の合間を縫った縦パスから橋爪勇樹のシュートがクロスバーを叩いた。時計の針が刻一刻と進んでいく中、76分に法大は松澤に代えて佐藤大樹を投入。そして、3枚目のカードを切った直後の78分に待ち望んでいた瞬間が訪れる。クリアボールを回収した紺野のクロスにファーで飛び込んだのは森。4年生ホットラインの一撃で試合を振り出しに戻した。
85分には佐藤(大)がサイドに流れながら裏へ抜け出してFKを獲得。末木のボールに佐藤(大)が頭で合わせたがゴールマウスを捉えきれなかった。一進一退のつばぜり合いは90分間で決着がつかず、15分ハーフの延長戦へと突入する。
迎えた93分。FKを得た甲府が意表を突いたリスタートでエリア内に侵入し、最後は途中出場の宮崎純真に決められて再びリードを許してしまう。残りの27分で追い付く為にも前に出るしかなくなった法大だが、今度こそと試合を締めにかかった甲府のゲームマネージメントを前に焦らされる時間が続く。105+2分にはヒートアップした両チームの選手がぶつかり合う一幕も見られた。エンドを変えて迎えた107分、CKから森岡陸がヘッドで合わせたがジャストミートせずにGKがキャッチ。110分には前半からフルスロットルで仕掛け続けた紺野が足をつり、治療の為に一時退場。過去には延長戦で独走ゴールを決めた事もあるスプリント力を誇る紺野の倒れる姿がこの一戦の激しさを物語っていた。その後も懸命にゴールへ迫ったが身体を張って守る甲府の壁を崩せず、目安のロスタイム3分を30秒ほど越えた所で無情にも長い笛が響き渡る。1-2でヴァンフォーレ甲府に敗れ、カテゴリーの壁を越えた法大の挑戦は幕を閉じた。
総理大臣杯決勝に続いて紙一重の戦いで涙を呑んだ法大。試合後に長山監督は「どことやってもある程度できる」と手塩にかけて育てたチームを評価しつつも「中途半端な成績では評価されない。もう一つ結果を残したかった」とチームへの高い期待がうかがえるコメントを残した。ここ数年は毎年のようにトーナメントの決勝に進出し、大学サッカー内外にその名を轟かせるようになった法大が欲するのは『良い試合』ではなく『勝ち試合』に他ならない。明大戦に続き、皮肉にもビッグゲームの敗戦によって今の法大が勝者のメンタリティを保有している事を思い知らされた。
結果としては天皇杯ベスト16。歴史の扉は固かった。しかし、法大の戦いぶりは間違いなくその扉に爪痕を残した。この敗戦が無駄ではない事を証明できるのは今後の勝利だけだろう。現体制に残された時間は3ヶ月、一戦必勝の精神で『オレンジ軍団』は駆け抜けていく。
(記事:岩瀬斗真、撮影:磯田健太郎)
※監督・選手コメントやここでは掲載することができなかった写真は後ほど掲載いたします。
フォトギャラリー
- この大一番で先発出場を果たした竹本
- 松澤はターゲット役として体を張り続けた
- 紺野はオンザボールで輝きを放ち、攻撃を牽引
- 中野のハイボール処理能力はさすがの一言に尽きる
- 長谷川の早期投入から反撃の糸口を掴んだ
- 高木のキープからはこれまでの「ジャイキリ」で培った自信が見えた
- スタッフも含めた総力戦を繰り広げた
- 手が届きかけたからこそ、その悔しさは大きかった