日本学生選手権
2021年10月7日(木)〜10日(日)
東京辰巳国際水泳場
大会最終日は女子400m個人メドレーで柏崎清花(4)が2年ぶりの金メダル。男子400m個人メドレーでは宮本一平(4)が3位入賞を果たした。総合結果では、女子が5位でシード権を獲得。一方の男子は13位に沈み、チーム目標であった男女そろってシード死守は叶わなかった。
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最終日ハイライト
女子400m個人メドレー
金メダルが確定した瞬間、トレードマークの笑顔が太陽のようにはじけた。「本当に、うれしくて、うれしくて、うれしくてたまらなかった。『幸せ』っていう言葉が一番合ってる」。約20年間に及んだ競技人生の集大成は、喜びにあふれていた。
後半型のライバルに勝つために、「先行逃げ切り型」の戦略を立ててレースに臨んだ。目論み通り、得意のバタフライから先頭へ。圧巻は苦手を克服してきた2泳法目の背泳ぎだった。全選手の中で最速の記録でまとめ、200㍍を終えた時点で安全圏とも言える差をつけた。最後の自由形まで他の選手を全く寄せ付けない貫禄のレース運びだった。
入場から終始、笑顔を絶やさなかった柏崎。しかし、笑顔の裏には苦悩の日々があった。大学2年次にインカレで初優勝。華やかなステージの上にいたが、昨年は調子が上がらず連覇を逃す結果になった。東京五輪出場をかけて挑んだ今年4月の代表選考会ではまさかの予選敗退。目標に全く手が届かず「ぽっかりと心に穴が空いた」。
レース前日はアクシデントに見舞われた。元々抱えていた肩の故障が再発し、「本当に出られるのかなってくらい落ち込んだ」。絶望した柏崎を救ったのは、長年コンビを組んできた森謙一郎コーチの一言。「もう優勝とかしなくていいんじゃない」。沈んだ気持ちが一瞬で楽になった。
「深刻な表情で心配されるよりもすごいありがたかった。なるようになれと腹を括れたのは、森コーチのおかげ」。柏崎は感謝の気持ちを述べた。
こうしたやりとりは、一度や二度ではない。「いい時はいいけど、悪い時は本当にどうしようってなる」性格。でも不安になった時、いつも森コーチが言ってくれた。「最後は絶対勝たせてやるから」。師弟の歩みは、一つの金メダルに結実した。(根本 成)
男子100m背泳ぎ
1年間学校練キャプテンを務めた竹鼻幹太は、水泳人生最後のレースを終え、チームメイトの声援に応えた。「200mが終わってからは、すぐに気持ちを切り替えることができず、もういいやってなった。でも、中1日皆と一緒に過ごしている内に、最後もう一回しっかりレースをしようって思うことができた」。最後のレースは「後半のバサロキックを15mギリギリまで打ってやろうと、それだけを考えていた。実現できたので後悔はありません」と口にした。
男子400m個人メドレー
前日の200m個人メドレーとの2冠を狙った宮本は3位だった。予選は全体の1位通過。だが「決勝になったらさまざまな気持ちが入り混じって自分のパフォーマンスができなかった。クロールが圧倒的に遅いので、平泳ぎで差を付ける必要があった」とコメントした。
男子200m平泳ぎ
この種目で日本選手権ファイナリストの山尾だが、決勝進出を逃す形になった。「200mは体の不安もあり、予選では余裕を持って泳いで決勝に進みたいと思っていた。後半にかけて上げようとしたが、体がキツくて上がらなかった」と答えた。男子は総合で13位となり、惜しくもシード落ち。「自分が点数を取るべきところで取れなかった」と悔しさをにじませた。
女子4×200mフリーリレー (柴田−中島−篠田−柏崎)
アンカーを務めた柏崎は順位を2つ上げて5位でフィニッシュした。ゴール直後に、後輩の篠田(左)と中島(真ん中)が柏崎の元に寄り添った。
選手インタビュー
柏崎清花
ー 最後のインカレはどんな大会になりましたか
全体的に言うと楽しくて仕方ありませんでした。すごくワクワクが止まらなくて、最初から最後まで本当に楽しかった試合でした。
ー 昨年は、優勝を逃す結果になりましたが、悔しさを晴らすことはできましたか
2年前に優勝した時よりも、本当に嬉しくて、嬉しくて、嬉しくてたまらなかったです。
ー リレーでの奮闘もあって、女子はシード権を獲得しました
本当はメドレーリレーの方にも出る予定でしたが、前日にまた肩を痛めてしまったことから、400mのフリーリレーと800mのフリーリレーの2つに絞ることになりました。自分の中では、決勝に残れるとは思っていなくて、本当に予想外の結果でした。2つとも皆が速いタイムで泳いでいたのでびっくりしました。
ー レースについて伺っていきたいと思います。まず200m個人メドレーはベストに近いタイムで泳ぎました
13秒台を出したのが2年ぶりでした。13という数字を見るのが久しぶり過ぎて嬉しかったです。でも後0.2秒でベストだったことを考えるともうちょっと頑張れたんじゃないかなと思ってしまいました。レースの時は本当に一生懸命やっていましたが、もうちょっと頑張りたかったなという思いが強いです。
ー どのあたりがもう少し頑張れたと思いますか
スピードには乗っていた気がするんですけど、力任せで泳いでしまっていました。ずっと4個メの練習をしていた分、上がり切らなかった感じです。
ー 400mに繋がるレースはできましたか
最初の出だしの泳ぎに関しては4個メを意識して泳ぐことができました。
ー 400mの予選はとても余裕があるように見えました
担当の森コーチからは、バッタからブレストまで、決勝と同じような形で泳ぐように言われていました。フリーまでは決勝を意識して泳ぎ、最後はゆっくりという感じでしたが、自分が思っていたよりも速いタイムが出ていたのでびっくりしました。
ー 勝利を確信しましたか
そうですね。予選が終わった後に全く疲れていなくて、まだまだ余裕があるような感じだったので、これは決勝で面白いタイムが出るんじゃないかなと自分の中で思っていました。
ー 400mの決勝は集大成のレースということでしたがどんな気持ちで入場したんでしょうか
いつもは緊張や不安が最後に出てきてしまうんですけど、今回の4個メの決勝のレースは全くそれがありませんでした。本当にワクワクが止まらなくて楽しみっていう気持ちが一番強かったです。
ー 寂しさはなかったですか
全くなかったです。
ー 最初のバタフライからかなり飛ばしていました
日体大の一戸選手と神奈川大の室木選手が後半速いってことが分かっていたので、最初でどれだけ離せるかというのがポイントでした。得意なバタフライと伸びてきた背泳ぎで先行逃げ切り型のレースをしようと、森コーチと作戦を練っていました。
ー 課題だった真ん中2つの泳ぎに関しては
最初のバタフライと背泳ぎのトータルタイムで初めて2分15秒台を出せました。それに繋げて平泳ぎも上手く泳ぐことができたと思います。
ー レース中は周りの選手の位置を見ていましたか
それが全然見えなくて。ゾーンに入る感覚ってこういうことなのかなって実感したレースでした。本当に楽しく、気持ちよく泳ぐっていうのが全面に出ていたと思います。
ー 最後のフリーはいかがですか
もうちょっと最後上がったかなと思ったんですけど、1分05秒かかってしまったのでバテちゃったかなという感じです。もうちょっと速ければ40秒割れたのになという悔しさがあります。
ー ゴールしたときはどんな思いでしたか
周りの選手がタッチしていなくて、自分が優勝って確信したときは、どうやって写真を撮られようって思っていました。それくらい気持ち的にも体的にも余裕があって、もう嬉しさが爆発してしまいました。
ー なかなか電光掲示板を見なかったですよね
タイムを見ることがすごいドキドキでした。どう喜べばいいのかって、変なことを考えていました。
ー タイムを見て、どのように感じましたか
まさか40秒台が出るとは思っていなかったので、本当にびっくりしました。
ー 2年前とは優勝の喜びは違いましたか
タイムもそうですし、集大成ってこともあったので、本当に嬉しい、幸せっていう言葉が一番あっているのかなって思います。
ー 自己ベストで優勝という終わり方をしました
本当に気持ち良かったですね。
ー もう未練はないですか
ないです。もう多分、これ以上頑張れないです。
ー どういったことが今回の結果に繋がったと感じていますか
この試合に向けて、感情や体の状態に波がありました。いい時はいいけど、悪い時は本当にどうしようってなって、落ち込んでいました。そういう時にずっと担当してくれた森コーチの存在がすごい大きかったです。「最後は絶対勝たせてやるから」って言ってくれたのがすごい心強くて本当に感謝しかないです。
ー どの時期が一番辛かったですか
直近で言うと、レースの前日です。もう動かせないくらい肩を痛めてしまって、本当にレースに出れるのかなって落ち込んでしまいました。
ー その時は森コーチにどんな言葉をかけられましたか
軽い感じで「もう優勝とかしなくていいんじゃない」って言われました。そんなに重く考えないように流してくれて、すごいありがたかったです。深刻な表情で心配されるよりも、軽い感じで居てくれたので、自分の中ではすごい大きかったです。最終的に、なるようになれと腹を括れたのは、森コーチのおかげかなと思います。
ー 水泳人生を総括すると、どんな競技生活でしたか
本当に辛いことが、9.5割くらいだったなって思います。その中で、こういった優勝であったり、色々な人から応援される経験ができて、人間的に成長できたかなって思います。
ー 何歳から水泳を始めましたか
2歳から始めました。大会に出始めたのは小学1年生とかだと思います。
ー ここまで続けてこれた理由は
周りの支えも大きいと思いますが、一番は水泳が好きだったから続けてこれたと思います。今振り返ると、水泳辞めたいとか、水泳大嫌いって思うことがありましたけど、それでも辞めなかったのは、心の底から水泳が大好きで、辞めたらもったいないとか、辞めたら自分に何が残るんだろうっていう気持ちがあったからこそ、ここまで頑張れたのかなって思います。
ー 東京五輪への挑戦もしたりと、本当に色々な事があった4年間だったと思います
自分の中で一番大きな目標が東京五輪でした。それに出れなかったのは本当に悔しかったです。4年間を振り返ると本当にあっという間でした。同期や先輩、後輩と色々な人に出会って、色々な人に応援されるようになって、すごい幸せな水泳人生でした。
ー 法政大学に入って良かったことは
水泳部の同期の仲間に出会えたことが一番良かったことです。本当に同期が好き過ぎます。インカレが終わっても引退の実感が湧いていなくて、また試合で会えるんじゃないかっていう思いがあります。もう試合がないので会えないんですけどね。
ー 今はどんな感覚ですか
シーズンオフみたいな感じで、いつになったら引退って実感するんだろうって思っています。
ー では最後にお世話になった方へのメッセージをお願いします
ずっとここまで支えて下さった方々には、本当に感謝しかありません。本当に本当にありがとうございましたというのを伝えたいです。
竹鼻幹太
ー 17年間続けてきた水泳を引退されて、今はどういった気持ちですか
引退して「やったー」ってなるのかなと思っていましたが、意外と心寂しい気持ちでいます。
ー メイン種目の200m背泳ぎの前はどういった気持ちでスタートしましたか
緊張というよりも、その日男子の流れがとても悪かったので、なんとかして変えたいなという思いが強くありました。緊張も多少はしましたが、今までのインカレと比べたら緊張はしなかった方でした。
ー レースを振り返っていかがですか
気合いが入り過ぎていて、前半抑えたつもりが、今までより1秒程度速く入ってしまいました。それのせいで、やはり後半バテてしまった感じです。もうちょっと落ち着いて、冷静にレースが出来ていたら良かったのかなと思いますし、練習量が少し足りなかったのかなと終わってから思いました。
ー 結果を見た時に感じたことは
やってしまったなと思いました。
ー 100mの方は気持ちを切り替えて臨むことはできましたか
200mが終わってからは、すぐに気持ちを切り替えることができず、もういいやってなってました。でも、中1日皆と一緒に過ごしている内に、最後もう一回しっかりレースをしようって思うことができました。
ー 水泳人生最後のレースを泳ぎ終えた後の気持ちは
レース自体は、自分的には悪くなかったと思います。レース前は、後半のバサロキックを15mギリギリまで打ってやろうと、それだけを考えていました。それがしっかり実現できたので後悔はありませんでした。ずっと200mに力を入れてやってきていたので、100mが終わってからは悲しい気持ちにはならないだろうと思っていましたが、意外とプールから上がったら、「終わりかぁ」と思う部分がありました。辰巳は小さい頃からお世話になっていたプールだったので色々な感情が出てきてしまって、割と悲しかったです。
ー チームメイトからはどんな言葉をかけられましたか
サブプールに金田和也コーチがわざわざ来てくれて「(決勝に)残せてあげられなくてごめんな」と言われました。その言葉が本当にズルくて涙が出てしまいました。あとは、1年生の頃から二人三脚でやってきた甲斐青空に対して「結果出せなくてごめん」って言ったんですけど、「結果が全てじゃない。お前が学校練キャプテンで本当に助かった」って言ってくれたのがすごく印象に残ってます。
ー 一時は辞めようとしたとか
学校練キャプテンという役職が本当にキツくて… というのも、チームのキャプテンである訳ではないのに、学校の中では歴代のキャプテンとやることは何も変わらず、何で自分がここまでやらなければいけないのかなという思いがずっとありました。チームメイトに相談なんてできなかったですし、実力もインカレで戦う所まで到達していなくて、本当にキツかったです。ただ、今はやり切って本当に良かったと感じています。
ー インカレに向けて練習してきた期間を振り返って後悔はないですか
全くないです。
ー 水泳人生を振り返って一番印象に残っているレースは
大学2年生の冬の六大学のレースで日本選手権の標準を切れたときが一番嬉しかったです。
ー 4年間で学んだことは
継続することの大切さだと思います。僕は元々飽き性で継続ができない人間だったのですが、大学では半強制的に色々と継続しなければいけない状況がありました。それを通して、コンスタントに結果がついてきたので、継続はとても大切なんだなと思いました。また、自分1人でここまで来れた訳ではないので、人と人との繋がりは大きな力を生むことを学べた気がします。
ー チームの結果について思うことは
女子に関しては、点を取るべく人がしっかり取っていたので良かったなと思います。上から応援をしていても本当に頼もしかったです。男子に関しては、申し訳ないという気持ちが一番です。ずっとシードを獲るって言ってきたのに獲れなくて、自分自身も点を取ることができなかったので悔しかったです。13位という順位は、僕が在籍した4年間では見たことがないくらい低い順位だったので、本当に残念な気持ちです。
ー 新チームに期待することは
インカレ前の大会では、割と皆ベストが出ていましたが、今回はインカレに合わせることができなかったのかなと思います。また、リレーが1つも決勝に進出できなかったことが、今回の順位になってしまった原因だと思います。特に自由形に関してはまだまだ伸びしろが期待できる段階にあるので、そこの部分を強化してシードを獲ってもらいたいです。僕と一緒にA決勝に残ろうってやってきた石原諒太郎は、今回すごい悔しそうにしていたので、来年は悔しさを晴らしてくれるのではないかと特に期待しています。
ー 最後にお世話になった方々に一言お願いします
お世話になりましたの一言では言い切れないくらい、お世話になったと思います。自分1人ではここまで継続してやって来れなかったと思いますし、人としても成長させて頂いたので本当にありがとうございましたと伝えたいです。
山尾隼人
ー 2年目のインカレはどんな大会になりましたか
今年は自分が思い描いていた結果を全然出すことができませんでした。100mに関しては去年と同様に決勝に残ることができましたが、順位を落としてしまったり、200mは決勝に残ることができず、不完全燃焼で終わってしまいました。チーム目標についても、シード死守を掲げていましたが、自分は得点の面で全然貢献することができなかったので、悔しさが残る試合になりました。
ー 100mでは1年ぶりにベストを更新しましたが、その点は収穫になりましたか
試合前から調子がいいという自覚がありました。タイムとしてはもう少し速いタイムを狙っていましたが、ベストを出せたということは自分の中ですごい大きいことだったと思います。
ー 男子はシードを落としてしまいました
大会前に主務やマネージャーの方が、仮の総合順位を作って下さっていて、厳しい戦いになることは皆想定していたと思います。僕とか点数を取れる人がしっかり落とさず、点数を取らないといけない状況にありましたが、自分が取るべきところで取れなかったので悔しい気持ちがあります。
ー レースについて伺います。まず100mは予選でベストタイ記録でした
100mの予選は余裕を持って行くことができました。ベストタイ記録ということで自分が思った通りのレースができたので良かったと思います。
ー 決勝では0.1秒記録を縮めました
決勝のレースは、本当は1分00秒3を狙っていました。後半を上げるというプランで臨みましたが、前半の方をビビってしまって予選よりも遅い28秒7でターンしました。後半はプラン通り上がりましたが、前半の部分で周りの選手に置いていかれて、追いつかないで終わってしまいました。前半をビビってしまった点が反省点かなと思います。
ー 悔しい気持ちの方が大きいですか
そうですね。去年は5位という結果だったので、少しでも順位を上げていきたいと思っていました。全体のレベルが上がっている中でも、自分が順位を上げて得点を取りたいと思っていたので本当に悔しかったです。
ー 200mのレースは振り返っていかがですか
200mの日は、朝から腰が痛くなっていました。体の不安もあって、予選では余裕を持って泳いで、決勝に進みたいと思っていましたが思い描いていたレースをすることができませんでした。後半にかけて、決勝進出がちょっとヤバいなという意識があって、上げようとしましたが、体がキツくて上がりませんでした。
ー 決勝進出ラインがかなり高かったと思いますが
100mを見ていて、例年よりも決勝進出ラインが高くなるだろうと予想はしていたので、作戦ミスで決勝に進めなかったのは反省しています。
ー ライバルの存在は刺激になりますか
ライバルがいるからこそ、自分もここまで速くなれましたし、これからもライバルに勝つためにしっかり努力していきたいと思います。
ー 今後の課題としては
100mも200mも共通して、最近は前半の方を速く入ることができていません。前半から突っ込んで、後半は耐え切るというレースが自分の持ち味でもあるので、そこをより磨きをかけていきたいです。
ー 来年のインカレでは、個人としては何位を目指しますか
1位と言いたいところですが、やはりレベルが高いので、表彰台ということにしておきます。