東京六大学野球春季リーグ戦 第5日 明大1回戦
2020年8月14日(金)
神宮球場
熱戦となった早大戦から1日空き、迎えた今日の明大戦。相手先発・入江大生を攻めあぐね、なかなか得点できない苦しい展開に。一方の投手陣も、継投策で流れを渡さず、均衡した試合が続く。9回まで両チーム1得点で、試合は2戦連続となるタイブレークへ持ち込まれた。10回は互いに1点を挙げるも、11回は無得点と締まった展開となる。試合が動いたのは12回、海﨑雄太(文2)がリーグ初打席で殊勲打となる中前適時打を放ち、勝ち越しに成功する。するとその裏には外野手登録の野尻幸輝(営2)がマウンドへ。明大打線に得点を許さず守り勝ち、『血の法明戦』を制した。
試合結果
トータル試合結果
1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | 11 | 12 | 計 | H | E | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
法 大 | 0 | 0 | 1 | 0 | 0 | 1 | 0 | 0 | 0 | 1 | 0 | 1 | 3 | 9 | 1 |
明 大 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 1 | 0 | 0 | 1 | 0 | 0 | 2 | 8 | 0 |
(法大)三浦、水澤、鈴木、高田孝、落合、○山下輝、野尻—大柿
(明大)入江、高橋、●中山—篠原
[本塁打] なし
打撃成績
打順 | 位置 | 選手 | 打 | 安 | 点 | 打率 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | 11 | 12 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
1 | (9)7 | 宮﨑 | 5 | 1 | 0 | .300 | 中安 | 三振 | 三振 | 右飛 | 捕ギ | 遊飛 | ||||||
2 | (8)7 | 永廣 | 4 | 3 | 2 | .500 | 投ギ | 右安① | 遊ゴ | 遊安 | 遊安① | |||||||
91 | 野尻 | 1 | 0 | 0 | .000 | 中飛 | ||||||||||||
3 | (6)5 | 佐藤勇 | 3 | 0 | 0 | .200 | 三振 | 三ゴ | 遊ゴ | 投ギ | 一ギ | |||||||
4 | (7) | 村田 | 3 | 0 | 0 | .200 | 三振 | 二直 | 四球 | 死球 | 二ゴ | |||||||
1 | 山下輝 | 0 | 0 | 0 | — | |||||||||||||
9 | 地主 | 0 | 0 | 0 | — | |||||||||||||
5 | (5)353 | 中村迅 | 4 | 2 | 0 | .400 | 三振 | 右安 | 右安 | 一ゴ | 投ギ | |||||||
6 | (3) | 羽根 | 2 | 0 | 0 | .000 | 二ゴ | 遊ゴ | 死球 | |||||||||
1 | 鈴木 | 0 | 0 | 0 | .500 | |||||||||||||
H3 | 渡邉 | 1 | 1 | 0 | 1.000 | 左安 | ||||||||||||
R | 宮本 | 0 | 0 | 0 | — | |||||||||||||
1 | 落合 | 0 | 0 | 0 | — | |||||||||||||
8 | 片瀬 | 1 | 0 | 0 | .200 | 二直 | ||||||||||||
7 | (4)54 | 高田桐 | 4 | 0 | 0 | .222 | 三振 | 三振 | 一直 | 三ギ | 三ゴ | |||||||
8 | (2) | 大柿 | 4 | 0 | 1 | .182 | 左安 | 右飛 | 遊ゴ | 一飛 | 三ギ | |||||||
9 | (1) | 三浦 | 2 | 0 | 0 | .000 | 三振 | 三振 | ||||||||||
1 | 水澤 | 0 | 0 | 0 | — | |||||||||||||
4 | 齊藤 | 1 | 0 | 0 | .200 | 三振 | ||||||||||||
1 | 高田孝 | 0 | 0 | 0 | .000 | |||||||||||||
H | 神野 | 1 | 0 | 0 | .000 | 右飛 | ||||||||||||
6 | 海﨑 | 1 | 1 | 1 | 1.000 | 中安① | ||||||||||||
計 | 37 | 9 | 3 | .257 |
投手成績
回 | 球数 | 打者 | 安 | 振 | 球 | 責 | 防御率 | |
三浦 | 4 1/3 | 59 | 19 | 4 | 4 | 2 | 1 | 1.23 |
水澤 | 0 2/3 | 11 | 3 | 0 | 1 | 1 | 0 | 0.00 |
鈴木 | 2 | 20 | 8 | 2 | 1 | 0 | 0 | 0.00 |
高田孝 | 1 | 15 | 4 | 1 | 1 | 0 | 0 | 1.23 |
落合 | 1 | 17 | 3 | 0 | 2 | 0 | 0 | 13.50 |
山下輝 | 2 | 19 | 7 | 1 | 1 | 0 | 0 | 0.00 |
野尻 | 1 | 4 | 2 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0.00 |
計 | 12 | 145 | 46 | 8 | 10 | 3 | 1 | 1.45 |
ベンチ入りメンバー
10 | 中村迅(営4=常総学院) | 27 | 渡邉雄太(キャ4=いなべ総合) | 37 | 羽根龍二(社4=日大鶴ヶ丘) |
1 | 鈴木昭汰(キャ4=常総学院) | 32 | 大柿廉太郎(法2=健大高崎) | 2 | 永廣知紀(営4=大阪桐蔭) |
13 | 高田孝一(法4=平塚学園) | 3 | 宮本隆寛(人4=健大高崎) | 7 | 村田雄大(人4=横浜) |
14 | 水澤天(営4=広島商) | 4 | 佐藤勇基(法4=中京大中京) | 8 | 片瀬優冶(人4=法政二) |
15 | 落合竜杜(法4=常葉大菊川) | 5 | 小谷敦己(文4=倉敷商) | 25 | 野尻幸輝(営2=木更津総合) |
18 | 扇谷莉(営2=東邦) | 24 | 齊藤大輝(人2=横浜) | 28 | 宮﨑秀太(営2=天理) |
21 | 山下輝(営3=木更津総合) | 31 | 海﨑雄太(文2=埼玉栄) | 29 | 神野太樹(キャ3=天理) |
26 | 三浦銀二(キャ3=福岡大大濠) | 33 | 地主聡太(営4=鎌倉学園) | ||
22 | 後藤克基(法3=滋賀学園) | 36 | 高田桐利(営2=広陵) |
戦評
前日に慶大が明大に勝ってリーグ戦通算3勝とし、法大が優勝を狙うには今日の試合は絶対に落としたくない。そんな中で迎えた第3戦。今季初先発の三浦銀二(キャ3)、そしてその後を受けた法大ブルペン陣と入江大生の投手戦が繰り広げられ、今季2度目のタイブレークに突入する熱戦となった。
今日の法大打線は2回までに4三振と入江の好投に苦しめられるが、3回に大柿廉太郎(法2)の内野安打と入江の暴投で得点機を作ると、永廣知紀(営4)の右前適時打で先制する。
先制打を放った永廣
今季初先発となった三浦は初回から球数少なく相手打線を封じ込め、3回まで25球1安打無失点と順調な立ち上がりを見せる。しかし4回の先頭打者に左前安打を許し、5番打者も四球で歩かせ2死一、二塁のピンチを作ると、6番・西川黎に適時二塁打を許し、同点とされる。
2季ぶりの先発登板となった三浦
その後は5回から9回まで水澤天(営4)、鈴木昭汰(キャ4)、高田孝一(法4)、落合竜杜(法4)の細かな継投で相手を無失点に抑える。一方で法大打線も入江相手に3回の得点以降、何度も得点機を作るも決定打に欠け、9回7安打1失点10三振と抑えられ、1対1の同点で今季2度目のタイブレークに突入する。
10回表、先頭の宮﨑秀太(営2)が犠打をしっかりと決めると1死二、三塁で永廣が遊撃への適時内野安打を放ち、ついに法大が勝ち越し点を奪う。このまま逃げ切りたい法大はタイブレークに突入した前回の早大戦で、相手を無失点に抑えた山下輝(営3)を投入する。しかし1死から公家響に三遊間を破る左前適時打を許し、再び同点に追いつかれる。
11回は両チーム無得点に終わり、迎えた12回表、先頭の大柿が犠打を決め、勝ち越しの機会を作ると、ここでリーグ戦初打席となる海﨑雄太(文2)に打席が回る。フルカウントからの6球目、打ち上がった打球が前進守備の内野と外野の間に落ちる中前適時打となり、この試合3度目となる勝ち越しに成功する。
海﨑はリーグ初打席で決勝打と仕事を果たした
今度こそ逃げ切りたい法大は途中から外野の守備についていた野尻幸輝(営2)をマウンドに上げる。リーグ戦初登板となった野尻だったが、先頭打者が初球、犠打を試みたところを好守備で併殺に抑える。そしてその後の打者もしっかりと一飛に抑え、3時間半にも及ぶ熱戦に終止符を打った。
12回裏を0で抑え、喜ぶ法大ナイン
これで慶大と並んでリーグ戦通算3勝。同率首位の座を維持した。明後日に控えている、優勝をかけた天王山・慶大戦に挑む最高の準備は整った。あとはもう、目の前に見えてきた『優勝』の2文字を全力で掴み取りにいく。
(吉本侑樹)
クローズアップ:野尻幸輝
12回裏、神宮球場にいた2000人弱の観客が場内アナウンスを聞き、どよめいた。タイブレーク制により無死一、二塁となった場面で、外野手登録の野尻幸輝(営2)がマウンドへ上がったのだ。
普通の選手であれば緊張してもおかしくはない。しかし、野尻は「楽しかったし、マウンドに立てた喜びはすごい」とあくまでも冷静で、この緊迫した状況を楽しんでいた。『楽しむ』気持ちを持って迎えたリーグ初登板、初球に相手打者が犠打の構えを見せると、すかさず猛チャージをかけた。投手顔負けのグラブさばきで三塁へ送球し、三塁手・佐藤勇基(法4)が一塁へ転送。お手本のような犠打処理で併殺を完成させると、続く1番・藤江康太には内角高めに143㌔の直球を投じ、一飛に抑え、試合終了。大事な場面で登板した『2年生外野手』が見事にチームの窮地を救ったのだった。
野尻の公式戦での登板は、U18日本代表として戦った香港戦以来、約2年ぶり。木更津総合高時代は2年秋以降、急造ではあったが投手として頭角を現し、3年夏には県大会で胴上げ投手となった。U18日本代表に選出され、野尻と同じく岐阜出身の根尾昂(中日)と並んで、『二刀流の野尻』として記憶しているファンも多いことだろう。
その根尾は、野尻にとって幼い頃からしのぎを削ってきた良きライバルである。法大入学時には「素直にすごいと思う。大学4年間でしっかり頑張って必ず追いつきたい」と対抗心を燃やしていた。今日の試合後にも「根尾は自分の中で常にライバルだと思っている。」と改めて語り、良い刺激になっているようだ。『プロ野球』と『六大学』。違う舞台ではあるが、お互いに切磋琢磨(せっさたくま)している。おそらく、今日の野尻の活躍は、同郷出身である根尾の耳にも入っているに違いない。
「『ONETEAM』で戦い抜く」。そうコメントした野尻の、およそ2年生とは思えない堂々とした立ち振る舞いには毎度驚かされる。スタートラインに立ったばかりだが、良きライバルにも恵まれ、野尻は成長を続けていく。背番号『25』がチームの顔となる日も近い。
(加瀬航大)
選手インタビュー
中村迅 主将
ー今日の試合を振り返って
ガチナイス!
ー2安打を放ちましたが打撃の調子は
まあまあいい感じです。
ータイブレークにもつれ込みましたが、その時のチームの雰囲気は
みんな落ち着いていました。
ー主将としてどのような声掛けを試合中にしていましたか
「今までやってきたことをやるだけだ」と声をかけました。
ー3連勝と流れに乗っています
チーム全員が相手に向かっていけているので、いい形でここまで来ていると思います。
ー慶大戦に向けてひと言お願いします
チーム一丸となって、絶対に勝ちます!
三浦銀二 投手
ー今日の試合を振り返って
2試合連続のタイブレークとなりましたが、勝ててよかったです。
ー久しぶりの先発登板でしたがどのような意気込みで
とても緊張しました。4回しか投げられなかったので、次投げるときはしっかり投げられるように準備したいと思います。
ー先発と中継ぎでは準備に関してどのようなところが違うのか
前日の調整も違いますし、何より初回はリリーフとの時と空気が違うので、流れをこっちに持ってくるための準備が必要です。
ー本日の自身のコンディションは
良くはなかったですが、自分なりにある程度投げられたとは思います。ただ、もっとイニングを投げて後ろを休ませてあげたかったです。
ー2試合連続のタイブレークとなりましたが、その時のベンチの雰囲気は
雰囲気はとても良く、2回目ということもあり良い意味で慣れていたので良かったと思います。
ー次の慶大戦はリーグ優勝をするために絶対負けられない戦いとなるわけですが、慶大打線の印象は
一人一人気の抜けない選手が多いので、これまで以上に神経を使って投げないと(慶大打線が)甘いところは逃さない印象です。
ー次の慶大戦に向けての意気込みをお願いします
自分が与えられたところでしっかりと結果を残して、チームを勝利に導けるように頑張ります!
海﨑雄太 内野手
ー今日の試合を振り返って
緊迫した試合でしたが、勝ちをものにできてよかったです。
ー12回表、打席に立った際の心境は
前の大柿(廉太郎、法2)がバントでチャンスを広げてくれたり、ベンチからの大きな声も聞こえていたのでなんとしてでも打とうと思っていました。
ー勝ち越しの適時打を放った感触は
決していい当たりではなかったですが、落ちてくれてよかったです。
ーベンチの反応はいかがでしたか
自分のことのように喜んでくれました。
ー今後に向けてひと言お願いします
また次に切り替えて、次の試合に向けていい準備をしたいと思います。応援よろしくお願いします。
野尻幸輝 外野手
ー緊迫した試合でしたが、どのような思いでベンチから見ていたか
自分は代打であると思っていたので、いつでも代打でいける準備をしていました。
ー10回から試合に出場しました
ライトの守備からになりましたが、初めてリーグ戦で守備についたので、観客もいてとてもわくわくしましたし、楽しかったです。
ー12回表、好機で打席に入りましたが、その時には投手起用は伝えられていましたか
その時にはもう伝えられていたので、自分で打って、自分で抑えようと思っていました。
ー12回裏、公式戦としては高校3年生以来2年ぶりとなるマウンドに上がりました
やっぱり、ピッチャーもすごく楽しくて、緊迫した場面でしたが、マウンドに立てた喜びはすごかったです。
ーこれまで投手としての練習はしていた
(青木久典)監督さんから前々から「準備しておいてくれ」と言われていたので、自主練でブルペンに入ったり、志願してシート打撃などで登板していました。
ータイブレークを抑えて見事勝利しました
リーグ戦で、初めて自分がチームの勝利に貢献できた瞬間だったので、とてもうれしかったです。
ー同郷の同級生、根尾昂(中日)選手がプロ野球の舞台で活躍しています
根尾は自分の中では常にライバルだと思っています。自分も同じ土俵に立って、根尾に勝てるように今後も努力を積み重ねていきます。
ー今後の目標を教えてください
個人としては、チャンスでの勝負強さを期待されているので、チャンスでの一本を打ちます。チームとしては全勝優勝です。
ー慶大戦に向けての意気込みをお願いします
去年の秋の苦い思いを晴らせるように、『ONETEAM』で戦い抜きます。