第62回 日本選手権 (25m) 水泳競技大会
2020年10月17日(土)・18日(日)
東京辰巳国際水泳場
日本学生選手権(インカレ)で男女共に悲願のシード奪還を果たした法大水泳部。4年生たちが残してくれた功績を引き継ぎ、新たな世代が「シード死守」に向けて動き出した。社会人の強豪が集った今大会で、新たにチームを牽引していくことになった宮本一平(人3)が400m個人メドレーで銀メダルを獲得。また、ルーキーの山尾隼人(経1)が200m平泳ぎで自己ベストを更新して決勝進出を果たした。女子では、柴田夏海(スポ3)が200m自由形と400m自由形の2種目で入賞。関口真穂(スポ2)と小川真菜(経3)の2人も200m背泳ぎでW入賞を果たすなど各学年が揃って活躍し、チームとして幸先のよいスタートを切った。
試合結果
予選結果(女子)
種目 | 順位 | 選手名 | タイム | 備考 |
---|---|---|---|---|
200m自由形 | 9位 | 柴田 夏海 (スポ3) | 1分58秒79 | 決勝進出 |
17位 | 柏崎 清花 (営3) | 2分01秒36 | ||
400m自由形 | 6位 | 柴田 夏海 | 4分10秒03 | 決勝進出 |
16位 | 柏崎 清花 | 4分16秒97 | ||
50mバタフライ | 13位 | 山川 唯巴(法2) | 27秒14 | |
200mバタフライ | 13位 | 船木 里菜 (経3) | 2分12秒25 | |
200m背泳ぎ | 3位 | 関口 真穂 (スポ2) | 2分08秒18 | 決勝進出 |
7位 | 小川 真菜 (経3) | 2分09秒57 | 決勝進出 | |
50m平泳ぎ | 11位 | 奈須田 ゆうか (社3) | 31秒68 | |
100m平泳ぎ | 21位 | 奈須田 ゆうか | 1分09秒00 |
予選結果(男子)
種目 | 順位 | 選手名 | タイム | 備考 |
---|---|---|---|---|
50mバタフライ | 10位 | 赤羽根 康太 (人4) | 23秒57 | |
100mバタフライ | 13位 | 赤羽根 康太 | 51秒55 | |
100m平泳ぎ | 13位 | 山尾 隼人(経1) | 58秒41 | |
200m平泳ぎ | 4位 | 山尾 隼人 | 2分05秒70 | 決勝進出・自己ベスト |
200m個人メドレー | 2位 | 宮本 一平 (人3) | 1分55秒73 | 決勝進出・自己ベスト |
400m個人メドレー | 4位 | 宮本 一平 | 4分09秒38 | 決勝進出 |
決勝結果
種目 | 順位 | 選手名 | タイム | 備考 |
---|---|---|---|---|
男子1500m自由形 | 13位 | 小野 吏久人 (経2) | 15分13秒92 | タイムレース決勝 |
女子200m自由形 | 6位 | 柴田 夏海 | 1分58秒03 | 自己ベスト |
女子400m自由形 | 4位 | 柴田 夏海 | 4分05秒57 | |
女子200m背泳ぎ | 4位 | 関口 真穂 | 2分08秒09 | |
5位 | 小川 真菜 | 2分09秒25 | ||
男子200m平泳ぎ | 7位 | 山尾 隼人 | 2分05秒95 | |
男子200m個人メドレー | 4位 | 宮本 一平 | 1分55秒36 | 自己ベスト |
男子400m個人メドレー | 2位 | 宮本 一平 | 4分04秒68 | 自己ベスト |
戦評
熱戦が繰り広げられたインカレから2週間。宮本一平主将が率いる新チームが初陣を切った。
大会初日、チームを牽引しながら東京五輪代表入りを目指す宮本が400m個人メドレーに挑んだ。1年延期された五輪代表選考会に向けた一つのステップとして位置付け臨んだ今大会。決勝の舞台では代表入りを争うライバル萩野公介(ブリヂストン)との対決に火花を散らした。序盤から萩野が前に飛び出す形になったが、宮本も自己ベストを出した時の通過タイムを上回るペースで食い下がる。得意とする平泳ぎで一気に萩野との差を縮めたものの猛烈な追い上げは及ばず2位でフィニッシュ。とはいえ自己記録を約1秒更新する結果に「ベストタイムが出せたのですごく嬉しい」と確かな手応えを口にした。今年は2月に行われたコナミオープンで萩野との直接対決で勝利したこともあり五輪代表入りが有力視されていた。しかし、代表選考会が延期となったことを受けて水泳に対して気持ちが乗らない期間があったという。それでも辛抱強く練習を続けたことで手にした好成績。ゴール後に見せた渾身のガッツポーズはそんな逆境を乗り越えた「宮本の強さ」を物語っていた。
2日目に躍進を遂げたのは、高校3年次のインターハイ覇者として脚光を浴び、鳴り物入りで法大に入学したスーパールーキー山尾隼人。初日の100m平泳ぎでは惜しくも決勝進出を逃したが、心を入れ替えて臨んだ200m平泳ぎのレースでは予選で大幅に自己ベストを更新し目標として掲げていた決勝に駒を進めた。決勝では「世界レベル」のレースを体験。山尾は隣のコースを泳いだ元世界記録保持者の渡辺一平(TOYOTA)の泳ぎに圧倒され「全ての面でレベルが違う」と振り返った。また「決勝でタイムを上げることができなかった」と悔しさも滲ませたが、山尾の言葉からはさらなる記録更新への意欲がうかがえた。今後は、大学1年目の自身最大の目標としている12月の長水路の日本選手権に向けて練習をしていく。「長水路でも決勝に残りたい」とひたすら貪欲に高みを目指す山尾。12月の日本選手権でどんな泳ぎを披露するのか注目である。
女子では柴田夏海が初日の200m自由形に続いて400m自由形でも入賞を果たした。「レースに出る度に試合の感覚は取り戻せている」と語るように、200m自由形では自己ベストをマーク。コロナの影響で練習が思うように積めなかった中でも着実に調子を取り戻しており12月の日本選手権では自己ベストの更新とメダル獲得を狙う。また、「結果を出してチームを引っ張っていけるような先輩になりたい」と述べ、柴田は常に挑戦し続ける姿を後輩たちに見せながら女子チームを牽引していく。
インカレが終わってから休む間もなく新たな目標に向かって動き出した法大水泳部。力のある宮本、柏崎、柴田ら3年生はいよいよ最高学年となった。そんなエースたちに刺激を受けて着実に力を伸ばしているHUSTの活躍に今年も目が離せない。
(根本 成)
選手インタビュー
※取材は10月26日にオンラインにて行いました。
宮本 一平
ー 今回の試合はどのような位置付けで出場されたのですか
インカレが終わったばかりということもあって、日本短水路選手権は照準を合わせていた訳ではなく、12月にある日本選手権と4月にある五輪代表選考会に向けた位置付けで出場しました。短水路ということもあり、気を楽にして試合に臨みましたが、短水路の日本選手権だったので勝負するという気持ちはありました。
ー 特別狙っていた訳ではなかったのですね
そうですね。インカレが終わってから2、3日の間はしっかりオフをとって、学校練習組と一緒に新チームとして動き出した感じですね。
ー 2種目で自己ベスト更新となりましたが思い描いていたレースはできましたか
400mの方では萩野さんや他の力のある選手がいた中で自分の良いパフォーマンスは出せたのかなと思います。
ー タイム的に納得していますか
そうですね、ベストタイムが出せたのですごく嬉しいですね。ただベストを出しながらも400mでは2番、200mではメダルを取れなかったのでもっともっと上を目指さなければいけないなと思えた試合でした。
ー 社会人選手たちと一緒にレースをして感じたことは
インカレは自分たちと同じ世代の中でのレースでしたが、日本短水路選手権は学生よりも力を持った選手が出場してきました。一緒に泳ぐ中で全然経験の差が違うと感じはしましたが、今一番目標としている4月の五輪代表選考会でそういった代表の経験がある選手たちよりも速く泳いで代表を勝ち取りたいと強く思いました。
ー 狙っていた五輪が延期となりましたが、今年これまでの試合や練習をどのように評価していますか
4月の日本選手権が無くなったところで気持ちの面で落ち込んでしまって、水泳に対して気持ちがなかなか乗らないっていう状態が3ヶ月間くらい続いていました。泳いではいましたがそんなに練習に身が入らなかったですね。その時はまだインカレも開催されるのか分からない状況だったので… でもインカレが開催されると分かって、7月頃からしっかり気持ちを切り替えて練習に取り組んでいました。結果としてはインカレでは2種目で2番ということで去年の悔しい結果は果たせなくて、また今回の日本短水路選手権でもベストは出ましたが優勝はできなかったのでやっぱり練習あるのみだということを感じました。
ー 目標があることが大事なんですね
目標を一つ置くことで、その目標をどうすれば達成できるのか考えて練習していくことができます。照準を合わせた試合に向けてひとつひと目標をクリアしながらやっていくことで良い結果に繋がると考えています。インカレや日本短水路選手権で好成績を残すことができたのも五輪という高い目標があるからだと思います。
ー 選考会に向けて準備していた時期は絶好調でしたか
そうですね。2月にあったコナミオープンの200m個人メドレーで萩野さんに勝ったということもあって、すごい気持ちの面で舞い上がっていて、本当にこれは五輪に行けるなという気持ちが自分の中でもコーチの中でもありました。だからこそ五輪が延期されてしまったことは精神的に苦しかったです。
ー 五輪は200mと400mどちらで狙っていますか
今は400mの方で目指しているところです。400mで狙いながら200mでもベストを更新していって結果的に両種目で出場できればなと思っています。
ー ここから再び選考会に向けて準備が始まるのですね
これから冬の時期なのでしっかり追い込んで、来年は今年以上の結果を出せていければなと思っています。
ー 水泳部の主将にもなりましたが、心がけていきたいことは
まずは僕自身が結果を出し続けることで、刺激となって他のチームメイトも上がっていくのかなと考えています。今までクラブ練の選手が主将を務めるということはなくて、これまで通り歴代の主将と同じような役割を果たすことはできないとは思うのですが、僕は僕なりに法政のチームを引っ張って、チームと共にもっともっと僕自身も成長していけたらいいなと思っています。今年は男女シード権を奪還することができたので、この勢いで来年はシードを死守するのはもちろん、一つでも上の順位に上がれるように学校練習組の選手と力を合わせて頑張っていきたいです。
ー チームの目標は
チームとしてインカレで「シード死守」を目指してくということで、「協心戮力」という言葉をスローガンとしています。この言葉は心と力を合わせて、共に協力しながら上を目指していこうという意味なので、僕一人だけではなくチームみんなが一緒に力を伸ばしていけるようにこの1年間主将として頑張っていきたいです。これからもたくさんの応援をよろしくお願いします。
宮本(写真・左)は来年の東京五輪代表入りを見据えている
山尾 隼人
ー 今大会はどのような位置付けで出場しましたか
短水路の日本選手権ということで日本のトップ選手と泳げるせっかくの機会だったので、まずは決勝に残るということを目標にしていました。決勝に残るために予選から全力を出すということ意識して 、また1日で予選と決勝の2レースが行われることになっていたので2回ともしっかり力を出し切ることを目標にして試合に臨みました。
ー 山尾選手の中では重要視していた大会だったのですね
はい。他の大学はインカレが終わってからシーズンオフをとっている選手が多かったのですが、インカレが終わってからも次があるということで気を抜かずにこの試合に向けて練習していました。
ー予選でマークした自己ベストについて
予選で自己ベストを出せたことは良かったのですが決勝の方ではタイムを少し落としてしまったのでそこは少し残念に感じています。
ー インカレでも2種目で自己ベストを更新されましたが今は好調ですか
ずっとコロナの影響で試合が無くて、8月末にようやく試合が開催されてレースに出場したのですが、そこで思うような結果が出ませんでした。その試合でこれまで自分に甘えていた部分があったことに気づかされて、インカレに向けては1ヶ月ちょっとしか残されていませんでしたが、気持ちを切り替えて本気で練習に取り組んだことで良い結果が出せたのかなと思います。
ー 練習がしっかりできるようになったのは最近のことなんですね
そうですね。9月に入ってから気持ちをしっかり切り替えて、ここでやらないとインカレでも結果が出せないということを感じていたので。一回一回の練習を集中してやるようになって良い練習が積めているのは最近になってからです。
ー 決勝のレースでは日本のトップ選手と泳ぎました
決勝のレースでは元世界記録保持者の渡辺一平選手の隣のレーンで泳がせてもらったのですが、渡辺選手はもう世界で戦っている選手ということもあってスタートの飛び出しから全然違いました。持久力の面でも後半すごく引き離されてしまったので、世界のトップ選手と自分の今の実力とではまだこれだけの差があるのだと実感できた試合でした。
ー 山尾選手でも全然違うと感じるのですね
はい、全然違いましたね。スタートの浮き上がりのところだけで体半分くらい差がついていました。僕は前半型なので前半から飛ばして泳いだのですが、渡辺選手は余力を持ちながら僕より速いタイムで前半をターンして、なおかつ後半にかけてどんどんピッチを上げていたのでレース終盤も離されていくばかりで、全ての面でレベルが違うと感じました。
ー 今年これまでを振り返って
大学1年目は、4月に開催される予定だった長水路の日本選手権で結果を出すということを第一の目標として掲げてずっと練習してきました。コロナの影響で12月に延期されてしまったので今はそこに向けてやっています。インカレに関しては1年目から表彰台に上がるということを実は目標としていたのですが、2種目で5番ということで目標を達成することはできませんでした。
ー 今後長水路で目指していくタイムは
100mは59秒台、200mは2分09秒台を目標にしています。
ー 12月の日本選手権の目標は
今回短水路の日本選手権で決勝に残れたので、長水路でも決勝に残りたいと思います。そして今回できなかった決勝でタイムを上げるということを目指していきたいです。短水路のレースでは日本のトップ選手と自分がどれだけ差があるのか知ることができたので、差を埋めていくために今回の経験を生かして練習していきたいです。
柴田 夏海
ー 今回のレースはどのような目標で臨みましたか
この大会の2週間前に行われたインカレでは、2種目で決勝に進出することができましたが、目標としていた順位やタイムには届かなかったので、今大会はメダルを獲得するということと自己ベストを更新するということを目標としていました。
ー インカレが終わってからどのような調整をしましたか
期間が短かったこともあって、できることは限られていました。私は200mと400mを専門にしているので持久力を落とさないようにするということと、短水路ということでスピードも求められるのでスピードを上げることを意識した練習を多く取り入れて試合に臨みました。
ー レースで意識したことは
私はターンを苦手としているので、短水路ではターンの回数が多いのでそこでタイムロスをしないように注意して泳いでました。
ー 結果を振り返って
自分の目標としていたところには届かなかったのですが2種目ともに決勝に残ることができて、200m自由形ではベストを更新できたのは良かったと思います。
ー 200m自由形で自己ベストを出せた要因は
インカレが終わってからの2週間の中で、泳ぎを改善したりだとか、スピードアップを図る練習を多くいれていたということが今回のベスト更新に繋がったのかなと思います。
ー 今の泳ぎの感覚は
8月にあった大会では全然タイムも出ず、そこからインカレに向けて調整していって、インカレであったり今回の試合であったりとレースに出る度に試合の感覚は取り戻せています。
ー コロナの影響で泳げなかった期間はあったのですか
そうですね、やはり自粛期間は泳げなかったのでその期間は家で筋トレを中心にやっていました。
ー 今課題としていることは
持久力もそうですしスピード持久力系の練習が今の自分には足りてないのかなと思っているのでそこの部分をこれから強化していきたいです。
ー 次のレースの予定は
次は12月にある日本選手権になると思うので、そこでは自己ベストを更新してメダルを獲得することを目標にしています。そのレースでしっかり結果を出して来年4月の五輪選考会に繋げることができればいいなと考えています。
ー 新チームとなりましたが、どのようにチームに貢献していきたいですか
私は学校練習ではないので、しっかり結果を出してチームを引っ張っていけるような先輩になりたいと思っています。またチームとして一番大きな目標としているインカレでは「シード死守」を果たせるように今年以上の結果を出して貢献したいです。
柴田は2種目で入賞を果たした
(取材:根本 成)