第96回日本選手権
2020年12月3日〜6日
東京アクアティクスセンター
大会後半戦も複数の選手が決勝に進んだ。その中で獅子奮迅の活躍を見せたのがルーキーの山尾隼人(経1)。200m平泳ぎで予選から自己ベストを更新すると決勝でもその記録をさらに縮め5位入賞を果たした。そのほか、赤羽根康太(人4)や関口真穂(スポ2)といった今年好調だった選手も決勝に進出する活躍を見せた。
【初日・2日目の記事】 第96回日本選手権 (初日・2日目)柏崎清花が400m個人メドレーで2年連続銅メダル!!「オリンピックは死ぬ気で勝ち取りたい」 宮本一平は7位 “勝負強さ” 磨き4月の大一番へ向かう
試合結果
予選結果(女子)
種目 | 順位 | 選手名 | タイム | 備考 |
---|---|---|---|---|
200m背泳ぎ | 8位 | 関口真穂(スポ2) | 2分13秒95 | 決勝進出 |
16位 | 小川真菜(経3) | 2分16秒52 | ||
200mバタフライ | 20位 | 船木里菜(経3) | 2分15秒37 | |
200m個人メドレー | 8位 | 柏崎清花(営3) | 2分16秒10 | 決勝進出 |
予選結果(男子)
種目 | 順位 | 選手名 | タイム | 備考 |
---|---|---|---|---|
200m平泳ぎ | 4位 | 山尾隼人(経1) | 2分10秒91 | 自己新・決勝進出 |
12位 | 宮本一平 (人3) | 2分12秒66 | ||
100mバタフライ | 6位 | 赤羽根康太(人4) | 52秒39 | 決勝進出 |
200m個人メドレー | 4位 | 宮本一平 | 2分00秒31 | 決勝進出 |
決勝結果
種目 | 順位 | 選手名 | タイム | 備考 |
---|---|---|---|---|
男子800m自由形(タイム決勝) | 16位 | 小野吏久人 (経2) | 8分12秒27 | |
男子200m平泳ぎ | 5位 | 山尾隼人 | 2分10秒65 | 自己新 |
男子100mバタフライ | 6位 | 赤羽根康太 | 52秒33 | |
男子200m個人メドレー | 7位 | 宮本一平 | 2分01秒60 | |
女子200m背泳ぎ | 8位 | 関口真穂 | 2分16秒07 | |
女子200m個人メドレー | 8位 | 柏崎清花 | 2分18秒57 |
Pick Up
山尾隼人
群雄割拠の男子200m平泳ぎで自身初の “決勝” に進出し、5位入賞を果たした山尾隼人。大舞台で予選、決勝と立て続けに自己ベストを塗り替え、自らが課した目標は達成したかのように思われた。しかし山尾はすでに “その先” の領域を見据えていた。
今大会、初日の100m平泳ぎにも出場していた山尾だが、予選で11位に終わり決勝進出は叶わなかった。「どちらかというと持久力の強化の方をメインにやっていたのでスピード練習が少しおろそかになっていた」と100mの敗因を語る。「100mで予選落ちしてしまったことはショックだった」と話したが、200m平泳ぎに向け、もう一度気持ちを入れ直した。中2日で泳ぎの部分もきっちりと修正し、万全の準備で最終日に臨んだ。
迎えた200m平泳ぎ予選。「前半から積極的に行くと決めていた」という言葉通り最初の100mを1分02秒台で通過した。「自己ベストを出したときは前半の100mが1分03秒台だった」と言うが、ハイペースで突っ込むことに臆することはなかった。「中盤落とさず150mまで頑張って、ラスト50mはなんとか耐える」というレースプランでこれまでの自分の殻を破る素晴らしい泳ぎを披露。「泳いでいる感覚では2分11秒台かなと思っていたのですが、実際は10秒台ということで感覚よりもタイムが速かった」と予選の泳ぎを振り返った。「もう一回しっかりタイムを上げる」。予選が終わった後に10月の日本短水路選手権の苦い経験が頭をよぎった。「決勝で更にタイムを上げないと勝負にならない」。予選での記録には満足せず、もう一度決勝に向けて気を引き締め直した。
山尾にとって初めての決勝は「緊張してしまった」と話す。それでも前半から積極果敢に突っ込み、予選よりも更にタイムを縮めてみせた。『決勝進出』と『決勝でタイムを上げる』という2つの目標を達成した山尾だったがその視線は “1歩先” を見つめていた。「決勝を泳いで感じたのはトップ選手は泳ぎのレベルや技術の面で一段階自分よりも上にいるということ」。山尾が目指しているのは “世界のトップ” だった。同レースで優勝争いを演じた渡辺一平(TOYOTA)と佐藤翔馬は(東京SC)はともに来年の東京五輪でメダル獲得が期待されている選手たちである。山尾にはそんなトップスイマーたちと「勝負する」という大きな目標がある。「五輪代表選考会で上位争いに絡む」ときっぱりと言ってのける逸材は、4月にどんな快泳を見せてくれるだろうか。
(記事:根本 成)
関口真穂
「自分の泳ぎができませんでした」。200m背泳ぎで目標としていた決勝進出を果たした関口だったが喜びと悔しさが入り混じる結果となった。
今大会に向けて関口は、『後半勝負』のレース展開を意識して「前半の100mと後半の100mのタイム差があまりでないようにするために持久系の練習を多くしてきた」と話す。予選ではプラン通りにラスト50mで追い上げを見せ、目標であった決勝に駒を進めた。レースプランが上手くはまったことに加え、タイムも2分13秒台をマークし「予選の泳ぎに関しては結構良かった」と振り返る。確かな手応えを得ていた関口だったが、決勝では後半に見せ場を作ることが出来ずにゴールした。
10月に行われた日本学生選手権と日本短水路選手権においても決勝進出を果たした関口だが、昨年は目立った成績を残すことができず、「精神的に落ち込んでいた」と話す。今年は春から夏にかけて大会が開催されない日々が続いた。その期間に「自分の泳ぎをもう一度見つめて、いい泳ぎに改善することに取り組むことができた」と復活の要因を語る。
雌伏の時期を経て、再び成長曲線を描いている関口。今大会の結果を受けて「決勝で失敗してしまった分を取り返せるようにこれからまた頑張りたい」と決意を新たにした。
(記事:根本)
インタビュー
山尾隼人
ー どのような目標で大会に臨んだのか
前回取材して頂いた短水路選手権の時は、200m平泳ぎで決勝に残ることはできましたが、決勝でタイムを落としてしまいました。また100mの方では決勝に残ることができなかったので、今回の日本選手権では100mと200mの両方で決勝に残ることと、決勝でタイムを上げるということを目標に試合に臨みました。
ー この大会に向けて強化してきたことは
短水路選手権を経てレース前半での出遅れが課題として残ったので、前半から積極的に行くレースができるように、また後半の部分でもしっかりラストを落とさないで競り勝てるように持久的な面も強化してきました。
ー 練習の段階では自己ベストが出る手応えはあったのか
自己ベストは出せると思っていました。でも本当はもう少し良いタイムが出るのではないかなと考えていました。
ー 初日の100mを振り返って
100mはアップの段階で泳ぎが少し200m寄りになっていたのを感じていました。それで100mの予選では上手く泳ぐことができなくてベストも出せなくて予選落ちしてしまったので反省する部分があります。
ー 200m寄りの練習をしていたのか
そうですね、200mの方を中心に練習をしていました。どちらかというと持久力の強化の方をメインにやっていたのでスピード練習が少しおろそかになっていた部分があります。練習の内容からしても100mの方はこんなもので仕方ないかなとも思いました。
ー 100mが終わってから泳ぎの修正や気持ちの切り替えはできたのか
100mで予選落ちしてしまったことはショックだったのですが、100mでダメだった分200mでは絶対にやってやるという気持ちに切り替えることができました。泳ぎの部分もコーチと話し合いながら200m寄りの泳ぎに修正して入りの確認であったり、中盤のペースの確認をして戦う準備をしました。
ー 200mのレースプランは
200m平泳ぎで自己ベストを出したときは前半の100mが1分03秒台だったのですが、今回は前半から積極的に行くと決めていました。実際レースでは前半を1分02秒台で入ることができました。また、これまで僕は100mから150mの所でペースを落として、またラストで上げるというレースをしていたのですが、今回は中盤落とさず150mまで頑張って、ラスト50mはなんとか耐えるということを意識してレースをしていました。
ー 200mは泳ぎの感覚は良かったのか
そうですね、予選は泳いでる感覚では2分11秒台かなと思っていたのですが、実際は10秒台ということで感覚よりもタイムが速かったので泳ぎの感覚としては100mのときよりも良かったのかなと思います。
ー 決勝の泳ぎを振り返って
予選が終わった段階で決勝は、10秒2あたりの記録が出せると思っていたのですが、雰囲気に呑まれたというか。長水路の日本選手権で決勝に残ることは初めてで、インカレや日本短水路選手権とはまた違った雰囲気だったこともあり僕自身緊張してしまった部分があり、思ってたタイムが出せなかったのかなと感じています。
ー 予選の時はまだ余裕があったのか
全力では泳ぎましたが気持ちの面で少し余裕を持ちながら、予選でいっぱいいっぱいにならようにコントロールしていました。
ー 決勝でタイムを上げられた要因は
予選を泳ぎ終わった後で、すごく調子が良いと感じていました。前回の日本短水路選手権では決勝でタイムを落としていたこともあり、もう一回しっかりタイムを上げるという強い気持ちを持って決勝に臨めたことが大きいのかなと思います。
ー 今回の日本選手権が1年目の最大の目標ということでした
4月に開催されていたならば、決勝に残るということを目標にしていたのでその部分に関しては達成はできたのかなと思います。ただ、僕自身が強くなっていく中で目指す位置は更に高くなっていて、今の僕が目標としている所には今回は達成できなかったのかなと思います。今回達成できなかった目標は、来年4月の五輪代表選考会にお預けという形になりました。
ー 高校時代と比べて成長した点
高校時代はシニアの選手と戦う機会があまりなかったのですが、大学生になってトップ選手と戦えるようになって感じたのは予選と決勝の2本しっかり泳がなくてはならないということです。高校の時は予選はある程度流して、決勝だけ頑張るというような形で全力で泳ぐのは1本だけでした。ですが、大学生やシニアの大会では予選から全力で泳がないと決勝に残ることができないですし、決勝で更にタイムを上げないと勝負にならないので今回のようにしっかり予選と決勝の2本揃えることができるようになったことは成長した部分だと感じています。
ー 今後の課題は
日本選手権の決勝を泳いで感じたのはトップ選手は泳ぎのレベルや技術の面で一段階自分よりも上にいるということです。何か一つ見直したら勝てるということではなくて、全ての面において一段階ずつレベルアップさせることが必要だと実感しました。泳ぎや持久力、スピード、スタートといった全てのレベルを上げていかないとトップ選手と勝負することはできないと思います。
ー 大学2年目の目標は
まず4月に五輪代表選考会が行われるので、そこで上位争いに絡むということを目標にしています。また五輪の強化指定選手となれるタイムがあるのですがそれを突破することも目標としてあります。
ー これからの練習の意気込み
冬季は4月の選考会に向けて追い込みの時期になるので苦しいことがたくさんあると思いますが、目標を達成するという強い気持ちを忘れないで練習を頑張っていきたいなと思います。
常に目標を高いところに置く山尾は来年どこまで成長を遂げるだろうか。
関口真穂
ー どういった目標で大会に臨んだのか
今回は自分の得意種目である200m背泳ぎだけだったので、決勝に残るということを目標にしていたのと、自己ベストを出せればいいなと考えていました。
ー この試合に向けてどのような練習をしてきたか
10月のインカレもそうだったのですが、レースの後半にバテてしまうことが多いので、200mのレースの中で前半の100mと後半の100mのタイム差があまりでないようにするために持久系の練習を多くしてきました。
ー 大会当日のコンディションは
結構、大会前の練習はタイムも良かったですし、泳ぎに関してコーチにも「いいんじゃないか」と言われていたのでコンディションは良かったと思います。
ー 決勝に残れるという自信はある程度ありましたか
そうですね。心配な気持ちは多少はありましたけど、コーチからは「残れるよ」と言われていたので自分としても決勝に残るつもりではいました。
ー 予選では2分13秒台をマークしました
いつもシーズンが終わってからの11月、12月、1月頃というのはタイムが落ちてしまうことがあり、この時期に13秒台を出すことがあまりなかったので予選の泳ぎに関しては結構良かったのかなと思います。
ー 予選ではラスト50mの追い上げが印象的でした
ラストの部分に関しては、練習の時からレース後半の追い上げというのを意識していました。レースプランとしても前半であまり行き過ぎないで、後半でしっかり上げることを考えていて、予選の最後の50mもプラン通りにペースを上げることができたと思います。
ー 決勝の泳ぎを振り返って
決勝は結構緊張してしまって、自分の泳ぎができませんでした。
ー 決勝のタイムについて
予選の時より全然遅くなってしまって自分でもびっくりしました。ただ予選の泳ぎに関しては良かったので、決勝で失敗してしまった分を取り返せるようにこれからまた頑張りたいなと思います。
ー 今大会の良かった点と反省点
今回はしっかり決勝に残るということを目標にしていたので、目標を達成できたことは良かったと思います。泳ぎに関しては、前半で水をしっかり掻くということを意識して大きな泳ぎをすることができ、それが後半の追い上げにつながったので良かったです。反省点は予選から決勝にかけてタイムが落ちてしまったことや決勝で自分の泳ぎができなかったことはこれから改善していきたいと考えています。
ー 今年はインカレや短水路選手権でも活躍されました
去年はタイムが落ちてしまって、成績があまり振るわなかったので昨年の今頃は精神的に落ち込んでいました。今年は大会ができるのか分からない状況ではありましたけど、インカレや短水路選手権が開催されるということが分かって、それに向けて頑張ってやろうと気持ちを入れて練習をしました。泳ぐだけでなく、走ったりして自分なりに色々と工夫して取り組めたので今年は結果を残すことができたのかなと思います。
ー 今年を振り返って
大会が続かないっていうことは初めての経験でしたし、練習ができないという状況になって大変だったこともありましたが、自分なりに練習が工夫できたと思います。また大会がなかった分、タイムを追い求めるのではなく、自分の泳ぎをもう一度見つめて、いい泳ぎに改善することに取り組むことができました。本来なら大会があった時期に泳ぎを見直すことができたという点では良かったのかなと思います。
ー 今後の目標
去年から今年にかけてタイムも上がり、成績を残すことができました。来年4月にはまた日本選手権がありますし、インカレに関しても後2回チャンスがあるのでそこでしっかり結果を残せるように頑張っていきたいです。