日本社会人選手権
2021年11月6日・7日
栃木県総合運動公園水泳場
赤羽根康太(令和2年度卒)が、社会人の頂点に立った。50mバタフライで23秒43の大会記録をマークして優勝。100mバタフライでも予選で51秒53の自己記録をマークし、決勝では2位に入った。今後は来年3月に開催される国際大会の代表選考会で世界選手権の代表入りを目指す。
赤羽根選手 結果
種目 | 順位 | タイム | 備考 |
---|---|---|---|
男子50mバタフライ 予選 | 1位 | 23秒48 | 大会新 |
男子50mバタフライ 決勝 | 1位 | 23秒43 | 大会新 |
男子100mバタフライ 予選 | 1位 | 51秒53 | 大会新 |
男子100mバタフライ 決勝 | 2位 | 51秒88 |
記事
来年の3月に控える国際大会の代表選考会で、頂点を狙う赤羽根の思いは一つだった。「ここで『赤羽根』の存在を知らしめておきたかった」。50mバタフライでは大会記録を塗り替えて初優勝。一方の100mバタフライでは東京五輪代表の水沼尚輝(新潟医療福祉大職員)に敗れ「まだまだだなと思った」。2種目で表彰台に上るも「うれしさ半分、悔しさ半分」と心を奮い立たせた。
「現状維持で満足せず、常に自分をアップデートしていく」のが強さの秘訣だ。これまでは、序盤で他選手に差をつけられる場面が目立っていたが、今大会はスタートからの浮き上がりでリードを奪った。銀メダルを獲得したジャパンオープン以降、飛び出しの角度や入水時の姿勢を見直してきた成果が実った。「これからは(スタートを)自分の武器にしていきたい」と胸を張った。
本命の100mバタフライでは昨年の10月にマークした自己記録を0秒30更新。それでも、「悪くはないが、めちゃくちゃ良い訳でもないので、もっと突き詰めていきたい」と語ったのが実に赤羽根らしかった。オフの日も水泳のことが頭から離れない努力の天才。絶えず自らの泳ぎを分析し、改良を惜しまない。世界選手権の代表権獲得に向け、課題の見つかった試合となった。
貪欲な姿勢の原点は高校3年生のとき。インターハイで準優勝を果たし、周囲から「すごかったね」と声をかけられたことが上を目指す原動力になった。大学では4年間かけて、シニアで上位争いができるレベルまで成長。社会人1年目となった今では、日の丸を背負った選手との対戦にも気後れすることがなくなり、「常におれが一番強いという気持ちで泳いでいる」と言い放つ。
勝負の一戦に向け、強化していきたい部分は「50mを折り返してからのドルフィンキック」。「そこを改善できれば(日本記録を上回る)50秒台も見えてくる」と力を込める。23歳の若武者スイマーが日本中から注目される日がいよいよ近づいてきた。
(記事:根本 成)
インタビュー
赤羽根康太
ー 社会人選手権はどういった位置付けの試合でしたか
100mで最低でも今年の派遣標準記録の51秒70を切ることと、今回は長水路での主要大会が6月のジャパンオープンぶりだったので、試合勘を感じながら2種目でベストを出すことを目標にしていました。
ー 2種目で好成績を残しました
50mに関しては1発目の予選でベストが出て、その勢いで最後まで走り抜けた感じでした。シニアになって初めて金メダルを獲得することができ、また大会新もついてきたのでうれしかったです。100mに関しては、本当はもう少し狙っていたタイムが上だったので物足りなさがあります。ですが、久しぶりに2本51秒台をそろえることができたので、この時期にしてはいい出来だったと思います。
ー 3月に選考会を控えている中での試合でした
選考会まで後4ヶ月程度しかないので、ここで「赤羽根」の存在を知らしめておきたかったというか、一発やっておきたい気持ちがありました。今回は50mでは勝てましたが、100mでは決勝でタイムを落として水沼選手に勝てなかったので、まだまだだなと思いました。うれしさ半分、悔しさ半分です。
ー 6月のジャパンオープン以降は順調にトレーニングが積めていましたか
もともとは9月の国体で記録を狙う予定でした。コロナの影響で中止になってしまいましたが、10月に日本短水路選手権があった分、落ち込むことはなくて、毎日全力で取り組むだけだという気持ちで過ごしてきました。ウエイトトレーニングであったり、100mのための練習を結構積んでいたので、ここまでの道のりはすごく良かったです。
ー 大事にしていた練習は
100mの前半の50mを意識した練習を大事にしていました。必ず週に1回、50mを上から飛び込んで何本も繰り返す練習を入れていました。そのおかげもあって、50mのレースも100mの前半も安定して泳ぐことができました。
ー 以前は課題と仰っていたスタートからの浮き上がりの部分で今回はリードを奪いました
今までスタートは荒削りな部分がありました。ですがジャパンオープン後から、大枠を崩さず、やすりで整えていくイメージで練習していました。この4ヶ月で上手く改善がされて、これからは自分の武器にしていこうかなと思っています。スタートについては課題がクリアできました。
ー 改善されたのはドルフィンキックですか
どちらかというとスタートの方だと思います。蹴り出しであったり、飛び出し角度、入水する時の姿勢とかを自分で色々と試行錯誤しながら取り組んできました。
ー 泳ぎの面では、推進力が増したように感じました
ウエイトを取り入れたことで、以前よりもストロークにパワーを感じられる泳ぎになってきたと思います。まだまだ改善の余地がありますが、泳ぎを見てもすごい進んでいるなと感じます。今後は大きなストロークを武器に戦っていきたいです。
ー 100mの予選は51秒53をマークしましたが、レースを振り返っていかがですか
前日の50mでベストが出てスピードが付いていることは分かっていたので、とりあえず前半の50mを23秒台で入ろうと考えていました。実際、23秒台で入ることができて、後半はもうちょっと欲しかったですが、思惑通りに泳げたので良かったです。
ー 前半の入りは余裕がありましたか
そうですね。先程言った上から繰り返し50mを泳ぐ練習では、だいたい23秒から24秒くらいでやっていました。動きが体に染み付いていたのでそんなにキツくありませんでした。
ー 予選の泳ぎは現時点での最高の泳ぎでしたか
前半の入りに関しては、現時点で最高かなと思います。後半はベストラップで帰って来ることができましたが、もう少し粘りたかったという気持ちがあります。全体的に悪くはありませんでしたが、めちゃくちゃ良い訳でもないので、もっと突き詰めていきたいです。
ー 決勝のレースはいかがでしたか
予選と決勝の間が短かった分、上手く疲労を抜くことができませんでした。なので、短時間でしっかりリカバリーをする力を身に付けなければいけないなと感じました。選考会は予選と準決が同じ日にあるのでどんな状態でも2本泳ぎ切れるようにしないといけません。そういったところで反省の多いレースになりました。
ー 選考会に向けて強化していきたい部分は
50mを折り返してからのドルフィンキックの部分です。結構そこも意識して練習してきたんですが、まだまだ戦えるまでのレベルまで来ていません。数値で見ても、そこだけでトップと0.5秒ほど差があります。今回51秒5を出せたので、そこの部分を改善できれば50秒台も見えてくると思います。前半は楽に速くいけることが分かったので、今後はターンしてから75mまでを突き詰めていきたいです。
ー 今まで負けていた選手に勝ったことについては
みんながみんなベストコンディションというわけではなかったので、心の底からうれしいとは感じていません。ですが、50mに関しては価値ある1勝だったと思います。
ー 上を目指すきっかけになったレースは
一つ目のきっかけは、高校3年次のインターハイです。当時の高校3年生としてはそこそこのタイムで泳ぐことができ、銀メダルを獲得しました。レース後に知らないコーチの方から「すごかったね」って声をかけてもらって、その時に初めて周りに認めてもらえたような気がして気持ちよかったです。また、直近で言えば大学4年次のインカレのレースが上を目指す原動力になりました。初めて51秒台を出すことができて、レジェンドスイマーの方たちや他大学のコーチ陣の方に認められるようになりました。もっともっと色々な人に僕のことを知ってもらいたいという気持ちが芽生えて、今でも頑張れていると思います。
ー 年上の選手に気後れすることはなくなりましたか
実際、4月にあった選考会の時はまだ少しビビっていた部分がありました。ですが、選考会が終わってからは、常におれが一番強いという気持ちで泳ぐようにしていて、ビビらなくなりました。今回実際に社会人の先輩たちに勝てたので、この勝利とともに3月に向けてやっていけたらなと思います。
ー 今回も自信を持って臨めたと
そうですね。日本短水路も大ベストが出る予感がしてましたし、社会人選手権もベストが出ることが分かっていました。練習が上手くいっていると、試合では自信を持って臨むことができます。今後も気を抜かず練習していけば、きっと3月には自信満々の状態で臨めると思うので頑張っていきたいです。
ー 3月の選考会への意気込みをお願いします
選考会では50秒台を絶対に出さないといけないと思っているので、そこにしっかり合わせられるようにトレーニングを積んでいきたいです。今年の選考会はダメな結果だったので、来年はしっかりトップで戦って笑顔で終われるように残りの4ヶ月間過ごしていきます。