2021年09月05日(日)
2021年度第45回総理大臣杯全日本大学サッカートーナメント
決勝 法大ー東洋大
味の素フィールド西が丘
攻守のかみ合ったチーム力で初戦、3回戦と勝ち上がると、同じ関東1部リーグ所属の筑波大相手に終始付け入る隙を与えず準決勝を突破してみせた。これまで幾度となく跳ね返されてきた決勝という舞台で、法大を待ち受ける相手は東洋大。序盤から試合のペースを握る法大だったが、11分にゴール前へこぼれたボールを押し込まれまさかの失点。先制点を許し嫌な雰囲気が漂う中、試合が動いたのは41分。2試合連続となる松井のゴールで同点とし、勝負の行方は後半へとゆだねられた。互いに攻めあぐねるまま試合は終盤へと差し掛かり、延長戦にもつれ込むかと思われた後半終了直前93分。佐藤大が相手のファールによりFKを得ると自らゴールに沈め、勝ち越しに成功。法大はこの1点を守り切り、4大会ぶり5回目となる総理大臣杯優勝に輝いた。
値千金の決勝ゴールを決めたのはチームを引っ張ってきた副キャプテンの佐藤大
試合結果
トータル試合結果
2
法政大学
|
1 |
前半 |
1 |
1
東洋大学
|
1 |
後半 |
0 |
スターティングメンバー
ポジション |
背番号 |
選手名 |
学部・出身校 |
GK |
12 |
中川真 |
スポ2・徳島市立 |
DF |
3 |
宮本優 |
現福4・清水エスパルスユース |
DF |
16 |
萩野滉大 |
現福3・名古屋グランパスU18 |
DF |
19 |
高嶋修也 |
経済3・明秀学園日立 |
DF |
29 |
今野息吹 |
経済2・三菱養和SCユース |
MF |
4 |
中井崇仁 |
スポ4・尚志 |
MF |
6 |
松井蓮之 |
スポ4・矢板中央 |
MF |
28 |
佐野陸人 |
現福3・清水エスパルスユース |
FW |
2 |
陶山勇磨 |
現福4・帝京長岡 |
FW |
11 |
田中和樹 |
社会4・浦和学院 |
FW |
20 |
佐藤大樹 |
経済4・コンサドーレ札幌U18 |
サブメンバー |
GK |
21 |
近藤壱成 |
経済3・ジュビロ磐田U18 |
DF |
5 |
落合毅人 |
経済3・新潟明訓 |
MF |
7 |
安光将作 |
社会4・ジェフユナイテッド千葉U18 |
MF |
13 |
渡邉綾平 |
経済2・前橋育英 |
MF |
15 |
若林龍 |
現福3・桐蔭学園 |
MF |
17 |
森山真伍 |
社会4・サガン鳥栖U18 |
MF |
25 |
吉尾虹樹 |
現福2・横浜F・マリノスユース |
MF |
26 |
中川敦瑛 |
経済1・横浜FCユース |
FW |
10 |
飯島陸 |
経済4・前橋育英 |
試合スタッツ※交代は法大のみ記載
時間 |
経過 |
大学 |
選手名 |
得点経過 |
11分 |
得点 |
東洋大 |
梅津凌岳 |
0-1 |
41分 |
得点 |
法大 |
松井蓮之 |
1-1 |
ハーフタイム |
交代 |
法大 |
佐野陸人→吉尾虹樹 |
|
57分 |
交代 |
法大 |
中井崇仁→飯島陸 |
|
63分 |
交代 |
法大 |
陶山勇磨→中川敦瑛 |
|
78分 |
交代 |
法大 |
田中和樹→若林龍 |
|
93分 |
得点 |
法大 |
佐藤大樹 |
2-1 |
マッチレポート
ここまで危なげない戦いで勝ち上がり決勝に進出した法大。決勝では総理大臣杯初優勝を狙う東洋大と顔を合わせた。準決勝の筑波大戦から中1日ということもあり、スタメンを6人変更。センターバックには萩野滉大(現3)、高嶋修也(経3)の3年生コンビが抜てきされた。
ファーストシュートは法大。8分、FW起用の陶山勇磨(現4)の右サイドの突破から中井崇仁(スポ4)がシュートを放つもミートせず、ボールは枠の外へ。序盤から試合の主導権を握ったのは法大だったが、試合を先に動かしたのは東洋大であった。右サイドのクロスからピンチを迎えると、ファーに流れたボールを押し込まれ先制を許してしまう。
同点に追いつきたい法大は、ロングボールを効果的に活用し相手陣内へ攻め込む。23分、松井蓮之(スポ4)のクロスに田中和樹(社4)がダイレクトで合わせるもGK正面。その後も攻め続けゴールの匂いが漂い始めた41分。ゴール前でボールを奪うと混戦から相手のクリアミスを松井がダイレクトで合わせ、同点に追いつき、1-1で前半を折り返す。
勝負の後半も法大が押し込む展開に。松井を起点に相手ゴール前に攻め込み、サイドから決定機を何度も作るも東洋大の堅い守りをなかなか崩すことができず。一方守備陣もセットプレーからピンチを迎えるも今季のチームの象徴である粘り強い守備で得点を許さず。このまま延長戦に突入かと思われた後半アディショナルタイム。途中出場の中川敦瑛(経1)のインターセプトからドリブルでゴール前まで持ち込むと、キャプテンマークを巻く佐藤大樹(経4)へスルーパス。パスを受けた佐藤大が相手に倒され絶好の位置でフリーキックを獲得する。このフリーキックを佐藤大が自ら左足で叩き込み土壇場で逆転に成功。劇的なゴールで東洋大を2-1で下し、2017年以来4大会ぶり5回目の総理大臣杯優勝を決めた。
今年1月に開催された#atarimaeni CUPや「アミノバイタル®」カップとあと一歩という所で涙を飲み、シルバーコレクターとやゆされた法大であったが、ついに歓喜の瞬間を迎えた。今大会の結果を自信に変え、一週間後に再開されるリーグ戦、冬に開催予定のインカレとさらなるタイトル獲得に期待したい。
(記事・撮影/二瓶堅太・宮川昇)
チームが一丸となってつかみ取った優勝に笑顔が溢れた
選手コメント
長山一也監督
―準優勝が続いた中で、今回の優勝は監督にとっても格別なものだったと思います。率直な感想は? 決勝で負けることが続いていたので、勝ちたいという気持ちは常にありました。ただ、何かが欠けていたから勝てなかったわけで、それを選手と一緒に、日常の取り組みから積み重ねていこうと。選手たちも田部井を中心に、、前向きに取り組んでくれていたので、その成果が出たのかなと思います。ホッとしているところもありますね(笑)。
―何かが足りなかった、それは何だったと思いますか? 主導権を握りながら一瞬の隙を突かれて失点していたので、これまでやられている傾向を分析し、セットプレーやスローインの部分で隙を見せないことは大事だと話しました。今日は全員(緊張から)動きが固く、先手を取られた中で、経験のある(松井)蓮之が同点にしてくれたのは良かったです。決勝点もセットプレーを(佐藤)大樹が決めてくれて、素晴らしかったなと思います。
―後半にあったチャンスを決めきれなかった時に、過去の決勝の流れがよぎりました。監督の中ではいかがでしたか? 守備については集中力を切らさないように声を掛けていました。しっかりリスク管理ができていたので、これまでの経験が生きたのかなと思います。
―田部井選手のけがについて 初戦のウォーミングアップで肉離れをしました。全治6週間程度です。けがをした後も、キャプテンとしてチームをまとめていました。チームのために荷物を運んだり、雑用も進んでやってくれました。田部井がけがをしたことは残念ではありましたけど、チームの団結に繋がって、今回はいい結果に転がったのかなと思います。
―システム変更をしたり、監督も頭を悩ませた部分はあったのではないでしょうか? 井上コーチが中心となって指揮を執っている中で、4-3-3、4-1-4-1など、蓮之をアンカーにおいて、2人がシャドーでという形は選択肢としてありました。守備の部分では、4-4-2にすることもやっていたので、そこは元々4-2-3-1でやっていたところから変えながら、準備してきたことを効果的にできたかなと思います。
―監督は2017年に35年ぶりに優勝されて、今回はそれ以来となりますが、当時との違いはありますか? 前回はシュート3本、ほとんど明治さんに押されていた中で、(上田)綺世のミドルシュートで勝つことができました。その時に比べたら、今日もチャンスの数も多かったと思いますし、チームのクオリティも上がってきていると思います。あの時は下級生が多い中で、頑張ってギリギリ勝ったような状況でしたけど、今回はしっかりと4年生が活躍してくれたので良かったです。
―この優勝はこれからのリーグ戦へ繋がりますね 目標は全タイトル獲得なので、この勢いでリーグ戦もしっかりと勝ち続けて、インカレもタイトルを獲りたいなと思います。
―決勝点のFKの場面、佐藤選手が蹴るという指示は監督からありましたか? 左利きの選手が(佐藤)大樹と(今野)息吹しかいない状況でしたし、大樹が自分でFKを獲得したということで、練習でもあまり見たことなかったですけど、大樹の「自分が決めようという」という意思を感じたシーンでした。みんな本当に興奮した、気持ちの入ったゴールでした。
―個人的に選手層の厚さに注目しています。今大会も田部井がいない中で優勝した。そのあたり、日頃の取り組みと評価はいかがでしょうか? 日本一への取り組みをピッチ内外で意識しています。下級生の時から、強度の高いトレーニングを消化して、その中で技術を発揮できる、サッカーを理解して判断を下せるところは、井上コーチと一緒に築き上げてきた部分です。トップで試合に出ることができない選手も、Iリーグで鍛え直し、トレーニングから積み重ねることができています。今大会もIリーグに出ていた選手が活躍するなど、そういった意味で日本一の競争ができているからこそ、今回日本一になれたのかなと思います。
松井蓮之
―1点目のシーン、引かずに前に出てシュートにいった意図は 自分自身、ゴール前への推進力やボールに絡む部分は最近の特徴になっています。パスを出した後に、中へ侵入できれば良かったのですが、ボールが当たって相手の体勢が崩れているのが見えたので、クリアミスをするという予測をしていたところにボールがきたので、あとはシュートを打つだけでした。
―ダイレクトで打つことは決めていた? ダイレクトで打つのは迷わなかったです。クロスかシュートかは迷いましたが、シュートを打った方が相手は嫌かなという考えが先に来たので、シュートを打とうという判断に切り替えました。
―アンカーとして前に出ていくタイミングに難しさがあったのか、それともやりやすさがあったのか、いかがですか? 最初は相手の守備の出方を伺いながらだったので、あまり前に出ることはできませんでした。ただ、最後の方、自分たちが余裕を持ってボールを握ることができていた時は、自分がいいタイミングで飛び出せば、相手のボランチもつかみきれないだろうと感じていました。ラストパスの質や、自分がドリブルで持ち上がった後のクオリティは課題です。その課題を克服して、自分の特徴としていけるように練習していきたいです。
―田部井選手が怪我をしたことで、自分に課せられたものは? 涼が怪我をした中で、自分にかかる期待や、やるべきことは増えました。そんな中でも、涼がやってきたことは、自分にもできるという自信があったので、ネガティブにならずに、涼の代わりとまではいかないですが、自分がキャプテンシーを発揮してチームを勝たせるという姿勢を試合中に意識していました。
―早い時間に先制点を奪われた瞬間は、過去の決勝戦も頭によぎったのかなと。その瞬間は何を考えていましたか? 正直、本当に焦ることはなかったです。逆に早い時間の失点だったので、割り切って自分たちのサッカーをしようと切り替えられたのは、チームとしてプラスでした。チーム全体でもネガティブになる選手はいなかったと思いますし、そういったメンタリティが逆転勝利に繋がったと思います。
佐藤大樹
―FKを獲得したシーンについて 相手のセンターバックが自分に体を当ててきたり、自分のランニングコースを消してきたり、結構賢い守備をしてきました。試合の中で、いろんな変化に対応していく必要があると感じていたので、今回は自分の幅を広げられたというか、良い形を作れてよかったです。
―FKは普段であれば田部井選手が蹴っている場面だったと思いますが、今回は自分で蹴りましたね 自分自身、あまり点が取れていない状況、涼もいなくて蹴る選手がいない状況だった中で、4年生である自分たちが勝たせないといけないという使命があったので、自分がファールをもらった瞬間から蹴ろうと思っていました。その強い気持ちが得点に繋がったのかなと思います。
―田部井選手に代わってキャプテンマークを巻く試合も多くありました 自分がキャプテンとしてチーム引っ張るという立場になって、田部井選手のようにはいかないですけど、自分なりにチームをまとめたり、声で引っ張ったりという部分は突き詰めてやっていました。今後の試合でも、涼がいなくても自分たちはやれるぞというところを見せていきたいです。
中川敦瑛
―1年生でタイトルを獲れました。率直な感想をお願いします まずはやっと優勝できて嬉しいという気持ちでいっぱいです。
―東京都トーナメント決勝では西が丘で得点を決めていましたね ここ(西が丘)にはいいイメージを持っていたので、今日も途中から入って、自分的には悪くなかったです。もしかしたら決めることができるかなと思っていた中で得点できず、優勝はしたものの、得点という結果を出せなかったのは課題かなと思います。
―決勝点のFKに繋がるスルーパスは素晴らしいものでした インターセプトしてからいけるなと。スピードを上げるうちに、(佐藤)大樹くんが斜めに走ってくれて、大樹くんなら決めてくれるだろうとパスを出しました。
―中盤1.5列目で動いてフィニッシュに絡むという部分では、大学に入っても順応できているというか、持ち味を発揮できていると思うのですが 準決勝の筑波戦で、自分としてはいいイメージでプレーができて、ドリブルも感触がありました。最近はボールを怖がらずに受けてプレーできていると思います。