各カードのMVPを紹介する『クローズアップ』。早大戦は永野司(営4=倉敷商)を選出。早大2回戦では1点リードの8回裏に登板し、得意のスライダーを駆使し奪三振ショーを披露した。

劇的勝利の立役者・永野が見せた覚悟の投球
4月26日の早大1回戦は、投手陣が12被安打11失点と打ち込まれ、まさに“投壊”とも言える完敗を喫した。次戦に敗れれば早大に勝ち点を許し、優勝戦線から大きく後退してしまうという、まさに土俵際で迎えた第2戦。劇的な勝利を収めたこの試合の最後のマウンドに立っていたのは、永野司(営4=倉敷商)だった。
思い返せば、開幕戦となった立大1回戦では、エース・野崎慎裕(営4=県岐阜商)が7回1失点と好投し、役割を全う。そのバトンを受けて登板した永野の投球は、今春初登板ながら1回2/3を投げて被安打4、四死球2と、万全とは言えない内容だった。本人が武器と語るスライダーも左打者の頭付近に抜ける場面があり、制球に課題を残した。「自分が原因で負けてしまった」と振り返ったように、悔しさの残る登板となった。
その後、チームは悪夢の開幕3連敗。特に立大2回戦と早大1回戦はともに投手陣が2桁失点を喫し、崩壊状態。先発、中継ぎ陣も次々と打ち込まれ、相手の猛攻を食い止めることができない苦しい展開が続いた。
そんな中で迎えた早大第2戦。この日は打線が執念を見せ、本塁打2本で先制を許しながらも8回表に逆転。法大スタンドも熱気に包まれる中、8回裏のマウンドを託されたのが永野だった。試合後、「まずはゾーンに投げ込むところからと考えていて、自分のペースに持ち込むことができた。自分も楽だったし、相手に嫌な印象を与えられたと思います」と語ったように、得意のスライダーが冴えわたり、6アウト中4つを三振で奪う快投。攻撃的とも言えるピッチングで勝利に花を添えた。
1勝1敗で迎えた翌日の早大3回戦でも永野は登板。3回を投げて被安打2、奪三振2、四球1と安定感ある投球を見せた。特に、四球1という数字は、この日法大投手陣全体の与四死球13個と比較しても、永野の正確無比な制球力が良くわかるいい指標だろう。「勝ちを引き寄せるピッチング」というワードをたびたびインタビューで語る左腕は、この2日間、淡々と打者を打ち取り、流れを攻撃につなげる理想的な投球を体現してみせた。

永野は東大戦でも勝ちを引き寄せるピッチングを誓う
チームは立大戦につづき、早大戦でも勝ち点を落とし、優勝のためにはもう1つも負けられない崖っぷちに追い込まれたが、「まだリーグ戦は終わってないので次の試合から全部勝つ気持ちで」と前を向く永野の目には諦めの色はない。1週空いて5月10日に控える次戦の東大1回戦でも、彼は淡々と左腕を振り続け、チームに勝ちを引き寄せるピッチングを見せてくれることだろう。
(記事:中山達喜)