全日本学生ジムカーナ選手権大会 特集企画
第二ヒート。法大3人目、チーム最後の走行。そして、インテグラ最後の走行。
「頑張ってください!」
部員たちから声が飛ぶ。運転席に座るのは主将・上林直正(社4)。その表情は変わらなかった。
スタートの瞬間
サーキットへ手で押して
大会日の朝。太陽の光が差し込む中、待機スペースでは、前日と変わらず部員たちがインテグラを囲み、整備を進めていた。
サーキットにエンジン音が鳴り響く。デモ走行が始まった。本番が近い。それにつれ、部員たちの顔つきも徐々に変わっていった。「温度が高すぎると車が遅くなるので」と、エンジンをかけずに手押しで車をサーキットへ持っていく。
車を動かす部員たち
待っていた先輩の言葉
法大の一番手・宮﨑武瑠(理工2)の走行順は2番目だった。前の大学がスタートすると、少し時間をおいてコースへ飛び出した。しかし、ミスコース。「不甲斐ない」とのちに振り返った。
3人のドライバーが2回ずつ走り、それぞれ良い方のタイムの合計で団体順位を争う。一人でも記録を残せなければ、団体入賞は厳しくなる。
しかし宮﨑を待っていたのはミスを責める言葉ではなかった。
「『気にするな』と。上から他の大学の走りを見たり、自分の中でイメージして走るんだというふうに教わりました」
厳しい結果
2番手の宮下樂士(社2)は記録を残す。それでも「悔しくて涙が出た」とこぼした。3番手の上林もタイムを伸ばせなかった。
悔しさをにじませる宮下
変わらない雰囲気
正直、私は部員に話しかけるのを臆した。そうやって離れたところで座っていると、矢崎智大(理工3)クルーが近寄ってきた。「暑いので気をつけてください」とペットボトルを渡された。昨日と合わせ3本目だった。
成績が振るわないときでさえ、彼らは取材に来ただけの人間を気にかけていた。それに驚きながら、思い切って「どんな感じですか」と聞いてみた。
「まずまずですね」
その声は思っていたより、明るかった。
最後の待機時間
第二ヒート。今度こそ宮﨑が記録を残した。これで入賞の可能性が残った。宮下も「後悔はない」と走行を終えた。
そして、残すはあと一人。上林の周りには部員、OBが勢ぞろいだった。
「頑張ってください!」
部員から声が飛ぶ。上林は開いた窓から腕を掲げ、それに応えた。
ガッツポーズを掲げる上林
一瞬のような1分
インテグラがスタートを切った。次の瞬間には遠ざかり、望遠レンズで追うのがやっとの距離へ。
一瞬のような1分が過ぎ、ゴール地点へ戻ってきた。
数人と待機地点へ戻る。
あれほどいた部員たちの姿がない。どこに消えたのか。
こんな終わり方なんて、まさかーー
そう思うのも束の間、歌声が聞こえてきた。法大の校歌だった。見ると部員たちが肩を組んで歌っていた。
肩を組んで校歌を歌う部員たち
最高の校歌
上林の姿は車窓に隠れて見えなかった。それでも部員の姿を見て、のちに「『泣かないぞ』という思いがあった」と語った。そう話す表情はどこか嬉しげだった。そして、続けて言った。
「法政大学の自動車部で良かった」
一瞬で遠ざかるインテグラ
「ありがとう旧規定」
結果は団体8位。入賞には届かなかった。
最後に記念撮影をした。
「髪が乱れている(笑)」との声がした。一日中動いた証だった。
やがて、インテグラはトラックに載せられた。その光景を見ながら、私は前日に聞いた言葉を思い出した。「これに一目ぼれして入部したので、寂しいですね…」
フロントガラスには、「ありがとう旧規定」の文字が残されていた。
(記事:山田竣矢)
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