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【自動車】「選手じゃなくても、その人に託すだけ」 個人で走り団体で勝つーー 信念を乗せたインテグラが最後の走行へ【前編】 

全日本ジムカーナ選手権大会 特集企画

「これ、良ければどうぞ」。開口一番、そう声をかけられた。1本のペットボトルだった。驚いて少し返答の言葉に詰まった。相手にとって、私は初めて顔を合わせた人間だ。この日は非常に暑かった。それがどれだけ助かったことか。

だが、こうした気遣いは、この人だけのものではなかった。

デザイン性抜群のインテグラ

2日間で見えたもの

8月30日に行われる「全日本学生ジムカーナ選手権大会」に出場する法政大学自動車部。その前日の公開練習から本番までの2日間、彼らを追った。そこで何度も目にしたのは、誰かが誰かを自然と気にかける姿だった。

一に礼儀正しさ、二に謙虚。そんな印象だった。
最初、取材の挨拶をしに伺ったときだった。近寄ると、こちらに気づいた。すると私が向かうより先に主将の上林直正(社4)選手がすぐさま歩み寄り、私に挨拶をした。「主将の上林です。よろしくお願いします」。すると続々と部員が集まり、「ちは!」と自動車部特有の挨拶をした。その一体感に包まれて、丁重に歓迎されたのだとわかった。

挨拶を終えて

挨拶を済ませ、しばらく部員たちの様子を見ていた。整備する姿は真剣そのもの。それでも、部員同士の会話には自然と笑顔がこぼれていた。先ほど感じた居心地の良さは、外から来た人間に向けられたものだけではないらしい。
「喧嘩しないですね」。4年の西川匠(営4)クルーはそう言った。すぐさま矢﨑智大(理工3)クルーも「そうですね、まあない」と続く。迷いのない真っすぐな語調からも、普段の部内の空気が垣間見えた。

感じた「違和感」

意地悪な言い方をすれば、この和やかさに違和感がないわけではない。大会でドライバーとして出場できる人数は少ない。今回は3人だ。選ばれるためには、チーム内の競争に勝たなければならない。ならば、部内に緊張した空気が張ることもあるのではないか。
「選考は少しピリッとしますよね」。矢﨑はそう言い、西川に目を向けた。「あの瞬間だけはお互いライバルだけど」。西川はさらに一拍置いて「まあでも終われば別に。 やることはやる。選手じゃなくてもその人に託すだけなので、いつも通り落ち着いて」。

点検の際の部員たちの真剣な表情

チームに根付くもの

西川は昨年、ドライバーに選出された選手でもある。選ばれる側と、それを支える側。その両方を経験してきた西川の言葉には、チームへの考え方がにじむ。「競技自体は個人で走るけど、団体で賞を取っていくものだというのを全員ちゃんと理解したくて。個人個人というのになりすぎずに、ちゃんと団体で動いて、団体で勝つために何をするかというのが、多分みんなわかってくれている」。

彼の口から出た言葉は自分だけの信念ではなかった。チーム全体にこの考え方が根付いているように見えた。真剣さ、和やかさを両立させる理由が少し分かった気がした。

ここで動くための原動力

その間にも点検は続いていた。数分ごとに現在時刻を全員で声を出している。特段、きりのいい時刻でもない。不思議に思い、尋ねると松原勘佑(理工1)クルーが「集中していると時間を忘れちゃうので」とひとこと。さらに、「順番が来たときに走れないとタイムが残せないまま終わっちゃうんです」。時間にシビアな大会であることを教えてくれた。
それにしても、時間を忘れるほどに集中できる、その原動力は何なのだろうか。「本当にいろいろです。でも、やはり普段から好きでやっている人が多いので、心の支えです」と松原は言う。西川も「普段から車の話してますね。自分の車検がどうだとか(笑)」と語った。
点検のためなら車の下にだって潜り込んでいる。暑いなかでも繊細な手つきで調整する。
好きだから、時間を忘れて向き合える。その思いは目の前の一台に向けられていた。

「インテグラ」最後の日

この大会はドライバー3人が全員同じ部の車に乗って、タイムを計測する。命運はいつもこの「インテグラ」と共にあった。みなの「好きだから向き合う」気持ち、ドライバーになれなくても、選ばれたものに託す気持ち。それらの中心にこの車があった。
そんなインテグラは大会の規定変更により、これが最後の走行となる。「この車のためにバイトして買ったんです。みんなで出し合って」。最後ということもあり、駆けつけたOBの中西さんが教えてくれた。学生が自分たちだけで車を買う。簡単なことではないだろう。
「マジで有終の美を飾れるように頑張ります」と力強いまなざしで矢﨑は言った。

明日のため、何度でも

集合写真を撮り、取材を終えると、「シタ!」とこれもまた特有のあいさつをしてくれた。大会本番は明日だ。私がこの日の取材を終わらせたあと、どれほどの時間をインテグラに割くのだろうか。

部員たちは用具を手に、再びインテグラの確認を始めた。

(後編へ続く)

(記事:山田竣矢)

自動車部の活躍はスポーツ法政新聞会の公式インスタグラムにも掲載しております。ぜひご覧ください。

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