全日本学生フェンシング選手権大会
2014年11月12日(水)~16日(日)
京都大山崎町体育館
ついに日本一を目指す戦いが幕を開ける。全日本学生選手権大会(以下インカレ)は、関東と関西の代表が集い、5日間にわたり個人戦団体戦が行われる。初日は男女フルーレ個人戦。先日の関東学生選手権(以下関カレ)で好成績を残したメンバーが数多くいる種目であり、大いに期待が持てる。そして、男子フルーレではまた一人、法大から新王者が誕生した。2年生ながら大学屈指の実力の持ち主・大石利樹だ。そして、その姉である大石栞菜は女子フルーレで準優勝に輝いた。
種目 | 選手名 | 試合詳細 | 成績 |
---|---|---|---|
男子フルーレ | 大石利樹(法2) | 決勝○15-12 準決勝○15-6 準々決勝○15-9 3回戦○15-8 2回戦○15-8 | 優勝 |
加藤祥(営4) | 準決勝●6-15 3位決定戦○6-3 準々決勝○15-7 3回戦○15-8 2回戦○15-10 | 3位 | |
長島徳幸(文3) | 準決勝●12-15 3位決定戦●3-6 準々決勝○15-7 3回戦○15-9 2回戦○15-9 | ベスト4 | |
東哲平(営3) | 3回戦●10-15 2回戦○15-12 1回戦○15-9 | ベスト16 | |
女子フルーレ | 大石栞菜(法4) | 決勝●12-15 準決勝○15-5 準々決勝○15-8 3回戦○15-8 2回戦○15-4 | 準優勝 |
柳岡はるか(法2) | 準決勝●5-15 3位決定戦○15-6 準々決勝○15-11 3回戦○15-4 2回戦○15-7 | 3位 | |
久良知美帆(法3) | 準決勝●8-15 3位決定戦●6-15 準々決勝○15-11 3回戦○11-8 2回戦○12-9 | ベスト4 | |
真田玲菜(キャ2) | 3回戦●4-9 2回戦○15-8 | ベスト16 | |
向井愛美(文1) | ー | 予選敗退 |
戦評
男子フルーレ
10月下旬に行われた関カレで団体優勝、個人では長島徳幸(文3)が頂点に輝いた男子フルーレ。このインカレには長島の他に、加藤祥(営4)、東哲平(営3)、大石利樹(法2)が出場を果たし、全選手が順当にベスト16に駒を進めた。
ベスト8をかけた戦いで東は伊藤(日大)と対戦。互角の展開を見せるも、終盤に6連続失点を喫し悪い流れを断ち切れず10-15で敗れる結果となった。同じく日大の選手との対戦となった大石利。相手は団体でエースを務める舩本だが、臆することなく攻めの姿勢を貫きペースをつかむ。最後までリードを守り抜き15-8でベスト8を決めた。
関カレ覇者の長島は、初戦から松山(早大)、簾内(中大)と相手校の主力選手と当たり、苦戦をしながらも準々決勝に進出。しかし満足のいく動きはできず、悔しい表情を浮かべていた。フルーレ陣唯一の4年生である加藤も、2年連続のベスト8を決め3選手が勝ち進む。
この日、本調子とは言えない長島だが仙葉(早大)に対しては、序盤から着実にポイントを重ね地力の差で15-7と危なげなく勝利を収める。加藤も拓大の櫻井相手に、終始流れを渡さず昨年届かなかった4強へ食い込んだ。さらに大石利も高阪(中大)から途中4連続得点を含む攻撃で波に乗り、法大勢3人が見事ベスト4進出を果たした。
加藤と大石利が準決勝で激突し、同校対決となった。関カレでは準決勝で長島との同校対決に大差で敗れ、決勝の舞台に立てなかった大石利だが、この試合は加藤に対し試合を有利に展開していく。先輩相手に実力をいかんなく発揮し、15-6のスコアで快勝。一足先に決勝進出を決めた。法大同士の決勝へ、そしてインカレ連覇と関カレにつづいての優勝のためには負けられない長島だが、彼の普段の姿は影を潜める。序盤までは一進一退の攻防となるも、わずかにリードを広げられると9-11から3連続得点を許し先にマッチポイントを握られてしまう。そこから長島も決死の3連続得点で巻き返しを狙うも、追い上げ及ばず王者は準決勝で敗退となった。
佐野(中大)との決勝を迎えた大石利に緊張の面持ちは見えない。素早い動きで相手から勢いよくポイントを奪うと、最大5点差をつけ主導権を握る。ペースを与えずそのまま進めたい大石利だが佐野の粘りを受け2点差にまで詰め寄られてしまう。しかし、そこから目の色を変え集中力を高めた。最後は落ち着いて15点目を決め大きく吠え、優勝の喜びを爆発させる。大学2年にしてインカレチャンピオンとなった大石利は仲間から祝福を受けた。終始、安定したプレーで駆け抜け、個人戦では大学初のタイトル獲得となった。
加藤と長島の3位決定戦は、長島が体の痛みに耐えられず試合は中断。最後まで続けられず6-3で加藤が3位入賞という結果に。
個人戦では法大の力を十分に見せつけた。初優勝を飾った大石利を筆頭に、上位進出を果たしながら悔しい結果に終わったメンバーたちには、団体戦で2冠という大きな目標が待っている。(宮城風子)
女子フルーレ
関カレでは真田が3位と躍進しながらも、団体レギュラーの3人が早々と姿を消すという悔いが残る結果となった女子フルーレ。来たるインカレ団体戦に向けて個人戦でリベンジを果たし、弾みをつけたいところだ。
法大で予選プールを突破し、本戦のトーナメントへ進出したのは大石栞、久良知、柳岡、真田の4人。関カレに続く活躍が期待された真田は、2回戦を勝ち抜くも3回戦で敗れ、ベスト8進出はならなかった。一方、大石栞、久良知、柳岡の3人は順当にベスト8に勝ち進んだ。準々決勝の戦いでも大石栞は相手を寄せ付けずに勝利。柳岡も序盤1-5とリードを許しながら連続ポイントを奪い逆転、準決勝へ駒を進める。しかし久良知はここで苦しむ。7-3リードしながら相手の果敢なアタックを受けてしまい同点まで追い付かれる。それでも経験豊富な3年生は、再び流れを自分に引き寄せる。2点連取するとそこから逃げ切り、久良知もベスト4への進出を決める。
準決勝でも久良知の試合は中盤まで互角の展開に。だがこの試合では主導権を明け渡してしまう。7-9のビハインドから更に失点を許し、決勝進出はならなかった。もう一つの準決勝では大石栞と柳岡の同校対決が実現。ここは最上級生エースが15-5と貫禄の勝利。2年前に優勝して以来の決勝進出を決めた。3位決定戦では久良知と柳岡が対戦。身体を気にする仕草を見せる久良知は苦戦、今日2度目の同校対決となった柳岡に軍配が上がり3位に輝いた。
迎えた決勝戦。2年ぶりの学生チャンピオンの座をかけて大石栞が挑む。しかし、なかなかポイントが奪えず、逆に相手を波に乗せてしまい3-9の大差をつけられてしまう。だがここで諦めてしまうエースではない。ここから巻き返し8-10までこぎつけ再び勝機を見出す。しかしポイントを連取できず、相手の一点が重く重くのしかかっていく。10-14から2点連取し、追い上げムードを見せるも次のランプは日大・相澤の赤いランプが光り試合は終了。
大石栞は最後のインカレを優勝で飾ることができなかった。しかし法大からベスト4に3人が残ったことについて、大石栞は「キャプテンとして嬉しい」と表情を緩ませた。次は団体での戦い。インカレという最高の舞台で目指すのはもちろん優勝だ。メンバーそれぞれが実力を出し切れば結果は必ず残せるはずだ。団体戦では法大が頂点を掴む。(高津勇佑)
選手のコメント
大石利樹
―今のお気持ちはいかがでしょうか
もう最高です。本当に最高です。
―優勝が決また最後のポイントを取った場面について
接近戦になって、お互い疲れている状態で、「ここで取るしかない」と思って突きにいきました。
―決勝戦を振り返って
最初に大量に点が取れたので、中盤に追いつかれかけましたけど、リードが保てて、運がよかった感じです。
―決勝の相手は準決勝で同校の長島選手を破ってきました
長島さんが負けた瞬間「きた」と思いました(笑)
―個人戦通して自分でよかった点はなんですか
運がよかったですね。結構自分の(トーナメントの)山がキツイかなと思ったんですけど、日大の佃史成(関カレ準優勝)とか実力のある選手が負けたりしていて、その選手に勝った選手と対戦して、競ることなく勝てて、そこで体力を使わずに済んで、要するに運がよかったです(笑)
―今日の気迫あふれるプレーでした
もう声出して集中していくしかないので。点取られだしてその時、集中切れたら一気に持っていかれるのがフェンシングなので、取られた時こそ声を出して相手に追いつかせないで勝ってやろうと思っていました。
―関カレ4位、今回のインカレ優勝と個人戦は充実した結果だと思いますが大石選手自身はどうお考えですか
いや、目標にしていたインカレ優勝はしましたけど、まだ上のクラスには全然歯が立たないので、そこに勝てるようにもっと頑張っていきたいです。
―今後の目標は
おごることなく、この後の団体戦も優勝して、来年もインカレ2連覇できるように頑張っていきます。
―団体戦へ向け意気込みお願いします
自分が点取られてしまうと思いますけど、メンバーに助けてもらいながら、みんなで優勝できればいいと思います。
加藤祥
―個人戦初の3位となりましたが
昨年のベスト8より上にいけたので嬉しいでけど、4年生の最後のインカレで優勝できなかったのは少し悔しいですね。
―ご自身の良かった点は
予選から調子が良くて、今日はなるべくディフェンス中心に試合を進めていこうと思っていて、それがベスト8がけと4がけの時に良い形で出せました。
―予選から調子が良いと本選でもその流れでいけますか
最後のインカレで一試合目は緊張したんですけど、そのあとは冷静になれました。強い選手が僕の予選プールにいて他の選手に結構負けていたので、みんなも緊張しているんだなと思いました。その中では、調子が良くいい流れでいけたかなと思います。
―準決勝の大石選手との対戦を振り返って
本当に情けなかったですね。2年生に負けたというのもあるんですけど、試合内容も途中から諦めたりして。悔いの残らないように大会を終わろうと思ったんですけど、この試合はもっとできたなと。全力が出せなかったです。
―同校対決は意識されますか
他大の人とやるよりも気が緩んでいたかもしれないです。
―法大勢から3人がベスト4となりましたが
去年も同じ3人はベスト8に入って、僕だけベスト4に入れていなかったので良かったです。法政のお家芸であるフルーレの強さを関西の人たちにも証明できたかなと思います。女子も3人残って嬉しいです。
―この結果は団体戦にもつながると思いますが
日大の(個人戦の)成績が良くなかったので(団体戦では)リベンジで挑んでくると思うので、みんな疲労は残るかもしれませんがしっかり気持ちを切り替えて声を出して、自分も最後なので優勝して終わりたいです。団体戦に出られるかは分からないですけど、気持ちをひとつにして僕だけ(フルーレで)4年生なのでチームをまとめていきたいです。
―エペにも出場されるとのことですが
フルーレは小さい頃からやっていてメインとしてやってはいるんですけど、いつもの練習はエペをやっていることが多いので、エペも悔いが残らないようにしたいです。全日本選手権がインカレ後にあるんですけど、それに出るためにはインカレ上位にいかなといけないのでベスト8以上目指して頑張りたいです。
長島徳幸
―ベスト4という結果について
全然満足できない結果です。優勝したかったんですけどコンディションが悪く、体力の消耗が激しくて最後まで戦うことができなくて悔しいです。
―初戦から実力のある選手との対戦で精神的体力的にきつかったですか
ありましたね。正直、2連覇ということを勝手に自分でプレッシャーに思っていて、最初の予選プールから結構がちがちでした。
―ベスト8を決めても悔しい表情を見せていましたが、それは勝ちながらも思い通りのプレーができていなかったからですか
そうですね。自分の思うようなプレーで(点を)取れていないので、その面でも緊張していたのかなと思います。
―準決勝の試合を振り返って
前から相性の良い相手だったんですけど、コンディションが悪いとだめだなと痛感しました。
―どこか痛めていたのですか
全身をつってしまいました。あと、試合に入る前や前日のコンディショニングをもっと大切にしていかないといけないと思いました。
―団体戦に向けて
日が空くのでそこまでに調整をしっかりして、個人では取れなかったタイトルを次の団体では絶対に取れるようにチーム法政で頑張っていきたいです。
大石栞菜
―決勝を振り返って
強かったですね。7点差開いた時はどうしようかと思ってました。びっくりしましたね。
―準決勝までは優位に試合を進めていましたね
関カレの時、取って取られて、取って取られてだったので、ピストを全部使うつもりでプレーしたら良い感じになりました。
―ベスト4に法大の選手が3人進出しました
やっぱりキャプテンとして嬉しいですね。みんな成長してくれたなと実感できますね。
―インカレへの思い
まだ明日が本番ですし、団体の方がどちらかというと狙っているので、その日その日ベストを尽くしていければいいかなという気持ちで臨んでいます。
―団体への意気込み
3人がベスト4に入って、今一番強い個人3人が揃っているので、決勝にいって次こそ専大を倒したいですね。
柳岡はるか
―3位入賞となった個人戦を振り返って
大学の試合で今まで遠征で試合に出れなかったこともあったり、出てもいい結果を残せていなかったので、とりあえず今回3位という結果を出せたのは嬉しいです。
―やはり学生大会で3位は自信にもつながったのでしょうか
そうですね。関カレで10位という結果で、あまりいい結果ではなかったですけど、インカレで結果が出せて、全国が本番だと思っているので、そっちで成績が出せたのはよかったと思います。
―準々決勝では序盤苦しみながら見事な逆転勝ちを収めました
(相手とは)関カレの団体戦のときに試合をしていて、そのときは相手のペースで試合をしてしまって、今回も最初は1-5まで引き離されて、ペースが完全に相手だったのですけど1セット終わった後の1分間休憩の時に、流れ、戦術を一気に変えて、新しく組み立てて挑んだら上手くハマって、そのままの流れで行けたので、そこが大きかったです。
―準決勝では主将の大石栞選手と対戦しましたが改めてどんな印象を受けましたか
とにかく強くて、何をしてほしいか、何を狙っているか分かるんですけど、行きようがなくて、もう読まれている感じがすごくて、何もできなかったです。
―3決ではまたも同校の久良知選手と対戦しました
お互い疲労が溜まっていて、泥試合みたいな感じになりそうでしたけど、一本一本丁寧に決める試合を心掛けてやっていました。
―自身で振り返って今日よかったところはどこでしたか
関カレの時は前日に海外から帰ってきて、時差ボケとかコンディションがそんなに良くなくて、試合に入る気持ちとかもできていなかったですけど、インカレはちゃんと時間があったので、心も体も準備をして(試合に)入ることができたので、入りとしてはそこが一番まずよかったところで、その中でちゃんと結果を出せたことがとにかく今回嬉しいです。
―団体戦へ向け意気込みお願いします
関カレで優勝できなかった分、とにかくインカレでは優勝目指してチーム一丸となって戦いたいと思います。
フルーレ
フェンシングの基本となっているフルーレ。得点となる有効範囲は、頭・両腕・両足以外の胴体部分です。また、先に攻撃をした方が「攻撃権」を持ち、防御側は相手の剣を払うなどしてから攻撃を行わないと得点にはなりません。そのため、試合中は攻撃権を奪い合いながら攻めあいます。同時に突いた場合は、どちらが有効であったのかを主審が判断します。
フォトギャラリー
- 大石は終始安定した力を見せた
- 勝利直後に笑顔を見せる加藤
- 万全な状態で挑めなかった長島
- 惜しくもベスト8を逃した東
- 準優勝と結果を残した大石栞
- 二度の同校対決を戦った柳岡
- 接戦を制しベスト4入りした久良知