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【硬式野球】東京六大学野球秋季リーグ戦開幕直前特集 首脳陣編 ~青木久典監督、銚子利夫助監督~

2020年9月3、4日(木、金)
法政大学野球部合宿所(オンライン)

昨季に3季ぶり46度目のリーグ優勝を果たした法大。その優勝からはや1カ月、9月18日に秋季リーグが開幕する。5回に分けてお送りするインタビューでは、連覇を目指す法大ナインの今季の目標や意気込みを伺った。今回は首脳陣編、青木久典監督、銚子利夫助監督のインタビューをお届けする。(新型コロナウイルス感染拡大防止のため、取材は電話で実施)

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首脳陣の采配にも注目だ

選手インタビュー

青木久典 監督

ー昨季を総括して
まずは優勝できて良かったなと思っています。

ー4月に緊急事態宣言が出て、リーグ開催すら危ぶまれました、その時の心境は
自分のことよりもやっぱり、最終学年の4年生たちですよね。一生懸命やっていたから、「何とか春のリーグをやらさせてあげたいな」とか、「良い思いをして卒業させてあげたいな」ということはありました。

ー監督はどちらにいらっしゃった
寮の方にいました。

ー選手たちとコミュニケーションは
たまに連絡はしながら、練習の状況だったりだとか、色々なコミュニケーションは取っていましたね。

ー選手たちからの相談は
相談はあまり無かったですかね。ただ、野球をやる者たちが一番不安な所は就職の部分でしょうね。一般学生に関してはそれなりに決まってはいたけれど、野球でなんとか就職したい選手に関しては、春のリーグ戦等が一つのアピールになりますから。そういうような所は不安になっていましたね。

ーかけた言葉は
「しっかりやっておきなさい」と。「またできる時が来ればその時にアピールすればいいじゃないか」というのと、後はこちらも色々と動いて練習参加をできるようにしっかりやっとけという話はしました。

ー選手が寮に戻り、練習が再開してからのチームの印象は
チームの印象的には「やってやるぞ」というものがあったけれど、それよりも寮生活であったりチームとしてのスローガンである『和』というのはまだまだかけ離れているなという所がありました。

ー1試合総当りということで昨年から変えたところは
変えた部分は一発勝負になってくるから、そこら辺の意識だけは、「トーナメントみたいなものだぞ」とは常々強く言いましたね。

ー昨年同様、投手陣が活躍しました
最上級生の高田(孝一、法4)、鈴木(昭汰、キャ4)というのが主戦になってよく頑張ってくれたなと思います。

ー野手陣では4年生や2年生の新戦力の台頭が目立ちました
野手陣に関しては、日替わりのヒーローが出たというのが収穫かなと思いますね。

ーまた、タイブレークを2度制し、チームの雰囲気も上がったように見受けられました
タイブレークでは勝ててよかったなと率直に思いますね。

ー野尻幸輝(営2)選手の投手起用は前々から考えていた
考えていました。野尻には「いくよ」というのはリーグ戦前から言っていたので、練習しとけよと。実戦で投げさせたりもしましたし、そこは準備した上での起用ですね。

ー春先の取材時に勝ちたいと仰っていた慶大戦にも勝利、その試合を振り返っていただいて
よくそれまで機能しなかった打撃陣が機能したなと思いました。

ーその結果、優勝という最高の形で終えることができました、優勝した瞬間のお気持ちは
それはもう、うれしい思いですよ。格別ですね、これは。

ーこの状況下での優勝はやはり格別
最高ですよね。また、助監督の銚子(利夫)さんであったり、学生コーチ、マネージャー、選手全員が一つになってましたから、それで勝ったようなものですからね。本当にうれしかったですよ。

ーリーグ期間中、銚子助監督の存在は支えになったか
もうすごく大きかったですね。

ーどのような会話を
僕がすごく感謝しているのは、特に野手陣に関してのアドバイスですね。監督って全部が見えるわけでは無いんですね。選手の守備位置であったりだとか、もっと言えば走塁。そのような所がしっかり指導、指示してくれるので、そういう意味ではピッチャーの起用であったり、攻撃のサインに僕が集中できたというのが大きかったと思います。

ー春リーグで印象に残った選手
やっぱり投手陣でいえば山下輝(営3)の頑張りじゃないですか。鈴木、高田孝と言いたいところなんだけれど、山下輝かなと思います。

ー野手に関しては
永廣(知紀、営4)かなと思いますね。

ー永廣選手の起用について
僕の方から「外野やって」と言いました。

ーそれに永廣選手が応えた
そうですね。彼はそういう人間ですから、「外野行きます!」と言ってくれて。「バッティングに集中できます!」と言ってましたね。

ー現在、オープン戦が行われていると思いますが調子の上がっている選手、また台頭してきている選手はいらっしゃいますか
野手陣は調子が良いのか悪いのか分からないですけれど、安定しているのはピッチャー陣ですよね。特に三浦(銀二、キャ3)なんて良くなってきたかなと思いますけれどね。

ーチームの課題点は
課題点がありすぎて言えません、ありすぎます。

ー逆に伸ばしていきたい部分は
攻撃陣、バッティングですよね。バッティングをもう一つ上に、打率であったりだとか、得点圏打率であったりだとか、犠打の成功率だとかそういう部分を高めてほしいなと思いますね。

ー秋のキーマンを1人あげてください
キーマンはですね、全員かな。

ー全員が一丸となってということ
うちは、今年のチームに関してはずば抜けてという選手はいませんから。そういう意味ではチームがひとつになってやっていくことが1番だと思います。だから全員です。

ー秋は春と比べて試合も増えますが、戦略的な部分で変えるところはありますか
戦略的に変える部分は考えてないですね。ピッチャー陣の起用もそこまで考えてないですね。変わらないかなと思っています。リーグ戦みたいに勝ち点制ではないから、言葉は悪いですけれど色々な選手を『試せる』ところは無いですからね。まずは、どんなゲームでも勝ちに行くという所だけかなと思っています。あまり、(春と)変わりはないかなと思っています。

ー最後に法大ファンの方、また六大学を応援している方に向けて意気込みとメッセージをお願いします
まずは法政大学を応援しておられるファンの方々にはですね、連覇ですよね。そこを期待されていると思うので、しっかり連覇を目指してやっていきます。六大学のファンの皆様には法政大学また他大学も精一杯、コロナの状況下で夢や希望を皆さんに持たせられるために試合に臨みますので、ぜひ1人でも多く球場の方へ足を運んで頂きたいですね。白熱した試合をしっかりと見せます、頑張ります!

(取材・加瀬航大)

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青木 久典(あおき・ひさのり)
1973年2月16日生まれ
三重県出身・三重高校→法政大学→たくぎん→本田技研鈴鹿→サンワード貿易
『現役時代は主に遊撃手としてプレー。大学では 現侍ジャパン監督の稲葉篤紀と同期。副将も務めた。社会人野球部では9年間中心選手として活躍し2004年に現役を退く。その後、富士大学のコーチ、監督を経て14年1月より法政大学野球部の助監督に。同年12月から監督に就任すると、18年秋、20年春の優勝に貢献。今季も積極的なタクトでチームを春秋連覇に導く。』

銚子利夫 助監督

―まず初めに率直に優勝を決めたお気持ち
(優勝回数が)45回で早稲田と並んでいたので、46回で単独になったということがやっぱり1番うれしかったですね。

―就任後初のシーズンでしたが振り返ってみていかがですか
キャンプ前から法政に赴任して、鴨川キャンプに行って、コロナの影響で自粛になったので、その期間にこっちに残ってる選手を多摩川に連れて行って練習などしました。そのあと全体練習ができるようになってから(チームを)まとめなくちゃしょうがないということで、その2カ月が勝負でした。監督と僕が考えていることが一緒だったので、これが一発勝負の試合に勝てた要因だと思います。

―開催が危ぶまれる中、指導で意識したことは
指導はそんなにしてないんですけれど、いつ(リーグ戦を)やるか分からないけれど、身体を動かして肩の筋力を落とさないということを考えて、出られる選手を引っ張っていって体を動かしていたということですね。授業もありましたし、月曜日は休みにしていました。

―開催が危ぶまれる中での選手のメンタル面のケアなど
選手が就職とか監督もいろいろ心配していたので、とにかく開催すると思いながら、選手のモチベーションをリーグ戦開催が決まった時にどう持って行くかを重要視していました。その辺のモチベーションを最高潮に持っていくのが僕らの仕事なので、監督と十分話し合ってそういうことを考えながら練習をしました。

―6月から全体練習再開ですが、再び集合した選手の姿は
自粛中もある程度こういうことをやっときなさいとスタッフの方々が言っているんで、選手たちは特に4年生は就職活動がありますので、そこでやっぱり4年生が引っ張っていかなければならないと監督も言っていました。実際のところ4年生が(リーグ戦まで)あと数カ月しかない中、練習もできない状態でも、しっかり4年生が自覚を持ってやってくれてました。

―先程仰っていた「監督と意見が一致」とはどのように一致していたのですか
青木監督も社会人とか富士大の監督とかいろいろ経験しているんで、僕もJR東日本で9年間お世話になって、その指導に関してはある程度考えが一緒なので、どうやって5試合を戦っていくかというところで監督と意見が一致していました。今年のテーマが『和』なので、マネージャーはじめ学生コーチ、アナライザーを含め、チーム全体の150人弱がみんなが一つの方向に向かせるというのが僕らの仕事です。それを監督と2人でできたことが今回の結果につながったと思いますね。

―短期決戦、夏開催に調整するために意識したことは
やはり、体力ですよね。この夏の暑い時に試合をやるので。その体力をこの5試合、日程を見ながらポイントのゲームがあると思うんですよ。そこに向けてどう選手のモチベーションと体力、技術、心技体をどう持っていくかだけのことなので、後は選手を5試合に耐えられるような体力をつけることと、それまでの準備ですよね。それが一番重要なところでしたね。

―今季は永廣選手が首位打者を獲得されるなどつなぐ打線が印象的でした
そういうところは最高の準備をさせているので、なおかつ今季はリーグ戦初出場の選手と初打席初安打の選手ばかりなんですよ。去年まではある程度、力のあるものが試合に出てたと思うんですけど、6月からオープン戦で調整したんですが勝てなかったんですね。そこで監督の意向として短期決戦とはレギュラー、レギュラーじゃない関係なく一番良い選手を使わないと勝てないので、その辺で選手の競争もありましたし、本当のレギュラーはいないです。3年からレギュラーをとっている選手もいないですし、(今まで)リーグ戦全試合経験した選手もいないですし、そこを考えたら東大戦から始まり、終わってみたら永廣が首位打者だった。中村迅(営4)、宮﨑(秀太、営2)がベストナインをとったり、それは試合に出して結果を出した結果なので、これは選手がそれだけ頑張ってくれたということですね。それはつなぎの野球をやろうと言ってもできないし、僕らの仕事は選手をベストな状態で試合に出させることなので、その状態に持っていくことですね。やるのは選手ですから。選手がよく頑張ったし、監督の采配も投手交代とかも含めて全てがうまくいったからこうやって優勝できたのだと思います。勝負の世界ですから勝ちか負けるしかないんですよ。それを最初から勝てるという確信もないし、これが野球の面白いところですよね。強いチームが勝つわけじゃないですから。弱いチームが勝つ場合もあるし。

―ベンチから選手への声がけはどのようなことを
僕はもうプロで13年コーチをやって、社会人で9年コーチをやらせてもらっていたので、その辺は今まで通り、自分が今までやってきたことを全てそこに出しててあげただけです。だから今までの経験を後輩たちに継承するのが僕の仕事で、なおかつ学校のために学生のためにここに呼ばれてきただけなので、それをしっかり選手をちゃんと教育するということです。ベンチでそういうことをどうするというのは試合によって違いますから、試合展開によって東大戦と早稲田戦も違いますし、慶応戦も違いますし、そこをうまく誘導していくしかないですね。仕事としては選手がベストなパフォーマンスができるようなベンチワークですよ。

―2度のタイブレークを制しましたがタイブレークは
一発勝負の世界を僕も青木監督も知っているんで、どうやったらタイブレークとかそういうことに勝てるかというのを。先ほども言いましたけど一発勝負で負けられない試合ですよね、そこをどう戦うかだけです。選手がそれだけの仕事を僕らがさせられるように練習をしているだけであって、それが結局成功しましたから、勝たないとやっぱり答えが出ないですね。やっぱり勝ったということで僕らがやってたことが間違いじゃなかったという証明にもなります。勝たないと選手も上達しないし、成長していかないと思うんですよ。でも基本は勝つことより選手が人間として野球を通じて、成長してくれればいいと監督も僕も思ってます。そのために僕らがここに来ただけであって、勝ち負けはさっきも言ったように、どっちしかしかない。どっちが勝つかわからない。でもこの子たちが一生懸命野球に取り組んで、悔しい思いをしたり、うれしい思いをしたり、そういうことが自分たちの4年間で経験をして卒業したときに社会に出て一人前の人間になってくれることしか僕らは考えてないです。勝った負けたは勝負だからありますけど、第一はやっぱり『規律、挨拶』。監督も言ってますけど、礼節をしっかりしてそれで優勝しないと意味がないぞということを大事にしてます。ここは教育の場所ですから、野球のルールに基づき、野球でこれから社会に出て生きる術を見つけるとか、そういうことを僕らが導いているだけです。それをみんなが同じ気持ちになってやってくれたから(ルールが何であれ)勝ったということで、人間成長もできますし、「これだけやったから負けるわけがない」とかそういう気持ちになってくれて、この先社会に出て、社会の荒波に揉まれても大丈夫なような教育をするのが僕らの仕事なんじゃないかなと思っています。野球部に入って、4年間でレギュラーなれない子もいる。でもここで一生懸命やったことが、これから社会に通用するだけの良い人間にしたいだけのことなんですよ。それを僕がずっとプロで26年くらい現役で、それから横浜で13年コーチをやらせてもらって、社会人で勉強してこうやって人生をいろいろ経験してきているわけですよ。そういうことを母校の後輩に話してあげたり、人間成長や世の中に出たら通用しないことを教えてあげているだけですかね。「野球の中でもこう言うことしちゃダメだよ、世間に出てもこう言うことしちゃダメだよ」そう言うことが一人前の人間になるため、『当たり前のことを当たり前にやれる人間になることが一番』の思いでここに入ってきました。それが今まで監督一人だったので、150人面倒見るのが大変だからそこに僕が監督と力合わせてそう言うチームを作ろうということでここに来たので、勝った負けたより、そっちが1番大事ですよね。それがやっぱり1番の目的ですよ。レールから外れた時に戻してやるとか。野球でもそうですよ。間違った練習やってたら正しい方法に戻してやる。人間として曲がった方に行かないように、正してやってるのが僕らの役目だと思ってますよ。

―秋に向けて修正する点は
修正する点というのはやっぱり春に対しての修正もあるし、これから秋に向けて相手がいるわけですから、そのために自分たちが何をするべきかということを常に選手に問いただして、それでまた春のような感じで、行けるか行けないかですね。課題は山積みですから。その課題を潰すのが練習ですから。やっぱりある程度僕も経験してますけど、練習を通して僕らも勉強してますよ。59歳にして。日々勉強です。この世界は絶対が無いから。これやったら絶対勝てるとか、これやったら優勝できるというものは無いんです。課題を潰していって勝つ確率を高めることやるだけですね。野球の世界とは確率の勝負なので。防御率、打率ってみんな率なんですね。その確率を100%にすることは難しいけど、確率を高めることを僕らがやってることです。チームの課題を見つけて、練習に取り込む、それが野球だと思います。

―今月中旬から秋リーグが始まりますが、チームの状態、雰囲気などは
やはり優勝して自信はできたんだけれど、過信はしちゃいけないし、その自信をうまくここのレベルアップにつなげられたらなと思いながらも、やっぱり難しいですね、優勝したあとに気が抜けたりするので、その辺の持っていき方ですよね。やっぱり最終的にはベストな状態で、選手を送り出してあげるのが大きな役割なので、良い思いするのは選手なので、悪かったら僕らが責任を取ってやるくらいの気持ちでやらないと、選手は動かないと思いますね。だから秋に向けてはそれだけ練習もこれだけ暑いですし、こういった暑い中でどのように調整させたり、そういうのをやっぱり監督、僕、学生コーチたちがしっかり見て、選手を指導していけば…。やってみないとわからないですね(笑)。それが野球の面白いところですね。

―ファンの皆さんへ
このコロナ禍で観客動員も決められてるし、やっぱりそれでも神宮に足を運んでくれて、なおかつ法政が優勝した場合にはOBはじめ、周りの法政を応援してくれる人の喜びは優勝することなので、また秋に優勝を成し遂げられれば、一番良いですね。ただやっぱり、ファンの人は来たくても来れなかったりする状況なので、その辺は申し訳ないなという気持ちがありますけど、僕らが恩返しするにはやっぱり勝って、みんなが喜びを分かち合えるような試合をできれば、なおかつ優勝ができたら一番じゃないですかね。

(取材・須藤大樹)

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銚子 利夫(ちょうし・としお)
1961年8月24日生まれ
茨城県出身・市立銚子高校→法政大学→横浜大洋→広島東洋
『3年春に首位打者、 大学通算で3度のベストナインを獲得。 4年時に主将を務め、法大硬式野球部唯一の10勝全勝、日本選手権制覇を導いた法大のレジェンド選手。同期は広島などで活躍した小早川毅彦。卒業後はドラフト1位指名を受け横浜大洋(現DeNA)入団。92年にトレードで広島東洋に移籍。93年現役引退。引退後は横浜( 現DeNA )でコーチ。JR東日本では慶大・堀井哲也監督の下でコーチを務め、2020年2月から法大助監督に就任。プロ、社会人で培った経験を選手に還元し、14年ぶりの連覇に導く』

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