第96回日本選手権水泳競技大会
2020年12月3日〜6日
東京アクアティクスセンター
来年の東京五輪競泳の舞台となる「東京アクアティクスセンター」で日本選手権が開催された。本来であれば五輪代表選考会として今年4月に実施が予定されていたが、感染症を考慮し異例の12月開催に。この時期は来春に向けた強化期間に充てる選手も多くいる中、ハイレベルな真剣勝負が五輪の会場で繰り広げられた。法大からは10名の戦士たちが師走の激戦に挑んだ。大会前半戦は2日目に行われた女子400m個人メドレーで柏崎清花(営3)が昨年に引き続き銅メダルを獲得した。
試合結果
予選結果(女子)
種目 | 順位 | 選手名 | タイム | 備考 |
---|---|---|---|---|
200m自由形 | 18位 | 柴田夏海 (スポ3) | 2分04秒45 | |
400m自由形 | 10位 | 柏崎清花 (営3) | 4分15秒57 | |
12位 | 柴田夏海 | 4分16秒60 | ||
100m平泳ぎ | 22位 | 奈須田ゆうか (社3) | 1分12秒15 | |
400m個人メドレー | 4位 | 柏崎清花 | 4分46秒52 | 決勝進出 |
予選結果(男子)
種目 | 順位 | 選手名 | タイム | 備考 |
---|---|---|---|---|
1500m自由形 | 17位 | 小野吏久人 (経2) | 15分57秒90 | |
100m平泳ぎ | 11位 | 山尾隼人 (経1) | 1分01秒05 | |
400m個人メドレー | 5位 | 宮本一平 (人3) | 4分19秒12 | 決勝進出 |
決勝結果
種目 | 順位 | 選手名 | タイム | 備考 |
---|---|---|---|---|
女子400m個人メドレー | 3位 | 柏崎清花 | 4分43秒54 | 銅メダル獲得 |
男子400m個人メドレー | 7位 | 宮本一平 | 4分22秒03 |
Pick Up
柏崎清花
大会に向けて長野県で高地合宿を決行。来年4月に開催される五輪代表選考会への弾みをつけるべく、今回の日本選手権に挑んだ。400m個人メドレーは3位で2年連続の表彰台、200m個人メドレーでも決勝進出を果たすも、今大会を振り返る柏崎の納得の表情はなかった。
400m個人メドレーでの決勝タイムは4分43秒54と目標タイムにも自己ベストにも及ばず「少し焦っている」と今大会の結果に不安をのぞかせた。
メンタルの重要性を痛感した1年だった。ほとんどの大会が無観客での開催となり、会場には独特な緊張感が漂っていた。その緊張感によって本来の自分の泳ぎができなくなってしまった試合もあったと今年を振り返った。来年4月に開催される五輪代表選考会について、「努力だけではいけないところもある」と、メンタル面の強化という課題もみえたシーズンとなった。
2021年の目標に五輪代表内定を掲げた柏崎。五輪にかける思いは強いが、400m個人メドレーはこの種目の日本記録保持者である大橋悠依(イトマン東進)や、前回のリオデジャネイロ五輪に出場し、8位入賞を果たした清水咲子(ミキハウス)など立ちはだかる壁は大きい。ただ柏崎は「周りから見たら厳しいと思われているかもしれないが、代表の座は死ぬ気で勝ち取りたい」と強い思いを語った。
来年夏、1年の延期を経て開催予定の東京五輪。全スイマーが夢見る舞台は手の届く位置まで来た。まずは代表選考会が開催されるまでの残り約4か月、競泳人生を懸けた戦いに向け再始動していく。
(記事:山田 陸斗)
「オリンピックは死ぬ気で勝ち取りたい」と語った柏崎(写真は昨年の日本選手権)
宮本一平
足りなかったものを突き付けられた日本選手権だった。男子400m個人メドレーに出場した宮本は決勝に進出するも精彩を欠いた泳ぎで7位に沈んだ。
今大会の前には長野県の東御で高地トレーニングを敢行。本来ならこの時期は来春に向けた強化期間であるが、師走の日本一決定戦に向けて万全の準備を積んできた。迎えた大会初日。予選を難なく通過した宮本だったがレース後に予想以上の疲労感に見舞われた。直前合宿の疲労が影響したのか、「すごい疲れていて、もう1本泳ぐ体力が残っていなかった」と振り返る。決勝でいつもの『自信』と『積極性』を封印し、消極的になった宮本は、自己ベストから大きく遅れるタイムでゴールした。
「レースに向けて気持ちをコントロールする部分を強化していかないと五輪の代表権を勝ち取ることはできない」。今大会で宮本が強く感じたことであった。泳ぎの面でも、ラストの自由形の強化を来春の大一番に向けた課題として挙げる。「結果を残すことはできませんでしたが今の現状を知れたという意味では本当に良かったと思います」。宮本は今回の結果を悲観しているわけではない。むしろ、自分自身の『弱さ』に気付くことができたという意味で大きな一歩を踏み出したと言える。悲願の “東京五輪” へ、宮本が目指す道筋は明確だ。
(記事:根本 成)
4月の五輪選考会では “倍返し” なるか(写真は昨年のインカレ)
インタビュー
柏崎清花
ー400m自由形は初日の1組目でした
1番最初のレースで緊張もありましたが、それよりも400m自由形は早く泳ぎたくて仕方なかったです。今までの選手人生の中でこれほど楽しみと思ったレースはないくらいワクワクして臨みました。自由形が一番自信がある泳ぎですし、オリンピックが開催されるプールで泳げることも大きかったです。結果としてはそれほど良くはなかったですど、自分の納得いく泳ぎができたと思います。
ー結果について
振り返ってみると、最後の100㍍で余力があったので、もう少しずつ前半から上げていけていたら決勝に残れていたかもしれないです。
ー400m個人メドレーは去年3位でしたが、得意意識はあるか
自由形より未完成の部分が多くて不安要素が大きかったです。背泳ぎと平泳ぎは他の泳ぎより劣っている部分があるので、そこを強化してきたつもりではありましたが、400m自由形で決勝に行けていなかったこともあり、緊張してレースに臨みました。とりあえず決勝に残れて安心しました。
ー予選では隣のコースの選手が棄権しました
周りを見てしまうタイプですが、コーチに「周りを気にせず自分を信じて自分のレースをしなさい」と言われていたので今回はあまり気にせずに泳げました。
ー決勝の入場の際にはリラックスした表情でした
安心してレースに入れました。クラブで出るときは応援が少ないですが、同期の柴田が近くで手を振ってくれていて、リラックスできました。
ーレース展開について
今まではバタフライ、背泳ぎ、平泳ぎでためて自由形で爆発というレースプランでしたが、それでは限界あるとコーチと話していました。バタフライ、背泳ぎ、平泳ぎで差を開かせないようにということを課題にして取り組んでいたので、バタフライから積極的にいこうと意識して泳いでいました。
ー3位という結果、タイムについて
メダル獲得についてはうれしいですが、4分39秒9を切るのが目標だったので、順位はうれしいですが、タイムについて満足はしてないです。
ー200m個人メドレーは3日連続のレースとなりました
疲労はありましたが、400m個人メドレーよりも気楽に泳ぐことができました。
ー2日連続での決勝進出について
予選のタイムが2分16秒1でした。いつもより決勝進出のボーダーラインが遅かったので、残れるとは思っていなかったです。運がよかったと思っています。
ー大会を振り返って
五輪代表選考会に向けて踏み出していきたい大会でした。今回は大会に合わせて長野県で高地合宿をやってきていたので、今回の結果についてはショックでした。目標タイムにも自己ベストタイムすら出なかったので、4月の選考会に向けて少し焦っています。これから練習の仕方やフォームなどを自分やコーチと向き合って再始動して頑張っていきたいと思います。
ー今大会での課題や収穫
大きい試合になればなるほど、足りない部分が明確になると感じました。清水咲子選手(ミキハウス)は4分36秒台で、派遣標準記録も上回っていて、清水さんが代表の座を掴むという予想があるかもしれないですけど、そこに食い込めるように頑張ろうと思っています。
ー五輪開催予定の新会場(東京アクアティクスセンター)について
入ってまず大きいなと思いました。オリンピック会場ということで気持ちが高まりました。東京辰巳国際水泳場とは雰囲気が違って、天井の方まで観客席があったり、大きいスクリーンがあったりして迫力がありました。
ー無観客での開催について
普段は母とかが応援に来てくれますが、無観客は寂しいです。緊張感が普段の試合と全然違います。地元の千葉県内での大会では、ホームで知り合いも多く、あまり緊張もないですが、大きい試合だと周りがほぼ年上の人たちということもあり、緊張は倍になる気がします。インカレなどはチームで一体となれるので好きですし、楽しくできますが、仲間が少ないところでは委縮してしまうと今回すごく感じました。練習は自信もってできますし、やるべきことはやったという自負がありますが、それをそのまま試合に出せない時があります。レース直前に不安になってしまったりして、自分の泳ぎが小さくなってしまうこともありました。
ー所属クラブについて
小さいグループで一緒に練習するメンバーは少ないです。自分が一番年上で中学生や高校生も多く、練習の仕方や回数、内容も違うため、ほぼ一人で練習しています。
気楽にできますが、競える相手がいないため、競い合える仲間がほしいともたまに思ったりします。
ー今年1年を振り返って
今回の合宿で憧れの選手である藤森太将選手(木下グループ)と話した時に、「メンタルは一定に保てるように出来れば、試合も安定して挑める。」というアドバイスをもらいました。メンタルの弱さでレースがダメになってしまったこともあったので、今回はそれがないようにと思って大会に挑みました。やっぱり一流選手のように考えることは難しいことだと感じましたが、来年に向けてメンタル面を強化していきたいと思いました。五輪代表選考会は、努力だけではいけない部分もあると思います。気持ちの面を強化していきたいと思った1年でした。
ー練習出来なかった時期について
不安になることはなくて、4月は1ヶ月間くらい泳げない期間がありましたが、実際何もしないで過ごしてみて、心のオフというか、何も考えずに過ごすことが出来てスッキリしました。それから練習を再開して、これからまた頑張ろうと前向きに過ごすことができました。
ー五輪への思い
オリンピックは死ぬ気で勝ち取りたいです。派遣記録には届いていなくて、周りから見たら厳しいと思われてるかもしれませんが、最後の最後まで頑張ります。
ー来年は大学最終年となります
インカレ優勝が目標です。優勝して有終の美を飾りたいです。
宮本一平
ー 日本選手権を終えて
本来であったらこの大会は今年の4月に開催されていたはずでしたが、延期になっていました。多くの方々が開催に向けて動いてくれたこともあって、この12月に試合を行うことができたので関係者の方には感謝しています。結果としては、どの種目もベストで泳ぐことができなかったのですごい悔しかったです。
ー 調整の難しさはありましたか
本来ならば、この12月の期間は強化期間になっています。今年は今までとは違う流れではあったのですが、「日本選手権」という大会に向けての練習はしっかりとできていたのかなと思います。
ー 11月の練習状況は
10月のインカレと日本短水路が終わってから少し休みを入れてから動き始めました。11月は同じチームに所属している社会人の選手が日本社会人選手権に出場する関係もあって、少しの期間担当コーチに練習を見て頂くことができませんでした。その期間は法政の練習に参加して、チームメイトと一緒に頑張っていました。社会人選手権が終わってからまたスウィン大宮の方に戻り練習をしていました。
ー 大会当日のコンディションは
今回は五輪会場である「東京アクアティクスセンター」で開催されるということだったので、新しいプールで泳ぐということは貴重なことなので気持ちの面ではすごく舞上がっていました。ただ、日本選手権前に長野県の東御で高地トレーニングをしていて、その疲れがあったのか消極的になっていた部分があり、今回タイムがあまり良くなかったのかなと思います。
ー 疲れが抜けていないと感じたのはいつですか
初日の400m個人メドレーの予選が終わった後にすごい疲れていて、決勝には進出しましたがもう1本泳ぐ体力が残っていなかったのかなと。メンタル面が弱くて決勝を泳いでいるときも身体にきつさを感じていました。
ー 200m個人メドレーのレースを振り返って
初日に2本泳いで、2日目はオフだったので気持ちの面では楽になれていました。200m個人メドレーの予選は2分0秒台で泳げて、予選の泳ぎの感覚は良かったと思います。決勝は自分が得意としている平泳ぎの勝負所で隣の選手を追い抜けなくて心が折れてしまい負けてしまいました。レースプランもそうですし、レースに向けて気持ちをコントロールする部分をもっと強化していかないと来年4月の日本選手権で五輪の代表権を勝ち取ることはできないのかなと思いました。結果を残すことはできませんでしたが今の現状を知れたという意味では本当に良かったと思います。
ー 泳ぎの面での課題はありますか
400mにしろ、200mにしろ最後のクロールの所でバテてしまい、競り勝つことが今回の日本選手権ではできなかったのでそこを徹底的に強化していきたいです。また、僕の武器である背泳ぎから平泳ぎの所で他の選手をもっと離していけるように、自分の持ち味をもっともっと強くしていきたいと思います。
ー 選考会までの残りの期間の意気込み
本当に五輪に出場したいので、強い気持ちで練習に取り組んで自分自身をどんどん強化していきたいです。残りの期間で今まで以上に追い込んでさらに強くなれればと思います。また、今回最終日の200m平泳ぎで後輩の山尾君に負けたことが悔しくて、チームを勢い付けるためにも主将として大きな大会で戦っている姿を他のチームメイトに見せなくてはいけないなと改めて感じました。