第63回日本選手権(25m)
2021年10月16日(土)・17日(日)
東京辰巳国際水泳場
大会2日目は、男子200m平泳ぎで山尾隼人(2)が2分04秒41の自己ベストをマークし銅メダルを手にした。男子200m個人メドレーでは宮本一平(4)が5位。新主将に就任した小野吏久人(3)は男子400m自由形に出場し20位だった。小野は「悔しい思いをした」と話しながらも「来年に向けて頑張っていこうと思える転機になった」と前を向いた。
※写真提供/日本水泳連盟
記事
山尾隼人
4人のオリンピアンに挑んだ山尾が、一角を崩して銅メダルをつかんだ。自身としては、日本選手権で初のメダル獲得。「正直3位まで行けるとは」と驚きつつ、「(東京五輪代表の)佐藤翔馬選手には初めて勝つことができたので良かった」と満足げだった。
積極性を欠いて予選敗退に終わったインカレのリベンジを果たした。この日は「前半から突っ込んで、後半は耐え切る」をテーマに、最初の50㍍からベストラップを刻んだ。圧巻だったのは、4位で迎えたラスト50㍍。一番キツい場面で、先行していた佐藤を捉え、最終的に0秒52の差を付けた。「誰よりも勝ちたいという思いが強かった」から手にした結果だ。
1年前のこの大会が飛躍の始まりだった。シニアの全国大会で初めて決勝に進出し、トップレベルを肌で感じ取った。その後はトップ選手の背中を追い、長水路の日本選手権やジャパンオープンでも決勝の舞台で活躍。物怖じしない強さと速さを手にして、1年間で表彰台まで上り詰めた。
山尾が入学時に立てた目標は「(4年間で)1回でも日本代表に入ること」。銅メダル獲得を足がかりに「世界で戦える立ち位置に行けるように頑張っていきたい」とより一層気を引き締める。世界の頂点に立った北島康介氏から続く、お家芸『200㍍平泳ぎ』に、また一人ポスト北島候補が誕生した。(根本 成)
選手インタビュー
山尾隼人
ー 200mで3位という成績について
先日のインカレではすごい悔しい結果に終わってしまったので、日本短水路選手権ではいい結果を出して、次のシーズンに繋げていきたいという思いでした。正直3位まで行けるとは思っていませんでしたが、瀬戸大也選手や佐藤翔馬選手といったフル代表を経験している選手の1人には勝ちたいと考えていました。実際、佐藤翔馬選手には初めて勝つことができたので良かったです。
ー 表彰式は緊張されていたようですが
トップ選手の方たちと表彰式に出る経験が全く無かったので、自分自身すごい緊張してしまいました。
ー 200mの決勝は前半から攻めていたように見えました
前半から行くことが持ち味なので、攻めることは意識していました。タイムとしては、前半の入りで59秒台を目指していました。59秒台では入れませんでしたが、それに匹敵する1分00秒0で入ることができたので良かったです。
ー インカレでは前半攻めきれなかったと仰っていました
短水路の方では自信があった分、前半から勇気を持って泳ぐことができました。長水路に比べて、ターンの回数と水中のひとかきひとけりの回数が多くなるので、高いスピードを持続することができます。長水路の場合は、真ん中を過ぎたあたりから減速していきますが、短水路はその前でターンできるので、周りの選手と比べても得意意識を持っています。
ー 中盤の泳ぎに関してもしっかり耐えることができましたか
ラストはバテてしまいましたが、100mから150mのところを抜くことなく、隣の選手について行くことができました。
ー 2分04秒台というタイムについては
事前にコーチとは2分03秒台を出すことを目標にしていました。結果として出すことはできませんでしたが、1.3秒くらいベストが出たので、その点に関しては良かったです。
ー 長水路に繋がる手応えもありましたか
短水路ですけど、日本選手権で初めて表彰台に上がることができ、自信になりました。この経験を3月の代表選考会であったり、来年の長水路の大会に繋げていきたいです。
ー 今回の結果に繋がった要因は
やはり、インカレですごい悔しい思いをしたからだと思います。1週間しかありませんでしたが気持ちの面で、この大会でベストを出して、決勝で戦ってシーズンを終えたいという気持ちがありました。誰よりも勝ちたいという思いが強かったと思います。
ー インカレと比べてコンディションはどうでしたか
泳ぎの感じでは、コーチからも「いいんじゃないか」と言われていました。自分自身の感覚としては、もちろんインカレの方が気持ちは入っていましたが、泳ぎに関してはしっくりきていたと思います。その結果、インカレよりも上手く泳ぐことができました。
ー 入学してからここまでは、順調に来ていると感じていますか
入学時は、大学2年生で迎える4月の日本選手権で結果を残して、ユニバーシアードの代表に入ることが一つ目標としてありました。ユニバーシアードは来年に延期になりましたが、現在の自分の立ち位置的には、まだまだそこに及ばないレベルです。タイムに関して言えば、ベストタイムを更新し続けているので、順調かなと思います。
ー 今回日本選手権で表彰台に上りましたが、在学中の一番の目標は
4年間の中で1回でも日本代表に入ることを目標に掲げています。元々、東京五輪は厳しいと思っていましたが、もし競技を続けるなら社会人1年目の年にパリ五輪があるので、そこを狙える位置であったり、世界で戦える立ち位置に行けるように残りの期間で頑張っていきたいです。
ー 3月の国際大会の選考会の目標は
100mでは59秒台、200mでは2分08秒2が目標です。そこを出せれば、ユニバーシアードの代表も見えてくると思うので、そのタイムを目指していきたいです。
ー 目標達成に必要となる部分は
前半から勇気を持って泳いで、後半の部分もしっかり耐えて逃げ切るようなレース展開を考えてるいるので、前半の部分も後半の部分もどちらも磨いていきたいです。
小野吏久人
ー インカレと短水路選手権、それぞれを振り返っていかがですか
どちらも思ったような結果を出すことができず、悔しい思いをしました。ですが、この悔しい思いを糧に、来年の最後のインカレに向けて頑張っていこうかなと思える転機にもなりました。
ー 今は既に気持ちの切り替えはできていますか
半年前から、あまり記録が出せていなくて、気持ちの面で落ち込むことが多くありました。今はしばらくオフをもらっている状況で、この期間でしっかり気持ちを切り替えることができればなと思います。
ー キャプテンに就任されたということですが、主将になった経緯は
1年生の頃からコーチに、僕の代の主将は吏久人に任せたいと言われていました。吏久人の作るチームがどんなチームなのかを見てみたいと言われていた経緯と、個人的にコツコツと継続して努力ができるタイプだと思っているので、そういった部分が評価されたのかなと思います。
ー竹鼻選手や宮本選手からは何か言葉をかけられましたか
歴代の主将も最初は結構悩んで、自分のことを追い詰めてしまうことがあったそうで、竹鼻幹太さんや宮本一平さんもそういう経験があったと伺いました。周りに頼れる仲間がいるんだから、周りをいい意味で使って、相談しながらいいチームを作ってくれと言われました。
ー 主将になっての心境は
まだ1週間しか経っていませんが、思っていたよりもやることが多くて、時間が足りないと感じています。
ー 竹鼻選手の姿を見て、この役職は大変だと感じる部分はありましたか
学校練主将としてチームを牽引する中で、悩んでいる姿は間近で見てきました。そういう姿を見て、僕も主将になったら同じように悩むのかなと思っていた部分はありました。
ー 小野選手から見て、一つ前のチームの印象は
一つ前は、みんなが和気あいあいとしていたチームという印象です。学年関係なく、みんなが楽しく活動できていたと思います。
ー インカレでは男子がシード権を落とす結果になりましたが、どういった課題が浮き彫りになりましたか
男子だけの課題としては、本来なら点数を取れる人が、軒並み点数を落としてしまったことです。僕に関しても1、2年生の頃は点数を獲得していましたが、取れない結果に終わってしまいました。個人として点数を取れる人が少ないという点と、得点が2倍となるリレーで一つも決勝に残ることができませんでした。シードを取っている大学を見ても、また法政がシードを取っていた時期を見ても、リレー種目で最低2つはA決勝に残っています。なのでリレーの弱い部分もクリアできれば、来年はシードを獲得できると思います。
ー 今年はどんなチームを作っていきたいですか
水泳部の部訓に「水泳は人間形成の道なり」というものがあります。水泳の結果も大切ですが、学生生活を通して人間性を高めてもらい、その上で、応援される選手になってほしいと思っています。競技結果はもちろん大切ですが、まずは人間性の面を高めていって欲しいです。今年は10ヶ月と、例年より残りの時間が短いので、そういうところから力を入れて取り組んでいきたいです。
ー チームの目標は
女子はインカレで総合5位、男子はシード獲得が目標です
ー インカレ後のチームの雰囲気は
悪くいえば少しメリハリがなくて、全体的に緩んでるという印象があります。
ー 個人としての反省点はありますか
1、2年生で点数を取ってきたので、3年目も取れると思っていたところがありました。ですが、調整がうまく噛み合わなかったということと、自信につながる練習が詰めていなかった部分があったので、残り10ヶ月で目の色を変えて練習に取り組んで、来年はかっこいい姿を見せなければいけないなと思っています。
ー ラストイヤーの目標は
最後の大会となるインカレで2種目A決勝に出場することと、去年も今年も800mフリーリレーに出させてもらったので、そのリレーを受け継ぎ、後輩たちをA決勝に連れて行くことが個人の目標です。
ー 目標達成に必要になってくるものは
今年のインカレは、スタート台に立った時に自信がなかったです。辛い時に踏ん張れる自信が持てなくて、今までやってきた練習を信じられない自分がいました。水中練習は今まで以上に真剣に取り組み、その他にもトレーニングできるところはあると思うので、走るなり、寮で取り組むなりしていきたいです。
ー ラストイヤーとしての意気込みは
今年のインカレは不甲斐ない結果に終わってしまいました。その中で、前主将の宮本一平さんが優勝された姿を見て、かっこいいと思ったので、僕もかっこいい主将になって背中で引っ張って行けたらなと思っています。