各カードのMVPを紹介する『クローズアップ』。東大戦は安達壮汰 投手(営4=桐光学園)を選出。2試合連続リリーフ登板で3イニングを打者9人で片づける好投で勝ち点獲得に大きく貢献した。
「周りに球が速いピッチャーがいっぱいいる中で自分を見失っていた」
法大の新たなブルペンエース・安達壮汰(営4=桐光学園)はここまで8戦7登板とフル稼働で必要不可欠な存在となっている。第5週の東大戦では2試合に登板し、計3イニングを打者9人、無失点に抑える圧巻の投球を披露。優勝へ向けて1つの負けも許されない中、2試合連続で最後のアウトを奪った。
入学時から期待値は高かったものの、ここまでの3年間はリーグ戦の登板はなかった。その理由について本人は「周りに球が速いピッチャーがいっぱいいる中で、スピードで追いついていかなきゃいけないと思ってやってて、 自分を見失っていた」と150㌔を越すスピードボールを投げる投手を複数抱える大学野球、法大での苦悩があった。
転機はオフに「自分はどういうピッチャーなのか」と0から自分を見直したことだった。考え抜いた先にあった「どんどんストライクとって打たせてとる」という現在の投球スタイル。これまで築き上げて きた“原点”に立ち返る事だった。この冬の取り組みでは「初球のストライク率の向上」、「ストライクを取れるボールの増加」と、自らの理想に近づくための確かな手応えを掴んだ。
順調に進化をみせる中で髙村祐助監督就任という追い風も吹いた。「自分にはない感覚を持っていて。投げるボールを見て、 こういう打球、こういうヒットが飛びやすいっていうのを教えてくれて、そこに飛ばないように投げれば自然と抑えれるんじゃないかっていうことでやってきた」(安達)と長年プロ野球で投手コーチを務めた経験に基づく考えも吸収した。
今季は全て中継ぎでの登板であり、先発するWエース・篠木健太郎(営4=木更津総合)、吉鶴翔瑛(営4=木更津総合)のあとを受け継ぐ立場に。「2人が『あとは任せた』っていうことで言ってくれるんで、2人の勝ちは絶対消したくないっていう思いがある」とがむしゃらに腕を振り続けている。また今季チーム初勝利を飾った立大2回戦では2死一、三塁の一打同点のピンチから登板。この局面を無失点で切り抜けた事が今では大きな自信になっているという。
ここからは早大、明大と昨季勝ち点を落とした難敵との2週連続の勝負。挫折を味わった3年間の思いを胸に、必死に腕を振る安達の背中を神宮に足を運び、“声援”で後押ししてほしい。
(取材、記事・矢吹大輔)