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【水泳】さあ、三井よパリで翔け!!「メダルの獲得と自己ベストタイムの更新、日本記録の更新を狙う」 ~三井愛梨 パリ五輪直前独占インタビュー~

パリ五輪直前独占インタビュー
2024年5月18日(土)
横浜サクラスイミングスクール

5月18日に三井選手の練習拠点である横浜サクラスイミングスクールで独占取材を行った。パリ五輪に向けての抱負やこの秋から始まる留学についてなど様々な質問に答えてもらった。

エコぴょんとサインを手に一枚

記事

女王は女王のままパリへ乗り込んでいく。今年3月末に開催された競泳の国際大会代表選手選考会・女子200mバタフライに出場した三井愛梨は、昨年4月に世界水泳の代表を内定させた日本選手権同種目でマークした自己ベストタイムを上回る2分06秒54で優勝。それと同時に自身初となる五輪代表が内定した。

予選、準決勝はともに危なげない泳ぎで1位通過。どこか感覚を確かめるかのようにみえた予選のレースを三井は、「予定通りのいい泳ぎができたのではないか」と振り返っている。準決勝は派遣標準記録(2分07秒95)の突破を視野に入れて挑んだものの惜しくも届かず(2分08秒42)。しかしそれでも、後半の加速力に確かな手ごたえを掴み全体1位で決勝進出を決めた。レース後のインタビューでは「明日も全力で泳いで、派遣を突破してもちろん優勝して、タイムでいったら2分05秒台を目指したい」と言葉を残し、会場を後にした。

やっぱり彼女は強い…

迎えた決勝戦。詰めかけた観客からの声援をいっぱいに受け、堂々と三井は4コースのスタート台へと登った。一瞬の静寂の後に号砲が鳴ると、およそ2分間のパリ五輪代表権をかけた戦いが始まった。後半型の泳ぎを得意とする三井にとって、前半を1分01秒台前半で入ることは昨年の世界水泳の頃から課題に掲げている部分である。この日のレースの前半100㍍のタイムは「1分01秒36」できっちりと目標通りのタイムで入ると、トップから約1秒差の全体3位でターン。ここからはまさに翔ぶような泳ぎで一気に差を詰めていく。残り50㍍のターンで先頭に立つと、そこからは一人旅に。後続を寄せ付けず、2分06秒54の自己ベストをたたき出し優勝。準優勝の牧野紘子(あいおいニッセイ)とともに、五輪代表内定を手にした。しかしレース後の彼女の顔はどこか浮かない様子にも見て取れた。「ゴール板に着いた瞬間は嬉しいというよりも、タイムを見た時に悔しいという気持ちが1番最初に湧いてきた」5秒台、そしてその先にある日本記録(星奈津美氏が2004年に記録した2分04秒69)更新を視野に入れていた三井にとっては満足できる結果ではなかったようだ。

内定までの道のりは決してやさしいものではなかった。昨年のインカレでの2バタ優勝後から歯車が狂い始めた。自分の泳ぎの感覚を失ってしまい、その後のアジア大会では惨敗。「人生で初めてくじけそうになった」と三井はその期間を振り返る。それでも高校時代から2人3脚で歩んできた藤森善弘コーチとともに、自分自身に「絶対に五輪に出るんだ」とプレッシャーをかけ続け徹底的に泳ぎこんできた。厳しい指導を成長の糧に変え、師弟で掴んだ夢舞台へのチケットだった。

パリ五輪行きのチケットを掲げる三井(写真左)

国際大会代表選手選考会以降三井は、前半のスピード強化の練習とウエイトトレーニングに特に力を入れている。「選考会の時に1分01秒台前半だったが、オリンピックの舞台では00秒台前半で入ることができるように練習している」と語るように、前半から積極的に飛ばしていく海外選手を想定して練習を積んでいる。2023年7月に開催された世界水泳の200㍍バタフライで優勝したカナダのサマー・マッキントッシュは、同レースで前半100㍍を三井より2秒以上速い58秒97で入ったうえ、ラスト50㍍のタイムも三井を上回り2分04秒06のワールドジュニアレコードを叩き出した。昨年の夏に実感した世界トップとの差を埋めるため鍛錬の日々だ。またウエイトトレーニングも、三井自身もプル(水を掻く腕の力)が強くなったことを強く実感するくらいの効果が出てきている。肩や腕周りの筋肉を中心に鍛えており、「半袖のTシャツを1年ぶりくらいに着ると、こんなにきついんだっけ?と思うくらい効果は出ている(笑)」と日常生活にも変化がみられるようだ。

昨年夏の世界水泳に続き、これで2年連続のシニア代表入りとなった三井。「夢の舞台」と語るパリ五輪まではもう2か月を切っている。ここからは「パリ五輪でのメダル獲得」を目標に再び世界の猛者たちと戦う準備期間のためイタリア遠征を消化し、そのまま決戦の地パリへと向かう予定だ。「五輪ではメダルの獲得と自己ベストタイムの更新、また日本記録の更新も狙っていく」と独占インタビューの最後に力強く語ってくれた。

終始和やかなインタビューだったが、節々に彼女の内に秘める闘志が伝わってきた

翼を広げるようなその泳ぎで、パリの地を飛ぶように翔ける彼女の姿が楽しみだ。(野田堅真)

インタビュー

三井愛梨

――オリンピック代表内定が決定した直後の率直な気持ちは
ゴール板に着いた瞬間は嬉しいというよりも、タイムを見た時に悔しいという気持ちが1番最初に湧いてきました。

――自己ベストタイム(2分06秒54)ではあったが
選考会前からかなり手応えもあって、2分05秒台も出るかなという感じではあったので悔しかったですね。

――決勝のレースを振り返って
前半100㍍は自分の中でのベストラップで入ることができたのですが、なんせ周りが速すぎて…(笑)。レース前からそうなることは分かっていたので前半は自分のレースに徹しようと泳いでいました。周りのペースに惑わされることなく、つられるような形で力みなく前半は泳ぐことができていたと思います。ただ100㍍から150㍍にかけてのところで少し力んでしまった分、後半伸びきれなかったのかなと思います。

――昨年の世界水泳代表内定と今回の五輪内定。気持ちに差はあったか
昨年は初のA代表ということもあって嬉しいという気持ちが強かったです。今年はタイム的にも納得できない部分はありましたし、昨夏あたりからの不調もあった中で、「五輪に出るんだ」と自分にプレッシャーかけ続けての内定だったので安心感が大きかったです。

――昨年の夏から秋にかけての不調の時期を振り返ってみて
インカレの200㍍バタフライ(以下:2バタ)で優勝した次の日から、なんでかは分からないんですけど感覚が悪くなり調子も落ちていってしまいました。そこから自分を客観的に見ることができずズルズルといってしまいました。2バタ終わってからほっとしてしまった部分も大きく、立て直せずに秋が過ぎていってしまいました。

――インタビュー慣れましたよね(笑)
写真や映像も撮っていただくことも多いのですが、やはり1番はインタビューが多いので慣れてはきましたね(笑)

――水泳はいつから始めたのか
スイミングスクールに通い始めたのが5歳の時で、選手コースに入ったのが小学2年生に上がるタイミングです。

――それ以前は何か他のスポーツをやっていたのか
新体操をやっていました。

――水泳一本に絞ったのはいつ頃になるか
小学校5年生ですね。

――水泳を続けてやれている理由は何かあるのか
新体操を辞めて水泳一本にした理由が、水泳の方が全国大会にも出場できてある程度の結果を残すことができていたっていうのがあったので、「結果が出るから」は続いている要因として大きかったと思います。

――バタフライを専門に泳いでいる理由は
ずっとスタイルワンがバタフライで1度も変わったことがありませんでした。なので気づいたら泳いでいたというのが理由になりますね。自分に合っているんだと思います。

――これまでの競技人生で1番の挫折は
昨年の夏が終わってからアジア大会にかけての期間が1番の挫折だったのかなと思いますね。挫け切ったわけではないんですけど、挫けそうにはなりました。

――なぜ法政大学の国際文化学部に進学を決めたのか
小学校6年生くらいから海外遠征に行かせていただくことが増えた中で、海外に興味を持ち始めました。海外での生活、留学がしてみたいなと思い始めた中で、カリキュラムとして海外短期留学のある国際文化学部に進学を決めました。

――短期留学先をなぜオーストラリアに決めたのか
高校2年生でハワイに行くまで、オーストラリアにしか遠征に行ったことがありませんでした。今まで合計で5回程オーストラリアにも行っているので自分の中で勝手に親しみがあるというか、実際に行っていても過ごしやすい場所ではあったので留学先に決めました。

――今まで訪れたことの無い国に行ってみようとはならなかったか
それも考えはしたんですけど、イメージ的にオーストラリアがいいなというのがずっと頭にあったので迷いはなかったですね。あと近いですし、時差も少ないですし(笑)

――遠征先の環境に順応するために意識してやっていることは何かあるか
行く場所行く場所が水泳の合宿ができる場所なので、大都市というよりかは田舎の町に行くことが多くあります。大きな自然を見たりですとかその土地の空気を感じたりすることがとても好きなので、外に出てることで環境に馴染むようにというのは意識しています。

――留学先で1番やりたいことは
特にこれというものはありませんが、なかなか留学ということ自体も経験できることではないので、様々なことを吸収して帰ってきたいです。

――三井選手から見て藤森コーチはどんな方か
厳しいです…

写真最前列中央、三井の左が藤森コーチ

――先日の代表選考会の時に藤森コーチがインタビューを受けていた記事を目にしたが、コーチからの指示を「嫌です」と却下することがあると書かれていが実際は
「嫌です」っていうのは言い過ぎですよ(笑)。口には出してはないんですけど、コーチからしたら態度が嫌ですっていうように見えているんだと思います(笑)。普段の生活から厳しい方ですし、水泳に関することはとことんこだわっていらっしゃるので、細かく厳しく指導していただいています。

――試合で緊張はする方か
緊張します。最近は選考会や国際大会くらいですが、大きな大会はやはり緊張します。

――最近ウエイトトレーニングに力を入れているようだが、泳いでいて効果は実感するか
プル(水を掻く腕の力)が強くなったなっていうのはとても実感します。ペンチプレスや前腕を鍛えるためのスナッチなど肩周りを中心に鍛えるトレーニングしています。半袖のTシャツを1年ぶりくらいに着ると、こんなにきついんだっけ?と思うくらい効果は出ています(笑)

――目標にしている選手やライバル意識している選手はいるか
特にはないですね。

――オリンピックまで残り2ヶ月どのような調整をしていくのか
今は今月末の試合に向けて前半100㍍のスピード強化に取り組んでいます。スピード強化に取り組んだ上で、前半から後半流れに乗ったまま泳ぐことができるような練習をさらにやっていく予定です。

――具体的には前半100㍍どのくらいのタイムで入りたいか
選考会の時に1分01秒台前半だったのですが、オリンピックの舞台では00秒台前半で入ることができるように練習していきたいです。

――星奈津美さんが持っている2バタの日本記録はもちろん狙っていくか
はい、狙っていきます。

――最後にオリンピックに向けての意気込みをお願いします!
オリンピックではメダルの獲得と自己ベストタイムの更新、また日本記録の更新も狙っていきますのでこれからも応援よろしくお願いします!

(取材・編集/野田堅真、齋藤凌)

インタビュー翌日には本校市ヶ谷キャンパスで壮行会も実施された

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