2021年9月29日(水)、10月1日(金)
法政大学野球部合宿所(オンライン)
本来は9月11日に開幕予定だった東京六大学野球2021秋季リーグ戦は、8月下旬に法大で発生した新型コロナウイルスの集団感染を受け、1週間遅れでの開催となった。リーグ戦参加が危ぶまれた法大だったが、六大学野球連盟、五大学の協力もあり、明日9日からのリーグ戦参加が決定。平日開催を含めて19日間で10試合を戦う特別なシーズンを前に、弊会は加藤重雄監督、大島公一助監督、三浦銀二主将の3名に取材を敢行。活動停止期間中のお話から再開後の練習状況、そしてリーグ戦への思いについてお話しを伺った。(加藤監督、大島助監督は10月1日、三浦主将は9月29日に取材)
監督、助監督、主将インタビュー
加藤重雄 監督
ーリーグ戦に参加できると決まった時の率直なお気持ちは
本当に関係者の皆様に感謝しかなかったですね。特に連盟と五大学の監督をはじめとした皆さまの厚い厚いご厚意に感謝するという気持ちしかありませんでした。
ー集団感染が発生したことが分かった際はどのようなことを考えられましたか
正直野球のことは考えられなかったです。コロナというのを怖がってもいましたし、普段から注意して、アルコール消毒、ソーシャルディスタンス、練習中も間を空けてランニングをしていました。同じグラウンド内で、他の部活で集団感染が発生したこともありましたので、注意はしていました。集団感染が起きた時はショックでしたし、起こった時には1人でも感染者を減らすようにということ、重症化する学生たちが出ないように、と考えていました。ご家族の方からお預かりしている大切な学生ですので、祈るばかりでスタッフ、大島助監督と看病しました。最後はスタッフも感染してしまいましたので、その責任も非常に感じた次第です。
ー身の回りの世話をされた際、具体的にはどのようなことをされたのでしょうか
(感染者は)発熱していましたので、保健所の方から「絶対に近づかないでください」と言われていました。最初はスタッフがお弁当を運ぶなどをやってくれていたのですが、スタッフがやるというのもおかしいのではないかと思い、保健所や大学の方に話をしました。しかし、結果的に野球部は野球部の方でやらざるを得ないということになりました。3食全部お弁当に変えた中で、スタッフがお弁当を3階まで運んでくれたりとしてくれてはいたんですけど、感染者が出てしまいました。それを受けて最終的に私と大島でそれをやることにしました。3階と2階の居住部分で陽性者と陰性者を区別していましたので、3階まで弁当を運んだりしていました。ゴミは選手がまとめていましたので、そのまとめられたものを外に捨てるということを私と大島でやっていました。そんな中、スタッフからも発熱者も出てしまった時には、申し訳ないという思いと今後どうなることかという不安がありました。
ー練習再開の際にお話しされたことは
一つはどこで感染するのか分からないから、これでもう終わりだ、感染しないんだと思わないように今後も対策を徹底しようということ。もう一つは、この中でリーグ戦に出ることができたことに感謝しようということを話しました。法政大学としてリーグ戦参加が途絶えず、参加させてもらえることは感謝するべきことだと伝えました。短い調整期間の中でも皆様に迷惑をかけないように、惨めな試合にならないようにOBの皆様、関係者の皆様、ご家族の方に良い試合を見せることができるようにしようと話しました。現状としてはあまり勝敗にこだわらない、出ることが最大の目的ということにはなるんですけど、そうは言っても勝負の世界。一生懸命やって、勝敗にこだわるというのも対戦してくださる五大学の皆様、六大学連盟の関係者の皆様に対するせめてもの恩返しだということ。この2点を話しました。
ー5日間で4試合を行うなど過密日程となります
今の時代ではなかなか無理はさせられないという背景はありますよね。ただ、1日空きますし、(投手については)連投というのも選択肢の一つではあります。40日から45日のブランクはあるとはいえ、その前は6試合ほどオープン戦も行えましたし、体もある程度鍛えられていると思います。隔離期間中もボールを投げることはできなくても、トレーニングを選手たちはしてくれていました。
勝ってしまったら皆さんに申し訳ないという気持ちがないと言ったら嘘になりますが、チャンスを与えていただいたので、過密日程の中でもできることをやりたいと思います。選手たちにも10月9日に向けてベストを尽くせるようにという話はしています。ただいちばん怖いのは故障することなので、そこだけは気をつけるようにということは選手たちに徹底しています。
ー現在チームの調整具合は
贔屓目にはなるかもしれませんが、7割くらいはきているかと思います。通常でしたら月曜日は休みにしていましたが、思わぬ長期休みになってしまいました。そのため、活動再開の8月25日以降は休みなしでやっています。徐々に体の調子を上げていこうという話はしているので、(初戦の)9日は90%以上で臨めるんじゃないかと思います。
ーどのような練習を現在はされていますか
対外試合は出来ませんが、3日に紅白戦をやります。ブランクはありますが、ENEOSなどの社会人チームとも試合をしていたので、勘はそんなに衰えていないと思います。他にはシートバッティングなどで調整をしていきたいと思います。
ーメンバー選出については
春とちょっとメンバーを入れ替えています。ENEOS戦までのメンバーを軸に考えています。とはいえ、どこまで筋力等も含めて体の調整ができているかは分かりませんし、あまり急にすると故障にもつながります。なので、これからの1週間を見て最終的には決めます。
ー日ごとによってベンチメンバーはかなり変わる可能性もある
大いにあります。特にピッチャーについては投げた翌日はベンチを外れることはあり得ると思います。野手も同じになると思います。
ー今夏のオープン戦では下級生が多く経験を積みました。その経験も生きてきた
そうですね。春出なかったメンバーが出てくるということはかなりあると思います。
ー投手野手問わず総力戦となる
調子の良い者からベンチ入りするという形になると思います。
ー特別な思いを持って臨むシーズンとなります。どんなプレーを選手たちには見せてほしいか
トレーニングが十分にできなかったという言い訳がましいことではなく、一緒懸命やる姿を見せてほしいと思います。それが一番の恩返し、ご厚意に報いるプレーになるのかなと思います。
ーファンの方に伝えたいことは
注意していた中ではありましたが、こういった事になってしまって申し訳ないと思います。ただ、その中でチャンスをいただけたので、できる事をやって、一生懸命ルールに則ってプレーしたいと思います。礼に始まって礼に終わるスポーツですので、相手をリスペクトして、正々堂々と自分たちの力をできる限り発揮する事が私たちの課題だと思っております。そういった試合をやりながら、相手には失礼かとは思いますが、「勝ちたい」という気持ちを持ってやっていきたいと思います。
(取材・五嶋健)
加藤 重雄(かとう・しげお)
1956年4月20日生まれ
鳥取県出身・鳥取西高→法政大学→日本生命
大島公一 助監督
ーリーグ戦に参加できると決まった時の率直なお気持ちは
実際どうなることやらと先が見えない状況でしたので、感謝の気持ちしかありません。本当に配慮していただいたなと思います。
ー集団感染が発生した時は先が見えない状況だった
そうですね。落ち着きつつはありましたが、(感染は)継続中だったということもありましたので、本当によく配慮していただけたと思います。
ー加藤監督、スタッフの方々と共に身の回りの世話をされたと伺いました
医療現場もひっ迫していて、受け入れられないことは分かっていましたので、重症化しないようにという思いでしたね。救急車を呼んでも搬送される病院がないということを目の当たりにしたので、その恐怖心しかありませんでした。本当に重症化しないことを願っている状況でした。
ー実際に医療現場のひっ迫具合というのを感じられた
そうですね。(医療従事者の方の)近くではないんですけども、ひっ迫しているという大変さは救急車の人の状況を見た時にすごく感じました。なので、「何かあった時にはどうなってしまうのか」という不安が恐怖に変わりましたね。
ー活動再開の際に選手にお話ししたことは
監督が強く言ってくださりましたが、行動変容をして、感謝の思いを行動で表さなければいけないと。リーグ戦に向けて何をすべきかを一人ひとりが感じたことを謙虚に、素直に、そして柔軟に対応していかないといけないということを伝えました。
ーチームの調整具合はいかがでしょうか
100をマックスとしたら50%くらいなのかな。皆さん若いので、自主練習をしていたといえども、あまり動いていない状況と考えると意外と動けているなという印象です。ただ試合をしていないので、その強度を考えると変わってくるのかなと思います。また、試合をした後の回復度というのもどうなるのかなという不安はあります。
ー強度という点では故障も不安点として大きいと思います
準備不足の中で試合をやりますと、思わぬところで力が入ったりとか、必要以上の能力を発揮してけがにつながります。そこは不安ですし、懸念しているところです。
ー野手起用は投手ほどではないにせよ多少の入れ替えがあるのでしょうか
幅広く見ていかないといけないとは思っていますが、ある程度の実力で勝ち取ったスタメン、メンバーでもあります。まずはその点を信用して起用していくと。当然調整不足という点も出てくると思いますので、それを踏まえながら起用していく形になります。
ー勝ち取ったメンバーという点でいいますと、最も期待している選手は
当然全員期待していますし、(調整期間が短く)誰がというのはなかなか見えない状況です。実際、今もイメージがつきづらい状況です。なので、そういう意味でも皆に期待しています。
ー練習の際に選手に声をかけていることや気をつけていることは
まずはけがしないことですね。やはり試合になると反応してしまうので、能力が高ければ高いほどそういうリスクも高くなってしまいます。そういうリスクばかり考えてはいけないですし、ピッチャーも優先して練習させなくてはいけない。そういうことも考えて、3日に紅白戦を組ませていただきました。ただ、ここでもけがをしないかは不安ではありますね。
ー打撃と守備のどちらがブランクの影響は出やすいのでしょうか
どちらも対応が重要なので、目と体のコーディネートが重要になると思います。どちらかというと、繊細なのは打撃なので打撃の影響力は大きいかもしれません。
ーファンの方に伝えたいことは
本当に今回は多大なご迷惑、ご心配をおかけしました。1週遅らせたり、日程を大きく変更して参加させていただけることになりました。私たちにできることは今できる最善を尽くすことだと思っています。最善を尽くしたプレーをお見せできればと思っていますし、そういう中で応援していただければと思っております。ぜひ受け入れていただければと思います。
(取材・五嶋健)
大島 公一(おおしま・こういち)
1967年6月17日生まれ
東京都出身・法政二高→法政大学→日本生命→近鉄→オリックス→東北楽天
三浦銀二 主将
ー平日開催を含めながらもリーグ戦に参加できることが決まりました
辞退も考えていたので、開催してくださることがすごくありがたいです。過密なスケジュールになったのも、仕方ないことだなと思います。
ー集団感染が発生した時はどのようなことを考えられましたか
仕方ないことなので、見えないものですし、誰を咎めるとかもなかったです。リーグ戦もそうですし、プロのことでも引け目を感じる部分はありました。
ー活動停止期間中はどのようなことをされていましたか
特別どうこうするわけではなくて、室内でできることをして過ごしていました。スペースがそもそもあまりなかったので、体を動かすストレッチとか体幹(トレーニング)とか小さい動きをやってました。体がとにかく鈍らないようにと思ってやっていました。
ー寮での隔離期間中は監督、助監督が身の回りの世話をしてくださっていたとお聞きしました
本当にありがたいことだったと思います。自分たちのためにスタッフ含め監督、助監督が感染を広めないように行動してくれました。外出禁止でしたけど、すごく過ごしやすい環境で過ごさせてくれたので、そこに関しては感謝しかないですね。
ー活動再開にあたってのミーティング等で話したことは
開催されることに関して、六大学連盟の関係の方や他大学の監督などにすごく迷惑や心配をかけたと思っています。そこに関しての感謝は忘れないようにということが一つ。もう一つは、やるからには勝ちをつかみたいと思っているので、そこの気持ちは変わらないということを伝えました。
ー取材前に監督とお話しされていたと伺いました。どのようなお話しをされましたか
選手起用などの采配の話や、勝ちにいくことについての戦略などを話していました。
ー過密日程の中で投手野手ともに疲労がたまったりするかと思います
先発とかはまだ決まっていないんですけど、やっぱり疲労とかはたまると思います。ほぼ4連戦みたいなものなので、今までのリーグ戦で全然経験したことのない状況です。どうなるかは始まってみないと分からないと思っています。なので、その疲れとかも気をつけながらの選手起用になっていくと思います。
ー現在のチームの練習状況は
調整というよりもみんな外に出ていなかったので、体を起こしてしっかり動ける状態を作って、そこから試合にしっかりと臨める状態を作る作業になっていくと思います。
ー練習時間に制限などは
制限時間は特にないです。ただ、選手が密にならないように少人数で班を分けて練習している形です。
ー練習時の雰囲気は
コロナで寮で待機という形でしたが、それでもブランクを感じさせないくらい良い雰囲気なので、そこに関しては心配していないです。
ー三浦選手の調整度合いとしてはいかがでしょうか
今は50、60からだんだんと上げていっている状態です。リーグ戦まであまり日はないですけど、その中でできることをやって、短い調整期間の中でも良い形で入りたいと思います。
ー今後はどうやって残りの50、40を埋めていくか
投げることができていなかったので、肩の状態を上げることはもちろん、心肺機能も上げていきたいと思っています。なので、投げ込みを始め、体力面の強化をしていきたいです。
ー特別な思いを胸に戦うシーズン。どんなプレーを見せていきたいか
春を終えて、この夏のテーマが「スピード」と「体力」と「懸命さ」でした。例えばスピード感で言えば、攻守交代の時に駆け足でいくことだったりとかになると思います。ただ、打つ打たないに関係なく、懸命にプレーをしていきたいと思います。
ーファンの方に伝えたいことは
辞退するかしないかの瀬戸際だった法政大学を救ってくださって、六大学でやるということを決めてくださった関係者の方や五大学の監督には感謝の思いしかありません。その感謝を伝えるには、プレーで恩返しするしかないと思っています。なので、そこに関しては勝った負けたに関係なく懸命にプレーする姿を見てほしいと思っています。
(取材・五嶋健)
三浦 銀二(みうら・ぎんじ)
キャリアデザイン学部4年 1999年12月30日生まれ
福岡県出身・福岡大大濠
175㎝80㎏・右投右打
昨季成績:5試合 39回 44奪三振 被安打18 与四死球14 自責点10 防御率2.31 2勝2敗