【特集記事】重量挙部栄養士 大島夕佳さん ロングインタビュー

【特集記事】重量挙部栄養士 大島夕佳さん ロングインタビュー

2014年1月26日(日)
Office LAC-U

今回は本誌2月号の「スポホースの上手い!旨い!!馬イイ~話!!!」内で特集しました、法政大学重量挙げ部の栄養士である、Office LAC-U大島夕佳さんのインタビュー全文を掲載いたします。
紙面ではお見せできなかった裏話など、必見です。是非ご覧ください。

Office LAC-U栄養士の大島さん

「自分の体は自分で作る」という意識で、食べ物を選べる選手になってほしい

―重量挙部と関わられるようになった経緯をお願いします
この仕事を初めて10年近くになりますが、(法政の重量挙部の)栄養士を始めるきっかけとなった方がまずいらして、私は3人目のスタッフです。私の前任の方は、虎石さんという方でした。私が入社し、2年目に法政の重量挙部に連れていっていただいたのが始まりです。3年ほどは(虎石さんと)2人で一緒にやりながら、色々学び、教えていただきながらやっていた期間があり、5年くらい前から引き継いで私が一人でやるようになっています。

―今されているお仕事の内容は
私が担当しているチームは主に法政の重量挙部です。あとは中央大学の一般の生徒さんや先生、事務の方で、健康診断で引っかかってしまった方に栄養指導をしたりしています。他には杉並区の保健所の活動で、杉並区に栄養バランスの取れた食事を置いているお店を増やそうという健康事業の一環のお仕事を、お手伝いしたりしています。

―会社が他に関わっておられるスポーツはありますか
フィギュアスケートの髙橋大輔選手、全日本男子バレーボールチーム、都留文化大学陸上部、東海大仰星高校ラグビー部、専修大学アメリカンフットボールチームの担当をしています。

―ご専門はスポーツ栄養なのでしょうか
栄養士として色々な分野で関わっていますね。スポーツ栄養「も」やっています、という感じです。入社して2年目に、弊社代表の石川が東海大学陸上部の短距離の栄養をずっと見ていたという関係で、監督の高野進さんとイタリアンのお店を立ち上げました。そこでオープニングスタッフとして入って、5年間キッチンをしていまいした。そこで全然分からなかったイタリアンの料理を学んだことが、すごく大きいかなと。料理を知らないと献立は立てられないので、料理の手順や味など、様々なことを肌で感じた5年間でのことが、他の仕事では活きていると感じています。今、重量挙部の夕食を作りにいったりする時にも役に立っているかと思います。

―選手たちは普段、自炊のような形で生活しているのですか
そうですね。なかなか外食では思うように食べられなかったりするので、4年生とか時間がある選手には「家に帰って自炊するといいよ」ということは言っています。その方が野菜も安く買って沢山食べられますしね。夜は、練習の日は東京厨房さんという飲食店で食べています。オフの日は各自で自分の食べたいものを食べますが、その時にちゃんと考えて食べなさいよというところをレクチャーしています。

―重量挙部と関わるようになったきっかけというのは
この会社に入社したのが10年前です。本当にスポーツ栄養って職場がないんですよ。なので、色々探してもなかったというのと、縁があって高校生のときに石川のレクチャーを聞きに行ったことがありました。「すごいな」と感動したのもあり、こういう道を目指してみたいと思ったことがきっかけです。そして短大に進みました。就職活動の時は、短大2年生の頃から、今所属している会社(Office LAC-U)にお仕事のお手伝いをさせてもらっていました。代表の石川から「うちは求人出してないからね」と言われていたのですが、卒業と同時にLAC-Uの近くに引っ越したことがきっかけで、入社することになりました。 (入社して)1年間は研修という形で他のアルバイトをしながら勉強をさせてもらっていました。そして2年目から、イタリアンレストランと並行して、虎石さんが担当していた重量挙部に行かせてもらったのが始まりです。

―重量挙部での仕事内容は
今は月に1、2回(練習場に)レクチャーに行っています。2か月に1回しているのが血液検査です。今の自分の体がどういう状態かというのが数値で分かるので、データを見ながら「今こういう状況だからこうしていこう」とアドバイスをしています。あとはその時に今の状況を聞いたり、食べるものを時期に合わせてレクチャーをしたり、時々(寮に食事を)作りにもいったりもします。あとは練習場でレクチャーをしたり、相談に乗ったりもします。「どう?」と声を掛けたり、問題点を探ってみたりとか。

―練習場に1日の食事の目安が書かれた紙が貼られているのを以前お見かけしました
虎石さんがいたときに作って、「このくらい食べなきゃいけないんだよ」というのを貼りましたね。

―アスリートにとって食というのは重要な要素だと思いますが、重量挙げの選手に特に気を付けておられる点というのは
どの競技でも同じで「食べること」「寝ること」「動くこと」―栄養、休養、運動ですよね。その三角形のバランスが崩れてしまうとけがをしてしまったり、競技レベルがよくならないということにつながります。なので、トレーニングに合わせた栄養というのを心掛けるようにしています。重量挙げは本当に体を大きくしないといけないので、いかにどれだけ量を摂れるか。でもその量を摂るのもご飯やお肉などの単品だけでなくて、それを生かすためのお野菜だったりキノコだったが必要なので、それをどう組み合わせて摂っていくかというのがすごく難しいですね。普通に生活していてもおにぎり一個で済ませてしまうことは多々あったりするかもしれないですが、それでは勝てる体は作れません。1日3食摂ったとしたら、その3回をどう選んでいくかというところで、できあがっていく体を左右します。例えばクリームパン一個を食べるのと、ハムやレタスのサンドイッチを食べるのとでは、入ってくる栄養素が違いますよね。今の体は今まで食べてきたものの結果であるので、「自分の体は自分で作る」という意識で、日々食べ物を選べる選手になってほしいと思ってやっています。

―選手の意識を変えるという役目が大きい印象を受けました
そこが一番難しいところでもあって楽しいところでもありますね。一人ひとりの意識が20人いたら20人とも違うので、一人ひとりの接し方も変えるというのは意識しています。

―選手と一対一で話されることも多いのでしょうか
道場で1回全体のレクチャーをした後に相談に来る子もいるので、その時に一対一でどうしたらいいかなというのを話したりしています。あとメールアドレスも(選手は)知っているので月に1回しか行けなかったりすると、「こういう状況なんですけど、どうしたらいいですか」と連絡をくれる選手もいます。

―レクチャーによって選手たちに変化はありますか
栄養学について知識がない選手が多いので、学年を重ね、実践し体感することで食の重要さというのを感じているように、感じています。インカレ優勝というのが重量挙部の最も目指している目標なので、それに向かうためにはやっぱりやらざるを得ないことですし、レクチャーをすることでやろうと思う選手は増えているように感じます。

―レクチャーの回数や学年を重ねていくと、やはり選手の意識は高くなっていくのでしょうか
4年生になるとやはりすごく変わります。例をあげれば、比嘉(貴大)選手は1年のときから3年生までも本当に頑張っていましたが、なかなか結果が出てこなかったんですね。でも最後の1年彼は本当に本気で頑張ったんですよ。私が準備したサプリメントも3年生までは「今日忘れちゃった」と飲まなかった日もあったらしいですが、4年生の時は「1日も欠かさず飲みました!」と最後に言ってくれました。そこからも比嘉選手の意識の高まりを感じますね。そして結果(全日本インカレ85kg優勝)につながったというのが、とても嬉しかったというのはあります。

https://sports-hosei.net/img/share/bg_h2.png); background-color: rgb(255, 255, 255); background-position: 0% 50%; background-repeat: repeat-y;”>4年前がチームの転機

―8年間重量挙部と関わってこられて、選手や部の印象というのは
他の部をあまり深く見たことがないですけども、やっぱり一緒に暮らしているということもありチームの一員としての意識、法政の重量挙部として頑張るという意識、「法政のために」という意識が高いチームかなと思います。そして平良監督を本当に尊敬し、付いていっているというところですね。本当に平良監督は気持ちが熱い方なので、その気持ちに付いて行こうと必死に皆が頑張っているのは、ひしひしと伝わってきます。あとは、礼儀が正しい。なかなかきちんと挨拶ができる人たちも少なくなってきたと思いますが、そこは年を重ねても何も変わらず、しっかりとできていますよね。本当に素晴らしいと思います。掃除であったり、ちゃんと整理整頓ができたり、挨拶ができていたりといったところがきちんとできないと、やっぱり競技もだらしなくなってしまうので。そこは小平総監督、平良監督も厳しくされているところで、「当たり前のことを当たり前にできるようにならなければ、強くなれないんだぞ」ということは常々言われていると思います。そこが法政大学の重量挙部の強さの秘訣だと思います。

―大会の時に選手と同じジャージを着用されているのをお見かけしたことがあります
2年前に卒業した東門(あがりじょう)選手のおあがりをもらいまして(笑)。ちょっと大きいですが、大事に着させてもらっています。

―大会は毎試合行かれているのでしょうか
行けるときには行っています。大会の時はそこで食べるお弁当を準備します。あとドリンクの摂り方や、サプリメントを準備する時は「このタイミングでこれを摂ろうね」というのをアドバイスしたりしています。

―エピソードや思い出話があれば教えてください
食の環境を整えることも一つの仕事としていますが、ここ数年で色々と変化してきました。何年か前までは寮で夕食を準備して、寮母さんみたいな方を雇って作って準備してもらい、(練習から)帰ってきてから(寮で)食べるというのをずっと続けていました。ですがやっぱり2時間も空いてしまうと、練習してヘトヘトになった体にエネルギーがなくなって、自分の体を削ってエネルギーを得ようとするんですね。折角大きくしたいのにどんどん小さくなってしまうのでは困るということで、平良監督からご提案をいただき、(練習後)すぐに食べられる環境を作ろうという変化が4年前くらいにありました。最初はドルビーという定食屋さんで1年間お世話になって、食べるようになりました。そしてそれをやり始めたその年に(インカレで)優勝したんですね。やっぱりそのような食べるタイミングや、愛情を込めて作ってくれたものを食べるというところで、色々な相乗効果が働いて結果が生まれたのかなというのは感じました。今までの土台を変えるという一歩踏み出した4年前が1つの転機だったのではないかと思います。

―最後に重量挙部へのメッセージをお願いします
昨年よりも厳しい年になるとみんな肌で感じていると思います。だからこそ全員で力を合わせ、全日本インカレ優勝に向けて、1日1日を大切に頑張っていきましょう。

取材:熊谷優
取材協力:Office LAC-U(http://www.lac-u.com/)

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