【硬式野球】新体制本格始動企画第1弾~青木久典監督インタビュー~
2018年2月4日(日)
法政大学野球部合宿所
新入生も新たに加わり、新体制が本格的に始動した2月。
今年度主将に就任した向山基生をはじめとする幹部や新入生を、チームのためにどのような思いで選考したのか。優勝に向けての鍵となる投手陣についてどのように考えているのか。優勝を狙う熱い指揮官にお話を伺った。
青木久典監督 インタビュー
ー新入生も迎え新体制が本格的に始動しましたが、改めて昨年を振り返ってどうでしょうか
春も3位、秋も3位という結果だったんですけど、自分としては、もうちょっといけたんじゃないかなと思うし、まだまだやり残したこととか、やるべきことはたくさんあったのかなと思う悔いの残るシーズンだったと思います。
ーやるべきことというのは具体的にどういったことでしょう
練習量とか戦術というのはよかったのかなと思うんですけれども、それよりも相手を知る上でのデータという部分でしょうか。そういうところをもう一つ突き詰めていけば相手のピッチャーだったりとか、もっと言えば相手の打者に対してのポジショニングであったりとか、そういったものが確立して勝ち試合も増えたのかなとか思ってはいるんですけどね。(やるべきこととは)そういった部分ではないでしょうか。
ー今のチームの印象は
今年は1月6日から開始したんだけど、非常にキャプテンの向山(基生、営:新4年)を中心にまとまりがあって、約1か月が過ぎたんですけど、非常に今の段階ではいい方向に来ているように感じます。
ー今年はキャンプではなく武蔵小杉で2月を過ごしますが、何に注力して練習を行っていきたいですか
キャンプに行かずに、小杉でしっかり腰を据えて野球をやっていけるということは非常に良いことだと思うんですね。これからスポーツ推薦組以外の者が何人入ってくるか分かりませんが、大体(チーム全体で)140から150人くらいの大所帯になると思うんです。その中で今やらなければいかないことは、まずチームとしての結束を高めて、チーム全員一人一人が優勝するために自ら考え、優勝するための歯車になるように、そこら辺の結束力を高めることと、またチーム一丸というんでしょうか。心ひとつで、というところをまずオープン戦までに、またオープン戦を戦っていく中で築き上げていかなければならないかなと思っていますけどね。
ー先ほどから仰っている『結束』という言葉はスローガンにもなっています。どのような思いで選手たちが考えたと感じでいますか
法政大学野球部はスポーツ推薦で15名毎年入ってきて、本当にその各県、各高校、しかも強豪校からエリート、つまり1番2番の選手が来るわけですね。本当にそういう意味では、いい意味でセンスだったり能力というのは高いんですけど、悪い意味で言うとお山の大将みたいな気分で来ているので、自分の我が強かったりとか、チームで戦うときにチームの輪というんでしょうか、『結束』という点で欠ける部分があったとは思います。なので、能力は高いんですけれどもチームとしてどう機能するか、チームが優勝するためにどう考え歯車になるかというところが弱点であり、そこを強化することが一番ではないかと思い『結束』というスローガンにさせていただいたという風に、そう向山の方から話があったときに僕は感じました。
ーチームとして機能することに重点を置く、ということですが、現時点でチーム内の先発は菅野(秀哉、キャ:新4年)のみという印象を受けます。どういう状況でしょうか
仰る通りで、野手の方はレギュラー陣が(昨年から)そのまま残っています。逆に誰を使おうかと今悩んでいるところです。ただ、今言われたように、投手は柱に菅野という者がいるんですけれども、リーグ戦で優勝するためには2枚目、3枚目と三、四人といなければいけないと思う。なので、そこで今第一候補とするんであれば、森田(駿哉、営:新4年)。彼がどれだけ復活するかと。本当にラストシーズンでもありますし。もう一人は今年2年目になります高田(孝一、法:新2年)という平塚学園の者が非常に、練習始まってから、もっと言えば去年の11月に新チームが始まってからすごく状態が上がってきてますし、本人も意欲的に日々練習に取り組んでいるので、そういう姿勢も含め第二、第三(先発)に入ってくれば面白いかなと思い今見ている状況です。もう一人内沢(航大、キャ:新3年)という去年も先発で使った者がいるんですけど、もう一つ自覚もできて身体もできて出てきてくれると僕としては嬉しい悲鳴かなと。そう練習を見ているんですけれどもね。
ー今年はスポーツ推薦で入部してきた1年生も平元(銀次郎)選手、三浦(銀二)選手など投手陣が豊富ですが、オフ期間に伸びてきた場合に先発起用の可能性はあるのでしょうか
今、練習に入ってきてまだ1週間くらいですけど、自分の本音としては1年生をあまり無理して使いたくはないかなと思ってはいます。ただ、新入生も夏の大会終わって(引退して)から練習はしっかりしてきているような感じなので、状態が良ければチャンスも与えながら見極めていこうかなとは思っていますけども。その中で、本当に力があれば使っても大丈夫かなという。そこを2月、3月のオープン戦で見極めたいなとは思っています。
ー現時点ではあまり積極的起用は考えていないということですね
そうですね。(チーム全体的に)底上げはしてきているので。もう少しね、この大学の生活とか環境に慣れさせて。大学野球というのは高校野球よりもまたワンランクレベルが上がりますから、ここで無理してけがでもされてしまったら僕としても嫌なので、秋口くらいからかなと思っているところもあるんですけど、チームの現勢力のピッチャー陣がふがいなければ、球数とかイニングとか考えながら使っていくのもありなのかなとは今考えているところですかね。
ーそんなスポーツ推薦の選手のスカウトには監督も関わられていると思うのですが
はい、全員僕がスカウティングしました。今年の考えとしては、補強ポイントとしてやはりピッチャーが手薄だったので、バッテリーを最重要強化(ポイント)としてスカウティングは頑張りました。それと、外野手ですかね。どちらかというと(現チームに)左の外野手が多いので、右のしっかり打てるバッターも探したかったですし、左バッターでもしっかり長打の打てる者を選びながらスカウティングをしたんですけど。そういう意味では、内野手は今の新2年生から新4年生まで各ポジション3,4人いますので、(今年は)1人しか獲らなかったんですね。そういうのはプランで考えています。来年のことを考えたら今度はちょっと野手を多めにしようかな、とか各年で調整して考えているんですけれども。
ースカウト段階では気付かなかった、「こんな選手だったのか」など監督から見て面白いと感じる選手はいらっしゃいますか
まだ(練習参加して)1週間くらいなので、まだまだ(プレーでは)本領発揮しきれていないなという感じですかね。でも人間的に、コミュニケーションを取る上でこの子こんなに言葉のキャッチボールが、会話ができるんだとか、この子はどちらかというとプレーをしているときはふてぶてしいけど話をしていると繊細なところがあるんだとか、そういった人間的なところは発掘させてもらっているというか(笑)。こういうところもあるんだなぁ、というのは今感じているところですね。プレーヤーとしての力は慣れてきたら発揮してくれると思います。
ー新入生にはどのように大学野球生活を過ごしてほしいですか
プロ志望届を出したら本当はドラフトの上位に入るような者がたくさん入ってきていると思うので、特にピッチャーにはね。なので4年後にその評価以上、またはその評価を維持して卒業してもらいたい、要はプロに行ってもらいたいと思います。またね、2020年には日本で東京オリンピックがあって、野球が公開競技としてあるわけですからね。僕の同期の稲葉(篤紀=平7年度卒、現日本ハムファイターズSCO、野球日本代表監督)も(侍ジャパンの)監督をするので、そこの1ピースになれるような人材になってもらいたいなとは思っています。そんな夢をたくさん持って、また与えて成長していってほしいなと思っています。
ー少し話は変わりますが、今年主将は練習期間に候補をローテーションで回し向山選手に決めたということでしたが、新人戦でも主将を務めた川口(凌、人:新4年)選手ではなく向山選手に決めた決め手をお聞かせください
最終的には向山と川口で相当悩みました。どっちかだと思ったので。ただ、去年は森(龍馬=平29年卒部、明治安田生命)という人間がキャプテンをしていて。川口はどちらかというと職人気質といいますか、背中で引っ張っるようなタイプなんですよ。もちろんそれも大事なんですけど、今のチーム状況とか法政大学野球部の現状を考えたときにどちらかというと背中で引っ張るよりも有言実行、また同期や後輩から人望の厚い者が良いのではないかということと、そこに+α(アルファ)本人の技量も含め最終的には向山の方が良いのではないかと。また、川口は、川口がダメというわけではなくて、副キャプテンというサポート役の立場で野球をした方が彼の野球の結果も出ると思ったし、彼もその側面からチームをバックアップした方がチームにも味が出るかなと思って、最終的にはそのような判断をしたというところですね。
ー副将が去年から1人増え3人となったことへの意図というのは
ポジション的なものもあるんですけど、僕の考えでは本来キャプテンというのは扇の要だったりとか、要はもっと言ったら内野とかが僕は良いと思うのね。向山が今年どこを守るかはまだ分かっていないんですけど、今のままだと外野になってしまう可能性があると。そこで、試合でピンチだったりとかそういうときに声を掛けられる、リーダーシップを取れるというところを見たときに、やはり中山(翔太、人:新4年)だったりとか中村(浩人、営:新4年)だったりとか川口がいたほうが僕は良いかなと思ったので、そういうところも含めて「よし、思い切って3人副キャプテンを作ってみよう」と。また、ここは僕の危機管理能力が問われる部分でもあるんだけど、今川口と小林(満平、法:新4年)が(セカンドに)いるわけで、試合にはいい方が出るわけで、川口がその争いに負けてしまったら彼はベンチになる可能性もあるし、そうなると小林が(レギュラーに)入りますよね。そうしたら、中山とか中村が(試合中は)キャプテンの代わりをしてやっていかなければならないし、色んな所を考えたら副キャプテンは3人くらいいたほうが良いのかなと思ったし、もっと言えば、今年中山は4番でサードをやらせようかなと思っているので、けがというリスクもあるじゃないですか。攻め方もインコースがどんどん増えてくると思うしね。そうなったときには、中村が大事になってくるし。色々そういった危機管理を見据えた上で、副キャプテンは多いほうが良いかなと。また、彼らの性格もそれぞれ全然違い、チームに与える影響も全然違うので、3人とも幹部にさせたほうが良いかなというのもあり、そうさせていただきました。
ー今年、内野だけでも川口選手だけでなく小林選手などがおり選手層が豊富にもかかわらず、副将と責任者を統一したのもチームに与える影響という部分からでしょうか
与える部分も大きいと思うし、そこで責任者が変わってしまうとぶれてきてしまうかな、と。
ー意思疎通という部分ででしょうか
はい、それも含めて。それだったら川口でも十分卓越した理論を持っていますし、自分の言ったことにも反応してくれるので、それは一人二役やったほうが良いと。ただ、別の観点から、例えば寮長だとかそういう部分で、小林という人柄というものを生かしてやりたいと思いました。
ー大きなけがから復帰した大西(千洋、営:新4年)選手を外野手責任者に抜擢されました
やはり彼はあれだけの事故があって、あれを乗り越えられる精神とかメンタルって相当強いと思うのよ。それは、今の法政大学野球部に絶対必要なものだと思うし、そういうものを受け継がせなくてはいけないと僕は思っているので、彼が外野手長になって、リーダーとして孤軍奮闘する姿を僕自身も見たいし、それを見ている同期後輩たちも学んで次につなげてもらいたいなというのもあって、彼にそういう想いでやらせました。
ーそのような幹部をはじめとした選手たちに今年期待することはありますか
今、実は練習メニューも彼らに決めさせているんです。だからもう自分の中ではそこまであいつらを信じているので、期待していることは、ただしっかりリーグ戦勝ち切って優勝してくれるだろうということだけですね。
ー最後に1年の目標をお願いします
1年の目標としては『優勝』しかないですね。本当に春秋優勝で日本一を獲ると。もっと言えば二冠、四冠を獲るという気持ちです。そのために彼らを若い時から試合に使い経験を積ませて、またそういう気持ちで(チームを)作り上げてきたので、ここでしっかり開花させる年かなと思っています。
(取材:中西 陽香)
青木久典(あおき・ひさのり)
1973年2月16日生まれ
三重県出身・三重高校→法政大学→たくぎん→本田技研鈴鹿→サンワード貿易
『現役時代は主に遊撃手としてプレー。大学では 現侍ジャパン監督の稲葉篤紀と同期。副将も務めた。社会人野球部では9年間中心選手として活躍し2004年に現役を退く。その後、富士大学のコーチ、監督を経て14年1月より法政大学野球部の助監督に。15年1月から監督に就任し指揮を執り、4年目のシーズンを迎える。』