天皇杯東京都予選に位置づけられる東京都サッカートーナメント。学生の部を勝ち抜いた法大は社会人チームとの準決勝へ駒を勧めた。相手の東京武蔵野ユナイテッドFCは、奇しくも昨年度の同大会決勝で対戦し敗れた相手である。連戦の後、約一週間の準備期間を経て選ばれたスタメンには、今季出番の少なかった宮本優(現4=清水エスパルスユース)や、森本真伍(社4=サガン鳥栖U18)などの4年生をはじめ、最前線には主に途中出場という形で起用されてきた久保征一郎(経2=FC東京U18)が起用された。
まず試合を動かしたのは法大だった。9分、左サイドの巧みなダイレクトプレーからクロスが上がると、中で合わせたのは松井蓮之(スポ4=矢板中央高・川崎フロンターレ内定)。昨年度の同カードでは先発フル出場と、リベンジに燃える松井が幸先よくチームに先制点をもたらした。このまま勢いに乗り、法大が主導権をにぎるかと思われたが、強い風、さらには相手の縦に速いカウンターでゴールに迫られる場面もあり、苦しい戦いを強いられる。そうした中でも、今季センターバックで先発出場を続ける高嶋修也(経済3=明秀学園日立)を中心に体を張った守備で得点を許さず試合を折り返す。
後半は相手ペースで試合が進む。法大はセットプレーやカウンターを中心に追加点を狙うものの、中央を固めた武蔵野ディフェンスを崩し切ることができず、逆に自陣ペナルティエリア手前で相手にFKを献上してしまう。相手のキックは枠をとらえるが、ここは守護神・近藤壱成(経3=ジュビロ磐田U18)が弾き出し難を逃れる。我慢の時間が続いた中でも耐える法大だが78分、相手のシュートを近藤が弾ききれず、試合終盤にまさかの失点。試合は延長戦へ。
膠着状態が続いた試合も、両チームの選手に多くのイエローカードが提示されるなど激しさを増していく。延長後半アディショナルタイムには安光将作(社4=ジェフユナイテッド千葉U18)がこの日2枚目のイエローカードで退場。お互いに勝負を決める1点が遠く、1-1のまま試合終了のホイッスルが鳴り、PK戦へと突入した。
運命のPK戦で法大ゴールを守るのは、延長後半に投入された中川真(スポ2=徳島市立高)。後攻の法大は、1人目のキッカー、キャプテンの田部井涼(経4=前橋育英高)が冷静に決めると、その後も両チーム5人目まで全員が成功し、サドンデス方式へ。6本目、先攻武蔵野のシュートを中川真がコースを読んだ見事なセーブも、直後法大6人目のシュートは大きく枠を外れてしまう。そして迎えた8人目で再び中川真が見事なストップ。緊張感が張り詰める中、法大の8人目、この日途中出場の吉尾虹樹(現2=横浜F・マリノスユース)が冷静に沈め勝負あり。法大が長い戦いを制し、駒大との決勝へ進出した。
選手コメント
長山一也監督
―試合を振り返って
まずは去年の決勝0-1で負けていて、今年天皇杯に出場するうえで武蔵野さんにはリベンジしたいと思っていました。ただ最初に得点できましたけど、その後はすごく固い守備でなかなか追加点が取れず、カウンターを中心に少ないチャンスをものにするゲームプランに苦戦した中で、PK戦ではありますが勝つことができてよかったです。次の駒澤大学さんにも勝って、天皇杯出場を決めたいなと思います。
―PK戦前のGK変更はこのような展開ではいつも考えているのか
ある程度はコーチに判断をさせている中で、今週のトレーニングから中川がよくPKを止めているということだったので変えました。今までは特にキーパーを変えることは無く、学生系の試合でPK戦になった時は近藤がそのまま出ていました。今週の取り組みというところですね。
―1週間の準備期間があった中でスタメンを変更しました
この1週間というところでは、全体的にもう少し良い準備ができたんじゃないかなと。紅白戦でもBチームがよかったり、そういう状況があったので、もっと質を高くできたんじゃないかというのは、さっきミーティングでも話しました。あとは連戦というところで、今日は森山とか新しい選手が出ましたけど、そこは彼の特徴を生かしながらと考えてはいました。今日はなかなか合致する場面はなかったですけど、それこそPK戦で途中交代の中川が活躍したり、チーム全体で勝つことができたというところでは、良いところと悪いところの両方が出たんじゃないかなと思います。ただ勝つだけではなく、質のところは高めていかないといけない、我々が求めているものではあるので、日頃の取り組みや意識から改善していこうというのは学生にも話しました。
―決勝の駒澤大学とは今季1度対戦していますがどう準備しますか
あの試合はお互いに初戦ということで固い試合になった中で、うちがたまたま良いところで点を取って勝ちましたけど、その後駒澤さんは調子もよく、天皇杯(予選)で明治さんにも勝っていますし、前線の2トップをはじめ迫力があるので、そこはしっかり対応しないと勝つことはできないのかなと思います。
中川真
―出場する前まではどう試合を見ていましたか
今日の試合のために準備をしてきた中で、自分たちにとって悪い流れが多かったので、ベンチからもしっかり声を掛けてその流れを断ち切ろう、試合に出なくても勝たせようという気持ちでした。
―PK戦を振り返って
今日は家族であったり、法政に関わるたくさんの方が会場に来て応援してくださって、あとはメンバー外の選手たちの顔を見て、やっぱりそういう人たちの思いを感じながら、その人たちのためにも、今日は絶対勝たせるんだという気持ちで試合に入りました。結果として勝つことができたので良かったです。
―PKは得意ですか
天皇杯(予選)があったのでたくさん練習をしていて、そういう練習を重ねて得意になりました。
―タイミングなどが徐々に合っていったように見えました
そうですね。みんなが応援してくれている中で、絶対に止めないといけないなという思いがあって止めることができたと思います。
―高校時代のPK戦は
選手権の時は自分が先に出ていて、PK戦になって交代した側でしたね(笑)。選手権の時はそれでベスト8にいったので、今日は自分がその再現をできればいいなという気持ちは少しありました。高校の時はPKが苦手だったんですけど、大学に入ってから止めることができるようになりました。なので、もしかしたら今日は出る機会があるかもなと準備はしていました。
―どうして得意に感じるようになったのか
タイミングが分かるようになりましたね。相手も見えるようになってきたので、止められるようになったのかなと思います。
―どのタイミングで交代の指示があったのか
延長後半の残り3分くらいのところで呼ばれたんですけど、失点した時くらいから雰囲気はあったので、いつでも出れる準備はしていました。練習から天皇杯に向けてPKの練習を多くしていた中で、自分が一番止めていたので、そういう場面になれば出番はあると思っていました。
―PKストップの秘訣は
相手に惑わされずに自分主体でやるというところ、自分を大きく見せることで主導権をにぎることできるので、そこはルーティンとしてやっています。
―近藤選手と試合後に何を話しましたか
まず勝ったら絶対に壱成くんのところに行こうと思っていました。普段チームを救っているので、今日はおれの番だ。という気持ちもありましたし、今日はミスで失点に絡んでしまっていたので、「おれが止めたから気にしなくていいよ」という声はかけました。