東京六大学野球2021春季フレッシュトーナメント 慶大戦
2021年6月3日(木)
神宮球場
立大、明大に2連勝し臨んだ決勝戦。法大は今季リーグ戦王者の慶大と対戦した。打線は1点を追う4回、敵失で同点に追いつくと、4番・浦和博(キャ2=鳴門)が2点適時打二塁打を放ち、勝ち越しに成功する。6回には内海貴斗(人2=横浜)の2ラン、7回には吉安遼哉(法1=大阪桐蔭)の適時打などでそれぞれ2点を奪った。そして迎えた8回、1点を取ればサヨナラコールド勝ちとなる状況で、浦のポールに直撃する右越え2ランが飛び出し、サヨナラ勝ち。劇的な幕切れで法大は2016年秋季以来、35回目の頂点を掴んだ。
試合結果
トータル試合結果(連盟規定により8回コールド)
1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 計 | H | E | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
慶 大 | 0 | 0 | 2 | 1 | 0 | 0 | 0 | 0 | 3 | 2 | 1 |
法 大 | 0 | 2 | 0 | 3 | 0 | 2 | 2 | 2x | 11x | 11 | 1 |
(慶大)●森下、浮橋、福住、前田、谷村然—善波、宮崎
(法大)吉鶴、○塙、一栁—久保田
[本塁打]水鳥1号ソロ(4回=塙)、 内海貴1号2ラン(6回=浮橋)、浦2号2ラン(8回=谷村然)
打撃成績
打順 | 位置 | 選手 | 打 | 安 | 点 | 打率 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
1 | (8) | 西村 | 3 | 1 | 1 | .333 | 三振 | 左安① | 四球 | 四球 | 三振 | |||
2 | (5) | 内海貴 | 3 | 2 | 3 | .667 | 左安 | 犠飛① | 四球 | 右本② | 右飛 | |||
3 | (4) | 高原 | 3 | 0 | 0 | .000 | 四球 | 中飛 | 一飛 | 三振 | 死球 | |||
4 | (9) | 浦 | 5 | 3 | 4 | .600 | 左飛 | 右安 | 左2② | 一直 | 右本② | |||
5 | (7) | 姫木 | 4 | 1 | 0 | .250 | 三振 | 三振 | 三振 | 右2 | ||||
6 | (6) | 今泉 | 4 | 0 | 0 | .000 | 中飛 | 投ゴ | 三ゴ | 遊ゴ | ||||
7 | (D) | 伊藤 | 1 | 0 | 0 | .000 | 四球 | 三振 | ||||||
HD | 福岡 | 1 | 0 | 0 | .000 | 三振 | ||||||||
H | 吉安 | 1 | 1 | 1 | 1.00 | 二安① | ||||||||
RD | 鈴木照 | 0 | 0 | 0 | — | |||||||||
8 | (3) | 真鍋 | 4 | 3 | 0 | .600 | 三安 | 二安 | 右飛 | 二安 | ||||
9 | (2) | 久保田 | 2 | 0 | 0 | .000 | 四球 | 捕ゴ | 左飛 | 四球 | ||||
計 | 31 | 11 | 9 | .355 |
投手成績
回 | 球数 | 打者 | 安 | 振 | 球 | 責 | 防御率 | |
吉鶴 | 3 | 74 | 16 | 1 | 4 | 6 | 2 | 6.00 |
塙 | 4 | 61 | 15 | 1 | 4 | 3 | 1 | 2.25 |
一栁 | 1 | 11 | 3 | 0 | 1 | 0 | 0 | 0.00 |
計 | 8 | 146 | 34 | 2 | 9 | 9 | 3 | 3.38 |
ベンチ入りメンバー
15 | 武冨陸(営2=日大藤沢) | 32 | 久保田碧月(営2=高川学園) | 3 | 伊藤勝仁(文2=常葉大菊川) |
16 | 尾﨑完太(キャ2=滋賀学園) | 35 | 鈴木大照(文1=明徳義塾) | 4 | 西村友哉(法1=中京大中京) |
17 | 塙雄裕(法2=常総学院) | 1 | 内海貴斗(人2=横浜) | 7 | 福岡大真(法2=筑陽学園) |
18 | 安達壮汰(営1=桐光学園) | 5 | 真鍋駿(文2=広島商) | 9 | 浦和博(キャ2=鳴門) |
19 | 一栁大地(人2=星槎国際湘南) | 6 | 今泉颯太(法2=中京大中京) | 28 | 姫木陸斗(人1=日大藤沢) |
21 | 吉鶴翔瑛(営1=木更津総合) | 8 | 高原侑希(法2=福井工大福井) | 33 | 井口滉太(人2=法政二) |
20 | 吉安遼哉(法1=大阪桐蔭) | 24 | 武川廉(人1=滋賀学園) | 38 | 五明寛太(社2=法政二) |
22 | 飛弾野慎之介(経2=掛川西) | 26 | 木部翔太(法2=清水東) | ||
27 | 田所宗大(キャ1=いなべ総合) | 31 | 中津大和(営1=小松大谷) |
戦評
勝てば2016年秋季以来の新人戦優勝となる法大は、今季リーグ戦王者・慶大との決勝戦に挑んだ。
先発マウンドを託されたのは吉鶴翔瑛(営1=木更津総合)。吉鶴は初回、盗塁と久保田碧月(営2=高川学園)の悪送球から三塁まで走者を進められるも、三塁手の内海貴斗(人2=横浜)の好守備もあり、無失点で切り抜ける。
先制点を奪ったのは法大。2回、真鍋駿(文2=広島商)の安打などで1死満塁と好機を作ると、1番・西村友哉(法1=中京大中京)の左前適時打で先制に成功する。続く内海貴も中堅に犠飛を放ち、この回2点を奪う。
しかし3回、吉鶴は2死満塁から6番・関展里に死球を与えてしまい、押し出しで失点。続く本間颯太朗の放った打球を三塁手の内海貴が好捕するも間に合わず、同点に追いつかれてしまう。なおも満塁で清原正吾を迎えたが、吉鶴は清原を冷静に遊ゴロに打ち取り、勝ち越しは許さなかった。
再びリードをしたい法大は3回、2死二塁と好機を迎えるも、7番・伊藤勝仁(文2=常葉大菊川)が三振に倒れ、無得点に終わる。
4回からは2番手として塙雄裕(法2=常総学院)が登板。しかし、1死から水鳥遥貴にソロ本塁打を浴び、勝ち越しを許してしまう。
追いつきたい打線はその裏、先頭の真鍋が二塁への内野安打で出塁。続く久保田が犠打に失敗するも、連続四球で満塁とすると打席は高原侑希(法2=福井工大福井)。高原は慶大先発・森下祐樹の投じた3球目を一塁手と二塁手の間に打ち上げる。しかし、これを慶大内野陣がお見合い。インフィールドフライが宣告され、高原はアウトとなるも三塁走者・久保田が生還し同点に追いつく。なおも1死二、三塁とすると、「ここが勝負どころだと思ったので、なんとしてでも打ってやろうと思っていました」と4番・浦和博(キャ2=鳴門)が2球目を捉え、2点適時左二塁打を放ち、逆転に成功する。
6回にも1死から四球で西村が出塁。内海貴は慶大2番手・浮橋幸太の3球目を捉え、「完璧です」という当たりの特大右越え2ランで追加点を奪った。
4回から登板していた塙は4回を投げ、7回に降板。一時は勝ち越し本塁打を浴びるも、浴びた安打はその一本。「自分の投球からリズムを作り出せるように抑えようと心がけました」とそれ以降はほぼ完璧な投球でマウンドを降りた。
打線は7回、1死三塁から代打・吉安遼哉(法1=大阪桐蔭)の二塁手と右翼手の間に打球が落ちるしぶとい安打で追加点を奪うと、内海貴の打席で慶大4番手・前田直人の暴投でさらに1点を追加。点差を6点に広げた。
8回は一栁大地(人2=星槎国際湘南)が登板。一栁は慶大打線を三者凡退に抑えた。
あと1点を取ればコールド勝利となる8回裏、先頭の高原が死球で出塁すると、打席に入ったのは4回に勝ち越し打を放った浦。「点差もあったので少しホームランを狙ってました」という浦は慶大5番手・谷村然の4球目を振り抜くと、打球は右翼ポールに直撃。全3試合で4番を務めた浦の劇的なサヨナラ2ランで、法大は慶大にコールド勝利。見事に9季ぶり、35回目の新人戦優勝の栄光を掴んだ。
リーグ戦未経験者の投手では一柳や塙が、野手では浦や内海貴らの活躍が光った今季フレッシュトーナメント。一夏を超え、彼らがどのような成長を見せるのか、そして彼らに負けじと切磋琢磨する選手たちの今後に期待したい。
(記事:五嶋健、写真:東夏紀)
クローズアップ:内海貴斗
堂々の背番号『1』。彼の存在が今季フレッシュトーナメントでの優勝を手繰り寄せたといっても過言ではない。フレッシュトーナメントでキャプテンを務めた内海貴斗(人2=横浜)だ。名門・横浜高出身で3年次には主将を務めるなど、大学入学前から注目を浴びていた内海貴。ここまでリーグ戦出場はなかったが、今フレッシュトーナメントでは満を持してキャプテンに任命された。
1日の立大戦ではチーム初安打を放ち、明大戦では3安打と持ち味である打撃力でチームを引っ張った内海貴。今試合でもその打撃力を遺憾なく発揮した。第1打席では初球から振っていく積極的な打撃で左前にチーム初安打を放つ。6回裏、1死一塁の場面で打席が回ってくると3球目、振りぬいた打球は放物線を描き右翼席に吸い込まれ、勝利を決定づける一打となった。
しかし、内海貴の『キャプテン力』は打撃面だけではない。守りの際に内海に助けられた選手も少なくはないだろう。3回表、先発・吉鶴翔瑛(営1=木更津総合)の制球が定まらず四死球を多発し、同点に追いつかれ、なお満塁の場面。流れが相手打線に移り、劣勢になっていた時のことだった。法大側の客席も静まり返る中、内海貴の声がグラウンドに響いていた。投手を鼓舞するため、絶えることなく声を出し続けていたのだ。「野球はピッチャーが全てと言っても過言ではないので、守備から流れが来るように声を出していました」と語る内海貴。そんな内海貴の想いが届いたのか吉鶴は相手打者を打ち取った。その後も他の選手に声をかけ続けチームを勢いづけた。
新人係としてベンチ入りした近藤皓介(社3=日大山形)学生コーチが「内海が打てばのっていくチームだと思う」と語るようにチームの起爆剤となった内海貴。秋季リーグでは持ち前の勝負強さでチームに新しい風を吹かせてほしい。
(東夏紀)
選手、スタッフインタビュー
近藤皓介 学生コーチ
ー優勝を果たした率直な感想は
優勝は狙っていましたが、出来過ぎです。
ー今日の試合を振り返って
苦しい展開は予想していたので、前半から中盤にかけて粘り強く守って勝ち越せたことが大きかったと思います。
ー初戦は安打が1桁でしたが、昨日、今日と2桁。チームで意識したことなどは
結果の出ていなかった選手も積極的に振れていましたし、惜しい当たりやファールもあったので、その姿勢を崩さずに打っていこうと意識しました。
ー4番の浦選手が3試合とも期待に応える活躍でした
打って欲しい場面で打ってくれました。頼もしかったです。
ーチームキャプテンの内海貴選手も打撃、守備ともに活躍が光っていました
内海が打てばのっていくチームだと思うので、中心選手として責任を果たしてくれたと思います。
ー3試合を通じて得た収穫は
打撃陣の爆発力には驚かされました。
守備では、投手陣も気持ちが入っていましたし、一個のアウトに執着して粘り強く守ることができました。
ー逆に課題は
投手陣の制球とサインミスなどの細かい部分になります。
ー秋季に向けてひとことお願いします
今日のメンバーから1、2年生がリーグ戦メンバーに入ったりして、また違ったチームで臨むことになると思いますが、秋も優勝目指して頑張ります。
塙雄裕 投手
ー今日の試合を振り返って
チームが野手、投手共に団結することができて野手が守って点をとってくれたので、投手陣にもスイッチが入って投げ抜こうっていう気持ちになれました。それが今日の勝利につながったのかなと思いました。
ー2試合連続の登板だったがどのようなことを考えてマウンドに
投げさせてもらえることに感謝していました。後ろにも信頼できる投手がたくさんいましたし、点をとってくれる仲間もいるので一つ一つのアウトを丁寧に積み重ねて自分ができることをやろうという気持ちでマウンドに立ってました。
ー4回表の被本塁打以降は無安打投球だったが意識したことは
ホームランを打たれたことは自分の責任で、せっかくのいいムードを相手に傾けてしまったのは自分だったのでしっかり自分の投球からリズムを作り出せるように抑えようと心がけました。
ー自身の強み、アピールポイントは
強気なピッチングというのが強みだったのに今日は逃げの投球になってしまったと感じているので、これから強気な投球をどんな場面どんな相手にも通用するように努力して磨いていきたいです。
ーフレッシュトーナメントを通じて見つかった課題は
ストレートの弱さ、制球、球速など課題は山積みなのでストレートで押せる強さと制球がないのは今回の試合で痛感しました。上級生になる前には自分で納得のいくボールが投げれるようにして150㌔出してチームを勝利に導けるように頑張りたいです。
ー秋のリーグ戦に向けてひとことお願いします
まだリーグ戦で戦える技術ではないのでリーグ戦までの期間で少しでも自分の目標に近づけるように練習して、秋のリーグ戦に入って投げれるように頑張ります。
吉安遼哉 捕手
ー優勝の率直な感想は
素直に嬉しかったです。
ー7回の打席は代打での出場でした。どのようなことを考えて打席に入りましたか
とにかくチームの役に立ちたかったのでどんな形でもランナーを返そうと思って入りました。
ーフレッシュトーナメントは法政のユニフォームを着て初めて臨む公式戦だったと思います
とにかくリーグ戦の借りを返すつもりで1人1人チームの役割にまっとうして楽しく試合ができました。
ー入寮から意識して練習していることは
スローイングです。
基本から大事にしています。
ー夏に取り組んでいくことは
走攻守すべて足りないと感じたので全て一からやり直したいと思います。
ー秋季に向けての意気込みをお願いします
チームの戦力になれるように頑張ります。
内海貴斗 内野手
ー今日の試合を振り返って
出来過ぎです。楽しく試合ができました。
ーキャプテンとして意識したことは
下を向かずに絶対勝てるという思いで思い切り野球しました!
ー守備での声掛けが特に目立っていたが
1番意識していました。野球はピッチャーが全てと言っても過言ではないので守備から流れが来るように声を出していました。
ー見事優勝を果たしたが、このチームの強みは
チーム力です。
ー本塁打の感触は
完璧です。
ー毎試合安打を放っているが好調の理由は
打ってやるという気持ちです。
ーフレッシュトーナメントを通じて見つかった課題は
三振が多いところです。
ー秋のリーグ戦に向けてひとことお願いします
(メンバーに)入れたら活躍します!
浦和博 外野手
ー優勝の率直な感想は
とても嬉しいです。
ー4回の打席はどのような意識で臨みましたか
ここが勝負どころだと思ったので、なんとしてでも打ってやろうと思っていました。
ー8回の打席はどのようなことを考えて臨みましたか
点差もあったので少しホームランを狙ってました。
ー打った瞬間の感触は
完璧です。
ー今大会での打撃好調の要因は
脱力を意識しました。
ー秋季リーグ戦に向けてひとことお願いします
リーグ戦に出れるようにこれからもアピールしていきます。