第102回東京箱根間往復大学駅伝競走 大島史也特集&事前インタビュー
新春の風物詩、1月2日~3日の2日間にわたって開催される箱根駅伝。法大はチームとしての出場はかなわなかったものの、予選会落選校の選手によって構成される関東学生連合チームに大島史也(社4=専大松戸)が選出された。今回は、同チームの監督を務める坪田智夫駅伝監督のインタビューと合わせ、直前の意気込みを聞いた。
▼関東学生連合区間エントリー選手
| エントリー区間 | 選手名 | 1万メートルタイム |
|---|---|---|
| 1区 | 川﨑颯(筑波大3) | 28分32秒10 |
| 2区 | 古橋希翁(駿河台大3) | 28分19秒45 |
| 3区 | 大島史也(社4=専大松戸) | 28分10秒01 |
| 4区 | 大湊柊翔(明大3) | 28分39秒15 |
| 5区 | 髙橋歩夢(明学大3) | 29分26秒67 |
| 6区 | 山中寿世夢(国士大3) | 28分50秒90 |
| 7区 | 秋吉拓真(東大4) | 28分45秒62 |
| 8区 | 横尾皓(芝浦工大4) | 28分36秒97 |
| 9区 | 染谷雄輝(日本薬科大4) | 28分38秒95 |
| 10区 | 佐野颯人(武蔵野学院大3) | 28分45秒93 |
| 補欠 | 本多健亮(東大大学院M2) | 29分18秒13 |
| 補欠 | 光安航希(亜大4) | 29分25秒33 |
| 補欠 | 会田昊生(上武大3) | 29分33秒16 |
| 補欠 | 上山詩樹(専大3) | 28分44秒27 |
| 補欠 | 相川正樹(平国大2) | 29分46秒65 |
| 補欠 | 柿内心温(拓大2) | 30分25秒78 |
大島史也 箱根路への道のり~憧れの路へ~
法大史上最速ランナーが満を持して箱根路に挑む。1万メートルと5000メートルの法大記録を塗り替えた勢いそのままに箱根路でも活躍が期待されたちょうど1年前。前年エントリーされながらも当日変更で出走できなかった1区出走予定だったものの、直前の体調不良により出走はかなわず。チームも1区からの悪い流れを断ち切ることができず、総合15位でこれまで3年連続で獲得していたシード権を落とした。
10月に開催される第102回東京箱根間往復大学駅伝競走予選会に向けて、副将に就任した大島史也(社4=専大松戸)は、「背中で引っ張るというところもやっていきたい」という言葉の通り、今シーズン前半は5000メートルに絞って試合に出場。自身初戦となった4月の金栗記念では13分44秒43、2週間後の学生個人でも13分56秒53、5月頭の関東インカレでは13分49秒24で入賞を飾るなど約1ヵ月の間の連戦で13分台を連発した。

関東インカレで5000メートル入賞を飾った大島
前半シーズン最大の試合である全日本大学駅伝予選会は、4組目に出場して留学生の集団についていくも、後半こらえることができず。チームも総合11位で4年連続伊勢路への切符を逃した。
その後開催された日本選手権への参加標準記録を切ってはいたものの、「日本選手権に出て、チームに良い影響を与えるっていう選択肢もやっぱりあったんですけど。それよりはチーム全体のメニューに合流して一緒にやっていかないといけない」との気持ちからロードに向けて回避した。

全日本大学駅伝予選会で4組目に出走した大島
夏合宿では「自分の思い描いていた夏の強化というのができたかな」と語るように最後の箱根予選会へ向けての強化を積んだ。迎えた10月18日。開始時間の前倒しの影響か、高速レースとなった21.0975キロ。16キロまでは想定通りのペースでレースを運ぶも、「粘りの走りになってしまい、自分の弱さが出てしまって後悔しています」と後半のペースダウンが響き全体32位。チームとしても17秒に泣き、10年連続での出場が途切れた。

箱根駅伝予選会で副将としてチームを引っ張た大島

箱根予選会落選に悔しさを見せた大島
駅伝に対してはあまり得意な意識を持っていなかったという大島も4年前の弊会による新入生インタビューでは「陸上を始めたころから目指してきている場所」と憧れを語ってくれた。4年越しの箱根路で「いい走りができれば、来年後輩たちにも良い影響を与えられる」と自分だけではなく、走れなかった後輩や同期たちの思いも背負う。関東学生連合の白いたすきをオレンジの魂に染め、新春の湘南街道を駆け抜ける。
(記事:篠﨑勇希)
インタビュー
大島史也
――箱根駅伝まであとおよそ1週間。現在のコンディションや率直な気持ちは
去年はこの時期に体調を崩してしまったっていうこともあるので、まずはスタートラインに確実に立てるようにというのと、その中で、あと1週間でどれだけベストパフォーマンスに持っていけるのかっていうのを考えて日々やっています。
――関東学生連合チームの主将に任命されたが、その経緯は
単純にスタッフの、坪田監督、大志田(秀次、明大監督)コーチ、長谷川(淳、専大監督)コーチが自分を選んでくださいました。
――箱根予選会後はどのように過ごしてきたのか
やっぱり箱根予選に落ちた当初は、チームで出たかったという結構その気持ちが強かったんですけど、やっぱり(関東学生)連合で走れるというのもあったので、もう1回チャレンジできるなら、箱根路に挑戦したいなという気持ちで2ヶ月、練習に取り組んできました。
――練習メニューでの変化はあったのか
同期も引退しましたし、新しいチームになって自分は箱根があるっていうのと、やっぱりその学内選考と、学生連合の中での出走メンバーの選考っていうのもあったので。なかなかみんなとは練習のスケジューリングが合わなかったので、ずっと1人でここまでのメニューはやってきたことが多かったです。
――連合チームの全体練習の雰囲気は
やっぱり連合チームっていうのは、予選に落ちたチームといえど、やっぱりそのチームの中の1番状態の良い選手、言わば各大学の主力の選手が来ているので。やっぱり意識も高いなと思うところもありましたし、やっぱり走力も強いなって思うところもありましたし、本当に自分自身すごく勉強になる練習会で、充実した2日間を過ごせたなと思いました。
――主将という立場もあるが、他大学の選手とコミュニケーションは
やっぱり自分は1度も出走がなくて、12月10日にエントリーされて、23日間しかないようなチームですけど、主将を任せていただいた以上は、自分がチームを少しでもいい方向に持っていかないといけないと思っていたので、4年生というのもありましたし、特に下級生に対しては積極的にコミュニケーションを取ったつもりです。(中でもこの選手とはよく話したという選手は)特定の選手に対してというのもなくて、やっぱり全員とはコミュニケーションをしっかり取るようなことは意識しました。
――5000メートル×3のポイント練習があったとのことだが、振り返って
(14分30秒という)条件があったので。そのマックスポイントに近いタイムで3本まとめられたので。余裕もありましたし、できるだけそこでいっぱいいっぱいになってピーキング自体がずれないようにということは意識してやったので、問題なく終えられたのかなと思います。
――大志田コーチや長谷川コーチと何か話はしたのか
やっぱり長谷川コーチは、専大松戸高校時代から、高校の大先輩というのもあるんですけど、何度かお話ししていただく機会も高校生の時からありまして。やっぱり競技者としても、尊敬するところもありますし、大学生になってからも気にかけてくださることがあったので。こうやって最後の箱根駅伝に巡りあわせで、同じチームとしてやっていけるっていうのは、ありがたいことですし、感謝を示したいなと思います。大志田さんも実業団の進路についてのスカウトの際にお世話になりました。大志田さんがスカウトしてくださって、無事決まることができたので。スカウトでお話いただいた時にすごく競技に対する熱意、陸上に対する熱意をすごく僕は感じましたし、そういった面でも僕自身すごく尊敬しているので、そこもしっかり、長谷川さんと同じように感謝の走りを見せたいなって思います。
――改めてご自身にとっての箱根とは
元々自分は、高校時代から駅伝に対して得意というか、いい走りをしたことがあまりなくて。どちらかというとトラックの方が得意なのかなっていう風に自分では思っていたんですけれど。そういう面ではなかなか駅伝っていうものに対して「すごく好き」というような感じはなかったんですけど、この箱根駅伝だけはやっぱりどこか違くて、すごく自分にとっては憧れの舞台だったので。中学生の時から苦手だったところを克服しないといけないと思ってこの4年間やってきて、やっと4年生でチームは違えどチャンスを掴むことができたので、最後しっかり克服した姿というか、これまでの練習の成果っていうのを発揮できたらなと思っています。
――坪田監督へはどのような思いを持って走るか
やっぱり1番は法政大学のたすきを背負ってチームに貢献したかったですし、しなければならなかったなとは思っていて。そういった面では、やっぱり色々迷惑をかけてしまったなと思っています。それでもこうやって最後、運営管理車から走りを見ていただけるので、自分が成長した姿っていうのを走りで示せたら、最後少しでも恩返しができるのかなと思っています。
――後輩にはどのような姿を見せたいか
この1年自分は最上級生として走りでチームを引っ張る、引っ張ろうと思ってやってきたつもりでして、それがどう後輩たちに見えていたのかはあまり分からないですけど。やっぱり集大成というか、今までやってきた自分の姿勢っていうのを、最後大舞台で走るということで見せるというか、そこでいい走りができれば、来年後輩たちにも良い影響を与えられるのかなと思っているので、全力で走り抜けたいなと思います。
――ファンの方々へ向けて
感染症も流行っているので、まずはしっかりとスタートラインに立てるようにというところです。それから、4年間、自分と、そして自分の同期たち、4年生をずっと応援してくださった方々に最後は自分の走りで感謝を示せたらなと思います。
(インタビュー:篠﨑勇希)

監督インタビュー
坪田智夫駅伝監督
――今回の箱根駅伝では関東学生連合の監督としてチームを受け持つことになる。例年と比べて心境の変化は
非常に楽しみな部分と難しい部分があります。楽しみな部分は各大学のエース級の選手が一つのチームとなって箱根を迎えるので、彼らがどこまで勝負できるのかが楽しみです。1万メートルの平均タイムも28分36秒34と普通の単独チームであれば上位を狙えるチーム状況ですし、予選会の走りを見ていても能力がある選手がそろっていますので、監督として力を最大限に引き出してあげたいです。
難しい部分としては能力が高い分、単独チームだと1年間かけて箱根に向けてまとまっていくところを12月10日からの3週間でまとめたチームなので、チームとしてのまとまりがどこまでできるのかという部分に難しさを感じました。
――予選会の個人順位・記録・チーム順位・その後の1万メートルの記録・チーム内選考レースをポイント化して順位をつけて区間を決定した意図は
例年16名のメンバーから誰を出走させるのかというのは難しい問題です。自チームの選手であれば、毎日練習を見て選手の状況を把握しながら出走メンバーを決めることができます。しかし学生連合の場合だと、このようなことが全く分からない状態で決めないといけないので、1回2回の練習では調子を見極めることは難しいです。例年様々な意見が出ることを歴代の監督やチームスタッフから聞いていたので、何か良い案がないか考えていました。前回の箱根でもポイント制は取っていたらしいのですが、そこまで厳格化していなかったので、今回は目に見えるような形で選手たちにも予選会終わった後に選考方法も発表し、言い訳ができない状況やチームスタッフも納得できる形でこのポイント制を選びました。チーム関係者から不満や反対意見はでなかったので、この選考方法でよかったと思います。
――ポイント制を取ったことで、適正区間よりも選手の希望区間を優先したオーダーになると予想される
総合ポイントが高い選手から希望区間に入れるので、ある程度選手が走りたい区間を走れるのではないかと思います。最後に残った区間もあったのですが(笑)そこは選手に意見を委ねました。学生連合はこの経験をどのように次に生かすのかが大事です。単独チームであれば順位を取ることが第一ですが、学生連合は順位がつきません。だからこそ選ばれたメンバーはこの経験をチームに帰ってきたときにどのように落とし込むのか、4年生だったら競技を継続する人も継続しない人も社会に出たときにどのように生かすのかが大事であると話しています。そのため選手に希望区間を募り自分の意志で走ってほしいと思います。
――普段関わらない選手やコーチと練習をする中で何か新しい刺激は
明大の大志田秀次駅伝監督や専大の長谷川淳監督とはずっと前から関わりがあったので、そこに関してはスムーズにチーム運営ができています。大志田監督は年齢的に私よりも年上なのですがだいぶ気を使ってくれています(笑)。お互いに尊重し合いながら指導歴も長いので、意見も交換し合いながらチームを作れています。
――ここからは大島選手について質問を。大島選手にはどのような走りを期待するか。
最初で最後の箱根に加え、入学してからの苦労や前回は直前の体調不良で走れなかったりしたので、期するものがあると思います。彼自身の思いを全てぶつけて、4年間苦しみながら成長した姿を見せてほしいです。大学で箱根駅伝というものは一区切りになりますので、自分の力を全て出して欲しいです。
また大島は決して右肩上がりに成長した選手ではありません。努力を重ねてようやく形になりました。能力だけでやってきていた選手ではないです。自分が思い描いていた大学陸上人生ではなかったかもしれませんが、諦めなければトラックで学生のトップ選手や法大記録を更新できますし、単独チームではないですが箱根にも出場できる姿を後輩たちに伝えてほしいです。
――また大島選手は実業団では強豪・Hondaで競技を続ける。大島選手にはどのような選手に成長してほしいか
Hondaは日本のトップチームです。そこでニューイヤー駅伝に出場だけを目指すのだけではもったいないです。ましてやHondaには日本代表選手が多くいますので、そこで競技力を高めて日の丸を背負ってほしいと思います。
――ここからは法大の1年間の振り返りを。3大駅伝に出ることができず悔しいシーズンだったと思うが、どのように感じたか
3大駅伝には出ることができませんでしたが、全て悪い流れではなかったです。確実に選手たちの力はついてきています。MARCH対抗戦で多数の選手が自己ベストを更新しましたし、成長していると感じています。1万メートルの上位10人の平均タイムも28分42秒96と28分台に入ったのは法大史上初めてです。中大の27分台を始め他大学と比べると差はあるかもしれませんが、法大も確実に成長しています。ベースは上がっていますが、意識を高めなければ予選会は通過できないですし、敗れたチームですのでバージョンアップをしていなかければなりません。ただ後退しているとは思いませんし、今までやってきたことを全て否定するのではなく、課題を1つ1つ潰しながら変えていきたいと思います。
――下級生の台頭が目立ったシーズンだった。
今年の新チームの課題が2年生でした。1年生の時に福田大馳(経2=名経大高蔵)が入りましたが、10人のメンバーには絡むことができませんでしたし、他の選手も上がってきていませんでした。ただ今年になって2年生が力をつけてきて勢いのある世代になりました。ただこのまま箱根で勝負できるとは思っていないですし、来年度の中軸を担う世代になりますので、法大の未来は彼ら次第だと思っています。
――MARCH対抗戦ではトラックのタイムの引き上げに成功した。年明けのロードシーズンの方針は
まずは2月の神奈川ハーフと丸亀ハーフで二手に分かれてタイムを狙っていきます。2026年は少し前倒しでトラックレースにシフトしていきたいと考えています。全日本大学駅伝予選会を突破するためには3月までロードシーズンにしてしまうと間に合わないと感じましたので、2月上旬の2つのレースで一区切りにしようとプランを立てています。その分、箱根予選会までには数少ないロードレースになりますので、しっかりとタイムを出していき、全日本予選に弾みをつけることができるようにしたいです。
――来年は分岐点となるシーズンとなる。どのようなシーズンに
まだまだ課題はたくさんありますが、確実に前には進んでいます。今回箱根出場というタスキは途切れてしまいました。ただ敗れたからこそ新しいことに挑戦できるシーズンになるので、まずは全日本予選を突破して、その先にある箱根予選を突破することを目標にしていきます。またただ出場するだけではいけないので、シード権に返り咲けるようにしていきたいです。
――最後にファンのみなさんへ
今回は寂しいお正月になってしまいました。2026年はシーズンを通して長距離ブロック非常に元気だなと思っていただけるように、2027年のお正月では法大が生き生きと箱根路を駆け抜ける姿を見せられるようにがんばりますので、応援よろしくお願いします。
(インタビュー:松下天)



