第97回日本選手権
2021年4月3日〜10日
東京アクアティクスセンター
山尾隼人(経2)が圧巻の泳ぎを見せた。男子200m平泳ぎ準決勝で自身初となる2分09秒台をマーク。決勝では「限界に挑戦する」と意気込み、積極果敢に突っ込む素晴らしい泳ぎを見せた。
※取材は大会後にオンラインで実施しました
5日目・6日目 結果
予選結果(女子)
種目 | 順位 | 選手名 | タイム | 備考 |
---|---|---|---|---|
800m自由形 | 15位 | 中島千咲代 (現2) | 8分51秒27 | |
200m背泳ぎ | 5位 | 石田瑠海 (スポ1) | 2分13秒90 | 自己新・準決勝進出 |
10位 | 関口真穂 (スポ3) | 2分14秒62 | 準決勝進出 | |
15位 | 小川真菜(経4) | 2分15秒76 | 準決勝進出 |
予選結果(男子)
種目 | 順位 | 選手名 | タイム | 備考 |
---|---|---|---|---|
200m個人メドレー | 10位 | 宮本一平 (人4) | 2分00秒81 | 準決勝進出 |
準決勝結果
種目 | 順位 | 選手名 | タイム | 備考 |
---|---|---|---|---|
女子200m背泳ぎ | 7位 | 石田瑠海 | 2分14秒36 | |
8位 | 関口真穂 | 2分14秒39 | ||
15位 | 小川真菜 | 2分15秒27 | ||
男子200m個人メドレー | 5位 | 宮本一平 | 1分59秒93 |
決勝結果
種目 | 順位 | 選手名 | タイム | 備考 |
---|---|---|---|---|
男子200m平泳ぎ | 7位 | 山尾隼人 (経2) | 2分10秒46 | |
男子200m個人メドレー | 6位 | 宮本一平 | 1分59秒86 |
Pick Up
山尾隼人
高いハードルとなった200m平泳ぎの決勝進出ラインを山尾は圧巻の泳ぎで越えていった。「150mまで五輪代表を内定させた武良竜也選手に食らいついて、ラスト50mも耐えることができた」。臆する気持ちを捨て攻めた結果、組3着でゴール。電光掲示板に『2分09秒71』とタイムが表示されているのを確認すると、その拳で水面をたたきつけ喜びを表現した。
自己ベスト更新
これこそが磨きをかけてきた攻めの泳ぎだった。大会初日に行われた100m平泳ぎでは「落ち着き過ぎてしまった」と積極性を欠いて予選落ち。だが「練習の段階から自信があった」と話す200mでは自身の持ち味を存分に発揮した。100mの通過タイム『1分02秒48』はこれまでで最速の入り。「上のレベルを目指すにあたっては前半をもっと上げないと勝負にならない」。2月のジャパンオープンで悔しさを味わい、今大会に向けて課題克服に取り組んできた成果が身を結んだ。
パリ五輪へ
「3年後を見据えて今できる最速の入りをしよう」と意気込んだ決勝は準決勝よりもさらに速い『1分02秒04』で100mを通過。「ラスト50mは全然力が入らなくて死んでしまいました」と苦笑しながらも2分10秒46のセカンドベストでまとめた。未知の領域に踏み込んだ感想を尋ねると「それくらいで前半を泳ぐことができるのを確認することができたので良かったです」。準決勝よりもタイムを落とし、望んだ結果にはならなかったが猛進果敢なチャレンジを前向きにとらえていた。
山尾にとって五輪代表選考会を経験するのはこれで2度目。「リオ五輪の代表選考会は下から数えた方が早いみたいな感じでしたが、徐々に五輪が手の届くところまで来ていると感じています」。決勝レースでやってのけた限界を突き破る挑戦がパリ五輪への道を切り拓いたに違いない。
(記事/取材:根本成)
インタビュー
山尾隼人
ー 日本選手権を終えて今の率直な気持ちは
目標としていた決勝進出を200mでは達成できたので、その点に関しては良かったなと思っています。しかし100mでの予選落ちや200mの決勝でタイムを落としてしまった点についてはこれからの課題になっていくのかなと感じています。
ー この大会は一つ狙っていた試合だったと思いますが、試合を迎えるにあたっての手応えは
大会前は長野県にある準高地でトレーニングを積んできて、自分の中ではしっかり練習ができているなという実感がありました。この大会には自信を持って臨むことができたと思います。
ー 100m、200mそれぞれどういった目標を持っていましたか
100mでは決勝進出、200mでは決勝に進出して、上のレベルの選手に食らい付いていくレースができればいいなと考えていました。タイムに関しては100mが1分00秒2あたりを、200mは派遣標準記録の2分08秒28を狙っていました。
ー 初日の100mの結果はどのように感じてますか
2月のジャパンオープンや12月の日本選手権では100mは予選落ちをしていて1本しか泳ぐことができなかったので、今回こそはと思ってレースに臨んだのですが、残念ながら今回も予選を通過することができなかったのですごい悔しい結果になりました。ただ、正直なところ甘く見ていた部分も自分の中ではありました。これくらいの力だったら残れるだろうと考えていたところがあり、オリンピック選考会をなめていたと言いますか、そこは反省しなければいけないと点かなと思います。
ー 反省点としてはどの辺ですか
どのような言い方が適切か分かりませんが、落ち着き過ぎてしまいました。僕はいつも前半から行くタイプなのですが、今回のレースはベストの時よりも遅れて入ってしまって、後半も上がらないまま終わってしまって、それがそのままタイムに現れた形になりました。
ー 100mで1分00秒台の前半を出すために必要なことは
トップ選手と比べると前半の部分で遅れをとってしまうので絶対的なスピードの強化が必要になってくるのかな考えています。もっとスピードを付けて、かつ楽に前半を入れるようにすれば0秒台前半が見えてくるのかなと思います。
ー 200mに関してはジャパンオープン後どういった課題を持って練習に取り組んできましたか
ジャパンオープンの時はベストタイムは出せたのですが、上のレベルを目指すにあたっては前半の部分をもっと上げないと勝負にならないと考えていました。なので100mと同様にスピード強化という部分に重点を置きつつ、前半から突っ込むレース展開でも後半耐えられるようにするために、準高地で持久力の強化も行ってきました。
ー 予選から2分10秒台を出しました
200mに関しては練習の段階から自信があったので、自分の中では予選は余裕を持って泳ぐことができました。予選では泳いでいる感覚よりも良いタイムを出すことができたので調子は非常に良かったと思います。
ー 2分09秒台をマークした準決勝はどういったレースプランでしたか
準決勝では皆がタイムを狙ってくることが分かっていたので、自分もそこに負けないくらい出さないと決勝に残れないと思っていました。準決勝はもうフルパワーと言うか、マックスで泳いでいました。
ー 9秒台が出せた要因は
150mまでオリンピック代表を内定させた武良竜也(BWS)選手に食らいついて、ラスト50mもしっかり耐えることができました。やはり前半から積極的に泳げたことがこのタイムに繋がったのかなと思います。
ー 決勝のレースプランは
決勝はレース前にコーチから、3年後のパリ五輪を見据えて今できる最速の入りをしようという話がありました。限界に挑戦すると言いますか、可能性を見せていけるようなレースができればいいなと決勝前は考えていました。
ー 実際に1分02秒0で前半を入ってみて感じたことは
正直、自分の中ではそんなに速く入っている感覚はなかったです。ただ身体は正直で100mをターンしてから「しんどいな」と思い始めて、ラスト50mは全然力が入らなくて死んでしまいました(笑)。
ー 今後は後半が課題になってきますか
そうですね。今回は前半を2秒0で入ることができて、できれば1秒台で入りたかったですが、それくらいで前半を泳ぐことができるというのを決勝の舞台で確認することができたので良かったです。それを維持するための後半のスタミナが今後の課題かなと思います。
ー 五輪選考がかかったレースの雰囲気を味わってみていかがでしたか
今まで出場してきた日本選手権やジャパンオープンとかの決勝とは全然違った雰囲気で、トップ選手の緊張感というのが招集場や控え場所で伝わってきて、本当にオリンピック選考会は違うなと思いました。
ー ベストを更新し続ける中で、トップに近づいてきたと感じる部分はありますか
僕は5年前もリオ五輪の代表選考会に出場していて、その時は順位は下から数えた方が早いみたいな感じだったのですが、今はこうやって決勝の舞台で戦えるところまで来て、トップ選手の隣で泳ぐ中で、徐々に世界が手の届くところまで来ているのかなと感じています。
ー 大会を通して感じたことは
今大会では200mを3回泳ぐという初めての経験をしました。体力的な部分でトップ選手との実力差を知りましたし、決勝でもタイムを上げる、ベストを出せるようにするためには、もっと地力をつけてタフな選手にならなくてはいけないなと感じました。
ー 次目指すところは
来年、今回五輪を内定させた選手と戦っていくために、まず今年は2分07秒台を目標に頑張っていきたいです。