【フィギュア】第87回全日本選手権『W小林』が全国の舞台で躍動! 諒真は悔しいショート落ちも、建斗は見事昨年のリベンジ達成!
第87回全日本フィギュアスケート選手権大会
2018年12月22日(土)~24日(月)
大阪府東和薬品RACTABドーム
オリンピックが開催された今年。フィギュアスケートでは日本は2つのメダルを獲得し、大いに注目された。そんな2018年を締めくくる全日本選手権。オリンピック二連覇の偉業を成し遂げた羽生結弦(ANA)は3年連続欠場となったが、世界を舞台に戦う選手が多く出場するハイレベルな戦いになった。法大からは小林建斗(文2)、小林諒真(営2)の2選手が出場。小林諒は力を出し切るも、あと一歩及ばずショート落ちという結果に終わったが、小林建は見事昨年のリベンジを果たしフリー進出。憧れの高橋大輔(関大KFSC)の前で念願の『道化師』を彼らしく演じきった。
試合結果
クラス | 選手名(学部・学年) | 順位 | SP | FS | 総合得点 | ||
---|---|---|---|---|---|---|---|
男子シングル | 小林建斗(文2) | 19位 | 59.76点 | 22位 | 113.77点 | 19位 | 173.53点 |
〃 | 小林諒真(営2) | ー | 55.09点 | 26位 | ー | ー | ー |
戦評
男子シングルSP
激戦の東日本選手権をくぐり抜け、念願の全日本選手権初出場を果たした小林諒真(営2)。4回転ジャンプや3アクセルなど、大技を構成に組み込む選手が格段に増えているここ数年のフィギュア界のレベルアップをひしひしと感じ、直前のインタビューでは「ジャンプが一つ飛べなかったら落ちる。」と危機感を口にした。前日練習では「今まで滑った事がないような氷」とリンクへのアジャストにやや苦戦するも、直前の6分間練習までにしっかり感覚をつかんだという小林諒。経験したことないような大勢の観客を前にしても、いつも通りを貫き落ち着いた様子で本番を迎えた。
「最初はすごく緊張していた」とやや緊張の面持ちで滑り始めると、冒頭の3回転+3回転コンビネーションジャンプはやや堪える形になりながらもしっかり着氷。「途中から滑っているのが楽しくなってきた」と目線も上がり大舞台にも動じないスケーティングを披露した。しかしスピンやステップはレベルの取りこぼしが目立ち、世界を相手に戦う選手たちとの差を痛感させられる。演技後半の3フリップはアテンションが付き減点されたものの、ジャンプをすべて決めきって演技を終えた。
最後まで笑顔が無かった小林諒。結果は55.09と自己ベストにはわずかに届かない結果となったものの、「自分のできる限りのことはできた」と自身の演技を振り返る。順位は全体の26位と惜しくもフリー進出とはならず、涙をのんだ。初の夢舞台は悔しい結果となったものの、彼のひたむきなスケートへの姿勢は全国のフィギュアスケートファンに届いたはずだ。まだまだ伸びしろも十分。さらなる進化を遂げた彼の姿をまたこの大舞台で見られることを期待したい。
昨年はルーキーながら全日本初出場を果たしたものの、ショート落ちという悔しさを味わった小林建斗(文2)。この一年はこの悔しさを晴らすべく、「ミスからのリカバリー」をテーマに練習を積んできた。憧れの高橋大輔(関大KFSC)も電撃復帰した今大会。何としても彼の前で『道化師』を演じるべく、リベンジのSPに臨んだ。
滑走順は最後から2番目。第4グループで宇野昌磨(トヨタ自動車)が100点を超える好演技を見せるなど会場は完全に温まっており、去年の2番滑走とは全く違う雰囲気。しかしこのような状況にも「自分のことに集中できた」と精神面での成長を感じさせた。「いつもはしないから驚いた」というコーチとの固い握手を交わし勝負のリンクへ向かうと、冒頭のコンビネーションジャンプはジャッジ全員からプラス評価を得る見事な出来栄え。続く去年失敗した3フリップも「落ち着いていけた」としっかり決め流れに乗った。去年と同じ衣装、持ち越しのプログラムであったものの、1年で成長した姿を全国の舞台で見せつけるスケーティングを披露。後半のアクセルは「考えすぎた」と6分間練習での不調を引きずり転倒してしまうも、スピンはいずれも高評価。失敗をしっかりリカバリーする修正能力を感じさせた。
演技後のキスクラでは晴れない表情も点数が出てフリー進出が決まると、笑顔があふれお茶目な表情も見せた小林建。59.76というスコアは自己ベストには1点弱届かなかったものの、転倒があってのこの点数は明らかにジャンプ以外の要素も成長した証。「まだリベンジとは言えない」とフリーへの気合も十分。今の彼なら他の誰のものでもない、自分らしい『道化師』を演じられるはずだ。
男子シングルFS
クリスマスイブの決戦となった男子フリー。去年ショート落ちを経験した小林建は見事リベンジを果たし、フリーへの進出を果たした。フリー前日は練習を程々に切り上げ、疲れを取ることに専念したという。6分間練習では、「桁違いの緊張感を感じた」と初めてのフリーを前に緊張の様子が見てとれた。強張った表情を見て、コーチは堪らず小林建を呼び寄せ声を掛けると、「それからは落ち着けた」と平常心に戻り、大勢観客が見守るリンクへ。
冒頭のフリップは自身も得意とするジャンプ。「余計なことを考えず冷静に飛べた」と加点の付く大きなジャンプで会場を沸かせた。続くジャンプは3ルッツの予定も、1回転になってしまう大きなミス。しかし目立った大きなミスはこの一つのみ。ショートで転倒したアクセルも何とか堪え、体力的に苦しくなってくる演技後半でも、「いつもの練習より息切れや疲れはなかった」とスピードに乗った滑りを披露。スピンもショートに続いて高評価を得た。第1グループではあるものの、実力者揃いの全日本選手権のフリーで自分らしさを見失うことなく堂々とした滑り。憧れの高橋大輔を前に、最後まで丁寧に『道化師』を演じ切った。
結果は113.77で総合19位。ショートから順位を3つ上げ、本人も「自分らしいスケーティングができた」と納得の言葉を口にしたものの、「良い部分と悪い部分が極端に出た」とさらなる飛躍に向け、向上心を忘れていない。まもなく年明けに開催される日本学生氷上競技選手権(インカレ)へ向けて、休む間も無く練習は続く。インカレではどんな姿を見せてくれるのか、来シーズンはどんなプログラムを構成してくるのか、彼への期待は膨らむ一方だ。
(戦評:湯浅駿)
インタビュー
小林建斗
SP後
ー今日の演技を振り返って
去年の全日本と違ったいい緊張感で臨めて、最初から最後までとてもいいスケートができたと思うんですけど、最後のアクセルで苦手なのでチキってしまって笑。すごく情けないんですけど。他の要素は1つずつ丁寧にできたと思うので、悪いところだけではないかなと思います。
ー点数が出た後、キスアンドクライ(キスクラ)では舌を出して微笑む場面もありました。どのような気持ちから出た表情だったのでしょうか
悔しさが大きかったですね。6分間でもアクセルがあまり良くなくて、引きずらないようにしなきゃと考え過ぎちゃったのが原因かなと思います。
ー最後から2番目という滑走順で、第4グループがかなり盛り上がった後の演技となりました
全日本の最終グループはもちろん初めてなんですけど、観客の多さもそんなに気にならず自分のことに集中できたので、雰囲気は特に気にならなかったです。
ー大阪のリンクは初めてということでしたが、前日練習を含め氷の感覚はどう感じていましたか
前々日は氷が柔らかかったんですけど、前日では固く冷やされてて調整に苦戦したんですけど、しっかり合わせていけたかなと思います。
ー今日のコンディションは
体調はもちろんいい状態に持って来ましたし、6分間も体はよく動いていました。その後に何かを狙ったり、何か(の大会の出場)がかかったりした試合ではないから楽しんで滑っておいでと言われたので、そこから気が楽になって、失敗はしてしまいましたけど、緊張感の切り替えはできたかなと思います。
ー去年の全日本と比べて、精神的な違いはありましたか
去年は自分の全日本デビューということで楽しもうという心がけだったんですけど、2年目からは悔しさもあってリベンジの気持ちが強くなったので、今後のために枠を取れるようにとか将来のことを考えて臨みました。
ー演技直前のリンクサイドでコーチと握手する場面もありました
余計なことを考えず、自分の知っているスケートだけ考えて先生と自分を信じて頑張ってきてねと声をかけてもらいました。いつも握手とかはしないのでびっくりしたんですけど笑。
ー冒頭のコンビネーションジャンプはどうしても力が入ってしまうと思いますが、どのような気持ちで臨みましたか
最初のジャンプはここから波に乗っていけるかがかかった大事なものなので、得意なジャンプですし落ち着いていきました。
ーアクセルは転倒という形になりましたが、失敗の原因は何だと捉えていますか
ステップが終わった後から、イーグルに行く前のクロスでスピードが落ちたままジャンプに向かってしまったことが原因かなと思います。
ー今日の演技で特に意識したことは
いままでのどの会場より観客の数が多いですし、目線はもちろん、テレビの放送もあったので、テレビの前の皆さんにも楽しんでもらえるような演技を心がけました。
ー直前の第4グループで憧れの高橋大輔選手の演技もありました。ご覧になりましたか
見れなかったんですよね。あとから録画で何度でも見たいと思います笑。
ー59.76という点数が出ました。ベストには1点弱届きませんでしたが、一度転倒があってこの点数が出たということに関してはどのように感じていますか
去年の全日本ではミスの後に動揺してしまってその後の演技に集中できなかったんですけど、失敗の後どうするかというのをここ一年意識して過ごしたので、ジャンプがダメでも他の要素でレベルが取れていると思うので、切り替えができていたから点が伸びたんだと思います。自分はもっと低いかなと思ったんですけど笑。
ー見事フリー進出を決め、去年のリベンジを達成しました
まだリベンジにはあと一歩で、フリーでいい演技をしてこそのリベンジだと思うので、今回のショートの失敗を反省して、フリーでは自分らしい道化師を演じ切りたいと思います。
ー最後にフリーへの意気込みをお願いします
周りに流されず、最後まで自分らしく演じ切りたいと思います。
FS後
-今日の演技を振り返って
ショートとはまた違った嫌な緊張感が6分間からあって、コーチからも顔が怖いと言われていたんですけど、演技が始まるまでにどういうスケートが自分らしさなのかとか、上手くやろうという気持ちをなくして。1つミスはあったけど最後まで自分らしくいいスケートが出来たかなと思います。
-1日空きましたが、昨日はどのように過ごしましたか
ショートが終わってからホテルに帰るのが結構遅くなってしまったので、次の日の練習も体が重くて疲れが取れていなかった感じがしたので男子の大ちゃん(高橋大輔)の練習を見てからホテユニ帰ってゆっくりして、いつも以上にストレッチやケアをしっかりやって明日に備えようと思っていました。
-去年は経験できなかったフリーの舞台の雰囲気は
これから最終グループに近づくにつれて観客も増えてくると思うんですけど、やっぱり他の試合とは桁違いの緊張感を感じて、この舞台が改めて素晴らしいなと思ったし、残り2年もしっかり出たいなと思いました。
-6分間練習で感じたことは、意識したことは
最初はぽんぽんと終わらせようと思ったんですけど、コーチに止められて。顔が怖いからと笑。しっかり下を向いていないで周りを見渡してごらんという話があって。それからは落ち着いてやれたかなと思います。
-憧れの高橋大輔選手と同じ舞台で戦えるとこについてはどのように感じていますか
小さい頃からテレビで見ていた憧れの選手と同じ舞台で滑れるというのは自分でも感動しているし、すごく頑張ってきてよかったなと思いました。
-フリーで道化師を滑ると決めた時は、まさか復帰するとは思っていなかったのでは
春頃シーズンが終わってからこの曲が決まって、プログラムを作っている時に大ちゃんの復帰の話を聞いたので、今年はついているなと思って。もしかしたら全日本で見て頂けるかもしれないという気持ちが込み上がってきて。今年はついている一年だからしっかり全日本まで出ようという気持ちで頑張ってきました。とてもいいモチベーションになったと思います。
-服部瑛貴氏(27年度卒)に振り付けをお願いした理由は
もちろん大ちゃんが使っていて、何回も道化師の演技を見てきたからというのもあるんですけど、オペラも使ったことがなかったし、自分らしい道化師を演じて曲負けしてるなと思われたくないし、この子はこの子でいい道化師のイメージがあるなと皆さんに伝えたかったのでこの曲を選びました。
-最初のフリップは自身も得意とするジャンプですがどのような気持ちで臨みましたか
こっちにきてからフリップの成功率が良くなくて。心のどこかで得意だから上手くやろうとか、降りなきゃという気持ちが強く出ていたかなと思ったので、余計なことは考えず冷静に飛びました。
-2本目のルッツが一回転になりました。原因は何だと思いますか
言い訳にはしたくないんですが、こっちにきてから右足の状態が良くなくて。多少痛みがあっても飛べると思ったんですけど、飛び急いでしまったのが原因だと思います。
-ショートでアクセルの失敗がありましたが、今日もアクセルは堪える形になりました。少なからず意識するところはあったと思います
ショートはとりあえず降りようという気持ちでジャンプ自体が小さくまとまってしまった感じがあったので、落ち着いて飛ぼうと思ったんですけど、ギリギリだったので笑。もっと練習しなきゃと思いました。
-後半苦しい時間帯でもコンビネーションはしっかり降りました
いつも曲をかけて練習するときよりも息が切れたり、体に疲れがきたりとかは感じなかったので、落ち着いて飛べたのが成功につながったんだと思います。
-スピンもレベル4がもらえていました
特に最後のデスドロップのコンビネーションスピンは得意としているものなので、最後曲が盛り上がる時にしっかり速いスピンで演技が締まるようにと意識してきたので、その点は良かったかなと思うんですけど、もっといいものができると思うので、さらに練習します。
-今日は演技前コーチ、振付師のお二人と握手がありました
ショートは直前に握手を出されたのでおぉっとなったんですけど、今日は服部先生に握手しようという話をしたので気にならなかったし、一緒にキスクラに座るということを目標に頑張ってきたので達成できて良かったです。
-今回の全日本はリベンジの舞台となりました。全体を振り返ってどんな全日本選手権だったと言えますか
全体としては良い部分と悪い部分が極端に分かれたので、直さなきゃいけないものが明確になって良かったなと思うんですけど、ショートに余裕がないと思うし、見返してみても表情が固いなという印象があったので、大舞台でも自分らしさを100%出して、ショートフリーともに笑顔で終われるようにまた一年頑張ろうと思いました。
-インカレもすぐそこに迫っています。次の舞台に向けて意気込みをお願いします
今回は東日本代表でしたけど、インカレは大学の代表なので違う緊張感があると思うのですけど、時間はないですけど失敗したことを修正して、良い部分は伸ばしていけるように練習して、良い成績を残したいと思います。
小林諒真
SP後
ー今日の演技を振り返って
自分のできる限りのことはできたのかなと思います。
ーキスクラでは少し晴れない表情でした。演技を終えて今の素直な気持ちを聞かせてください
自分のできることはできたので、これ以上は練習するしかないのかなと思いました。
ーこの大阪のリンクは初めてということでしたが、前日練習などで感じたことは
今まで滑ったことがないような氷だったので、最初はジャンプのタイミングがうまく合わなかったんですけど、練習する中でうまく調整できたかなと思います。
ー会場に観客が入った状態での6分間練習の雰囲気はどのように感じましたか
大勢の人に見られているという意識はあまりしないで、今できることを6分間も本場もやろうと思って臨みました。
ー本番前いつもより少し硬い表情に見受けられました
最初はすごく緊張していたんですけど、途中からは滑っているのが楽しい感じになってきました。
ー直前にコーチからはどのような声掛けがありましたか
ちゃんと練習してきたんだから、自分ができることを精一杯やってきなさいと言われました。
ー冒頭のコンビネーションジャンプは少し堪える形でしたが加点のつくジャンプとなりました
ランディングがうまくいかなかったんですけど、またこの部分は練習したいなと思います。
ーアクセルは3回転も練習しているという事でしたが、どういった思い、考えで2アクセルという選択をしましたか
SPは2アクセルでいこうと先生と話していたので、頭からそういう気持ちでした。
ースピン、ステップはレベルの取りこぼしがありました
足は固かったかなと思うんですけど、見直して次につなげたいです。
ー今日の調子としてはどのように感じていましたか
朝からあまりミスをしないまま来れたので、いい調整ができたのかなと思います。
ー今日の演技で特に意識したことはジャンプは
ミスできないと思っていたんですけど、ステップは魅せるところなので、できる限りの顔を上げて、お客さんの顔を見ようと思ってやっていました。
ー最後に次への課題、活かしたいことを教えてください
やはりスピン、ステップを取りこぼしているので、そこはきっちり全部取れるようにして、ジャンプのレベルも上げていきたいなと思います。
フォトギャラリー
- 初の全日本はほろ苦い結果に
- ジャンプはすべて着氷
- 丁寧なスケーティングで観客の視線を集めた
- スピン、ステップは今後の課題だ
- 二度目の大舞台は経験者としての貫禄を見せた
- 全国放送のプレッシャーにも負けない精神的成長を感じさせる
- 持ち越しのプログラムで進化した姿を見せた
- アクセルの失敗もあり、演技後は納得いかない表情
- 初のフリー進出。最後まで堂々と演じきった
- アクセルはフリーも堪える形に、今後の課題だ
- 自分なりの『道化師』を全国に見せつけた
- 来年はこの舞台でさらなる高みを目指す