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【水泳】ジャパンオープン2020 (50m) ③ 赤羽根康太選手 インタビュー 『悔しさ』を『力』に変えて 「4月をある意味水泳人生の一つの集大成として迎えられたらいい」

ジャパンオープン2020(50m)
2021年2月4日〜7日
東京アクアティクスセンター

初日の50mバタフライで23秒86の自己ベストで4位になったものの、代表入りを狙う100mバタフライでは悔しい7位に沈んだ赤羽根康太(人4)。大会を終え五輪代表選考会まで残り2ヶ月を切った中で、どのような気持ちを抱いているのか心境を聞いた。

ピカチュウのマスコットを片手に法政ポーズをとる赤羽根選手

赤羽根選手 結果

50mバタフライ 予選 7位 24秒07  決勝進出
50mバタフライ 決勝 4位 23秒86 自己新
100mバタフライ 予選 4位 52秒22 決勝進出
100mバタフライ 決勝 7位 52秒53

記事

胸の内にしまう行き場のない気持ちは計り知れない。五輪代表選考会まで残り2ヶ月を切っている状況でライバルたちに圧倒された。ジャパンオープンでの思いがけない惨敗に心の整理がつかず、無念さだけが込み上げてくる。「水泳辞めようかな」ー。

募る危機感

あらわになった自分の弱さ。大会最終日に行われた100mバタフライで派遣標準記録の51秒70にも自己ベストの51秒83にも遠く及ばない52秒53という記録で7位に終わった。

「自分が100%の状態でなかったのは確かですが、あれだけの差を付けられてしまい、正直代表入りに向けてヤバいなと感じています」。

決勝で上位を独占したのは12月の日本選手権と同じ社会人選手たちだった。順位の入れ替えこそあったが、表彰台に上がった3選手は派遣標準記録を大きく上回るタイムをマーク。4月の日本選手権では記録を突破した上位2選手までが代表に決まる。今大会では優勝した川本武史(TOYOTA)が51秒28、2位に入った水沼尚輝(新潟医福大職)が51秒34と赤羽根に1秒以上の差を付けた。

「もっと冬場にやっておく必要があったなとか、ジャパンオープン前にもう少し泳いでおけば良かったなと感じさせられるレースでした」。

大きな壁を越えるために浮かび上がった課題は山ほどある。ラスト25mの泳ぎ、スプリント能力の向上、筋力トレーニング、基礎体力の向上… しかし、残された時間は2ヶ月もない。

「五輪に出るという目標自体は揺らいでいる訳ではないのですが、その前に立ちはだかる社会人選手が強すぎて、どうすれば勝てるのか分からないです。僕は努力でこのレベルまで来たと自分で思っているのですが、所詮努力じゃ天才には勝てないと思い知らされました。辞めて楽になった方がいいんじゃないという気持ちになるまで追い込まれました」。

一つの集大成として迎える

決勝のレースで感じたかつてないほどの焦りと挫折。本当に五輪を目指す覚悟はあるのかー。大会が終わったその日も深夜まで自問自答し続けていた。「僕は悪い結果の後は次こそはやってやろうという気持ちになれるタイプだと思います」。だが今回はすぐにそうはならなかった。「久々にメンタルがやられました」。

しかし敗戦から日が経って徐々にではあるが前に進み出している。「4月をある意味、3歳くらいから始めた水泳人生の一つの集大成として迎えられたらいいなと思っています。せっかくここまでやってきたのに残り2ヶ月を棒に振って、後0.1秒届かなかったというのは嫌なので」。悔しさを力に変え、再びライバルを追いかけていく覚悟を決めた。

「今のレベルまで来れたのは現状に満足しないで、やるべきことを見つけて努力した結果なのかなと思います」。赤羽根はそう口にする。大学での競技生活を振り返ると2年次はベストが更新できずに特に苦しんだ。ただ、目標を下げることは決してしなかった。「インカレでA決勝に残ったとき、チームメイトに『やったな!』と言われても全然満足していませんでした。僕が目指しているのはそこのレベルではなくて、もっと高い所という自覚は常に持っていました」ときっぱり言い切る。ここまで自分がやってきたことを無駄にはしたくない。いや、してはいけないんだ。そう強く感じたからこそ、残りの期間を悔いなく過ごすことを決心したのである。

惨敗から復活、そして大逆転へ。代表入りに向け、視界は良好とまでは言えないのかもしれない。だが一世一代の死物狂いの努力で、不可能を可能に。赤羽根はそんな思いとともに自身が一つの集大成と決めた代表選考会を目指す。

ゴールした先に待つのはどのような光景だろうか

(記事:根本 成)

インタビュー

赤羽根康太

ー 大会を終えて今の率直な気持ちは
自分の中でも結構色々と考えさせられた試合と言いますか、今はなんというか行き詰まってしまったような気がしています。今回のジャパンオープンは10月のインカレのように、しっかりとピークを合わせていたわけではありませんでした。そのため、自分の中でも大きな期待というのはしていませんでしたけど、ライバルのレベルが高すぎて… 自分が100%の状態でなかったのは確かですが、あれだけの差を付けられてしまい正直代表入りに向けてヤバいなと感じています。

ー 12月の日本選手権が終わってからの練習状況は
年末年始の練習の消化具合としては、ほとんど出来ていましたが、出来ていなかった部分もありました。12月頃の練習のスタイルとしては2部練習で、午前中に自由形で量を泳いで、午後にバタフライの練習を行うという感じでした。年が明けてからは午前に自由形、午後にバタフライという練習スタイルは崩さずに試合に向けたペース練習やレースに直結するような練習にシフトチェンジしていきました。その中で2週間前にあった北島康介杯では自由形に出場しましたが、そんなに結果としては良くありませんでした。北島杯からこのジャパンオープンに向けての2週間はバタフライの練習を中心にやって、しっかりとこなせてはいたので手応えはありました。

ー 100mバタフライはどれくらいのタイムを狙っていましたか
1週間前の練習で抜群にキレが戻ってきている手応えがあったので、派遣標準記録の51秒70を切る自信はありました。しかし、そこを意識し過ぎて、変に泳ぎに力みが出てきてしまったと言いますか、選考レースではないのに過度に緊張していたのでレース前は悪くても51秒台かなと考えていました。

ー 初日の50mバタフライは23秒86の自己ベストで4位でした
50mに関しては比較的上手く泳げたのかなと思います。予選と決勝どちらも最後にタッチを合わせることができなかったのでそこだけはもったいないなと感じています。50mはオリンピック種目ではないのでそこまで重視して練習をしてきた訳ではありません。100mの特に後半部分の練習を大切にしてきたので、そこを考えればまあまあのタイムだったのかなと思います。僕は50mの泳ぎ方と100mの前半の泳ぎ方が変わらないので、100mでも同じくらいで入れるのかなと手応えを掴むレースができました。欲を言えば、23秒7あたりで3位に入れていれば良かったのですが最低限23秒台は出そうと考えていたので自己評価的にも90点くらいかなと思います。

ー 初日が終えた段階で手応えとしては良かったですか
スピードが出せていると自分でも実感できたので手応えとしては良かったと思います。24秒かかっていたらヤバいかなという感じでしたが、初日が終わった段階では100mで好記録が狙えるかなと思っていました。

ー 100mの予選のレースを振り返って
予選からあわよくば51秒台を出そうと思っていました。隣のレーンの川本選手がめちゃくちゃ調子がいいらしいという噂を聞いていたので正直ビビっていたところもあります。でもレースが始まってみると周りは気になりませんでしたし、自分らしく泳げていたのかなと思います。最初の50mを結果としては24秒1で入って、手応えとしてはまずまずでしたが、後半の50mが久々に28秒かかってしまいました。50mから75mまでの25mのラップはインカレのときよりも速く泳げていたので、予選が終わった段階ではラスト25mの泳ぎを修正しようとコーチと話していました。

ー 予選が終わった段階で体力的な余裕はありましたか
100mバタフライは何しろレベルが高いので出場している選手たちは予選で流すということはまずしないと思います。ただインカレや日本選手権の時にあった心の余裕というのが今回は無くて、結構きつかったです。僕は予選、決勝とタイムを上げていけるタイプなのですが、予選で感じたラスト25mのキツさというのはどう考えても決勝でタイムを上げられないものでした。これまでの試合と比べても比にならないくらい身体が疲労していて、決勝に向けて自信というのは正直なかったです。

ー 決勝のレースを振り返って
予選の時は隣が気にならなかったのですが、決勝では隣の川本選手の初速からの勢いが凄すぎました。ただ、その中で僕としても前半はそこそこのタイムで泳ぐことができたのかなと思っていましたが、ターン後のドルフィンキックで一気に離されて、初めて勝つのを諦めましたね。相手のペースが落ちてきて、自分に余裕がある場合は気持ち的にも元気になりますが、さすがにあそこまで離されると気持ちが折れました。もっと冬場にやっておく必要があったなとか、ジャパンオープン前にもう少し泳いでおけば良かったなと感じさせられるレースでした。

ー 4月に向けては残された期間でどのようなトレーニングをしていきたいか
実は今、恥ずかしながら結構水泳に身が入っていなくて… 3月からは選考レースを見据えた練習、具体的には予選、準決、決勝とタイムを上げていけるようにする練習をやらなければいけないのかなと思っています。2月の残りの期間は基礎体力の向上であったり、スプリント能力の向上、筋力トレーニングというのをやっていきたいと考えている所ですが、ジャパンオープンが終わってから、まだ今後に向けて何をしていいのか答えが見つかっていなくて模索中というのが本音です。

ー 4年間で日本代表に手が届く届くところまで来ました
入学した頃は53秒0がベストで4年目で51秒台を出してインカレで優勝というのを目標にしていました。ただ、実際には山あり谷ありで、大学2年生のときは初めてベストが1年ほど出ませんでした。今まで勝てていた選手に勝てなくなったり、年下の選手が台頭してきて自信がない状態が続いていました。大学3年の時に、やっと手応えを掴むことができましたが、4年目のインカレでは優勝できずとうれしい思い出よりも悔しいや悲しいという思い出の方が多かったのかなと感じています。ただ、悔しい思いをしながらも今のレベルまで来れたのは現状に満足しないで、やるべきことを見つけて努力した結果なのかなと思います。

ー 多くの挫折があったんですね
大学1年生の頃にインカレでインターを切れなくて初めての挫折を味わいました。ベストが出なかった大学2年生の時は、なんで水泳をやっているのだろうとか考えてました。競技者としてはやはりレースで勝てた時やベストが出た時が一番うれしいので、その機会がなくなったことがすごく辛かったです。インカレでA決勝に残ったとき、チームメイトに「やったな!」と言われても決勝に残るためにやっていた訳ではなかったので全然満足はしていませんでした。選手によってはA決勝に残る、B決勝に残ると目標はそれぞれだとは思いますが、僕が目指している目標というのはそこのレベルではなくて、もっと高いところという自覚は常に持っていました。振り返ってみると特に大学の前半は苦労していましたね。今も実は似たような気持ちになっていて… ジャパンオープンが終わってから水泳辞めようかなと思いました。

ー そこまで気持ち的に追い込まれているのですね
はい。あそこまでタイムを出されてしまうと… 社会人が元気あり過ぎて、同じ大学生の田中優弥(新潟医福大)君や阪本祐也(東洋大)君とレースが終わってから「もう俺ら引退かな」と話をしていました。メンタルがズタボロでもう勝てないんじゃないかと思ってしまっていて、だから今練習に身が入ってない状況です。五輪に出るという目標自体は揺るいでいる訳ではないのですが、その前に立ちはだかる社会人選手が強すぎて、どうすれば勝てるのか分からないです。僕は努力でこのレベルまで来たと自分で思っているのですが、所詮努力じゃ天才には勝てないと思い知らされたと言うか、本当に色々と考えさせられるジャパンオープンでした。もう練習できる時間も残り2ヶ月もないですし、なんなら辞めて楽になった方がいいんじゃないという気持ちになるまで追い込まれました。

ー 今も変わらず落ち込んでいますか
今は逆に少し開き直った部分もあって、4月をある意味、3歳くらいから始めた水泳人生の一つの集大成として迎えられたらいいなと思っています。せっかくここまでやってきたのに残り2ヶ月を棒に振って、後0.1秒届かなかったというのは嫌なので徐々にではありますけど前を向き始めています。ただ、今の自分の現状を見ると、1日24時間動き続けて2ヶ月でやっと足りるかなという感じですかね。上の人たちの3倍、4倍努力しないと届かないので。

ー 赤羽根選手は常に前向きだと思っていました
そうですね。僕は悪い結果の後は次こそはやってやろうという気持ちになれるタイプだと思います。インカレ前の試合の時もあまり結果は良くなかったですけど、完全に準備したら勝てるという気持ちが湧いてきました。そんな感じでプラスに捉えることができるのは僕の良いところだとは思います。でも今回は珍しくジャパンオープンが終わってから練習に身が入らない日が続いていますね。久々にメンタルがやられました。

ー 日本選手権の目標は
100mバタフライで代表入りを狙います。今回のレースからしても51秒1や50秒台という所がラインになってくると思うので、そのタイムを一発勝負の決勝でしっかりと出せるように残りの期間準備していきたいです。

 

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