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【フィギュア】第89回全日本選手権 『W小林』が最後の全日本に挑み、共に目標のFSへ!!

第89回全日本選手権 『W小林』が最後の全日本に挑み、共に目標のFSへ!!
2020年12月24日(木)~27日(日)
長野市若里多目的スポーツアリーナ ビッグハット

法大スケート部フィギュア部門の双璧である小林諒真(営4)と小林建斗(文4)が、昨年度は逃してしまった出場権を再度手に入れ、長野の地へ向かった。自身にとって最後となる全日本選手権(全日本)。今大会はこれまでの東京選手権(東京ブロック)、東日本選手権(東日本)とは異なり有観客での開催となり、久方ぶりの有観客という環境の中、小林諒、小林建共に目標であるFS進出を見事達成した。

※写真は全て「アフロ/JSF」様からの提供になります。
※インタビューは後日オンラインにて実施いたしました。

小林諒真/Ryoma Kobayashi, DECEMBER 25, 2020 – Figure Skating : Japan Figure Skating Championships 2020 Men’s Short Program at Big Hat in Nagano, Japan. (Photo by Naoki Morita/AFLO SPORT)

2年ぶり2度目の全日本に挑んだ小林諒。見事なSPでFS進出を決めた

 

試合結果

クラス 選手名 総合順位・得点 SP順位・得点 FS順位・得点
Sr.男子 小林建斗 22位・172.41 23位・60.88 21位・111.53
小林諒真 23位・168.94 19位・63.91 23位・105.03

戦評

小林諒真

一昨年に出場した際は、スピン一つでFS進出を逃した小林諒。その悔しさをバネに、今大会こそFS進出を目指し、勝負のSPに挑んだ。
音楽が勢いを増すのと同じく、演技開始すぐにスケーティングにもエンジンがかかっていった。事前インタビューでカギだと語っていた2アクセルをしっかり決め、その後の3ルッツも危なげなく成功。『マスク・オブ・ゾロ』はそれ自体が既に情熱的な楽曲だが、小林諒の洒脱なスケーティングが相乗効果を生み、会場全体が高揚しているような感じさえする。曲に合わせたタップダンスさながらの足さばきなど細部までこだわったステップの後、一昨年は涙をのんだスピンではレベル4も取るなど、完璧と言っても過言ではない演技を披露。63.91点で19位、見事FS進出を決めた。
自身でも「すごく良い出来」だとSPを振り返った小林諒。全日本でFSを滑るのは初となるが、ラストイヤーにふさわしい、小林諒らしさを前面に出したFSが楽しみだ。(小倉明莉)

小林諒真/Ryoma Kobayashi, DECEMBER 25, 2020 – Figure Skating : Japan Figure Skating Championships 2020 Men’s Short Program at Big Hat in Nagano, Japan. (Photo by Naoki Morita/AFLO SPORT)

2018年に出場した全日本ではショート落ちを経験した小林諒。今年度、自身最後となる全日本では『勝負のショート』で見事リベンジを果たし、FS進出をつかみ取った。
久しぶりの有観客試合となった今大会。『念願のフリー』に高揚感を持ちながらファンの見守るリンクへと向かった。
演技の前には緊張の面持ちがうかがえたが、曲が始まると小林諒らしい優しい滑りで会場を包んだ。前半の3回転+3回転のコンビネーションジャンプの予定が3回転+2回転になってしまい、また、最後のジャンプもステップの後抜けてしまい1回転半に。しかし、丁寧な滑りによりスピンで得点を重ね、今まで練習を積み重ねてきた4回転ジャンプにも挑戦するなど、集大成としてふさわしい作品を作り上げた。
結果は105.03点で総合23位。順位こそ芳しくないものとなったが『念願のフリー』を最後まで悔いなく演じ切り、笑顔で全日本を終えることができた小林諒。スケート人生最後となる国民体育大会での小林建との対決へと闘志を燃やす。(東夏紀)

小林諒真/Ryoma Kobayashi, DECEMBER 26, 2020 – Figure Skating : Japan Figure Skating Championships 2020 Men’s Free Skating at Big Hat, Nagano, Japan. (Photo by Naoki Nishimura/AFLO SPORT)

小林建斗

30名の選手が出場し、上位24名がFSへと進出できる。羽生結弦(ANA)や宇野昌磨(トヨタ自動車)など、そうそうたるメンバーがそろった最終グループに小林建も入っていた。滑走順としては最終グループのトップバッターで、後ろには羽生が控える。
最初のジャンプである3トウループ+3トウループのコンビネーションは小林建らしく高さがあり、着氷まで美麗にまとめ、開始早々観客を引き込んだ。続く2アクセルやスピンではレベル4を取るなど、問題なく演技は進む。得意とする3フリップは着氷にやや乱れはあったもののこらえたかと思いきや、距離を誤ったか壁と衝突してしまい転倒。試合後には「あと一本でノーミスできるという余計な考えが出てきてしまった」と反省したが、その後の演技に影響が出ることはなく、毅然としたステップや、客席全体を指さす振りでなど技術だけではない小林建自身の魅力でも観客を引きつけた。
結果は60.88点で23位。目標であるFS進出を決めた。世界的に見てもトップレベルが集うグループでの演技となったが、「逆に緊張しなかった」と語った小林建。翌日のFSは小林諒と同じ第1グループでの演技となるが、『W小林』の毛色の違う、それぞれに秀でたFSの演技を全日本の舞台で見られるのはこれが最後となるだろう。この貴重な機会の一瞬も無駄にすることなく、その眼に焼き付けてほしい。(小倉)

小林建斗/Kento Kobayashi, DECEMBER 25, 2020 – Figure Skating : Japan Figure Skating Championships 2020 Men’s Short Program at Big Hat in Nagano, Japan. (Photo by Naoki Morita/AFLO SPORT)

昨年の東日本では、全日本の切符を逃した小林建。「悔いがないように」と意気込んだ今年の全日本では、2年ぶり3度目のFS進出を果たした。最後の全日本はさまざまな感情が交錯していただろうが、小林建は笑顔でリンクに向かった。
演技冒頭の3ルッツを見事に成功させ、流れに乗るはずだった。しかし、直後の3ループは軸が斜めになり転倒してしまう。その後の3フリップコンビネーションジャンプは見事に着氷。そして演技中盤、しなやかで軽快なステップを披露するも、キーに挙げていた得意の3フリップが2フリップになってしまう痛恨のミス。しかし、その後はコンビネーションジャンプを皮切りに演技が安定し、最後のスピンではレベル4。全日本の大舞台で最後まで自分らしく滑り切った。
結果は111.53点、総合21位。得意のフリップとルッツの高さが際立っていたが、肝心な場面でのミスもあり、悔しい最後の全日本となっただろう。しかし、小林建の笑顔からは、集大成を存分に楽しんでいるように感じられた。パイレーツの曲調に合わせて自信のスケートを巧みに表現しており、勇壮で力強い滑りに圧倒された。国民体育大会では、スケート人生最後の演技をファンの目に焼き付け、有終の美を飾って欲しい。そして、共にチームをけん引してきた小林諒との熱い戦いを、最後まで期待したい。(閏間咲稀)

小林建斗/Kento Kobayashi, DECEMBER 26, 2020 – Figure Skating : Japan Figure Skating Championships 2020 Men’s Free Skating at Big Hat in Nagano, Japan. (Photo by Naoki Morita/AFLO SPORT)

インタビュー

小林諒真

―まずは大学4年間のスケート生活お疲れ様でした。だいぶ大会から時間が経ってしまいましたが、全日本が終わってからはどのように過ごされていらっしゃいますか
今月末に国民体育大会(国体)があって、そこに神奈川県の代表として参加するので、今のところ全日本が終わっても割とコツコツ練習は続けています。

―今はまた緊急事態宣言が出ている状況ですが影響などはありますか
前回みたいにリンクが無くなるようなことはないみたいですけど、ただ営業時間が短縮になったりするみたいなので、全日本の前にみたいに貸し切ってがっつり時間を取ることはないのかなっていうところで、自分の試合に向けてのコンディション作りが変わってくるのかなっていう部分は不安ですね。

―それでは全日本選手権についてお聞きできればと思います。2年振りの全日本選手権に臨むにあたっての意気込みは
2年前はショート落ちをしてしまったので、やっぱり最後になりますしフリーを滑りたいっていうところで、勝負のショートだと思って現地には入りました。

―SP当日の調子や結果について
当日は体も動いている方で調子も普通というか、良くも悪くも普段通りかなっていう感じでした。本番もそんなに不安はなく迎えられたんですけど、グループが後半だったのでメディアの数も前回と違ったのと、やっぱりあとはお客さんが久々に入った試合だったので会場の熱気だとか、なんか「本当に試合をするんだな」っていう実感がまず6分間(練習に)入る時にありました。本番前は自分がやったことを出すしか通過の道はないと思っていて、あんまり自分自身にプレッシャーを与えることなく楽しみながら滑ることができたので、そこは良かったかなと思います。点数に関しても自分としては満足できる点数だったので、ショートはすごく良い出来だったなと思っています。

―久しぶりに観客が入っての試合でした
全日本の会場で前日練習があって、その時に会場に入ってリンクから観客席を見たときに「やっぱり全日本に来たんだな」っていう実感がはっきりと湧きました。試合前に会場に入ってお客さんが入っているのを見て、なんか今年はこれまで試合をやっていなかったんじゃないかっていうくらいすごく嬉しかったですし、気持ちが高ぶったのを覚えています。

―FS進出が決まった瞬間の気持ちは
いやほんとすごいホッとしましたし、やっとみんなに顔向けできるなっていう。点数が出た時点で安心感がありました。順位が出たところで、この後に滑る人が全員上に行っても自分のショート落ちがないと分かったので落ち着きました。

―翌日に向けてコーチと話したこと
コーチからは「悔いなくやりなさい」とだけ言われていたので、自分がこれまで積んできたことを出すだけだと思っていました。とりあえずショートが終わってフリーが滑れるっていうところでもう守りに入る必要はなくなったので、あとは自分が思い切り楽しんでフリーを滑り終えることができればいいなって思っていました。

―念願のフリーという舞台でSPとはまた違った心境があったのではないでしょうか
そうですね、フリーの方が緊張したというか、高揚感というかドキドキとワクワクっていうのが入り交じったまま当日の試合まで入っちゃったので、あまり自分としては落ち着いていなかったなと思うんですけど、2年前の大阪のリベンジができたっていうところで満足はできました。

―4回転に挑戦したりなどジャンプを中心にまとまった演技ができていたように見えました。演技全体を振り返っていかがですか
「4回転で絶対締める」と考えていたので、緊張はしたんですけど、あの舞台で締めることができたことは良かったと思います。それ以外に関しても、前半に3回転+3回転ができなかったのを後半にリカバリ―できたりとか、割とスピンも取れている方だったので全体としては良かったかなと思うんですけど、いつもは失敗しない最後のジャンプを失敗してしまったのでそこだけは悔しいです。ただあとはすごく楽しんでできたかなと思います。

―総合23位という結果については
あんまり今回は結果にはこだわらず最後の順位は気にせずに滑っていたので、23位という結果は自分もミスをしていたのでしょうがないのかなっていうところはあります。ただ最後くらいは建斗に勝ちたかったなっていうのはありますね。彼も国体に出るので、最後の一緒に戦える舞台でコテンパンにできたらいいなと思っています(笑)

―ショートでは建斗選手を上回っていました
ショートでは勝てていたんですけど、フリーでミスがありましたね。次の国体はお互い最後なので、真剣勝負を楽しみたいなと思います。

―前回の全日本でのインタビューでは「あまり記憶がない」という言葉もありました。2年前と比べて全日本全体をどう振り返りますか
すごい楽しめましたし、全日本を終始味わえたかなと思います。記憶もちゃんと残っているので、良い思い出になったなと思います(笑)

―次に大学4年間についてお話を聞かせてください。まず大学4年間で印象に残っている試合はありますか
やっぱり一番は今年の全日本ですね。それが4年間を通して、一番思い入れというか頭に焼き付いていますね。あとインカレの試合は3年間ミス続きだったので今年こそって思っていたんですけど、それが無くなってしまったのは。4年目も滑りたかったですし、最後まで大学のスケート部に貢献したかったなっていう思いはあります。

―今年はイレギュラーな形が続きました。4年間共に部を引っ張った建斗選手とは何かお話されましたか
まだそういう大学の話とかスケートの話はしていないんですけど、2人とも笑顔で全日本を終えることができ、良い関係のまま最後まで突き進むことができたので、それは自分の中で宝物になるのかなと思います。

―『W小林』が抜けて法大としても大きな転換期を迎えるかと思います。後輩に向けて期待することは
この後、男子は2年の齋藤翔(営2)もですし、新しくこれから入ってくるであろう未来の男子部員にも全日本に出てもらいたいと思っています。全日本っていうのは憧れの舞台だと思いますし、今も頑張っているとは思うんですけど、試合でミスせず勝って全日本に進んでほしいなと思っていますね。特に(佐上)黎(文3)ちゃんは「全日本に出たいです」って言っていて、来年がラストチャンスになるので、4年生1人で大変なのかもしれないですけど彼女なりに頑張って、最後までスケートを楽しみつつやってもらいたいなと思いますね。

―同期がいるのといないのとではやはり違いますか
僕らは4人いたので、割と最初の頃から話していますし、相談事も同期でできたりしていました。1人っていうのは全部自分で決めなきゃとかいけない部分もありますし、相談相手がいないっていう部分も大変なのかなとは思います。ただ、僕らとは多分また違った形の部になると思うので、真似じゃなくて、一丸となって年ごとに新しい部を作ってもらえたらいいのかなと思います。

―4年間ともに法大を引っ張ってきた小林建斗選手に対して
彼はノービスジュニア時代からこっちでトップ集団に入っていた選手で、僕は同じ大会に出られないくらいの選手だったので、やっと同じ土俵に立つことができるくらいになったのは、どこか頑張ってよかったなっていうものにつながっています。やっぱり彼に勝ちたいっていう思いもあってここまで続けてこれたのかなっていうのもありましたし、ボロボロの演技をした試合の時とか、自分の実力が彼に追いついていないときからも仲良くしてくれて、一緒に頑張ってこれました。そうですね、10年くらい一緒にいるので、すごい不思議な感じですね(笑)。本当に法政を引っ張ってくれた存在でもありますし、今後どんな付き合いになるか分からないですけど、あの時はこうだったねって喋れる関係が続いたらいいなと思っています。

―応援してくれたファンの方へ
今年は全然お客さんが入れなくて僕らもすごく寂しかったというか、これまでやってきた試合とは全然違ったので、本当にそこでこれまでどれだけ多くの応援に支えてもらって試合ができていたのかっていうところも実感しました。どんな時も常に応援してくださった皆さんがいたから自分がここまで頑張れたっていうところもありますし、自分もモチベーションになったりとか、いただいたお手紙を読んでちょっとうまくいかなかったときの励みになったりしました。全日本に出て、フリーも最後まで滑ることができてっていうところで、これまで応援してくださった皆さんに少しでも恩返しができていたら嬉しいかなと思います。これからはどうスケートと関わっていくかは分からないんですけど、部員もそうですし、スケートを頑張っている子っていうのはすごい応援したくなるので、自分も今度は応援する側として皆さんが僕に与えてくださったものを、僕が1人でも多くの選手に与えることが、自分が感じていたものを次の世代に返せていけたらいいかなって思います。難しいですね(笑)

―4年間を振り返るとなるとすぐにまとめるのは難しいですよね
本当にここまで応援ありがとうございました、っていうのは伝えられたらいいなって思いますね。ただ文字だけではなくて、僕自身が言っているのを聞いてもらいたいなっていうのはあるんですけど、まあこの時期ではしょうがないです。いやでもスケートのファンっていうのは本当にすごいなって思います。どの地方でも足を運んでくれる方とかいるので、いや本当にすごいと思います。年間結構試合数はあると思うんですけど、全てに顔を出されている方とかどんなスケジュールを組んだらこんなに行けるんだろうとか、体壊さないかなとか心配もするんですけど、皆さんあんなに寒い中にいるのに来てくださるので、どうやったらそんなに寒さに強くなれるのか教えてほしいですね(笑)

―本日はお時間をいただきありがとうございました。国体で建斗選手とのガチンコ対決を楽しみにしています
ほんとに最後になっちゃうので、気合い入れてガチンコでやれたらいいなと思いますね。ただ今年は僕の方が滑走順の遅いことが多くて建ちゃんのフリーを見れていないので生で見たいなっていうのもあるし、試合にも勝ちたいので2回滑ってくれないかなって(笑)。同期の滑りは全員見たい、引退する人の滑りは全部見たいなって思うんですけど、それやってると自分の演技が疎かになってはいけないので悩ましいんですけど、最後まで突き進んでいけたらなと思います。

(取材日:2021年1月12日)

小林建斗

―まず全日本が終わってからはどのように過ごされていましたか
ひとつ大きな試合が終わって一区切りついたという感じで、少し寂しさがある中で練習していました。終わった直後は最後の全日本選手権だったんだという実感がいまいちなかったですが、次に向けて頑張らなきゃと思い練習しました。

―2年ぶりとなる全日本選手権への意気込みは
もちろんシーズンの中で一番良い結果を出したかったですが、それ以上に最後の全日本なので楽しみたいと思いました。結果は良し悪し関係なく後からついてくるものなので、まずは自分が楽しんで滑って、しっかり自分の記憶にも見ている人の記憶にも残るように滑ろうという気持ちでした。

―SP当日のコンディションはどうでしたか
シーズンはだいぶ試合が減ってしまってブロック(東京選手権)と東日本しかなかったですが、その中でも一番良いコンディションでショートに臨めたと思います。

―2年前と同じ最終グループ、羽生結弦選手の演技が直後に控えている滑走順でした
抽選会で引いた時は正直「うわー」と思いましたが、周りのレベルが高すぎて余計なことを考えずに済みました。久しぶりに公式練習から6分間練習、本番も過去最高に心から楽しめたSPの試合だったと思うし、逆に緊張しなかったですね。余計なことを考えずに自分の事だけを考えればよかったので、たぶんうまい人と滑った方が緊張しないのかもしれないですね(笑)

―事前インタビューでSPのモチベーションが決まると言っていた1本目の3トウループ+3トウループのコンビネーションジャンプは高く流れのあるジャンプで高いGEOが付いていました
本番自体もそんなに緊張しなくて、結構胸を張って臨めたショートだったのでシーズンの中でも一番良い3回転+3回転を跳べたと思います。自分で後から見返しても良いジャンプだなと思えるような質の高いジャンプだったと思います。

―一方、得意なジャンプである3フリップは転倒してしまいました
本当にそこですよね、もったいない本当に(笑)。フリップ向かって行く瞬間に狙ったじゃないけど、あと一本でノーミスできるという余計な考えが出てきてしまいました。練習でもたまに失敗してしまっていて、それが本番にでちゃったので悔しいし、試合は難しいなと思いました。

―SP全体を振り返って
大きな失敗はもちろん悔しいけど、さっきも言ったように人生で一番楽しめたSPでした。後から自分で映像を見返してみても生き生きと滑っている感じは見て取れたので、最後だったけど一生忘れられないショートになりました。お客さんが入る試合もすごく久しぶりだったので、会場の雰囲気を堪能しながら滑れたと思います。

―FSの進出が決まった時の気持ちは
フリップ失敗したので「終わったな」と本当に思ったんですけど、点数みてキスアンドクライでコーチと通ったねーという話をしました。もちろん嬉しかったし、明日も変わらず力を出し切ってしっかり自分らしいフリーができるように頑張ろうという気持ちでいました。

―FS直前にコーチと話して笑顔でリンクに向かう姿がとても印象的でした。どのようなことを話されていたのですか
そうですね、正直あの時結構泣きそうで(笑)。振付師とメインのコーチがいて、2人とそれぞれ(手を)クロスして握手しました。振付師の方からは「僕の誇りだから」と言っていただいて、メインのコーチからは「ここまで連れてきてくれてありがとうね」と言ってくれたので、まさか本番前に泣きそうになるとは思わなかったですけど(笑)。でも、自分は昨年全日本にいってないのでラストシーズンこそはコーチを全日本の舞台に連れていきたいなと思っていたから、そこは達成できてうれしかったしコーチにそう言われたことも一生忘れないなと思います。

―演技後半に向かうにつれて演技が安定してきたように見えました。FSをどのように振り返りますか
ショートよりは緊張してしまっていましたが、心を込めて滑っていたのが客観的に見返しても伝わったと思います。でもやっぱり自分の一番の武器であるジャンプを外してしまうのはすごくもったいないと思いますし、一番盛り上がる所で得意なジャンプが入っていて、そこが失敗してしまうと雰囲気が本当にうわーとなってしまうので、そこはすごく悔しかったです。ただ、失敗してしまったものは仕方ないなとしっかり切り替えることができたので、他の振り付けとか他の要素はしっかり集中してできたかなと思います。

―FS後のキスアンドクライで法大のジャージをカメラに向かって見せていました。どういったお気持ちで見せていたのですか
シンプルに宣伝というか(笑)。来年は自分がもういないので、せめて「法政の小林建斗」ですというご報告と「よかったら入部してね」という広告のためにひたすら見せていました(笑)

―同じ法大の学生としてすごく誇らしかったです
あれやるのも結構目標にしていたので、しっかりできて良かったです(笑)

―総合21位という結果について
全然納得はいってないし力も出し切れてないので、もっと上の順位を狙えたと思いますが、過去3回全日本に出た中で一番楽しかったです。結果としては全然ダメだけど、自分が懸けた思いとしては今までで一番強く臨めました。細かい修正点とかはたくさんあるけど、やっぱり一番忘れられない試合になったと思います。

―終わってからコーチとどのような話をされましたか
結構ずっと泣いていてあんまり覚えていないんですけど(笑)。悔し泣きもあったと思いますけど、やっぱり最後っていう感じもあって「あー終わっちゃたな」と思って泣いていました。コーチと話したこと……。今回、自分のスケート人生の中でも一番悔しかった試合だなと思ったのでそういうことを話したり、来年はその悔しさをぶつける機会はないけど、その悔しさは引退しても一生忘れないようにしないとねという話をしてくれました。また、ここまで連れてきてくれてありがとうという話をしてくれました。

―2、3年前の全日本と比べて今回はどのような試合になりましたか
二度と味わうことのない舞台なんだよなと自分にすごく言い聞かせていました。とにかく自分が楽しまないと見ている人も楽しくないし、フィギュアスケートは自分が込めた思いの分だけ相手に伝わると思うので、一個一個の技術のことはもちろんだけど、それ以上に最後の全日本なので一番自分をアピールできるように、見ているお客さん一人ひとりにしっかり自分の顔が映るようにということを考えたりしながら全日本に臨みました。

―直前インタビューでは本田太一(関大)選手と仲が良く一緒に頑張りたいとおっしゃっていましたが、本田太一選手とは何かお話しされましたか
太一はショートがすごく良い演技で、僕がだいぶ後の演技だったので、控え室に向かうときにお疲れという風に裏でグータッチしたりしました。終わった後は、太一には「ギリ耐えたな」という話をしました。今回はバンケットがなかったのでみんなで集まって大勢で写真を撮るということはできなかったですが、4年生の小林諒真、友野一希(同大)、本田太一の4人だけで少しリンクサイドに集まって写真撮ったりしました。太一とはそうですね「本当に終わっちゃったんやな」という話はしましたし、結構シーズン中も何回か声をかけてくれたりしたし、会う機会はあんまりなかったけどすごく支えてくれた大事な友達です。

―次に国民体育大会(国体)について少しお聞きしたいと思います。国体の演技を振り返っていかがでしたか
悪い意味で言うことないかな(笑)。久しぶりにここまでやらかしたなという気持ちがありますし、自分の悪い所がたくさん出てしまいました。もちろん悔しいですが、手を抜いたとかではなくて全日本が終わってからもしっかり国体に向けて準備してきたし、最後だとなんだろうとうまくいかなかっただけなので。今回の国体も別の意味で忘れられない試合だったなと思います。

―先ほども4年生というワードが出ていました。国体で引退する仲間も多かったと思いますが、お互いの演技を見ることはできましたか
そうですね、国体が無観客試合になってしまってリンクサイドの応援も規制がかかってしまっていて、なかなか全員の演技を見ることはできませんでした。それでも小林諒真のフリーなどは見ることが出来ましたし、諒真も小さい頃からずっと頑張ってきた大切な友達なので、頑張れという気持ちとしみじみする気持ちで応援していました。

―次に大学4年間についてお伺いしたいと思います。まず印象に残っている試合や出来事があったら教えていただきたいです
結構この(スポホウの)インタビューでも何回か言っているんですけど、大学2年の時に青森で開催された東日本選手権ですね。ショートが全日本通過するには微妙な位置にいて、これはちょっとまずいなと思いました。ショートが終わった後にコーチと「結果は後から付いてくるから、まずは自分ができることを一つ一つやりなさい。そこだけまず考えなさい」という話をしました。そのフリーも細かい修正点はあるけど大きなミスはなくノーミスして終われて、大学入って初めてガッツポーズできた試合だったので、その時ガッツした達成感やお客さんからもらった歓声とかは本当に忘れないですし、すごく気持ちの良かった試合だなと一番印象に残っています。

―4年間法大を一緒に引っ張ってきた小林諒真選手に対してメッセージをお願いします
改めて言うと難しいな(笑)。大学入る時は「諒真も法政なの」って感じで。まさか一緒の大学に入るなんて思わなかったし、練習場所も違うのでなかなか会うこともできなかったんですけど、会わなくても合宿や試合などで支えてもらったし、試合以外のことでも諒真はたくさん力を貸してくれました。僕だけではなく後輩たちにも気を遣って、諒真は僕と違って頭が良いので、結構何でもそつなくこなすというか。そういった面で僕に足りないものを諒真が補ってくれたのですごくありがたかったですし、ライバルとしても諒真の演技で頑張ろうと思えたので、いろんな意味で諒真には感謝しかないです。

―次に法大の後輩に対する期待やメッセージがありましたらお願いします
本当にみんなかわいい後輩で、こんな僕をみんな慕ってくれたし、どうしようもないこんな先輩にしっかり文句言わず付いてきてくれたので、本当に感謝しかないです。みんな似たようなスケートをする子がいなくて、同じ練習場所の部員がいても違うスケートをするし、一人ひとり見ていて本当に楽しいです。その後輩たちが持っているスケートの個性をこれからの試合でたくさん発揮して欲しいなと思います。また、その演技を見た今度はもっと若い人たちが法政っていいなと思ってもらえるような、思いが人にたくさん伝わるような演技をして欲しいなと思います。

―応援してくれたファンの方へ
あっという間の15年間でしたが、試合の結果が出なかった時も良い結果だった時も変わらずにこんな僕を応援してくれて、本当にありがとうございました。皆さんの応援のおかげでここまで頑張ってこられたし、特に今シーズンなんかは無観客試合が続く中でいろんなお手紙とかSNSのメッセージなどもいただいたので、全日本では久しぶりに自分の生の演技を見てもらえてすごく幸せでした。特に去年は応援してもらえるありがたさを感じた一年だったと思います。全然違う道に進みますが、これからもこの15年間培ってきたことをしっかり生かして自分らしく頑張ります。スケーターとしての人生は終わるけどまた新しい人生を歩み始めるので、良かったら応援よろしくお願いします。ありがとうございました。

―卒業後の進路は
結構合ってるって言われるんですけど、自分でもいつからか分からないくらい、スケートを始める前の小さい頃から動物が大好きで、自分で勉強したり、図鑑を買ってもらって何回も読み返したりしていました。スケートをしながらも、心のどこかで動物に関わる仕事をしたいなと思っていたので、引退後どうしようと考えた時にもっと動物のことを勉強したいなと思いました。これからは、専門学校に通ってもう3年間学生やって、卒業後には動物園などで動物に携われるような仕事をしたいなと思っています。周りにそういうことを教えてくれる人がいなくてほとんど独学だったので、卒業後にできればすぐそういう所に就職したいなとも思いましたが、やっぱり自分だけで勉強した知識量では足りないな、もう少し勉強したいなと思ったので、しっかり専門学校に行って改めてそういう仕事をしたいなと思います。

―専門学校に行かれるということでまだ学生生活は続くと思いますが、スケート人生はここで一区切りつくと思います。一番近くで支えてくれたご家族の方にお伝えしたいことがあればお願いします。
そうですね、改めて言うとちょっと難しいな(笑)。もちろん両親にはたくさん迷惑をかけてきたけど、自分が競技に取り組めるように全力で僕のことをサポートしてくれました。姉が1人いるんですけど、スケートに対してモチベーションが上がらなくて気持ち的に限界だった時に、姉もスケートをやっていたので話を聞いてくれたりして心の支えになっていました。一緒にスケートをやる存在が家族の中にいたというのはすごくありがたかったし幸せだったし、ここまで続けさせてくれた両親にも本当に感謝しかないです。いくら感謝しても足りないくらいですけど、本当に今はありがとうということを言いたいです。

(取材日:2021年2月13日)

フォトギャラリー

  • 小林諒真/Ryoma Kobayashi, DECEMBER 25, 2020 – Figure Skating : Japan Figure Skating Championships 2020 Men’s Short Program at Big Hat, Nagano, Japan. (Photo by Naoki Nishimura/AFLO SPORT)

    SP19位の演技を見せた小林諒

  • 小林諒真/Ryoma Kobayashi, DECEMBER 25, 2020 – Figure Skating : Japan Figure Skating Championships 2020 Men’s Short Program at Big Hat in Nagano, Japan. (Photo by Naoki Morita/AFLO SPORT)

    幼い頃に憧れ、思い入れのある曲『マスク・オブ・ゾロ』をラストイヤーのSPに

  • 小林建斗/Kento Kobayashi, DECEMBER 25, 2020 – Figure Skating : Japan Figure Skating Championships 2020 Men’s Short Program at Big Hat, Nagano, Japan. (Photo by Naoki Nishimura/AFLO SPORT)

    最終グループに登場した小林建

  • 小林諒真/Ryoma Kobayashi, DECEMBER 26, 2020 – Figure Skating : Japan Figure Skating Championships 2020 Men’s Free Skating at Big Hat in Nagano, Japan. (Photo by Naoki Morita/AFLO SPORT)

    心に染み入るFSで観客を魅了した

  • 小林建斗/Kento Kobayashi, DECEMBER 26, 2020 – Figure Skating : Japan Figure Skating Championships 2020 Men’s Free Skating at Big Hat in Nagano, Japan. (Photo by Naoki Morita/AFLO SPORT)

    初めて作ったプログラムである『パイレーツ・オブ・カリビアン』を改めてラストイヤーのFSに採用

  • 小林建斗/Kento Kobayashi, DECEMBER 26, 2020 – Figure Skating : Japan Figure Skating Championships 2020 Men’s Free Skating at Big Hat, Nagano, Japan. (Photo by Naoki Nishimura/AFLO SPORT)

    「小林建斗といえばパイレーツ」を全日本の舞台でしらしめた

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