秩父宮賜杯第57回全日本大学駅伝対校選手権大会
関東学生陸上競技連盟推薦校選考会
2025年5月24日(土)
レモンガススタジアム平塚
5月24日に行われた全日本大学駅伝関東地区選考会。例年より1カ月早い開催の影響もあり、気温が上がらなかったため、史上最速レースとなった今大会に法大は終始苦戦を強いられ、一度も出場圏内に入ることなく4年連続の予選落ちとなった。
今回は後半の1・2組の戦評と、選手・坪田監督のインタビューを紹介する。
(選手・監督へのインタビューは27日・28日にオンラインで行いました)
前編はこちら
▼チーム成績
総合成績
順位 | 大学 | 記録 |
---|---|---|
1位 | 中大 | 3:50:27.09 |
2位 | 大東大 | 3:51:28.02 |
3位 | 順大 | 3:51:33.97 |
4位 | 日大 | 3:51:57.08 |
5位 | 東海大 | 3:52:01.05 |
6位 | 中央学大 | 3:52:41.58 |
7位 | 日体大 | 3:53:41.58 |
11位 | 法大 | 3:55:12.36 |
(7位までが本戦出場)
個人成績
組・着 | 選手名 | 記録 |
---|---|---|
1組・20着 | 福田大馳(経2) | 29:27.83 |
1組・23着 | 澤中響生(現4) | 29:48.84 |
2組・22着 | 田井中悠成(経3) | 29:37.41 |
2組・28着 | 花岡慶次(経4) | 29:52.41 |
3組・8着 | 野田晶斗(社3) | 28:46.82 |
3組・31着 | 平山櫂吏(社2) | 29:54.53 |
4組・19着 | 大島史也(社4) | 28:44.05 |
4組・28着 | 清水郁杜(社4) | 29:00.47 |
戦評(3・4組)
2組目の終了時点で本選出場圏内の7位、中央学大とは59秒14差と本選出場への黄色信号が灯るなか行われた3組目。土砂降りのなか行われたレースに法大からは、昨年4組目で好走を見せた野田晶斗(社3=京産大附属)と今季覚醒の兆しを見せる平山櫂吏(社2=八千代松陰)が出走。レースはこれまでの1、2組とは変わって、大きく飛び出す選手はおらず、集団で進んだ。野田は集団の前方で、平山は集団の中盤でレースを進める。2000mを過ぎたあたりから集団は徐々に縦長の列に。平山は徐々に集団の後方へと下がり、4000mを過ぎたあたりでその集団からも遅れをとり始める。5000m付近では第二集団に取り込まれてしまう。一方、野田は余裕を持った表情で第一集団の中盤から前方でレースを進める。6000m手前で平山は第二集団にも遅れをとり始め、その後も後ろから迫る選手たちにも抜かれ、先頭集団からはおよそ250m程離されてしまい、最後は先頭に周回差をつけられる厳しいレースとなった。その先頭集団は4000mを通過して以降、2分55秒前後でレースを推移させる。野田も集団の真ん中あたりでレースを進める中、動きがでたのは7000mを過ぎてから。山梨学大、中大、順大と激しく先頭が変わるのに伴って、集団のペースも上がる。野田は先頭集団に食らいつくが、ラスト1周で中大の選手のかけたスパートについていくも、徐々に遅れをとり、最後は28分46秒82で組8着でのゴールとなった。途中から単独走となった平山は29分54秒53の31着だった。
3組目の終了時点で7位とは1分30秒以上の差が付き、この時点で本戦出場の可能性は限りなく低くなってしまった。しかし、法大からはエースの大島史也(社4=専大松戸)とこちらも今季エース級の走りを見せる清水郁杜(社4=米子松陰)が出走。留学生選手を中心に最初の1000mを2分45秒と高速レースを展開。エース大島は飛び出した留学生の集団に果敢にチャレンジ。野田は日本人で形成される第二集団に位置取りレースを進める。2000mの先頭通過は2分43秒とさらにペースが上がる中、大島は2000mを過ぎたあたりで自分のペースに切り替え、集団から離れて順大の吉岡(大翔・3)を引っ張る形でレースを進める。3000mを過ぎたあたりでその吉岡からも離されはじめ、その後もじりじりと後退してしまい、最後は28分45秒05の18着でゴールした。一方、集団でレースを進める清水は、8000mを過ぎたあたりから徐々に集団に離され始める。8600m付近ではさらにその後ろから来た集団にも追い抜かれ、最後は27分台ペースで走る先頭から周回差をつけられる苦しいレースとなり、29分00秒47で28着となった。
今年のレースは、雨も降り、気温も下がったこともあり、1組目から高速レースとなった。トラックで他大学に比べて、記録を持っているランナーが少ない法大にとっては厳しい試合になった。すでに出場を逃すことが確定している出雲駅伝に続いて、三大駅伝の2戦目となる全日大学駅伝への出場も逃すことが決まった。しかし、良いように捉えれば、10月18日に開催される箱根駅伝の予選会に向けての調整に集中できることにもなる。ここから夏合宿を経て、チームをどのように仕上げていくか注目だ。箱根駅伝だけは逃せない。
(記事:篠﨑勇希)
インタビュー
野田晶斗
ー試合時の調子については
1週間前の関東インカレでは調子が良くなかったのですが、全日本予選までの2週間で調子を上げれたので、良い状態で試合を迎えられました。
ー全日本予選に向けての具体的な調整方法は
関東インカレで一度出し切ったレースをしたので、まずは疲労を抜くことを第一に考えて2週間練習に取り組んでいました。関東インカレ前にポイント練習を一度外してしまい、そこで調子が悪いなと感じていたんですけど、そこからは関東インカレで一気に気が入って、上手く2週間で疲労を抜く練習もできて、良い調整ができたのかなと思います。
ーレースプランについて
組トップを狙って走っていました。中大の選手が引っ張るだろうと予想していたので、後半までついてラストで勝負するというレースプランを立てていました。
ー3組を走った他大学の選手の中で意識されていた選手は
中大の選手を一番意識していました。力があって、引っ張っていくだろうなというのはあったので。中大の選手には勝ちたいという思いもあったので意識していました。
ーあと一歩優勝争いをするにはどのような力が必要と考えているか
以前のレースからラスト勝負が弱いことを課題点として感じていて。今回のレースを振り返っても、ラストまで余力は残していたんですけど、スピード負けしてしまいました。それこそラスト1000mあたりから自分が仕掛けれられていれば勝ち目はあったのかなと感じているので、ラストまで持ち込むのではなく、もう少し早い段階で自分が先頭に出て勝負しにいければ良かったのかなと感じています。
ー先頭集団は入れ替わりが激しい中で、野田選手は位置取りを変えなかった、集団を引っ張るという選択肢はご自身の中では
1、2組の状況を見ても自分が攻めるしかないなと思ったので、最初から先頭の方で走るように自分の中で心がけて、ただラストまで力を貯めていないと勝負はできないと感じていたので、先頭に出ることはなるべく避けていました。それよりも集団の力をしっかりと使いながらラストに備えていたので、先頭に出ることはあまり考えていなかったです。
ー昨年度の全日本予選では武田和馬(令和6年度卒=現・kao)選手と最終組を出走され、今年は主力として3組で後輩の平山選手を引っ張る立場に、昨年度との心境の変化は
昨年4組を走らせていただいたので、どの組でも走れるという自信は今年はありましたし、昨年4組を走って今年は3組ということで、正直気持ち的には少し楽な部分もありました。ただその分、組トップをとるぐらいの勢いで走りたいという気持ちはあったので、精神的に楽な部分はあったんですけれど、その分結果を求めて走っている部分がありました。
ー監督からの指示は
自分を3組に使ったということはやっぱりトップを狙って走れという意図はあったと思いますし、坪田さんからレースの直前にも「攻めろ」という指示があったので、自分は後ろを見ず前だけを見て走りました。
ー今後の目標について
今年は全日本予選も落ちてしまい、残すところは箱根予選会のみとなるんですけれど、本当箱根だけは外せないレースなので、まずはそこで結果を出すことが第一目標です。ただ、10000mであったり5000mのタイムを狙っていきたいなと考えていて、今後もタイムを出す記録会は控えているので、そこで自分の自己ベストを更新して、夏であったり秋の予選会に良いイメージを繋げるように頑張っていきたいと思います。
(インタビュー:宮川茉優)

チームで唯一、組1桁の快走の野田
平山櫂吏
ー試合時の調子については
1週間ぐらい前からかなり準備してきて、調子は良かったんですけど、試合で緊張して上手く走れませんでした。
ーレースプランについては
最初は落ち着いて入ろうと思ったんですけど。前の組の結果を見て、オーバーペースなのは分かっていたんですけど、最初からガツガツ行っちゃって中盤から失速してしまったという感じです。
ーこれほどのハイペースになるとは予想していたか
例年と違って1ヶ月早く、気象条件も涼しかったので高速化というのは分かっていました。前の2組を見てみると自分の予想通りのペースだったので、行けるかなと思ったんですが、自分の組からは最初からペースが早かったので、そこはちょっと予想外でした。
ーレースの中で良かった点と、課題点は
最初の位置取りは結構前の方に取れていたのでそこは良かった点だと思います。悪かった点は、中盤ぐらいから結構失速して、それを抑えることができずに、最後まで全然普段通りの力で走ることができなかったことです。
ーご自身にとって初の公式戦。どのような心境か
レースを終わってみて、自分の想定以上に走れなくて、悔しい感じがして。でも残すはあと箱根だけになってしまったので、箱根だけは頑張らないとなという気持ちです。
ー3組を走った選手の中で意識されていた選手はいたか
一緒に走った野田選手といて。そんな秒差もなくゴールをしたかったんですけど、やっぱり力の差はありました。
ー監督からの指示は
前の組を見てても、タイムを稼がないといけなかったので、坪田監督からの指示は、「前の方には付け」という指示だったんですけれど。自分の状況判断で監督の指示を聞かなかったので、そこは反省しています。
ー今後の目標について
夏を経て秋に箱根の予選会があり、自分はロードの方が得意なので、ロードで少しでも今回足を引っ張ってしまった分、チームに貢献できればいいと思っています
(インタビュー:宮川茉優)

平山の初の公式戦は悔しい結果に、この経験を糧に更なる成長を
大島史也
―11位というチームの成績から感じたことは
自分が1年生次から全日本予選を通過できていなくて、その時の4年生が涙している姿を見てきて、1年生の時は出走できなかったんですけど、悔しい思いをしてきましたし、2年生、3年生の時は出走させていただいて、2年生の時は出場叶わず、3年生の時は途中棄権と、この予選会というのは自分の中でも絶対通りたかったですし、4年生の中でも「絶対通ろう」と話し合っていましたし、結果として通ることができなくて、悔しい気持ちでいっぱいです。
―今回は最終組、過去2大会とは違ったところは
緊張はしましたけど、4年生となり自分は走りで引っ張っていかないといけない立場でしたので、緊張した姿を見せてしまうと、後輩も緊張してしまいますし、表に出さずに緊張よりかは、最終組として結果を出さないといけないプレッシャーを感じていました。
―最初から留学生に付く展開は、3組目までの結果を踏まえて判断したのか
監督からも「状況次第」というところは以前からされていて、3組目時点で確実の走りをしないといけなければ、後ろの集団で(足を)ためて、ラスト抜け出すのが正しかったと思うんですけど、今回は3組目終了時点で(出場するには)かなりタイム差があったので、後ろで走っていても通過できないですし、前で攻めた走りをしようと決めていました。
―留学生のペースについていって感じたことは
コンディションもよかったですし、昨年出した法大記録(28分10秒11)ぐらいだと想定していて、結果として考えは甘かったですけど、状態はその時とは違かったですし、2000m時点で自分が想定していたペースよりも速かったので焦ってしまいました。
―集団にあえて付かなかったということか
そうですね。5000mとは違って2000mの時に、このままでは最後までもたないと思ったので、自分のペースを刻もうと考えました。ただ押し切れる力がなかったと終わって感じました。
―今シーズン初の10000mという点は
5000mを結構走っていて、それも1レース1レースかなり出力の高いレースだったので、5000mシフトの練習をしていたので、10000mに対応しきれなかったです。
―連戦続きのトラックシーズン、体の状態は
箱根終わってから故障は無くて、体調不良なども特になく練習は積めていたんですけど、1月2月は不調で焦りもあったんですけど、3月から調子が上がってきたなと感じていました。
―5000mでは日本選手権出場の資格を持っているが、今後の予定は
元々は日本選手権で勝負しようとスケジュールを組んでいたんですけど、今回の結果を踏まえて、自分がしたいことをしても、結果を出せばチームの勢いを付かせることはできるんですけど、10月の予選会で自分が今回みたいな走りをしてはいけないので、上の選手に食らい付かないとといけないと考えたときに、日本選手権には出れるんですけど、予選会に向けて、距離積めをしていくので、大きい大会などは特にはないです。ホクレンディスタンスにも出る予定ですが、ペース走として出ようと考えています。
―過去3年間のロードシーズンは調子などが噛み合わないことが多かった、最後のロードシーズンではどのように過ごしたいか
大学に入ってから、ロードシーズンで結果を出せていなくて、タイミングやピーキングという面でトラックシーズンに合いがちだったんですけど、でも感覚ではあるんですけど、練習は積めていて少しずつですけど、状態が上がってきている中で、今年の一連のトラックシーズンも不完全燃焼の部分がありました。しかし、これを自分はプラスに捉えようと思っていて、その分ロードシーズンにピーキングが合いやすいと考えていて、箱根駅伝予選会に100%、120%にしようと考えると、トラックシーズンで結果出しすぎて、夏不調になると箱根予選会で50%、60%、の状態になってしまうんですけど、今が70%だとしたら、夏に100%、予選会に120%にしやすいと考えています。そのため、日本選手権を狙ったところで結果が出なかったり、調子を落としてしまったりする可能性があるので、長い時間をかけてロードシーズンにピーキングを合わせていきたいと考えています。
―今後の意気込みを
4年生としてエースとして、まだ結果を出せていないですけど、この1~4年生のチームで箱根の舞台に立てるように、まずは箱根予選会というところでチームを導ける走りができるように頑張っていきます。
(インタビュー:松下天)

エースの自覚が芽生えた大島、秋の活躍も期待
清水郁杜
ー今回の個人の成績を振り返って
チーム内では3位という結果でしたが、(予選を通過できなくて)悔しい気持ちもありますし、それ以上に今回4組目で28位ということで他大学と比べてもかなり自分が弱いんだなと感じたので、今後練習で他大学との差を埋めて勝てるように頑張っていきたいと思っています。
ー昨年の大会で途中棄権を経験をした中で、今年の予選会に向けての心境の変化は
昨年の全日本予選で脱水症状で倒れて、かなり自分の中でも怖いというところがあったんですけど、やはりチームのために自分が4組目として頑張らないといけないので、腹をくくって全日本予選に向けてしっかり調整して走ったと思っています。
ー2週間前の関東インカレ10000mでは入賞を果たした。手応えがある中で直前の調整はどのように
関東インカレで結構手応えがあったんですけど、調整も今年の中で一番いいんじゃないかなと思っていたんですけど、いざ走ってみると途中で他の選手に置いていかれたりして、タイムも自己新記録でもなかったりちょっと悔しい部分があって。やっぱり、もう一回自分のことを見つめ直す時間が必要じゃないかなと思っています。
ー最終組で前の1〜3組の結果が分かっている中でどのような気持ちで走ろうと
正直なところ3組までの結果で7位との差が1分30秒あって、そこで全日本予選はもう通らないんじゃないかなと思っていたんですけど、自分との戦いだと思って走りました。
ー最終組では留学生が先頭を張る展開が予想された。位置取りという面においては
留学生に付いていくとと、最後の方垂れてしまうので日本人先頭、日本人集団、第2集団で位置をつけて徐々に上げていこうかなと思ってました。
ー雨の中のレースで最終組による寒さや足元や視界への不安に対し戦略の変更は
足元というよりあの天候だとかなり良いコンディションの中だったので、行けるとこまで行こうと、集団について食らい付こうと思ってました。
ー実際のレース展開で予想通り、または予想外だったことは
予想外はやっぱり第2集団の5000mの通過が思っていた以上にちょっと遅かったので、そこでしっかり自分も余裕を持ってたんですけど、集団のアップダウンがちょっと激しかったので、そこで対応しきれなかったので後半足に来て動かなくなってしまい、集団に追い抜かれてしまって。想定したレースだったんですけど、それ以上に他の選手の人が強かったので、自分の力不足だと感じました。
ーレース後、同じ組で同学年の大島選手とは何か
したかもしれないですけどちょっと忘れちゃいましたね。どういうことを言ったのか。お疲れっていう感じですかね。
ー今回の予選会、法大は総合11位だった。今回の結果について
他大学の選手が強くて、このままでは箱根予選も敗退してしまうので、今後チームでどうやって上がっていくかっていうことを考えていきたいと思っています。
ー今後箱根駅伝など主要大会も残されている。ファンの皆さんに向けて今後への個人の目標とチームの目標を
個人としてはどの区間でも区間賞を取れるように頑張っていきたいです。チームとしてはまずは予選会ですけど、予選突破してそこで箱根で8位を目指していきたいと思っています
(インタビュー:山田竣矢)

ロードシーズンから絶好調の清水、この勢いのまま箱根予選会へ
監督インタビュー
坪田智夫駅伝監督
―11位という順位を、監督としてどのように
1つ前半期の大きな目標としていたレースでした。チームの状態としては、そこまで悪くないと思っていたんですけど、天候が良かった分10000mの走力差を感じたレースになってしまいましたね。
―事前に高速化になることは予想されていたと思うが、ここまでの高速化は想定内だったのか、想定外だったのか
もう少し速いレースになると思っていましたので、準備はさせていました。10000mの記録も他大学は非常に速いんですが、あくまでも記録会のレースで、今回みたいな動くレース、最終組は別として、動くレースとしてはそこまで速くなかった印象です。そこまでも想定して練習だったり、春のレースを組んでいたりしたんですけど、周りが速かったのもそうなんですけど、自分たちの力を出し切れなかったという印象があります。
―動くレースの中で、自分たちの力を出し切るために必要なことは
何人かには話はしましたが、1点目としては、新チームになって彼らに伝えてきていましたが、今年は箱根駅伝の予選会、全日本大学駅伝予選会、1つ大きな目標である箱根駅伝というものが、ここ3年間シードを取り続けていて、何もしなくても箱根駅伝がやってくるという状況だったんですけど、今年に関しては予選会を勝ち上がらないと駅伝に出場できないというところで、チームを変えるというのを個人個人が考えてほしいというのを話していました。誰かが連れて行ってくれる訳ではないので、現状、大島だったり野田だったりが非常に力はあるんですが、彼らにおんぶにだっこでは、チームとしては非常に厳しいという話はしていて、体の準備というのはできていたんですけど、いざこのようなレースになったときに、気持ちの準備というところが足りなかったのかなという印象です。特に1組目の福田、澤中に関して言うと状態も良かったですし、その中である程度の勝負はできるかなという算段で彼らをスターターとして送り出したんですけど、練習の半分も出せていないなという印象でした。このような場面で誰がチームを引っ張るか、4年生はもちろんなんですけど、1年生に関しては大学駅伝をまだまだ分からないところがあると思うんですけど、2~4年生に関しては大学駅伝を経験していますので、大学陸上のレベルが上がっている中で、体の準備だけでなく、心の準備ができていなかったのかなと思いました。
もうひとつは冷静にレースを組み立てられなかったというところも敗因なのかなと。今回、平山が力はあり練習も積めていて、3組目からハイペースにはなったんですけど、少し落ち着いた展開をしていれば、あそこまで崩れる選手ではないです。チームの中でも主力になりつつある選手ですので、練習を見ていても十分力のある選手でした。ちょっと浮足立ったというか、レース展開の飲まれてしまったというと、ちょっと冷静さを欠いでしまったのかなと思います。
―13人のエントリーを見ていると、調子の良い選手をエントリーした印象、監督の中では想定通りのエントリーができていたのか
他にも走らせてあげたかった選手はいたんですけど、そこまで状態が上がってきていない中で、試合数をこなしていない選手を全日本予選に使うことはできなかったというところですかね。
―8人の選手と組分けと監督の意図は
清水、野田、大島に関しては十分勝負できる算段がありましたので、なんとか前半耐えて3組目に持っていきたいなという狙いがありました。高速レースになるとはいえ、他大学の中で10000mの記録を持っている選手もいましたが、そのままいけるのは一部の選手だと思っていましたので、中盤からレースを進めていけば、十分まとめられるレースはできるという算段はついていたのですが、中盤に力を使い切って、後半失速してしまいました。
―ここからは組ごとに振り返りを。1組目のレースで両選手が力を出し切れなかった要因は
そこまで速くないペースだったんですが、レースに飲まれたというのが印象で、「最初の入りは気を付けなさいよ」という指示は出していて、恐らく最初の1000m~2000mでペースが落ち着くという予想はしていたので、「そこからある程度、前の位置を取っていって進めなさいよ」と言って送り出していたんですけど、一向に上がってこず、あそこだと中々、きつくなってから粘るというのは難しいのでは思っていました。レースの位置取りも彼らに伝えてはいたんですけど、自信がなかったのか前の方に行けなかったのは非常に残念でした。
―その中でも福田選手は自己ベストを出した
自己ベストを出せたのは良かったんですけど、練習を見ていても、彼の力からするとこんなレベルではないんですよ。最後グッと上がってきていましたので、28分台レースはできますし、澤中に関しても28分台を出せる力は十分にありますので、先程いったように心の準備が足りなかったのではないのかなと思います。
―2組目にはトラックシーズン少し苦しんでいる主将の花岡選手を起用した
彼の場合、ロード向きの選手なんですよね。トラックシーズンに入ってから、確かに状態が上がりきっていない部分はありました。正直あそこまで失速するとは考えてはいなかったんですけど、不安要素がある中での出走となってしまったので怖がってしまったという印象で、トラックのレースに嚙み合っていない状況です。ただこの冬場、箱根前からここ半年間、高校のときからけがが多くて、ここまで練習が続いたことがないと言っていて、入学後もけがと練習を繰り返していた状態の選手で、たぶんここまでの半年間ここまで継続して練習できていたのは、彼の競技人生の中で無かったと思っています。良い部分を取ればその中で、このスタートラインに立てた、けが無く春のトラックシーズンを積み重ねてこられたというところは良い部分かなと。ただやはりその中で疲れだったり疲労感だったりが、やはり今まで長い期間練習を積めていなかった状態で、その中で今年ハーフも含めてかなりの試合数をこなしていて、今までの3年間のレース数を半年間で超えたという状況なので、体の芯の部分の疲労感が出てしまっての失速だったのかなと思います。1回リセットして夏に向けて、準備させたいなと思っています。
―田井中選手の走りは
花岡も田井中も位置取りは良かったと思います。前に、前にという状況の中で、動くというレースがまだまだ経験不足だったのかなと。最後スピードのある選手だったので、7000m辺りの嫌なキツさというかデットポイントというところで、「少し不安になってしまったという部分があった」と本人も言っていたので、最後のキツい場面の出し切りはもっとできたのではないかというのが、彼の評価です。
―3組目には昨年最終組の野田選手を起用した、その理由は
野田は確実に走ってくれるだろうと思っていたので、組上位ではいけるだろうと。4組目に配置しても良い走りはしたと思います。大島は4組目に配置することは固めていたので、清水と野田どちらを3組目にするところで、より耐えるレースができるのは清水だと判断しました。関東インカレを見ていても(ペースを)押せるレースはできていたので、そういったところを踏まえて、野田に耐えるレースをさせるより、前で勝負させたいという点で3組目に配置しました。(野田選手の走りは)非常に良い走りだったと思います。欲を言えばもう少しロングスパートで勝負をしてみてほしかったかなと。本人も「8000mまではかなり余裕があった」と言っていたので、最後の1000mで仕掛けられると、野田はスピードがないので、どうしても置いていかれるので。余裕があったのなら、もう少し積極的にレースを動かしても良かったのかなというところで、最後出し切れなかったのではないのかなと。ただ清水も野田も大島も、関東インカレ1本走って、特に野田、清水に関しては10000m走っていますので、印象としてはもう一段出せたという中で、多少関東インカレで出し切ってしまったのかなと、疲労感が残ってしまったのかなと思います。ただ野田はレースの内容に関しては十分にやり切れたのかなと思います。
―調子が良い選手が多い中で平山選手を3組目に起用した、初めての公式戦という中で大抜擢の起用だと感じたが
数週間の練習の中で、13人の中では平山かなという判断で、福田や他の4年生という選択肢もあったんですけど、直前の練習を見ていて10000mもしっかり走ってくれていたので、平山という選択になりました。最初にも言いましたが、やはりもう少し冷静に初レースとは言え、彼にも「前でレースを組み立てなさいよ」とは言ってはいたんですけど、前でとは言っても自分の力以上のレースは絶対にできませんので、(ラップダイムが)2分50秒、2分50秒となった時点で、後ろに下がってレースを組み立て直すという冷静な判断が欲しかったところです。これが箱根予選会や本戦になると「行けると思って行けなかった」は大変なことになりますので、本人も落ち込んで反省してくれました。全日本大学駅伝に出れないのは悔しいんですけど、こういった1つ大きな経験をできたということで、前向きに捉えて、気持ちを切り替えて、夏に向けて練習をしていってほしいです。福田を含め今回走った2年生の2人に関して言えば、チームの主力としての練習はできていますので、2年生が1年生の時、力を発揮できない部分があり、少し物足りない状況でした。福田は16人のエントリーには入りましたが、箱根の(出走の)10人に絡む練習はできなかったというところで、少し2年生の奮起に期待してシーズンに入っていたので、ただ冬場から春にかけて、今回走った2人はもちろん、青手木(陽太・経2=自由ケ丘)や加庭(翔太・社2=富岡)もメンバーに入ったというところで、それ以外のメンバーもかなり良い状態で上がってきていますので、この夏しっかり超えれば、弱いなと思っていた2年生が花開く、期待感を持てるなと。まだ記録は出てはいないんですけど、練習の流れを見ていると、期待感を持てる学年になってきたところで、この夏を「自分が箱根にチームを出す」という強い気持ちで取り組んでくれれば、全体として乗っかっていきますので、今回悔しい思いをしましたが、期待感もありますので、厳しい言葉を福田、平山には投げかけました。
―最終組の清水選手は昨年、途中棄権があった。監督として気にかけた部分はあったのか
正直、この大会前に清水とは昨年の大会については、ほとんど話はしていませんでした。「借りを返す場所だよ」とは言いましたが、特に細かい話はしていません。ずっと気持ちのこもったレースや練習をずっとしてくれて、非常に状態は良かったんですけど、やはり関東インカレの疲れがあったのかなと。特に関東インカレでは中盤ずっと引っ張るレースをしていたので、疲れが残るレースになってしまい、出し切れなかったレースになってしまいましたので、ただここで去年の怖さから遅れて、去年と同じようなレースになると箱根予選会にも響くのかなという面が、私的にはそこが怖かったんですけど、吹っ切れたレースにはなったのかなと思いますので、この夏をもう一段高い目線で過ごして、最後のシーズンを良い形で締めくくって欲しいと思います。
―大島選手の積極的な走りは
スタート前の指示の段階で(出場校と)まだ1分40秒くらいの差でしたので、「あきらめるな」という言葉を与えていました。昨年、我々も棄権ということがありましたので、最後まであきらめなければ、何が起こるか分からないということを伝えました。本人もそこで「留学生に付いていきます」と言ってくれたんですが、(最後まで食らいついた)中大の溜池(一太・4)君とはまだまだ力不足ではあったんですが、まとめるレースをすれば、恐らく後ろから行けば、日本人で4~5番手でゴールできたとは思いますが、それよりもこの舞台を使って自分と学生トップとの差を感じて、彼の成長の糧にして欲しいところがありましたので、留学生に付いていくことに止めることはしませんでした。ただ厳しいとは思っていました。彼はずっと5000mの試合数をこなしてきていましたので、10000mのレースにまだまだシフトできていない状態でしたので、恐らく2分50秒くらいイーブンのペースで押していければ、28分10秒台のレースはできたと思います。それよりも彼の成長、そして後輩たちのもそういった姿を見せるのも大事だと思っていたので、彼を止めることなく送り出しました。
―アクシデントなく全員が走り切った予選会、他校との力の差から感じたこととは
負けは負けですけど、自分たちの現状をしっかりと見てほしいなと思いました。チームの練習は悪くない、やってきたこともそこまで悪くない中でしたけど、そこはあくまでも過去のチームとの比較であり、外のチームに目を向けなければ戦えない。チームの中で練習ができているとか、隣の選手より練習ができているとかというよりも、箱根予選会や本戦で順位を取るためにはという視点を持ってほしいなと。今回の全日本予選、厳しい結果だったと思います。収穫もありましたが、課題も多くありました。ただ、まだ現状5月末ですので、ゆっくりはできないんですけど、これが9月とかだと修正はできないんですけど、夏でしっかり強化して、まずは予選会を全力で戦って勝ち取り、本戦で戦うための準備期間はあると思っています。まだまだ成長過程のチームですので、鍛え直して箱根に向けていきたいと思います。
―今後のチームの方針は
6月末に一度、記録を狙って、例年全日本大学駅伝予選会がある6月末に東北で1本記録を狙っていきたいなと思っています。そこから6月が終わったら、一度リカバリーを挟んで、例年よりも少し前倒しして、走り込む期間を作って、夏により質の高い練習ができるように準備をしてきたいと思います。
―今後の意気込みを
箱根駅伝だけになりましたので、予選会は絶対に落とせません。チーム一丸となって勝ち取って、本戦で目標の8位以内を勝ち取れるようなチームを作り上げたいと思います。
(インタビュー:松下天)
(写真:山口晴暉)