【硬式野球】大島公一監督が語る今季の総括 低迷からの再起を誓い、春の王座奪還を見据える(秋季リーグ戦振り返りインタビュー⑱)
大島 公一 監督
――今季チームとしては3位だったがこの結果はどう受け止めているか
リーグ優勝して、神宮大会で優勝して日本一になるということがこの秋の目標だったので、それはさせられなかったという状況です。
ーー慶大1回戦、開幕投手は山床志郎(文2=高鍋)選手だったが、山床選手に任せた理由は
オープン戦からいいものを見せてくれましたし、チームの中で1番スタミナがあるかなという思いで1戦目を任せました。代わりにエースになってもらいたいなという思いで1戦目を託しました。
――ショートには品川侑生(文4=三重)選手をスタメン起用したが、激戦の二遊間の中で品川選手をスタメン起用した理由は
守備が安定していいというのと、彼もオープン戦も含めて8月に非常にいいプレーを見せてくれたので、レギュラーで出るのは当然かなと思っていました。
――野崎慎裕 (営4=県岐阜商) 選手は序盤リリーフでの登板だったが、18番を背負う野崎選手を開幕からリリーフに回した理由は
やっぱり後ろが安定していないといけないという思いがあって、なかなか全員が完投できるという感じはなかったので、そういう意味では野崎には本当に申し訳なかったですけど、チームが安定して戦うためには野崎が後ろにいるのが最善かなと思っていました。
――慶大4回戦では丸山陽太(スポ4=成東)選手がリーグ初先発で初勝利を治めたが、けが明けの丸山選手の起用法はどのように考えていたか
8月の前半に足の故障があって、出遅れていた状況でした。どこまで投げられるかという不安もありましたし、大きなけが明けでもあったので、非常に難しい選択だったんですけども、よく投げてくれたと思います。
――立大3回戦では、「野崎選手に先発を任せよう」とチームのみんなが先発を託してくれたという話が野崎選手からあったが、監督としてはこれについてどう見ていたのか
日曜日の2回戦には野崎はベンチから外れていたというところもあって、実はもう3回戦の先発は野崎しかいなかったというところはありました。(2回戦の)試合が終わった後のミーティングで、(3回戦は)誰が先発を張るのかという話をした時に、チームから野崎という声が出たという感じです。勝てなかったですけど、休みがよかったのか、いいピッチングをしてくれました。
――この試合では、前日先発した丸山選手の被弾もあり敗戦したが、立大戦で勝ち点を取り切れなかった理由はどのようにお考えか
慶応戦の初戦を引き分けてしまって、4連戦になったというところは非常に大きかったかなと思います。そこでいきなり開幕からの10日間で7試合というところがタフだったと思いますし、そこが勝ち切れなかった1つの要因かなと思います。(ピッチャー陣の疲労もあったか)開幕の緊張感というのは違うので、疲労度も高かったかなと思います。回復するには少し時間が足りなかったかもしれないです。そういう意味でも本当に慶大1回戦がポイントだったかなと思います。
――早大1回戦では代打の浜岡陸(法4=花咲徳栄)選手が犠飛を放ち逃げ切り勝ちだったが、浜岡選手を代打の切り札として起用するにはどんな考えがあったのか
これもオープン戦をしていく中で、チームとして1番機能するのはこのポジションかなと思ったので、いい場面ではもう浜岡に行ってもらおうと思っていました。
――早大2回戦は15失点と投手陣が大炎上したものの、打線は一時8点差あったところから追いついたが、この試合を振り返って
「執念」というのがチームスローガンでしたけど、諦めないというか、そういうのを感じる試合でしたね。最後はなかなか勝ち切れなかったですけど、見事に同点に追いついたなと思います。
――早大戦では今泉秀悟(キャ2=石見智翠館)選手のチャンスに強いバッティングが光ったが、今泉選手のバッティングについてはどう見ているか
2試合ダメなことがないバッターかな思います。1試合目はダメでも、2試合目は必ず打ってくれるというパターンが多い打者で、当然当てることも上手いですけど、だんだんそれに長打力も出てきて、非常に頼もしくなってきたと感じます。
――早大からは23年春以来となる勝ち点奪取となったが振り返って
早稲田の4連覇がかかっているというところがありましたし、早稲田と明治には勝てなかったというところもあって、打倒早稲田、打倒明治というところがチームとしての合言葉になっていたと思うので、早稲田に勝てたというところは正直嬉しかったです。
――慶大戦から早大戦までのカードは、取ってとられてのどちらに転ぶかわからない試合展開が多かったがどうお考えか
今年のチームに限ってはもう慣れっこでしたよね。そういった試合が多かったので、そういう意味では安定したメンタリティーで皆戦えるようになってきたんじゃないでしょうか。
――明大2回戦は痛恨の落球から流れを失い敗戦したが、あの試合を振り返って
最終的にそういう落球という形になりましたけど、やっぱり明治は投手力打撃力、攻撃力と強かったです。
――明大から12季連続で勝ち点を奪えていないが、原因はどこにあると考えるか
やっぱり明治は投手を含めた守りが固いですよね。どうしてもロースコアになった時に明治にやられているという状況で、ここは法政大学の今の大きな課題の1つかなと思いますし、なんとか潰せるようにやっていきたいなと思っています。
――東大戦は昨年に続き1敗を喫したが、年々力をつけてきている東大をどうとらえているか
本当に脅威ですね。侮れないですし、やっぱり打撃力もありますから、投手がはまるとああいうことになります。非常に強敵になってきていると思っています。
――東大3回戦では代打の4年生の活躍が光ったが、大島監督からみてどうだったか
展開的に色んな人を出しやすい展開になったので、そういうワンチャンスをしっかりものにして、ヒットを打ってくれたのですごく感動しました。
――この1年間で最も印象に残っている試合は
いろいろなことが印象に残っていますが、春の早大2回戦というのが印象的ではありました。印象的なワンプレーでいったら、今秋の立大3回戦の小林隼翔(2年=広陵)選手のホームランですかね。
ーー春と比べてある程度オーダーを固定していたように感じたが
春のリーグ戦が終わって、春の経験者がとても成長しているなという状況もありました。夏のオープン戦も含めて、打順を変えることは少なかったですね。そういった意味では出られていない選手もたくさんいるので、これが正しいかどうかは分からないです。
ーー明大2回戦では開幕から1番を務めていた境亮陽(営1=大阪桐蔭)選手に代わって、浜岡選手を起用したが
境の状態がずっと上がってきていませんでした。オープン戦では良かったですが、リーグ戦に入って少し動き自体もスピード感がなくなってきていました。そういったことを踏まえたときに、その日の1番最善の打順を考えたらあの打順、あのメンバーだったかなと思っています。
ーー春はチームとして15盗塁していた中で、秋は3盗塁にとどまったがその要因は
やはりどう得点するかが1番の戦略、戦術なので、そこまで盗塁をするリスクを冒す必要はなかったです。加えて、どの大学もセットポジションのクイックが早かったり、キャッチャーのスローイングが良いチームが多かったです。この2つが要因だと思います。
ーー主砲の松下歩叶(営4=桐蔭学園)選手や井上和輝(法1=駿台甲府)選手にも犠打を指示していたが
本当は彼らの将来を考えると、あまりさせたくありませんが、チームでやっている以上、チームが得点する最善のプレーだと思って指示を出しました。
――藤森康淳(営3=天理)選手はこの秋、首位打者となったが活躍をどのように見ていたか
年々努力の成果が出てきていると思います。特に反対方向にヒットを打つことが多くなってきたので、あのようなバッティングをすれば、打率はそこまで簡単に下がらないなという印象で見ています。
ーー今季は1年生の井上選手が打撃で存在感を示していたが、どのように見ていたか
本当に1年生らしからぬというか、落ち着いてプレーをやり続けてくれたと思います。打撃力というかあのスイングは魅力ですよね。逆方向の中段に持って行くパワーと技術というのは、本当にこれからさらに伸ばしていってほしいなと思っています。(ポジションは今後もキャッチャーで行く予定か)もちろんキャッチャーが優先されますが、ここも競争になると思います。只石(貫太、営1=広陵)というキャッチャーも当然いますし、中西(祐樹、法3=木更津総合)、土肥(憲将、キャ3=鳴門)、川崎(広翔、営3=日大三)といった3年生もいるので、キャッチャーは熾烈ですね。誰を使っても遜色ないですけど、ワンポジションしかないのでね。
ーー井上選手を4番で起用する試合もあったが
明大戦と東大戦だったと思いますが、やはり何かアクションを起こした方がチーム的にも得点力が上がるのではないかと考えていました。松下の打席数を増やしたい、そして藤森康を1番にしたかったので、4番が井上ということになりました。
ーー春にキャッチャーとして多く出場していた只石選手は井上選手とポジションが被っているが今後の起用は
本当に競争になると思いますね。只石もやっぱりバッティングはとても長けているものがあります。彼のバッティングを生かすためには、どこかポジションがないかということは考えています。当然キャッチャーというポジションで井上と競って、井上がファーストになる可能性もありますし。今後2人の普段の取り組みというのを注視していきたいなと思っています。
――主将を務めた松下選手に1年間を通してかけた言葉は
特にそんなに言うことはなかったですね。いろいろなものを背負ってくれていました。だから、注意していたのは背負いすぎないというところだけでした。松下が少し頑張りすぎているときは、少しストップをかけたり手助けをしたりという気持ちはありましたが、特に声をかけたというのはないと思います。彼は自分でやれる人ですし、自分で考えて論理的な思考で表現できる人だと思うので、特になにか言ったことはないです。
――主将としてのプレッシャーを背負いながら、成績を残し続けた松下選手をどのように見ていたか
本人もなかなか打点が上がらなくて、少し苦しんでいたかなと思います。それでも、最後にきて守備、走塁、打撃と三拍子でしっかり貢献してくれました。よく1年間やってくれたと思います。新しい法政を作り、強い法政を復活させるということから、このチームが始まっているので、新しい風を吹かせてくれた1年だったと思います。
――松下選手はヤクルトからドラフト1位指名を受けたが、今後どのような活躍を期待するか
日本のプロ野球を代表するような選手になってもらいたいですし、ヤクルトを背負う選手になってもらいたいです。そして、日本のみならずメジャーというところにも目を向けながら、野球界をリードする選手になってもらいたいと思います。
――主力だった4年生投手陣が抜けるが、来期以降の投手運営はどのように考えているか
今残っているメンバーでやらなくてはいけないし、当然リーグ戦経験者もかなり抜けます。そこに山床や小森(勇凛、キャ2=土浦日大)などの春や秋を経験している2年生もいます。それに加えて、1年生でありながら槙野(遥斗、営1=須磨翔風)という投手も経験している。そういった選手を少しずつレベルアップさせていきたいです。当然新4年生の針谷(隼和、営3=桐光学園)、山口凱矢(営3=桐蔭学園)、古川(翼、キャ3=仙台育英)といった選手が出てきてくれないと優勝はないなと思います。(選手へのインタビューでも針谷選手に期待する声が多くあったが)とてもストイックに練習する選手ですね。なかなかそこがうまく成果として上がってきてないというのが現状です。そういう取り組みがいつか花開くのではないかとみんな期待しているのではないかと思います。
ーー現時点で来年の投手陣の軸となるのはどの選手だと考えているか
今年の秋、開幕投手として投げた山床には頑張ってもらいたいですよね。やはり3連戦勝つためには、完投できる人がいないとなかなか勝ち切れないと思います。そういった意味では、安定した力とスタミナがある人が大事になってくると思います。
ーー3年生投手陣が伸び悩んでいる印象だが、投手陣をどのように建て直していこうと考えているか
そこは髙村助監督もいますし、地道にやっていくしかないということですね。トライ&エラーなので、いろいろなことをトライしながら改善していきたいです。3月にある程度投手を整えていくと考えると、やはり少し前倒ししてみんなで投げられるようにしてもらいたいなというのが今の状況です。経験値を上げないと思い切って、自信を持って神宮に臨めないと思います。神宮での経験が少ない分、オープン戦でも少しでもイニングを投げて、良いときと悪いときの差を知ってもらいながら、最後は自信持って投げてもらいたいなと思っています。
――来年チームを引っ張る存在となるのは
昨年は松下と少数の4年生でしたが、4年生が頑張るというのが学生野球にとっては1番重要だと思います。4年生中心のチームになってもらいたいなと思っています。
ーー来季からDH制が導入されるが、どのように捉えているか
1つは投手交代がしやすくなった。あとは1人出場機会が増えると。この2つの利点はあると思います。そういう意味では、打撃を特化した選手を本当に作るのかというのは考えなくてはいけません。また、難しいのはそこを求めるという選手が増えてくると思うので、練習の中で今までとは違う特別なシステムになる可能性はあるかなと。守備をしないで、打撃だけをするという人もいても良いかなというのは思っています。そういったプランは全くまだ考えてないですが、言えることは投手の数が増えても投手交代がしやすくなった。そして、出場機会が増えたとは思っています。
ーーどのようなタイプの選手をDHで起用したいと考えているか
左バッターが多いので、どうしても右バッターの方がDHになりうるかなというのが漠然とあります。あとはポジションの兼ね合いもあるので、状況次第ですかね。どの打順にDHを置くのかというのも、1つポイントになるかなと思います。
――11季連続で優勝を逃しているが、低迷の1番の理由は
先ほどの話にあったように、明大に12季連続で勝ち点を奪われているというところだと思います。明大に勝てていないというのが、低迷の1つの要因かなとは思います。
ーー明大に勝つために必要なことは
相手の投手も含めて守りが固いということを考えると、やはりロースコアになるので、ロースコアに強いチームにならなくてはいけない思います。なかなか乱打戦というわけにはいかないので。圧倒的に勝つこともできないので、隙のないチームにしないといけないですね。守りを固めて勝機を待つというのが、ロースコアの展開で勝つ1つの戦略かなと思うので、そこを目指してやっていきたいと思っています。
ーーこの冬取り組むことは
今回の秋は15試合、春は14試合と圧倒的なスタミナが必要になると思います。そういう意味では、走り込みやバットの振り込み、投げ込みといった単純作業の繰り返しが必要かなと思っています。
ーー春に向けた意気込み
11季連続で優勝を逃しているということで、本当に自分自身も優勝したいですし、選手も優勝したいと。日本一を目指すということに対して本気で取り組みたいと思いますし、そのためにはまだまだ足りないと思います。もっと取り組む姿勢や熱量、勤勉さも必要になってくると思います。そういう意味では、しっかり準備をして春のリーグ戦に臨みたいと思っています。
(インタビュー:古川千遥、松野要)
大島 公一(おおしま・こういち)
1967年6月17日生まれ
東京都出身・法政二高→法政大学→日本生命→近鉄→オリックス→東北楽天
硬式野球部の写真はスポーツ法政新聞会の公式インスタグラムにも掲載しております。ぜひご覧ください。
【秋季リーグ振り返りインタビュー一覧(公開次第更新いたします)】


