インタビュー
坪田智夫 駅伝監督
―現在(12月14日)合宿中と伺いました。チームの状況はいかがでしょうか
エントリー選手16人とも、とてもいい状態で練習を行うことができています。
―全日本大学駅伝後からは、どのような流れで練習を行っていますか
全日本後は、20kmのレースや10000mのMARCH対抗戦、10マイルのペース走など、選考を意識しながら、強度の高い練習を行ってきています。
―エントリー選手の選考基準は
基本的には1年間の取り組みを見ています。直前の1本のレースではなく、この1年の試合の結果、内容、組み立て、生活面が大前提にあります。さらに、夏合宿や秋以降のレースを鑑みての16人です。
―エントリー選手の学年分布についてはいかがですか
3年生が多いのですが、久納(碧)や山本(燎)といった4年生がここにきて状態をあげてきてくれました。そういった意味で、学年のバランスが取れた16人になったのではないかなと思います。
―キーパーソンとなる選手はどなたでしょうか
4年生です。鎌田(航生)、清家(陸)はもちろん力がありますが、残りの4年生2人、久納と山本が10人に入ったときに、4年生らしい走りをしてほしいです。前回大会の鎌田のような区間賞という走りではなく、最低限のラインを抑えてほしいと思っています。
下級生が下位に沈むということと、4年生が下位に沈むというのは、全く意味合いが違ってきます。4年生の頑張りは、後続区間の選手の走りや意識にかかわってきます。鎌田、清家のエース急な走りにはもちろん期待していますが、それ以外の2名にも、しっかり走る背中を見せてほしいと思います。
―昨年区間賞を獲得された鎌田選手に注目が集まっています。この1年間、鎌田選手の練習を見て感じることはありますか
目線が高くなり、他大のエース級の選手とも互角以上に戦えるようになったと感じます。前回大会での1区区間賞や学生ハーフでの優勝というのは、彼の自信につながったと思います。4年目の戦い方を考えるきっかけになっていました。
―鎌田選手が4年間で大きく成長した要因は何でしょうか
とにかく故障がない選手です。また、不調もあまりないと感じます。年間を通して練習が止まることがありません。親からもらった体の強さというのももちろんありますが、その中での練習の組み立てや計画性がきっちりとした選手ですので、故障がないというのが彼の持ち味です。
―鎌田選手の今現在の状態は
いつも通りの鎌田、という感じです。鎌田は、絶好調という時期がないです。4年間を見ていても、「鎌田がものすごく調子いいぞ」という走りが練習ではなかなか見られないです。過去に見てきた青木涼真選手(現Honda)、佐藤敏也(現トヨタ自動車)選手、坂東悠太(現富士通)選手は「お、力があるな!」という練習をしてきましたが、鎌田には、そういったところがあまりないです。逆に言えば、大きな不調もないので、いつも通りの鎌田、という練習を、秋以降ずっと続けてくれています。そういった意味で、いい状態だと思います。
―鎌田選手について、箱根ではどんな走りを期待していますか
鎌田は、よっぽどのアクシデントがない限りは2区を走ってもらおうと思っています。今は学生のレベルが非常に高いです。他大学の学生トップの選手が2区を走ることや、今の10000mのタイムを考慮すると、「2区で区間賞をとってこい」というのはなかなかハードルが高いと思います。ただ、やってやれないことはないと思いますので、区間上位で走ってほしいです。また、私の法政記録である1時間8分16秒という記録が20年近く残っていますので、それを破ってほしいです。私の時は区間賞でしたが、今ではレベルも全く違いますので、最低限のノルマという感じですね。そこから40~50秒くらい縮めて、評価できるかなと思います。1時間7分30秒あたりを一つの指標として、区間上位で勝負してほしいというのがあります。
―山区間を走る選手は
ある程度固めています。青木ほどではないものの、面白い走りをしてくれる選手がいます。登りも非常に力がありますので、区間一桁の順位取りはできる自信を持っています。
―力を伸ばしている選手はどなたでしょうか
内田隼太(3年)です。期待をされていた分、この2年半ほどは故障や不調に苦しみました。この春から、生活改善などを地道に行い、夏の練習を経て一気に力をつけました。MARCH対校戦では鎌田に先行されましたが、トラックの走力で言うと、内田はチーム内トップの選手です。チームとして柱ができたという意味で、彼の成長は非常に大きいです。
―『箱根総合5位』達成のために重要なことは何でしょうか
どの区間でも、とにかくミスをしないことです。非常に高い目標ではありますが、選手たちが掲げてくれた目標です。シード権を狙うにしても5位を狙うにしても、10区間すべての区間でミスは許されません。とにかく一区間一区間繋いでいって、大手町から芦ノ湖、芦ノ湖から大手町へ戻ってくることが重要です。
―残り2週間、どのような調整を行っていきますか
やるべきことは12月上旬に全てやってしまっているので、後は体をリフレッシュさせて心の準備をしていく、という段階です。細かいミスがないように、体調不良やけがを防ぎ、とにかくミスをしない生活をするよう、選手にも伝えています。
―今年の法大の強みは何でしょうか
まとまりのあるチームだと思います。4年生が非常にいい形でチームをまとめてくれました。残念ながら4年生のエントリーは4人ですが、キャプテンの清家を筆頭に、この一年間箱根を見据え、チームのために頑張ってくれました。後輩の手本となる4年生だと思います。
―最後に、箱根への意気込みをお願いいたします
昨年は1区でいいスタートを切ることができましたが、なかなかいいところを見せられず、下位に沈んでしまいました。今年はチームの総合力が格段に上がっていますので、なんとか総合5位を目指して、チームで頑張っていきたいと思います。
(取材・岩田かおり)
坪田智夫(つぼた・ともお)
法政大学体育会陸上競技部駅伝監督
1977年6月16日生まれ
神戸甲北(兵庫)ー法大ーコニカミノルタ
法大在学中の4年次には箱根で2区区間賞を獲得。
2013年より本学駅伝監督を務める。
清家陸 駅伝主将
―現在(12月14日)のチームの雰囲気や状況はいかがですか
箱根に向けて仕上がっているかなと感じています。
―今年度駅伝主将を務められていますが、どのようなチームにしていきたいと考えていましたか
選手一人一人が目的意識を持ってしっかり練習に取り組むようになってほしいという思いがありましたし、エースの鎌田だけではなくて全員が戦えるように総合力を挙げていくようなチーム作りを意識していました。
―そのために取り組んだことは
練習日誌やミーティングの回数を増やしてチームの目標を常に把握できるような形をとっていました。
―練習日誌にはどういったことを書いていましたか
選手それぞれ考えていることが違うので、その時々によって書くことは違ってきます。選手が今思っている悩みであったり走りに対すること、チームの状況について結構書いてもらったりするので、それに対してアドバイスなどは書いていました。
―食事面でも変化があったのでしょうか
食事もそうですが、今年は練習以外のケア、トレーニングなども徹底してやってきました。特に食事に関してはそれぞれ食べるべき量が違い、練習に合った量を食べることが必要とされるので、そういったところで量を増やしていったというのはあります。
―そういった取り組みの効果は
夏合宿はほとんどけが人が出ることなく質の高い練習がこなせましたし、全日本に関してもしっかり上位で強豪校と肩を並べて競い合うことができたというところでは、少しずつそういうところの成果が出てきているのかなと思います。
―昨年以上に選手層の厚いチームになりました
今年のメンバー選考に関しても、誰が入ってもおかしくない状況だったので、それは一人一人が目的意識をしっかり持ってやってきた結果だと思います。少しずつ坪田監督もメンバーを選ぶときに迷うようなチームになってきているのかなと感じています。
―全日本大学駅伝は9位でした。この結果についてはいかがですか
後輩たちがしっかりと前の方でレースを進めてくれたので、そこに関してはすごく感動しましたし、箱根総合5位以内という目標が現実的になってきたのかなと感じました。
―個人としては出走されませんでした
箱根予選をあまり万全の状態で挑めなかったということもあって、箱根予選で体にきてしまい、全日本には間に合わなかったです。
―全日本で印象に残っている選手は
松本康汰(3年)ですかね。前半シーズンに苦しんで、箱根予選もかなり苦しいレースとなっていたんですけど、全日本の走りはちょっと良かったので。苦しんでいた分、全日本の走りを見て戻ってきたなという感じを受けて、これなら箱根もしっかり走ってくれるだろうと思いました。
―その後行われたMARCH対抗戦において、清家選手はご自身の自己ベストに近いタイムを出しました。レースを振り返っていかがですか
MARCH対抗戦に関してはしっかり合わせたわけではないんですけど、その中でもある程度まとめられたかなと思います。
―チームの動画をよく作られていますが、動画編集を始めたきっかけは
将来テレビ局で働きたいという思いがあったのと、小さい頃から旅行に行った後に思い出ムービーを作るのとかが結構好きだったので、大学でも趣味の一環としてやり始めたというのがきっかけです。
―箱根に向けても動画を作られているんですか
そのつもりでやっています。
―箱根に向けてご自身の調子はいかがですか
全日本を走らなかったので、調子を上げることに専念してきました。今やっと調子が戻ってきていて、箱根に向けてはいい調子で来ているので、しっかり調整していきたいなと思います。
―富津合宿ではどのような練習を
追い込む練習をしてしまうと調子を崩してしまうので、そこまで追い込むことなく余裕を持って調整の練習という形でずっとやっています。
―希望区間は
今年に関しては9区という風に言っていて。ずっと5区と言っていたんですけど、細迫(海気、2年)や稲毛(崇斗、2年)など山に対応できる選手がいるので、自分はどこの区間を任されてもしっかり走れるように準備はしています。特に9区は2年の時に走って法大記録を出しました。ただ非公認の法大記録が速いので、(前回の)自分の記録をしっかり超えて、非公認の記録も破りたいという風に思っています。
―坪田駅伝監督はキーパーソンに4年生を挙げていました
坪田さんにはすごく信頼していただいていて、今回も4年生がキーパーソンという風に言っていただいているのでしっかり最後、集大成の走りをしたいと思います。
―最後の箱根駅伝となりますがどのような走りをしたいですか
もちろん最後の箱根駅伝ですし、自分にとっては競技人生最後の駅伝となるので先ほども言った通り、集大成の走りをしたいと思っていますし、これまで支えてくれた親や監督に感謝しながら走れたらと思います。
―応援してくださっている方々へ一言お願いします
今年もテレビの前からの応援にはなるんですけど、速い法政ではなく強い法政を見せ、『箱根総合5位』に向けて頑張っていきたいと思います。応援よろしくお願いします。
(取材・齋藤彩名)
清家陸(せいけ・りく)
社会学部4年
2000年3月15日生まれ
163cm・50kg
出身校:八幡浜(愛媛県)
10000m自己記録:29分28秒24
松本光太郎 駅伝主務
―現在のチームの雰囲気はいかがですか
上向き傾向にあると思います。春先の全日本の選考会前後から、チームの勢いや練習の内容が良いものになってきていると感じます。今も、総合5位以内という目標をもって練習に取り組めています。
―普段の業務内容について教えてください
練習にかかわることであれば、給水やタイム計測です。
また、法政大学には他大学でいうコーチの立場の方がいないため、コーチング等も坪田監督がしてくださっています。僕らも、マネージャーという立場ではありますが、マネージャー兼コーチのような感覚で、コーチングの面でもサポートできればと思っています。
その他は、車の運転や宿泊場所の予約、タクシーの手配など、かなり幅広いかなと思います(笑)。
―マネージャーになろうと思ったきっかけは何ですか
高校の顧問の先生から、声をかけていただいたのがきっかけです。僕は高校まで選手をやっていて、3年生になるタイミングで、自分を成長させたいと思い、キャプテンに立候補しました。1年間キャプテンとしてチームを見ている中で、やりがいを感じて、「自分意外とこういうの好きなんだな」と気付くことができました。それを見ていた顧問の先生が誘ってくださって、法政大学に縁があったこともあり、今マネージャーをしています。
―選手経験がマネージャーの業務に生きていると感じることはありますか
選手や監督が言っていることがすぐに分かることです。陸上に関することもすんなり理解できるので、そこは選手をやっていて良かったなと思っています。
―この1年で大きく飛躍した選手は
たくさんいますが、強いて挙げるとすれば、3年生の内田隼太です。全日本の選考会をきっかけに、そこから飛躍したのかなと感じています。
―エントリーメンバーをご覧になって、どのように感じましたか
順当なメンバーがエントリーされたな、と思っています。
―普段、選手とのコミュニケーションで意識していることはありますか
僕は雰囲気を大切にしたいと考えているので、楽しく和気あいあいと話せる雰囲気を心がけています。あと、僕は周りから「怖い見た目をしてる」という風に言われることがあるのですが(笑)、必要な時にはチームを引き締めるようにしています。楽しい雰囲気の時と、きちんとする時とで分けるように心がけています。
―坪田監督とお話する際に、意識していることはありますか
監督はチームのトップですので、監督がおっしゃっていることの本質を理解できるようにしています。
―他のマネージャーの方々の雰囲気は
男子マネージャーは僕含めて4人いますが、仲がとてもいいので、普通に話す感覚でいつも話しています(笑)。
―ご自身にとって、箱根駅伝とはどのような舞台ですか
大学から間近に見るようになり、多くの方々の支えがあってこその大会だと感じています。マネージャーとして関われることが誇らしいですし、箱根駅伝を通して成長できているのかなと思います。
―残りの期間でのサポートについて、心がけていることはありますか
ここからはチームの仕上げの段階に入っているので、チームの中で細かいミスがないように、気を配っていきたいです。
―選手の皆さんに向けて
ここまで、箱根のために口うるさく嫌なことをいったこともありますが、1年間の皆の努力が成果としてあらわれるように、自信をもって走ってほしいです。
―法大ファンに向けて、メッセージをお願いします
日々僕たちが活動できているのは、陸上競技部にご支援いただいている皆様のおかげです。ここ数年はシード権に絡めないレースが多くなっていますが、今年は本当にチームの様子も良いので、関係者の皆様に感動していただけるような走りを見せていければと思います。
(取材・岩田かおり)
松本光太郎(まつもと・こうたろう)
法政大学陸上競技部駅伝主務
出身校:東農大二(群馬)