第98回東京箱根間往復大学駅伝競走
2021年1月2・3日
チーム目標を総合5位以内に掲げた法大が東京箱根間往復大学駅伝競走(箱根)に挑んだ。往路は各選手が力走を見せ、1区内田、2区鎌田、3区小泉は法政記録を更新。シード圏内の10位と22秒差の13位で往路を終えた。迎えた復路では、6区の武田が区間2位の好走でチームを勢いづけると、9区では駅伝主将を務める清家が前を走る大学を猛追。最終10区で川上が逆転に成功し、総合10位で3年ぶりのシードを獲得した。
試合結果
総合成績
順位 | 大学名 | 記録 |
---|---|---|
1位 | 青学大 | 10時間43分42秒 |
2位 | 順大 | 10時間54分33秒 |
3位 | 駒大 | 10時間54分57秒 |
4位 | 東洋大 | 10時間54分59秒 |
5位 | 東京国際大 | 10時間55分14秒 |
6位 | 中大 | 10時間55分44秒 |
7位 | 創価大 | 10時間56分30秒 |
8位 | 國學院大 | 10時間57分10秒 |
9位 | 帝京大 | 10時間58分06秒 |
10位 | 法大 | 10時間58分46秒 |
11位 | 東海大 | 10時間59分38秒 |
12位 | 神奈川大 | 11時間00分00秒 |
13位 | 早大 | 11時間00分03秒 |
14位 | 明大 | 11時間00分28秒 |
15位 | 国士館大 | 11時間03分06秒 |
16位 | 中央学院大 | 11時間03分06秒 |
17位 | 日体大 | 11時間07分33秒 |
18位 | 山梨学院大 | 11時間11分11秒 |
19位 | 駿河台大 | 11時間11分21秒 |
20位 | 専大 | 11時間15分09秒 |
関東学生連合 | 11時間00分25秒 |
記録・順位
区間 | 選手名 | 区間記録 | 区間順位 | 総合記録 | 総合順位 |
---|---|---|---|---|---|
1区 | 内田隼太(経3) | 1時間01分58秒 | 9位 | 1時間01分58秒 | 9位 |
2区 | 鎌田航生(社4) | 1時間07分11秒 | 9位 | 2時間09分09秒 | 9位 |
3区 | 小泉樹(現1) | 1時間03分20秒 | 11位 | 3時間12分29秒 | 8位 |
4区 | 河田太一平(社3) | 1時間02分34秒 | 8位 | 4時間15分03秒 | 9位 |
5区 | 細迫海気(社2) | 1時間14分33秒 | 16位 | 5時間29分36秒 | 13位 |
6区 | 武田和馬(社1) | 58分40秒 | 2位 | 6時間28分16秒 | 11位 |
7区 | 中園慎太朗(社3) | 1時間04分09秒 | 8位 | 7時間32分25秒 | 11位 |
8区 | 稲毛崇斗(社2) | 1時間06分20秒 | 13位 | 8時間38分45秒 | 12位 |
9区 | 清家陸(社4) | 1時間09分22秒 | 7位 | 9時間48分07秒 | 11位 |
10区 | 川上有生(スポ3) | 1時間10分39秒 | 11位 | 10時間58分46秒 | 10位 |
戦評
これまでの常識が一切通じない、歴代稀に見る『超高速』駅伝だった。序盤から区間新記録に日本人最高タイムと記録ラッシュの中、法大もその波にしっかりと乗る。1区から3区まで、法大記録を30秒以上更新。4区は法大タイ記録で、往路成績は従来の大学記録を2分更新。復路でも9、10区と法大記録を叩き出し、復路成績でも大学記録を3分以上更新。総合成績は大学史上初の10時間台となる10時間58分46秒。総合順位は、最終10区、残り1kmを切りアンカー川上有生(スポ3)が東海大を交わし、土壇場で10位に滑り込み、3年ぶりのシード権獲得となった。
序盤の流れを決める1区。レースは吉居大和(中大)が10km27分台で通過という区間新記録を大幅に上回るペースで独走態勢を築く。その中で、内田隼太(経3)は同じくハイペースの第二集団で落ち着いて推移し、抜け出す機会をうかがう。六郷橋を下って以降、唐澤拓海(駒大)、志貴勇斗(青学大)と優勝候補の大学が揺さぶりをかける中、懸命に食らいつく。終盤は苦しくなり、区間9位。しかし、1時間1分58秒の好記録をマークし、法大史上初の1区61分台に加え、徳本一善(現・駿河台大学監督)の持つ1区の大学記録を大幅に更新。1年間の進化の証を見せた。
法政二高時代からの後輩である内田からたすきをもらったのは、大エース・鎌田航生(社4)。終始、集団でレースを進め、上位を狙う走り。『壁』と言われる最後の戸塚の坂に対しても、臆することなく立ち向かった。165cmと、小さな身体ながら他校の猛者を相手に果敢に勝負を挑み、1時間7分11秒で区間9位。坪田監督の持つ大学記録を22年ぶりに更新。自身の2年前のタイムも2分上回り、「リベンジを果たすことができた」と話した。前々回区間18位で、厳しい結果となったあの日から2年。最後の大仕事を果たし、坪田監督も「エースらしい素晴らしい走り」と労いの言葉をかけた。
3区は当日変更で、起用されたルーキー・小泉樹(現1)。エースからたすきを受けた次期エース候補が、湘南の地で箱根デビューを果たした。1年生とは思えない堂々と地に足のついた走りで、一時は6位まで浮上。しかし、終盤はペースを上げきれず、区間11位。それでもさすがは小泉。内田・鎌田と大学記録を更新する中で、小泉もそのラインを確実にクリアをしてきた。シード圏内の9位をキープし、先輩に託した。
4区も当日変更で出番がやってきた、河田太一平(社3)。ロードではチーム随一の実績を持つ河田が、昨年同区間2位の嶋津雄大(創価大)のハイペースに乗り、前を追う。終盤にタイムが伸びなかったが、区間8位。タイムも自身が持つ、法大記録と同タイムで走り切った。持ち前の安定感を箱根路でも披露し、山登りへ弾みを付けた。
天下の険5区に挑むのは細迫海気(社2)。「序盤は抑えて、後半ペースアップ」の言葉通り、登りに入ってから前との差を詰めていく。坪田監督にも15km手前までは、「想定以上」と言わしめる走り。しかし、最高点を過ぎ、強い向かい風を受けるようになり、急激に失速。最後は歩くようなペースになり往路13位でフィニッシュ。しかしシード権との差はわずか22秒と、復路に期待が持てる結果となった。
復路の流れを左右する山下りの6区はルーキーの武田和馬(社1)。序盤から区間賞に迫るペースで飛ばし神大、早大を捉え一時はシード圏内に浮上する。最後は、川上勇士(東海大)に離されるが、順位を11位に押し上げた。さらにタイムは58分40秒で区間2位。1年生が鮮烈な箱根デビューを飾り、一度離れかけた流れを引き戻す快走だった。
7区は全日本大学駅伝の雪辱を誓う中園慎太朗(社3)。23秒あった東洋大との差を詰めると、その東洋大と10位集団を形成し、並走する。懸命に前を追うが、終盤はスパートを許し、11位でたすきリレーとなったが、区間8位。10位・國學院大とは12秒差とし、全日本のリベンジを果たした。
終盤に遊行寺の坂を迎え、登りの適性も求められる8区は稲毛崇斗(社2)。一気に前を捉えたいところだったが、相手はシード常連校。なかなか前との差が詰まらない。得意の上りでも捉えきれなかったが、区間13位と何とかこらえ頼れる主将に渡す。
復路最長区間となる23.1kmの9区は清家陸(社4)。一年間チームの先頭に立ってきた主将だ。その男が最後の箱根で魂の走りを見せる。スタート直後、11位・早大に追いつき、並走する。この膠着状態が長く続くと思われたが、清家が仕掛ける。15km付近で、ペースを上げ、早大を引き離し、さらに前の帝京大との差も詰めていく。最終的には、32秒まで詰め、たすきを託した。4年生として、主将として。後輩たちに示した最後の背中だった。
そして、全てが決まる最終10区。川上は冷静だった。一気に詰めようとはせず、ペースを守り、虎視眈々と前をうかがう。しかし前を行く帝京大とは、残り3kmで37秒差。「さすがに厳しいか…」。しかし、川上は違った。懸命に諦めることなく腕を振り、前に進むとチャンスはやってきた。残り1kmを切り、ペースが上らない東海大を捉え、10位に浮上。さらにみるみる差を広げていき、そのままフィニッシュ。法大史に残るであろう大逆転劇で、3年ぶりのシード権獲得となった。
川上だけでなく、チーム全員が目標に向かって一つとなり、諦めない泥臭さがシード権獲得をもたらした。来季はエース・鎌田に主将・清家とチームの屋台骨が卒業するが、諦めないことで起こる形を体現した法大の未来はきっと明るい。(大井涼平)
監督インタビュー
坪田智夫 駅伝監督
―今大会を振り返っていかがでしょうか
目標の総合5位には届きませんでしたが、チーム全員で最低限のシード権は取れたので良かったのかなと思います。
―区間配置については
一つ一つの試合や練習を見ながら主要区間のイメージは大体できていましたが、つなぎの区間は直前の状態を見て考えていました。今回は16人全員がつなぎ区間であればどこでも行けるようなチーム状況で、最後は非常に悩みましたが、今年考えうるベストの10人は組めたのかなと思います。
―1区間ずつ伺います。1区の内田選手はハイペースの中、9位でたすきをつなぎました
1区というのはどの区間よりもプレッシャーのかかる区間だと思います。そして今年は非常にハイペースとなる難しいレースの中で、区間一桁で持ってきたというのは、初めての箱根駅伝でしたが非常にいい仕事をしてくれたと思います。2区にエースの鎌田がいましたので鎌田にいい位置で渡して、何とか鎌田を勝負させたいなという思いがありました。そういう意味でも二高コンビでいいつなぎができたと思います。
―2区の鎌田選手は坪田監督の持つ2区法大記録を1分以上更新する走りを見せました
記録はもちろんですが、レースの展開も攻めのレース運びでした。練習を見ていても、私の記録はおそらく破るだろうなと。彼には1時間7分30秒というタイムを設定していましたが、それを約19秒、さらに私の記録も約1分上回る走りで、目標設定と私の記録を超えてくれました。内容、結果ともにエースらしい走りだったと思います。
―レース後に鎌田選手にかけた言葉は
「エースらしい素晴らしい走りだった」と言葉を掛けました。
―3区の小泉選手は順位を上げる走りでした
全日本大学駅伝(全日本)の1、2、3区が上手く流れましたので、全日本が終わった段階で(箱根も)この流れでいこうという風には考えていました。鎌田がいい位置で持ってきてくれて、本人も「前半から積極的にいきます」と言ってくれていました。そういう意味では仕事をしてくれたのかなと思います。少しハイペースで入ってしまい後半伸びなかったので、もう少し走らせてあげたかったというのはあります。ただ、まだ1年生ですし、そこは来年に向けての課題かなと考えています。
―4区の河田選手は安定した走りを見せました
2、3、4区というのは攻める区間、稼ぐ区間というオーダーを組んでいました。創価大の嶋津くんのハイペースに乗っかり上手く流れていたのですが、後半の5kmがいまひとつ伸びなかったです。十分、合格点を与えられる走りではあったのですが、欲を言えばもうひと伸びほしかったかなと。彼もまだ3年生ですので来年の課題ということで、また頑張ってくれると思います。
―5区の細迫選手は懸命の走りを見せました
15km手前までは想定通り、想定以上の走りでした。しかし、最高点を超えたあたりで力を使い切ってしまいました。あとは下から吹き上げる冷たい風によって、少し低体温になったのかなというところです。最後は軽いジョグのようになってしまい、厳しいレースになりました。ただ、しっかり一年間鍛えて来年は必ずリベンジしてくれると思います。
―往路は13位で終えました。この結果についてはいかがでしょうか
目標の5位に関しては厳しい結果ではあったと思います。ただ、その次の目標がやはりシード権獲得というところでした。その点に関してはシード圏内とのタイム差がそれほどなく、秒差で踏みとどまってくれたという意味で復路につながるレースだったと思います。
―6区の武田選手は58分台、区間2位の走りでした
100点のレースでした。6区は1区と同じでスターターになりますが、復路の出だしでこけるとなかなか巻き返せない状況になります。彼はそのプレッシャーをはねのけて、区間2位で走りました。そして1年生の武田が走ったことで、後ろの上級生4人も「武田がやったんだから自分たちも」という思いでたすきをつなげました。そういった意味で100点、120点のレースでした。
―武田選手は練習から下りへの適性を見せていたのでしょうか
テストはやっていたのですが、過去の選手と比べてそれほど記録は出ていませんでした。ただ、走力は上がってきていたので、条件さえ整えば59分を切れるかなと。彼にも「58分30秒から59分前後で戻ってきてくれよ」という話はしていました。
―7区では中園選手が積極的な走りを見せました
中園に関しては全日本で非常に悔しい思いをしました。そこから復調して、MARCH対抗戦では28分台を出し、そのあとの練習もしっかりできていました。全日本の時も決して力がなかったわけではなく、私も自信を持って7区に送り出したのですが、少しプレッシャーに負けてしまいました。箱根7区に関しては往路の鎌田、河田、小泉同様に攻める区間と位置付けて中園を送り出しました。最後は引き離されましたが、ずっと東洋大学さんを引っ張る攻めのレースをしてくれました。全日本の悔しい思いを払しょくするような走りを見せてくれて、8区以降にシード権の望みをつないだ走りでした。
―8区の稲毛選手は粘りの走りとなりました
稲毛に関してはもっといけたと思います。8区は遊行寺の坂がありますので、その点を考慮して上りが得意な稲毛を配置しました。ただ前半から少し緊張してしまったのか、リズムに乗り切れず、少し力を使ってしまって。遊行寺の坂でいっぱいいっぱいになってしまい、少し伸びなかったかなと思います。
―9区は清家選手が前との差を詰める走りを見せました
彼の走りも100点ですね。主将としてチームを引っ張り、個人の力もチームの力も一年間で引き上げてくれて、そのことがこの走りにつながったのではないかなと思います。8区で少しシード圏内が遠くなってしまって、彼が詰めないとアンカーで勝負できないという中でしたが、横浜駅からの8㌔でぐっと詰めてくれました。何とか前が見える位置で川上につないでくれましたので、最後100点のレースをしてくれましたね。
―10区の川上選手はチームをシード圏内に押し上げました
この区間は23kmという長い区間である上に気温もどんどん上昇していきますので、「最後まで何があるかわからないから、きつくなってもあきらめず走っていこう」と指示していました。その中で帝京大学さん、その前の創価大学さんがなかなか見えない状況でした。少しずつは詰めていたのですが、詰め切れない状況で正直私自身厳しいなと思っていました。しかし、東海大学さんにアクシデントがあり、最後の1㌔を切ったところで大逆転できたというところです。アクシデントに助けられたとはいえ、川上が最後まであきらめずに走ってくれたので、シード権を勝ち取れたという風に考えています。
―復路順位は7位でした
往路の選手もそうですが、復路の選手たちが粘り強く、悪くても最低限に抑えてくれたおかげで、最後大逆転につながったと考えています。本当に復路の選手たちが良く走ってくれたと思います。
―チームを支えた4年生はこれで引退となります
全日本予選会、箱根予選会の突破、全日本ではシード権まであともう一歩というところだったでした。昨年の箱根総合17位のチームからここまで引き上げて来ることができたのは4年生のチームをまとめる力、16人のエントリーが出てからも献身的にチームのことを考えてくれたおかげだと思います。やはり大学陸上は、4年生の行動、走りが結果に顕著に表れる競技です。そういった意味で走った10人の力はもちろんですが、最後まで残ってしっかりやってくれた4年生の存在は大きかったです。
―3年生以下の選手に期待することは
今の3年生は非常に力があります。下級生も育ってきていますので、走力的なことを考えると十分、来季も箱根で勝負できるチームになると思います。ただ自分たちが勝手なことをやってしまうと、やはりチームがバラバラになり同じ方向を向けないということになります。3年生以下には今年の4年生をしっかり見て、チームの土台作りからしっかりやってほしいなと思います。
―応援してくださった皆様へ
こういう状況でまず大会が開催できたことは非常に感謝しています。また日頃から陸上競技部への支援など多くのバックアップをしていただいて、チーム運営ができています。応援してくださる方々の力が彼らの背中を押してくれ、苦しいところも乗り越えられました。走った10名だけではなく、応援してくださる方々、支えてくださる方々、部員全員というチーム法政でつかみ取った総合10位とシード権だと思います。本当に感謝をしています。
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