【ハンド・特集】第2回 「身体から組織を変える」―学生トレーナー特集―

ハンドボール

 法政大学ハンドボール部が、新たな局面を迎えている。昨年の低迷を受け、チームは『組織改革』に着手した。その中でも、注目すべき存在がいる。それは、学生トレーナーの存在だ。彼らが中心となって、チームは今、フィジカル面での課題に取り組んでいる。他大学がフィジカル強化に力を注ぐ中、法大ハンド部はフィジカルの部分で長年課題を抱えていた。「まずは他大学に負けないフィジカルを作る」という布田主将の強い意識のもと、学生トレーナーたちは選手の体重管理やフィジカル強化に取り組んでいる。第2回の本記事では、そんな彼らの活動にスポットライトを当て、学生トレーナーたちの魅力に迫っていく。

今回は、4年生でトレーナー長を務める隈井優太、同じく4年生の畑本有輝にインタビューを行った。

法大ハンド部を支えるトレーナー陣

隈井優太トレーナー インタビュー

―まず、ハンドボール部に入ったきっかけを教えてください
自分は元々バドミントンやサッカーなど、ハンドボールとは違う種目をやっていました。ハンドボールにはバドミントンにはない当たり動作があり、ケガがとても多いかなと思ったので、これからのトレーナー人生を幅広くするために入りました。また、見学した時のハンドボール部の雰囲気から、トレーナーとして活動しやすい部活、これから働いていきたいなと思う部活だったので選びました。

―トレーナーになろうと思ったきっかけはどういったところでしょうか
私はバドミントンを12年間くらいやっていたのですが、ケガの多い競技人生でした。その中で整骨院の先生やトレーナーさんと出会い、トレーナーの方々の支えはとても大きいんだなと感じました。自分自身そういった勉強にも興味があったので、トレーナーとして選手と関わっていきたいというのは強かったです。

―元々バドミントンをされていたとのことですが、バドミントンからハンドボールに生かしている部分やバドミントンから取り入れた具体的な練習メニューなどを教えてください
バドミントンとハンドボールは体の使い方が多少似ているところもありますが、実際にやってみると違うこともたくさんあります。バドミントンはステップワークやフットワークの練習をたくさん行うので、そこの切り返しの速さだったり、一瞬の速さ、初動の速さを出すメニューを組んでいます。

―現在チームとして組織改革に取り組まれているということですが、昨年のインカレが終わった後から変えた部分や、新たに取り入れた練習などはありますか
今まではアップのメニューを固定していて、回を重ねるごとにだらけてしまうのが課題としてありました。まずはそこを変えるために、毎回違うメニューにする部分を作ったり、アップ後のトレーニングも任せてもらったりしています。「毎回のチームの状況を踏まえて違うメニューを考える」というところと、「トレーナーが関与することで、(選手の)意識が高まって動ける状態になってからボールを投げ始められる」というところをキャプテンは望んで、自分たちにその時間を託してくれていると思うので、自分たちはそれに応えられるように準備しています。
また、トレーナー間での情報共有を今年はより意識して、高いレベルで行っているかなと思います。今までアップを担当する人もバラバラでしたが、前日までに「誰がこの役割をやる」ということをしっかり役割分けすることで、その日に自分がどういう役割をするのかという意識づけはできるようになっていると思います。

―インカレが終了してから今までで、チームとして選手のフィジカル面で変化した部分はありますか
この部活は、まずは「やるかやらないか」という、まずそこからの問題でした。部員が何十人もいる中で、ウエイトが嫌いな人ももちろん数人はいるので、やらないで話している選手も出てしまっていました。今は社会人のトレーナーさんも新しく来てくださるようになって、トレーニング指導に関与してもらったりもしているのですが、その中で自分たちも毎回メニューを変えたりしています。
また、ハンドボールはポジションによって動き方が変わるので、体の使い方も全然違うのですが、今までは全員同じメニューをやっていました。今はよりポジションの動きに特化したトレーニングを増やしています。選手の中でも「これが必要なんだ」というのは意識できているんじゃないかなとは思うので、そこは一番の変化だと思います。大きく変わったかというのは、まだリーグ戦も始まっていないので分からないところではあるのですが、トレーニング方法は本当に大きく変わっていると思いますし、今は楽しんで積極的にやってくれる選手が増えてきているかなと思います。

―それでは最後に、今後に向けてトレーナーとして取り組みたいことや、選手に取り組んでほしいことを教えてください
選手には「こういうトレーニングをして、ケアをして」とアドバイスしていますが、練習後や選手が家に帰った後、そういうセルフケアをしっかりと行ってほしいです。ケガや疲労の溜まり具合をケアするというのは選手にしかできないことなので、その意識を高めて、その重要性をもっと理解してほしいというのはありますね。トレーナーとしても、セルフケアやアップの重要性だったり、きついトレーニングをして、ただきついだけなのか、それが何に効果があるのかというところはもっと伝えて、積極的に取り組む人が増えればとは思います。あとは個別のメニューも年末に作って、個人個人に足りない部分や意識づけの部分はしています。また、リーグ戦が始まる前に個々にアドバイスできればと思っていますし、あとは、トレーナーだからとか、選手だからじゃなくて、自分もチームの一員ではあるので、同じ温度感で勝利のために1日1日意識高くやっていくというのは継続してやっていきたいと思います。

選手へのマッサージを行う隈井トレーナー

畑本有輝トレーナー インタビュー

―ハンドボール部に入ったきっかけを教えてください
私は大学に入ってすぐにトレーナー活動をしたいと思っていました。本当は陸上競技部のトレーナーをしたいと思っていたのですが、コロナの影響であまりトレーナー活動ができていませんでした。その時に同期のトレーナーの隈井と選手の杉山(駿、4年)から、「ハンドボール部のトレーナーを募集しているんだけど」という誘いを受けて、見学に行ったらとても雰囲気が明るく、ここでトレーナー活動をしたいなと思ってハンドボール部に決めました。

―トレーナーになろうと思ったきっかけは
中学校の時に陸上競技部で800メートルを走っていたのですが、シンスプリントや疲労骨折、肉離れなど、ケガが多かったです。顧問の先生がケガに対してとても真摯に向き合ってくれて、その中で「私も将来、少しでもケガをした選手の支えになれたらいいな」「トレーナーを目指したいな」と中学3年生の頃に思いました。

―ケガをした選手への接し方や、リハビリなどで心がけていることなどを教えてください
リハビリを進める上で、なぜケガをしてしまったのかという分析をしっかりして、その後ケガとはまた違ったその選手の弱点をしっかり分析します。そこから復帰に向けてリハビリメニューを作成して、実施しています。また、ケガをするとモチベーションが下がってしまうと思うので、できる限り違うメニューを提供したり、少し難易度を高くした時に、選手がしっかりリハビリメニューをできたら「いいね」や「ナイス」など、前向きな声をかけるようにしています。

―チームとして組織改革に取り組まれているとのことですが、昨年のインカレ後からチームとして変えた部分や、新たに取り入れた練習などを教えてください
インカレ前のリーグ戦で、チーム全体がとても悔しい思いをしていたので、キャプテンを筆頭に組織改革を始めました。今までは全体でトレーニングすることが多かったのですが、今年はポジションごとに必要な筋肉や必要な技術・能力を伸ばせるトレーニングを組み込んでいるので、そこは大きく変えた点かなと思います。

―インカレから今までで、チームとしてフィジカル面で変化した部分はどういったところでしょうか
インカレが終了してから、そこまで大きな試合ができておらず、今は体育館も使えない状況で、外部でハンドボールをすることも多いです。そこまでしっかりとハンドボールをしている姿があまり見れていないので、プレー面での変化ははっきりとは言えないですが、ウエイトでは外部のトレーナーさんが来てくださって、前は少ししかできなかったことができるようになる選手がちらほら見えてきたのかなという感じはすごくあります。

―今後に向けて、トレーナーとして取り組みたいことはどういったところでしょうか
選手の持っている力を100パーセント発揮できるようにするのがトレーナーの仕事でもあると思うので、冬に頑張ってきたことがしっかり試合で発揮できるようにコンディションを整えたいと思ってます。また、リーグが始まるとケガが増えたり、毎週土日に試合があって、ずっと試合に出ている選手は疲労で本当にきついと思うので、心身ともにケアできるようなスタイルを整えていきたいと思います。

畑本トレーナーは、自らの経験を生かしてケガのケアなどを担当している

今回インタビューした2人のトレーナーは、共にハンドボール未経験。しかし、他競技の練習や、ケガが多かったという自身の経験を生かし、ハンドボール部の選手たちを支えている。インタビューを通じて見えてきたのは、練習内容や日々の生活など様々な面での改革を通じて大きく変わっていくチームの姿だった。中でも2人が共に言及していたのが、「ポジションごとの練習を取り入れたこと」。なかなか結果を残せなかった昨年の法大ハンドボール部。2人は、選手たちが日々の練習に向かう意識に足りない部分があったという。自分のポジションに必要な能力は何か、そしてその能力を身に付けるために必要な練習とは何か。選手1人1人がこのような目的意識を持って練習に取り組むようになり、練習への姿勢も変化してきた。改革の成果は、徐々に形となって表れ始めている。

(今後の特集掲載予定)
4月中旬 第3回 一般入試組が語る『大学でも続けるワケ』

(取材:岩瀬智悟 記事:布田航、岩瀬智悟)

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