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【水泳】第97回日本選手権 ① 宮本一平 派遣標準記録突破も「4位」で代表ならず… それでも「次のオリンピックに向けて準備していきたい」と挑戦は続く

第97回日本選手権
2021年4月3日〜10日
東京アクアティクスセンター

7月に迫る東京五輪の競泳の代表選考会が東京アクアティクスセンターで開催された。大会初日は400m個人メドレーに五輪代表入りを狙う宮本一平(人4)が出場。代表権獲得を目指し、力泳するも結果はあとわずかに及ばなかった。

※取材は大会後にオンラインで実施しました

宮本は惜しくも4位という結果だった。(写真提供・日本水泳連盟)

1日目 結果

予選結果(女子)

種目 順位 選手名 タイム 備考
400m個人メドレー 12位 柏崎清花 (営4) 4分48秒34

予選結果(男子)

種目 順位 選手名 タイム 備考
400m自由形 18位 小野吏久人 (経3) 3分57秒69
100m平泳ぎ 17位 山尾隼人 (経2) 1分01秒12
400m個人メドレー 2位 宮本一平 (人4) 4分14秒20 決勝進出
21位 神偉雄 (経1) 4分25秒02
24位 市川薫 (経1) 4分27秒22

決勝結果

種目 順位 選手名 タイム 備考
男子400m個人メドレー 4位 宮本一平 4分14秒67

Pick Up

宮本一平

400m個人メドレー決勝を泳ぎ終えた直後、かつてないほどの悔しさが宮本を包んでいた。東京五輪代表まであと一歩、二歩 … それだけに、心の底から込み上げてくるものがあった。

結果を眺める宮本

「平泳ぎが終わった段階で前に出ることができれば」と目論んでいた宮本だったが、2位の井狩裕貴(イトマン近大)に体一つ分のリードを許して300mを折り返した。勝てば初の五輪代表に内定、負ければ落選の大事な場面。最後にして最大の山場が、やってきた。

長かった道のり

振り返るとここまでの道のりは山あり谷ありだった。昨年2月にあったコナミオープンでリオ五輪の金メダリスト萩野公介を破った。「本当にこれは五輪に行ける」。4月の代表選考会に向け、そう信じて疑わなかった。しかし、そんな矢先に東京五輪1年延期が決定。「水泳に対して気持ちが乗らない状態が3ヶ月くらい続いていました」。宮本は失意のどん底に落とされた。

そこから気を取り直して練習に取り組み10月の日本学生選手権(インカレ)に挑んだ。結果は最後の最後で逆転を許し2位。「このままでは東京五輪の代表に入ることができないので、インカレをきっかけに気持ちを引き締めて練習に取り組みたいと思いました」。この敗戦が再び前を向かせた。

その後、年末年始の追い込みを経て、記録を狙ったジャパンオープンでまさかの7位。ショックだったが敗因は明確だった。「気持ちの方がついてこなかった」。

日本選手権までの残された期間は気持ちを切り替えてトレーニングが積めたと言う。それが上手く行き「今回は『行けそうだな』という気持ちが湧いてきた」とレース前の心境を語った。あとは勝つだけ。

東京五輪挑戦の最終局面。迎えた最後の自由形。宮本はここまで歩んできた道のりと同じように苦しみ悶え、代表権を目指した。長かった道のりもようやく終わりを迎える。心血注いで最後まで戦った。しかし、そこにはすでにたどり着いていた者の姿があった。惜しくも4位で敗れた。

パリ五輪は必ず

レースを終えた宮本は「今回は全力を出し切った結果、五輪を決められなかったということなので次の五輪に向けて準備していきたいと思います」と潔く敗北を認めた。

持てる力を全て出し切ったからこそ分かったことがあった。「この選考会に向けた準備の過程を振り返ると、集中して取り組み出すのが遅かったのかなと感じています。五輪を目指す中で学んだことは、振り返ったときに悔いのない準備をすることです」。東京五輪延期が決定後、なかなか前を向けなかった時期が悔やまれた。「残り一枠を勝ち取った井狩選手はコツコツ積み重ねる部分が僕よりも勝っていたからこそ五輪代表になれたのだと思います」。宮本はここまでの道のりを冷静に振り返り、自分に足りなかったものを分析しながら、調整が難しい中で代表権を勝ち取ったライバルを称えた。

武器である平泳ぎに一層磨きをかけていく

「次の一番の大きな目標はパリ五輪の代表に入ることです」。宮本は今度は自分が主役になると言わんばかりに力を込めて言った。視線はすでに3年後を見据えている。

絶対に五輪出場は夢物語では終わらせない。

(記事/取材:根本 成)

インタビュー

宮本一平

ー 日本選手権を終えて今のお気持ちは
ただただ悔しいという気持ちしかないです。オリンピック代表を狙っていた初日の400m個人メドレーで予選、決勝ともに派遣標準記録は突破できましたが、上位2位までに入ることができなくて、やはり勝負に勝てなかったという部分が一番悔しいです。中3日空いて気持ちを切り替えて200m個人メドレーの方に臨みましたがこちらもベストが出せなかったので悔しい思いしかないです。

ー 次に向けた気持ちの切り替えはできていますか
そうですね。今回は全力を出し切った結果、オリンピックを決められなかったということなので次のオリンピックに向けてしっかり準備をしていきたいと思っています。実力的に400m個人メドレーで派遣標準記録を切れていて、オリンピックを狙えるチャンスがあるのに、それを手放すわけにはいかないと言いますか、今回負けて感じたのは代表権をつかもうとする気持ちがまだまだ足りていなかったのかなと感じました。なので気持ちの部分をもっと強くしていって次こそは必ずチャンスをつかみ取りたいなと思います。

ー 日本選手権を迎えるにあたっての手応えというのは
12月の日本選手権と2月のジャパンオープンでは400m個人メドレーは4分17秒というタイムしか出てなかったのですが、そこから1ヶ月、気持ちを切り替えてオリンピック選考会に向けてトレーニングを積んだ結果、4分14秒台まで戻すことができました。ただ、この選考会に向けた準備の過程を振り返ると、集中して取り組み出すのが遅かったのかなと感じています。残り一枠を勝ち取った井狩選手はそういったコツコツと積み重ねる部分が僕よりも勝っていたからこそオリンピック代表になれたと思うので、そこは反省して3年後は代表を勝ち取れるようにしたいです。

ー もう少し準備期間が欲しかったということですか
コツコツと練習を積み重ねていかなければいけないということを強く感じましたね。3年後に向けて、自分の中で足りない部分の強化やフィジカルの部分をもっと変えていければいいと思います。今回はたくさんの方が応援して下さっていたのに、その期待に応えられなかったので、すごく申し訳ない気持ちでいっぱいです。またこれから新たな「宮本一平」に変わっていくのをお見せできるように頑張っていきますのでこれからもご声援の程よろしくお願いします。

ー 400m個人メドレーは予選から好タイムだったと思いますが
予選で4分14秒台が出たのは今回が初めてで、本当に気持ちよく泳げていました。余力を残して予選は泳ごうと考えていて、それが今大会の予選はしっかりとはまりました。ただ朝一で14秒台を出せたことで、ホッとしてしまったというか、気持ちの面で少し緩んでしまい、決勝でもう一段階上げる気持ちになるのが難しかったです。

ー 予選を全体の2位通過という点で、意識し過ぎた部分もありましたか
自分の中では全体の3番目くらいで通過できればなと考えていたので、予選の2位通過ということは気にしていなかったです。

ー 決勝のスタート前の気持ちは
緊張はありました。ただ、今までは不安から緊張することがあってベストパフォーマンスを発揮できないようなことがありましたが、今回は違って「行けそうだな」という気持ちが湧いてきて、ある程度余裕を持ちながらレースに臨むことができました。

ー 決勝のレースを振り返って
背泳ぎの部分がラップ的には良かったです。今大会は予選、決勝ともに前半のラップが良かったですが後半が少し上手く泳げなかった感じです。今後に向けて弱点が見えたレースでもあったので、そこを補いつつ、自分の武器である平泳ぎのところで他の選手を差し置くレースができればいいなと思います。

ー 4分10秒台を出すために考えていたレース展開は
バタフライを57秒あたりで入って、背泳ぎが1分03秒から04秒あたり。平泳ぎは高校3年生の時に1分08秒台で来れていたので、その辺りのタイムで泳いで、自由形を1分00秒で来れば4分10秒かなと考えていました。今回は前半はプラン通りに泳ぐことができましたが、平泳ぎが予選、決勝ともに1分10秒かかり、自由形に入ったときには接っていた状況だったので気持ちの面で負けてしまいました。平泳ぎが終わった段階で周りの選手よりも前に出ることができれば気持ちを強く持って自由形を泳げると思うので、アメリカのカリシュ選手のように平泳ぎを1分07秒とかで泳げるようにしていきたいです。

ー オリンピックを目指す過程で学んだこと
一番大事なことは気持ちの持ち方だったのかなと終わってからは感じています。世の中がこういった状況の中で、あるのかないのか分からない大会に向けてどういう準備をしていけばいいのか正直分からない部分がありました。去年の日本選手権が無くなり、インカレも開催されるのか分からないといった状況で本格的に練習を始めるのが遅かった分、今回の結果に響いてしまったのかなと感じています。オリンピックを目指す中で学んだことは、自分で振り返ったときに悔いのない準備をすることの大切さです。今、学校練習組は大学のプールが使えていない状況で、本当にインカレに向けてやれるのかと感じている選手もいると思いますが、改めて自分がどこを目指しているのか、そこに対して本気でトレーニングができているか見つめ直して欲しいと思います。

ー 次の目標は
一番の大きな目標は3年後、パリ五輪の代表に入ることです。そこを目指していく中で世界選手権やユニバーシアードといった大会もあるので、400m個人メドレーでしっかり代表に入って結果を出していきたいです。

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