【フィギュア】再び!!全日本直前インタビュー~最後の大舞台へ向けて~

2020年12月9日(水)
Zoom取材

全日本選手権(全日本)の約2週間前となった12月9日、2年前の再演かのように全日本出場を決めた『W小林』こと小林建斗(文4)と小林諒真(営4)に約1時間のインタビューを行った。貴重なお時間をいただき敢行したこの取材では、全日本に向けた思いのほか、ラストイヤーということでこれまでのスケート人生についてなど、貴重なお話もたくさん聞かせていただき、まさかの1万字超えのロングインタビュー。読み応えは抜群だ!

『W小林』そろっての全日本はこれで二度目となる

選手インタビュー

小林建斗(文4)×小林諒真(営4)

─4月からを振り返ってみるといかがですか
諒真:4月からはコロナの影響で試合がどんどん無くなっていって、スケート人生で過ごしてきたいつものシーズンとは全く別ものになってしまったので、試合が無かったり練習ができなかったりっていう状況で最後のシーズンを迎えるということはすごい不安がありました。試合で調整できないのもそうですし、練習量的にもどうしても少なくなってしまったので、自分が毎年目標にしていることが今シーズンもそのまま目標にしていいものかどうかという所はあったんですけど、自分で最後のシーズンって決めたからにはどのみちやるしかないなって思いました。なので、できる事を全部毎日積み重ねてやっていった結果として全日本にいけたシーズンになったのかなと思っています。
建斗:約2カ月くらいスケートから離れる生活があって、自分のスケート人生の中でもそんなにスケートから離れた期間が今まで無かったので、練習が再開した後も今まで通りの全試合あるのかなとは思っていなかったし、今回もインカレとか無くなってしまって、自分が今まで挑んできたシーズンとは全く違うものになってしまいました。でも、さっき諒真も言ったように、僕も何がなんでもこのシーズンがラストの一年なので、たとえ一試合も無くても4年生で引退するって自分で決めていました。でもいつ引退になるかわからない試合の中で、一個一個の試合に対して真摯に向き合ってというか、数少ない試合の中で今まで以上に真っすぐ向き合えたから全日本への切符もつかめたんじゃないかなとは思います。

─大会自体が少ない中ではありますが、自身の中で良かったと思う演技はございますか
建斗:今んとこまだブロックと東しかやってないけど、この間の東のフリーは、演技自体には全然納得いってないですけど、昨年の自分と比べると久々に自信持って挑めた試合だったなとはすごく感じました。
諒真:僕も東なんですけど、僕はショートの方ですね。自分の中ですごい緊張はしてたんですけど、うまくメンタルも調整できましたし、技術面もほとんどミスなく滑れたので新しい課題が見つかったことは改善していかないといけないんですけど、それまでの練習の中であの演技ができたということはすごい満足しています。

─現在の状態というのは
諒真:今はけがもなく練習はできてるので、徐々に徐々に全日本に向けて詰めるところ詰めていってる状態なんですけど、日によって調子が上がったり下がったりとか。元々痛い膝の痛みが出たり出なかったりっていう、痛みとの相談にはなってしまってはいるので、中々毎日100パーセント練習するっていうことができない状態なんですけど、その中でも良い練習は積めてるのかなっていうふうに思ってます。
建斗:東日本終わってすぐ靴を変えて、それに慣れるのに少し時間がかかってはいたんですけど最近ようやく靴との一体感は出てきたので、今まで通りコンスタントな練習に打ち込めてると思います。特にけがしてる所も無いので、今のところ良い状態で練習できていると思います。

─自身の演技構成の中でカギとなる部分は
建斗:ショートは1本目の3+3が決まるかで大分自分の中のモチベーションが変わってくると思います。最初スピードちゃんと出してビビらずにしっかり挑めるかがとても大事だと思うんですけど、フリーはやっぱ一番自分の中でカギとなるのは後半の2本目の3フリップかなと思います。一番曲が盛り上がるところで一番自分の得意なジャンプとしてバシッと決めて、プログラムの後半へ向けて盛り上がりを作っていけるような構成なので、そこはすごく自分の中でキーじゃないかなと思います。
諒真:ショートは最初のアクセルが音と一緒に降りるので、そこでうまいこと音とハマったらその後のジャンプスピンにも良い流れで持っていけますし、そこから自分の中ではめたいと思ってはめる練習はしてるんですけど、中々はまる時も少ないので、はまったら割とテンション上がってバンバンいけそうな気がするので最初の2アクセルですかね。フリーは後半の三つのジャンプが自分の中ではカギになってると思っていて、後半はやっぱり疲れが出てきやすくて、体力面的にもメンタル面的にもしんどい時なんですけど、そこでどれだけ踏ん張ってどれだけ良いジャンプを跳べるかによって点数も順位も変わってくると思いますし、最後まで気持ち切らさずに滑るためにもその三つをしっかり跳んで最後のステップとかコレオとかにもっていけたら良いのかなというふうに思ってるので、その三つがカギになります。

─今年はビデオ配信や会場内の制限など普段と異なる状況でしたが、お互いの演技を見る機会はありましたか
建斗:見れないかなって最初思ってたんですけど案外見れて(笑)。この間の東のショートは滑走順的にも諒真見れたんですけど、悔しいけどうまかったですね(笑)

─お互いの演技を見て持った印象などを教えていただけますか
諒真:僕はけんちゃんのショートフリーをブロックでしか見てないので、東見れてなかったのはどれだけ進化してるのか見れてはないんですけど、ブロックで見た時の印象は、フリーはすごい気持ち入ってんなっていうように思って。いつも毎年すごい良いプログラムを試合でぶつけてくるので見ててすごい見応えがあるんですけど、今回のプログラムはより熱がこもっていて、本当にスケート人生これで最後、っていうのが毎試合毎試合伝わってくるようなプログラムになっているので、僕すごい好きなんです。
建斗:(笑)
─これを聞いてみていかがですか
建斗:うーん……、素直に受け止めます(笑)
─では小林建斗選手から小林諒真選手の演技に対してはいかがでしょうか
建斗:この間東はフリー見れてないのかな、たしかショートだけだったんですけどなんて言うのかな、ショート見て率直に思ったのが、もちろんすっと思ったのが「うめえな」なんですけど、やっぱり僕とは違って滑らかさというか全然違うし、1個のプログラムとしてすごい洗練されてるような感じがして、どの要素も安心して見てられたので、スピード感とかもあって。そういうのも含めて改めてすごいうまいなと思ったし、フリーの『Fix You』もこれを使うって聞いた時はすごい意外だったんですけど、でもこういう曲も滑れるのって本当にスケートの基礎的な部分がすごい滑らかにできないと多分滑れない曲だと思うので、しかもそれもちゃんと滑りこなしてるのでさすがだな、と思います。
─『Fix You』が意外というのは
建斗:え、フルボーカル使ったことなかったよね? あったっけ?
諒真:フルボーカルはないね。
建斗:ないでしょ? だからなんて言うのかな、映画のサントラとかそういうフルボーカルじゃない曲のイメージがあったのでその辺がすごい意外だったんですけど、まあでも合ってるなと今すごい思います。
─フルボーカルの曲を選んだ理由などは
諒真:昨年のフリーの『エクソジェネシス』ではちょっとボーカルが入ってて、それまではすごいボーカルが入ってるのが嫌だったんですけど、別に滑っててもあんま気にならなかったのと、あと『Fix You』を聞いて、自分がこれを最後滑りたいなというふうに直感的に思ったので、フルボーカル、結果的には新しい挑戦になったかもしれないですけど、なんせ自分が最後滑りたいって直感的に思った曲だったのでそれを選曲しました。


お互いの演技の印象について話す時には笑顔も見られた

─ここからは大学に限らずいろいろお聞きできればと思います。まずスケートを始めるきっかけを教えていただけますか
建斗:元々埼玉の地元のリンクでずっと練習してたんですけど、そこのリンクに家族で遊びに行って、お姉ちゃんが先に本格的に始めたのがきっかけで、僕はそのあとを追うように始めたんですけど、どう言ってたのか……。自分からこれやりたい!って言った記憶はないんですけど、多分きっかけはその家族で行った時でしたね。
諒真:僕は妹がいるんですけど、妹が浅田真央ちゃんを見て「始めたい」って言い始めてそれに付き添ってたんですけどいつの間にか自分も氷に乗らされていて。どんどん沼にはまっていった感じですね(笑)
─乗らされたということはあまり能動的ではなかった
諒真:そうですね。僕ゲームしてたんですけどずっと客席で。そのゲームしてるのが親は嫌だったらしくて、半強制的に氷の上に立ってましたね(笑)

─今までのスケート人生で一番キツかった時期や時間というのはありましたか
諒真:僕は中学生3年間ですかね。始めたのが小学校3年生で、そこから割とどんどんレベルが上がっていくのを自分でも実感できていてそのまま中学生になって。その中学生でトリプルジャンプの壁にぶち当たって、そこの壁を越えるのに3年かかったので、すごいスケートが楽しくなくなりましたし、普通に学校生活してる方がいいんじゃないかとかスケート辞めたいとかいろいろ考えたり行動したりした時期でしたね。
─そこから続けることになったきっかけのようなものはございますか
諒真:なんとなく練習に行ってなんとなく練習して、というのを続けていて中1の終わりとか中2で先生変わったんですけど、変わってからも劇的な変化があるわけじゃなかったです。そういう日を過ごしてたらふいにジャンプが跳べる日が来て、そこで「もうちょっとやってみようかな」っていうふうになったり、あとはリンクで一緒に練習してたメンバーがすごい仲良かったので、その子たちに会いに、お喋りしに行くついでに練習してたみたいなところもあったので、そこですごいつなぎ止められていたのかなっていうのは、今振り返ると思いますね。
─小林建斗選手はそのキツかった時期のようなものはございますか
建斗:僕が覚えてるのは高1高2の時期が特にしんどかったなってすごい思います。練習でもほとんど崩れることがなかってコンスタントにジャンプ跳べてたのに、試合になるとものすごい浮き足立っちゃって練習通りの動きが全くできなくって、本当に試合で何回も悔し泣きしたし、未だに思い出したくもないような試合も結構多いんですけど、「こんだけやってもダメか」と何回も思ったし、その時までは目立つことが好きだったのですごく試合が好きだったんですけど、その2年間があってから試合の恐ろしさっていうか、自分に自信が無くなっちゃう時期でしたね。
─その時期から抜け出したのはどのような時
建斗:結構高1高2も、高2終わるまでもほとんどうまくいってなかったんですけど、正直もう辞めたいなと思ったことも何回もあったんですけど、けどやっぱり目立つというか良い演技をして皆から歓声とか拍手をたくさんもらいたいという気持ちは変わらずあったので、こんなふうに終わりたくないなというのがすごくあったし、何より高3の時がジュニアのラストシーズンだったので、ジュニアの最年長として来年はもっと頑張らなきゃなという気持ちがその時すごいあったので、それもあって自分から動き出したような感じで、それもあって抜け出せたんじゃないかなって思います。

─スケートをやってきた中で鮮明に覚えてる瞬間や脳に焼き付いている時などはございますか
諒真:僕は大学2年で初めて全日本行った時の、リンクサイドで並ぶんですけどその時の光景はずっと覚えてますね。なんかすごい印象的っていうか、インパクトがすごい強かったので、そこは多分今後人生でも忘れることはないかなって思います。
建斗:被ってんな〜(笑)
諒真:よし!(笑)
建斗:「よし!」じゃねえよ(笑)
諒真:(笑)
建斗:まあでも、本当にそうですね。多分初めて全日本出た人多分多くの人がそう言うと思うんですけど、他の試合と比べても観客席の数もそうだしお客さんの数もそうだし、リンクの中や外とか、外周の広さもそうだし天井の高さ、リンク内の温度とか熱気とか緊張感も本当に何もかもが別次元の世界なんだなっていうのは、その舞台、リンクサイドに立ってすごい初めて自分でも改めて思いましたね。2回目の大学2年の全日本でもそれはすごく感じたし、多分何回、4年間フル出席しても多分それはずっと感じることなんじゃないかなって思います。

─2年前の全日本を振り返ってみるといかがですか
建斗:緊張していたのはすごく、まあそれは緊張していたんですけど、憧れの高橋大輔選手と人生の中で一度でも同じ舞台に立てたっていうのは正直一生忘れられない思い出だし、その大輔選手が使っていた『道化師』を響かせながらフリーをあの大阪のリンクで滑れたっていうのはすごく自分でも、ミスはあったけどすごい気持ち良かったし、もし見てもらえてたら、知ってもらえたらうれしいなっていう気持ちでいました。あとは試合終わったあと諒真とホテルの部屋でケーキ食べてたのが印象深いです(笑)。クリスマスケーキ食べてました(笑)
諒真:僕は一言で言うと『すごい勉強になった試合』かなって思っていて、スピン一つでショート落ちしてしまったのでそこはもう身をもって経験できた部分で、これ以上の失態は本当に無いなっていう風に思っています。ジャンプ転んじゃうとかステップで転けちゃうとかどうしようもないところはあると思うんですけど、ただ防げたミスを防げずにそのままフリーを滑ることができなかったっていうことがすごい悔しいですし、もうそれしかあまり覚えてなくて、ジャンプたしか全部跳んだとは思うんですけど、もう演技中の気持ちとか終わった後の達成感とかキスクラで待ってる時のドキドキとかワクワクとかもあんま覚えてなくて、ただそのスピン一つに泣いたので、なんかもうそれだけですね。僕の全日本の印象はそうです。

─2年前から変わったと思う部分はございますか
建斗:強いて言うなら、あんまり落ち込むことが無くなったなって自分は正直思います。それを特に感じたのは自粛明けてからの練習でなんですけど、今改めて思ったんですけど、あの時すごい結構、全日本の時も足を痛めたりしてたので急遽構成を変えて挑んだので「なんでこんな大事な時に足痛めてるんだろう」ってすごい、落ち込んでもしょうがないのにずっとブルーになってた時もあったので、今は引退間近だし落ち込んでもしょうがない、そんな時間もったいないよなって思うようになったので、気持ちの持ちようは多分大分変わったんじゃないかなって思います。
諒真:僕は4年生になってというか、3年4年と過ごしていく中で、それまではスケートにしか目がいってなかったんですよね。良い意味でも悪い意味でもスケートしか頭になかったんですけど、もちろん4年生になったら就活がありましたし、それ以外にもどんどん自分が大学の年長者になっていく、リンク全体の中でも練習してる仲間の中でも年長者になっていくっていうところでいろいろと意識が変わったり、もっと視野を広げていろんな事を見たり感じたりして、自粛もありましたし。そういういつも通りの年じゃないっていう中でも、自分がここまで冷静でいれてることが自分でもちょっと不思議かなっていうふうには思っていて。そういう自分では気付いてない部分とか精神的な面も勝手に成長してるのかなっていうふうには思います。

─お2人は1年交代で主将を務めていらっしゃいますが、それどのように決めたのでしょうか
建斗:どのように決めた?
諒真:俺知らないよ。インカレで言われたもん。
建斗:ああ。僕が主将になる時は、僕の持ってる雰囲気が結構主将に向いてると思ったって監督とその時主将だった宮田大地くん(平30年度卒)に言ってもらえて、皆を引っ張っていく感じとかは建斗向いてるんじゃないかって言われて、主将よろしく!って言われて、拒否権なしで「あ、はい」って言った感じです(笑)。諒真が主将になってからも、僕に無いものを諒真はたくさん持っているので僕が主将だった時以上に、その辺は部員に聞いてみなきゃわかんないけど(笑)。主将らしさはあると思うので、うーん、どう決めたんだろうね。
諒真:よくわかんないけど、けんちゃんが主将の時と俺が今やってる時とじゃ多分部員が感じてることは違うと思います。多分タイプが違うので……そこは聞いてみなきゃわかんないな(笑)
建斗:そうだね。一生わかんないや。

─自粛など例年より自宅にいる時間が今年は多かったと思うのですが、自宅にいる時はどのようなことをしていましたか
建斗:個人的に肉体作りをしたいなとはすごい思っていたので、練習ある時ってどうしても疲れてると筋トレサボりがちなっちゃってたので、スケートから離れて今しかできないなって思って、結構上半身の筋トレはかなりしてましたし、あとは自分の将来についてもゆっくり考えもしたし、あとは趣味の絵も描いたりしましたし、お酒もいっぱい飲んでましたし(笑)
諒真:後半からニートなんだよな……(笑)
建斗:いや、でも自分からスケート取ったらまずいことになるんじゃないかなと思ってたんですけど、でもいろんな事に目を向けて、お酒は別として(笑)、いろんな事を考えて過ごせたのでとても良い自粛期間だったなと思います。
諒真:僕も、けんちゃんほど多分意識は高くはないんですけど、スケートやってない分体を動かして体力も維持しなきゃいけないですし筋力も維持しなきゃっていうので、毎日ランニングだったりっていうのはしていました。それ以外の部分でいうといろんな事に目を向けようと思って新聞読んだりニュース見たりとか、いろんな人が書いた本を読んだりとかして、自分の知ってる世界をもっと広げようと思っていろんな情報を集めてましたね。あと娯楽はYouTube見たりドラマ見たり映画見たり小説読んだりっていう、それは自粛あまり関係なく毎日日頃やっているので、自粛期間で新しく得た趣味とかっていうのは特にはなかったですね。
─読んだ本の中で良かった、オススメのものはありますか
諒真:アメリカの本なんですけど、『20歳のときに知っておきたかったこと』*¹っていう本が、自分が読んだ時に「全然まだまだ俺は世界を知らなかったんだな」っていうふうに思ったので、それはすごい、20歳、高校生とかで読みたかったなってちょっと思いましたね。


最後の全日本へ向け、士気は高まっているようだ

─お2人にとって全日本というのはどのような大会になりますか
諒真:ちっちゃい頃からテレビで毎年クリスマスになると放送されてる大会ですし、スケートをやってるのであれば全員が目指す舞台だと思うので、年に1回しかない最高の舞台だなって思ってます。
建斗:僕も本気でスケートやってる人はもう、行ける行けないは別にして目指すべき舞台だと思うし、会場に行ってしか感じられないことが本当にたくさんあるので、そして何よりも自分のスケートを他の試合に比べて一番多く見てもらえる試合だと思うので、何事にもかえ難いような、うまく言葉に説明できないくらい緊張感とか高揚感を得られる試合だと思います。

─フリー進出も一つの大きな目標かと思われますが、フリー進出のために必要なものとは
諒真:フリーにいくためには、もちろんジャンプスピンステップ全て自分がこれまで練習したパフォーマンスを最高の状態で発揮しなきゃいけないと思ってますし、それ以外にも表現だったりスケーティングだったりっていう部分でもほぼミスが無い状態で、これまで自分が何回も滑ってきたショートの中で本当に良い状態をもっていかないといけないのかなっていうふうに思っているので、そこに向ける練習は中々大変ですけど、そうなるように確率を上げるための練習は毎日頑張って積んでるかなって思います。
建斗:エントリーしてる選手とか見ても明らかにやっぱり昨年出てないけどもうレベルがかなり上がっているので、ショートを通過するボーダーとかはわかんないけど、自分の組んでる要素的にもおそらく、何か1個の失敗が確実にフリー進出を阻むと思うので、今まではジャンプとかでもスピンとかステップでポロポロ取りこぼしがあったりしてきたんですけど、それでなんとなくうまくいってたけど、さすがに今回はもうそういうわけにはいかないと思うので、ジャンプもミスが無いのはもちろんだし、他の細かい要素の取りこぼしも無く完璧に滑り切って、あとは自分が怖気付いたりせずに自信もって試合に臨むことがフリー進出へのカギかなと思います。

─会場としては長野のビックハットになりますがそこのリンクのご経験は
建斗:全中がそこで。
諒真:国体かな1回。
建斗:そうだ国体もあったわ。

─そのリンクはどのような場所ですか
諒真:うーん、広い。
建斗:語彙力(笑)。まあ広いですね。
諒真:(笑)。天井が高いので、空間がすごい広く感じますね。あと個人的にはビックハットの氷は嫌いです(笑)
─嫌いというのは
諒真:すごい個人的にジャンプが跳びにくくて、すごい照明が強くなると思うので、氷に反射してきて目がチカチカしちゃうので、その2点がすごい嫌いです僕は。
建斗:(笑)。僕はそんなに鮮明に氷の感覚覚えてるわけじゃないんですけど、ただ嫌だなと思った記憶はないので長野は。だから氷に対しての不安とかは別にないかな……。ただ全日本の時っていうのは観客席の数も増えるけど、それがなくても長野って元々大きいリンクなので、オリンピックもあるし、他のリンクとは結構雰囲気違うなっていうのは思いますね。あとはめっちゃ広いです(笑)

─他の全日本出場選手の中で気になっていたり注目している選手はいらっしゃいますか
諒真:僕は同期ですね。4年生はやっぱり全員は進路はわかんないですけど、自分が同期として最後に同期の皆と滑れる試合、全日本になるので同期の皆には頑張ってほしいですし、良い悪い関係なく最後に一緒に同じ空気を味わえるってことは今でも考えると、良い経験になるなって思います。
建斗:僕は固有名詞なんですけど、本田太一くん(関大)は個人的にはすごく、今シーズン結構ブロックからもなんですけど、試合終わった後とかも東の前とかも声掛けてくれたりしてすごく個人的に支えてもらった身なので、昔から仲良いっていうのもあるし、彼も今シーズンで引退するらしいので、ライバルとしても、ライバルになるかわかんないけど(笑)、友だちとして最後の全日本一緒に頑張って見届けたいなっていう気持ちがあります。

─自身の演技のここに注目してほしい
建斗:自分の得意なジャンプはもちろんそうなんですけど、結構曲が手をのばしてつかめそうでつかめないような悩みの中にいる自分っていうのを表現しているので、ロックっぽい振り付けももちろんあったりするんですけど、特にステップとかは鎖から解かれるような振り付けもあったりするので、良い意味でもがき苦しんでいるようなところを表現して、そこを見てもらえたら良いなと思います。
諒真:僕は自分の一番魅力的というか良い部分はジャンプだと思うので、そのジャンプを見てほしいですし、振りとか表現っていう部分はまだまだ磨かなきゃいけない部分ではあるので中々そこを「見てほしい」とは言えないんですけど、やっぱその演技全体を通して何か印象に残っていただけるような演技ができれば良いかなって思います。

─ここまで様々なことをお話していただきましたが、お互いに何か聞いてみたいことなどはございますか
建斗:ありますか? 小林選手。
諒真:最近はまっている漫画はなんでしょうか?
建斗:はまっている漫画? えーっとね、『呪術廻戦』*²。
諒真:見てる。
建斗:見てんだ!? 漫画も?
諒真:漫画は読んでない。
建斗:そう。アニメ見てるならじゃあ、俺も漫画今全巻読んでるんだけど、まあ見てるなら特に言うことは。
諒真:それがオススメか。
建斗:あとはこれ! ちょっと待って、これですね。『極主夫道』*³(笑)。(表紙をカメラに写す)
諒真:あー、ドラマやってたじゃん。
建斗:いやね、ドラマはね正直ちょっと納得いってなくって、いろいろリメイクしちゃってるから「なんじゃこりゃ」と思ってるんだけど、いやもうね本当これは漫画マジで面白い!(笑)
諒真:(笑)
建斗:これはもう本当に元気ない時とかに読むと、ちょっとね、ふふってなるから俺も今たまに読んでるんだけど、「ああ疲れたな」とかなんかイライラしてる時にこれ読んでメンタル回復させてるんで良かったら(笑)
諒真:読んでみる。
(その後も様々な話が続く)


お互いへの質問や大学の話など、普段の様子がうかがえるような和やかな空気が流れた

─最後に改めて全日本へ向けての意気込みをお願いします
諒真:泣いても笑っても最後の全日本になるので、自分がこのスケート人生で培ってきたものだったり、今シーズン力を入れて練習してきたものだったりジャンプスピンステップ全ての集大成になると思うので、最後の試合にはならないんですけど全日本という中ではもう最後になっちゃうので、自分が悔いなく笑顔で終われるように、「本当にスケートやってきて良かったな」って思えるような演技をして終わりたいなって思います。
建斗:えーと今なんて言おうとしたんだっけ。忘れちゃった。すみません。
諒真:歳だよ!
建斗:(笑)。順位とかノーミスしたいっていう気持ちもあるんですけどその気持ちを持つのは当たり前で、しっかり自分が今までで一番「これが小林建斗のスケートだ!」っていうのを発揮できるようにしたいし、自分が100パーセント出し切ってショート落ちなら全然悔いはないので、とにかく自分に悔いがないように。と、そしてテレビから観客席から見ている人たちが最後の全日本でも「もう1回このショート見たいな」とか「小林建斗のプログラムもっと見たいな」って思ってもらえるような、人の記憶に鮮明に残るような演技を最後して終わりたいと思います。

(取材:小倉明莉)

*1…ティナ・シーリング著、高遠裕子訳『20歳のときに知っておきたかったこと:スタンフォード大学集中講義』 阪急コミュニケーションズより2010年に出版。
*2…芥見下々が描くダークファンタジー漫画『呪術廻戦』。現在『週刊少年ジャンプ』(集英社)にて絶賛連載中。単行本は最新13巻まで発売されている。また、アニメが毎週金曜深夜1時25分からMBS/TBS系全国28ネットで放送。
*3…おおのこうすけによる漫画『極主夫道』。元極道の主夫業を描く日常系ハートフルコメディ。ウェブコミックサイト『くらげバンチ』(新潮社)で連載され、2020年10月からは玉木宏主演でテレビドラマにも。

フォトギャラリー

  • 法大の『H』マークを作っていただいた。『W小林』の法大での様々な活躍が思い出される 
  • ラストイヤーに再び全日本への切符を手に入れた小林諒
  • 3度目の全日本出場となる小林建
  • 小林建斗オススメの一冊

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